第36話『リリィの涙、失われた村と小さな約束』
──森の奥に、小さな廃村があった──
風に吹かれて軋む看板には、かすれた文字で《エルフラーナ村》と書かれていた。
リリィ「……ここだよ。昔、私が一度だけ来たことのある場所」
ヨシオ「えっ、知ってるの? この村」
リリィ「……記憶の片隅にずっとあって。でも、こうして来たのは初めてに近いの。たぶん……すごく、昔のこと」
エリュ「廃村になってるってことは……何かあったんだね」
──村の中心部にある小さな教会跡──
そこには、誰かが置いたままの花が咲いていた。
リリィ「……あの日、あの人が言ってた。“いつか戻ってくる”って。だから私は待ってた……待って、でも……誰だったんだろう」
──リリィの頬に、ぽつりと涙が流れた──
ヨシオ「リリィ……」
──そのとき、ヨシオの“観測魔法〈リフレクト・アーカイブ〉”が起動した──
《記憶領域を照合中……同期完了》
──空間がわずかにゆがみ、辺りが柔らかな光に包まれる──
【幻影:七年前】
小さなリリィ「ありがとう、にいちゃん……! またね、ぜったいまたね!」
若い男「約束だ。お前が強くなったら、もう一度会おうな」
──光が消える──
リリィ「……思い出した。私、ここで、あの人に助けられて……」
ヨシオ「誰だったんだろう、その人は……」
リリィ「名前は思い出せない。でも──それでも、優しかったってことだけは……ちゃんと、覚えてる」
──一同は静かに、花を供えた──
エリュ「こういうのって……悪くないね」
ヨシオ「うん。冒険って、戦いだけじゃないんだな……」
──風が吹く。過去に囚われながらも、確かに前を向く力を得て──
【リリィ:スキル〈追憶の誓い〉を習得しました】
──その日の夜、焚き火を囲んで──
リリィ「……ありがとう、ヨシオ。魔法、見せてくれて。おかげで、大事なこと……思い出せた」
ヨシオ「……俺も、あれがなきゃ何も気づけなかった」
リリィ「ふふ……じゃあ、魔法のお礼に、これ」
──リリィがそっと、ヨシオの頬に口づけした──
ヨシオ「!?!?!?」
リリィ「……内緒、だよ?」
──エリュとウケールが、焚き火の奥でこっそりガッツポーズをしていたことに、ヨシオは気づかなかった──
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