第49話『温泉の陰謀!?ヨシオ、湯けむりの謎を追う』
ギルドの依頼板に貼られていたのは、一見すると地味な依頼だった。
> 「温泉街ミズラノにて、謎の湯あたり被害が多発。原因調査と対処を依頼する」
「なんだよ、“湯あたり”って……ただの入りすぎだろ」
俺は眉をしかめながらも、依頼書を見つめる。
「いや、ただの湯あたりにしては、妙なんだよ」とリリィが真顔で言った。
「魔法感知に反応してる。つまり――何か、魔力に関係する異常が湯に混ざってるってこと」
「そりゃあ、放っておけないな」
◇ ◇ ◇
温泉街ミズラノ――
そこは、森と崖に囲まれた静かな保養地だった。岩山から湯煙が立ち昇り、ほのかな硫黄の香りが漂っている。
「いいなぁ……これはもう“仕事”っていうより“癒し”だろ……」
「……ちゃんと仕事するんですよ、ヨシオさん」
リリィがジト目で見てくる。だが、彼女のほっぺたもほんのりピンク色になっていて、きっと楽しみにしてるんだろう。
「さてと……まずは温泉の源泉を調べよう」
「ウケールは?」
「……地元の名物“茹でタマゴ焼きそば”を食べに行ったよ」
「自由かあの男……」
源泉小屋に着くと、管理人の老人が待っていた。
「おや……冒険者の方か。ここ最近、湯に魔力を感じるという報告がのう……」
「やっぱり、ただの湯あたりじゃなかったか」
俺とリリィは源泉に近づき、魔力感知魔法を発動した。
「《探気》」
「……なんだ、この感じ。水の魔力と……微弱な“干渉術式”?」
「術式……誰かが温泉を“細工”してるのか?」
俺がそう呟いた瞬間、小屋の裏手で“ゴポン!”と何かが跳ねる音がした。
「誰だっ!」
俺たちは飛び出す。そこにいたのは――
「エリュ!? お前、なにしてんだ!?」
「わ、わたしじゃないわよ!? ただ、お風呂でのんびりしてただけで!」
「……すっぴんで湯上がり状態ってのは否定できん」
「ちょ、見ないでヨシオのバカーっ!」
そのとき、岩の陰から現れたのは――
人型の、しかしどこか不気味な“湯けむり”に包まれた影だった。
「侵入者ヲ確認……再構築ヲ阻止スル……」
「喋った!?」
「……アレ、“湯の精霊”を無理やり魔法で具現化させた存在よ! 魔力が狂ってる!」
リリィが警告した直後、影が伸び上がるように襲いかかってきた。
「来るぞ――《雷禍剣陣・弐式》!」
雷の剣が飛び交い、霧状の影に突き刺さる。だが霧の体はバラバラになっても、また収束してしまう。
「物理も魔法も効きにくいタイプか……!」
「でも、中心の“核”だけは物質よ! あそこを狙って!」
リリィが俺の肩越しに叫ぶ。俺は目を凝らして、“湯けむりの心臓部”のような部分を見定めた。
「なら――あれだッ!」
《雷禍貫剣・終式》――
一点集中の雷の槍が、霧を突き抜けるように“核”へと直撃。
「グ、グオォオオ……!」
湯けむりの影が叫びを上げて崩壊する。蒸気が晴れると、静かな源泉の音が戻っていた。
◇ ◇ ◇
「……無事、か」
俺は手をついて息を吐く。リリィがタオルで俺の顔を拭ってくれた。
「ありがと、ヨシオ。……あの精霊、誰かが意図的に作ったものよ。今回の事件、まだ“黒幕”がいるかもしれない」
「……やっぱ、完全に休むのは難しいみたいだな」
そう言いながらも、俺たちはほんの少し――
温泉の湯に肩を浸しながら、静かな時間を楽しんでいた。
「それにしても……」
「ん?」
「リリィの浴衣姿、ちょっと反則だな……」
「な、なによそれっ。もうっ……ヨシオのバカ……」
でも、彼女の笑顔は、どこか嬉しそうだった。
「面白かった!」
「続きが気になる、読みたい!」
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