第45話『ギルドで大混乱!?新クエストは超地味!』
朝。俺は宿の食堂でパンをかじりながら、仲間たちと今日の予定を確認していた。
「で、今日はギルドで新しいクエストを受けるんだったよな」
「うん!」リリィが元気よく頷く。「この前の“試練”で評価も上がったし、きっと特別な依頼が来てるはずよ!」
「特別って……あんま強そうなのはちょっとな。オレ、まだ筋肉痛なんだが」
ウケールは椅子にもたれかかりながら、全身に湿布を貼っていた。お前、いつの間に現代日本の知識仕入れた?
「でも、次のステップに進むには、実績を積むしかありません」
エリュがメガネを押し上げて真面目に言う。やっぱこういうとき頼りになるな。
俺たちは朝食を済ませて、カイルンの冒険者ギルドへ向かった。
◇ ◇ ◇
ギルドに入ると、すでに朝から多くの冒険者でごった返していた。武器を手入れする者、仲間探しをしている者、酔っ払って意味不明な歌を熱唱している者(朝からかよ)。
「おっ、ヨシオたちじゃねえか!」
受付に近づくと、見知った顔の職員――バルゴンが声をかけてきた。大きな体と、酒焼けした声が特徴の中年男だ。
「おまえら、例の“試練突破”の報告、ちゃんと本部まで届いたぞ。いや~、あの伝説クエスト生きて帰ってきた連中なんざ十年ぶりだ」
「で、なんか特別な依頼とか、来てる感じです?」
俺が聞くと、バルゴンはにやりと笑って、奥の書類棚から一枚の巻紙を取り出した。
「コレだ。“極秘依頼:南西の村にて発生する野菜泥棒の調査”。緊急度:並」
「……へ?」
一瞬、耳を疑った。
「いや、野菜泥棒?」
「そうだ。なんでも、ここ数日でトマトやナスが大量に消えるらしい。畑はめちゃくちゃ、村人は怯えているってよ」
「ちょっと待て、俺たち今、伝説の試練を乗り越えて帰ってきたところだぞ!? もうちょっと、こう……ドラゴン討伐とか、世界を救うとか、そういう系のないの!?」
俺の声がギルド内に響き渡る。周囲の冒険者たちがチラ見してる。恥ずい。
「なぁに言ってんだ、伝説だろうが何だろうが、地道な仕事をこなすのが冒険者の本道だろ? お前ら、畑を守れ。大根は命だぞ」
「いや、なんだその標語……」
でもまあ、断っても仕方ない。依頼受けなきゃ飯も泊まりも困るし。
「じゃあ受けますよ。“野菜泥棒退治”……ね」
◇ ◇ ◇
俺たちはギルドを出て、さっそく南西の村へ向かう準備を始めた。
途中、リリィが肩をポンと叩いてきた。
「ヨシオ、あたし、こういう地味なの好きよ」
「へ? なんで?」
「地味な事件の裏に、とんでもないヤツが潜んでるってこと、けっこうあるのよね。私の故郷でもあったもの。最初はニワトリ泥棒だったのに、犯人は実は――」
「待って、それ言ったらフラグになる!」
「……もう立ってるんじゃない? フラグ」
リリィがニヤッと笑った。ああ、絶対変なの出てくるんだ、これ。
◇ ◇ ◇
道中、俺たちは装備の確認をした。
「一応、今回のために魔法の習得も進めといたぞ」
「お、ウケール、何覚えた?」
「“疾風の便り”。使用すると“風に乗って村人に手紙が届く”という地味な魔法だ。便利だろ」
「お前、ギルドの伝書鳩になってどうすんだ」
だがエリュは「私は“フレイム・サイン”。火花で空中に文字が書ける術です。パフォーマンスにも、緊急時のサインにも活用できます」と言っていた。
……なんか、地味だけど実用性の塊だな。
一方俺は――
「……俺は、“閃光爆雷弾”だな」
ピカァッ! という爆音とともに、遠くの岩が吹っ飛んだ。
「えっっっっっっ!? なんでヨシオだけ派手なの!?」
「知らん、習得したらこうなった!」
村人に誤爆しないように気をつけよう……。
◇ ◇ ◇
夕方、目的地の【ラギュノ村】に到着。
そこは、穏やかな畑と草原に囲まれた、のどかな農村だった。
「いいねぇ……空気うめぇ……って、あれ?」
俺は目をこすった。
畑の中で、何か“スーツ姿の狸”みたいなものがトマトを両手で抱えて逃げていく。
「あ、いた」
リリィがため息をついた。
「予想通り、ただの泥棒じゃなさそうね。あれ、なんだろ。魔獣系? それとも、変異体?」
「いや、あれは……妖怪“タヌカイチ”かもしれん!」
エリュの口から飛び出した謎ワードに、場が凍る。
こうして、俺たちは“野菜泥棒”退治という名の、未知なる何かとの戦いに巻き込まれていくのだった――。
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