第48話『決戦!ナスグラドン包囲網』
ナスグラドンの巨体が東門前の丘を踏みつぶし、紫煙を上げながらゆっくりと進軍してくる。
「でっか……いや、まじででかいわアイツ……!」
俺は思わず呟いたが、腰は引けていない。何度か死にかけたおかげで、度胸だけはついてきたらしい。
「ヨシオ、お願い。あの中腹の幹部っぽいナス、狙って!」
リリィが俺の背中を軽く叩いた。
「ああ、任せろ! 俺の魔法、見せてやる!」
俺は右手を掲げ、前話で修得した新魔法を展開する。
「《雷禍剣陣・弐式》ッ!!」
四方八方から雷の剣が出現し、空中に浮かぶナス幹部たちへと殺到していく。
ひときわ派手な紫色のマントを羽織ったナスが、ギリギリで回避した。
「フン、やるではないか……ヨシオ!」
その名を知っているあたり、ナス団は本気のようだ。完全に俺たちを“戦力”として警戒している証。
「ウケルーン! 右から来るナスの群れ、抑えてくれ!」
「任せろヨシオ! ナスは焼きナスにかぎる!」
ウケルーンが斧を地面に突き立て、地割れを起こす。ナス団の雑兵が転げ落ちる隙に、リリィが滑り込むように間合いを詰めた。
「リリィ、左から魔法陣が来る!」
「わかってる!――《氷縛界》!」
瞬間、冷気が広がり、敵の詠唱を凍らせる。
「はっ、魔法の撃ち合いは苦手って言ってたのに……!」
「昨日の私とは違うから!」
と笑うリリィの横顔に、不覚にもドキッとしてしまった。
──そのとき、空が光った。
「空から……何か来るッ!?」
レイナの叫びに、俺たちは反射的に見上げる。空中から、巨大な紫色の火球が落ちてきていた。
「……やばい、アレ、落ちたら街が……!」
エリュが叫ぶ。
だが、誰も届かない。俺たちでは、空を飛んでいるそれに打撃を与える術がない。
「くそっ、こんなときに空戦の手が……!」
「――いや、いるぞ」
俺の隣で静かに声を上げたのは、あのふざけた名前の男だった。
「俺に任せろ、ヨシオ。俺は空も飛べる“ギャグ戦士”――ウケール様だ」
「ウケール……!?」
「この日のためにとっておいた……奥義、発動!」
ウケールが地面を蹴り、空に向かって垂直にジャンプ。
「《天空蹴昇拳》!!!」
と叫んだ瞬間、なぜか身体が飛行石のように浮き、火球に体当たりをかます。
「ウケールッ!!」
ドガアアアアアン!!!
爆音が空に響いた。ウケールの姿は見えない。
しかし――
「お、おい……空の火球が……消えてるぞ!」
「まさか、アイツ本当にやりやがったのかよ……」
──その直後、ギルドの魔導通信鏡が再び反応。
《第一波撃退確認。市民被害、ゼロ。すべての防衛ライン、健在》
俺は、思わず膝に力が抜けそうになった。リリィがそっと支えてくれる。
「……ありがとう。ヨシオ、みんな」
「いや、こっちこそ。リリィのおかげで集中できた」
二人の目がふと重なる。その瞬間、俺は不意に、彼女の手を握っていた。
「お、おい……あんまり見つめるな、ちょっと恥ずかしいだろ」
「ふふ、じゃあもっと見ちゃう」
な、なにその照れ攻撃……!
そんなやりとりの後ろで、誰かが空から墜落した。
「うごご……生きてるってことは、俺……勝ったのか……?」
──ウケールだった。
◇ ◇ ◇
こうして、ナス団第一波の襲撃は終わった。
だが、これは“前哨戦”にすぎない。俺たちは仲間と共に、次なるクエストの準備を進める。
「なぁ、ヨシオ。次のクエスト……ちょっとおもしろい依頼があるんだが、どうする?」
「詳細を教えてくれ。ギャグじゃなきゃ受けるぞ」
ウケールが変な顔で笑う。
「……ギャグじゃない。ただの、温泉地調査だ」
「面白かった!」
「続きが気になる、読みたい!」
「今後どうなるの!!」
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