第26話『ボケか、バトルか、鍋のなか──』
──幻想厨房──
それは“魂の味覚”が問われる、異世界でも類を見ない不可思議な空間。 空に浮かぶは巨大なフォーク、宙を舞う食材、そして意味の分からない“鍋”が3つ。
リリィ「ま、また変なところ来ちゃったね……」
ヨシオ「完全に料理番組と異世界が衝突した感じだな……」
そこに突如、空間を裂いて現れたのは──
???「我こそは料理魔神《クック=デス》! この試練を越えられるか、貴様ら!」
エリュ「名前がすでに終わってる……」
◆
■試練内容:各自、“想いを込めた料理”を一品提出せよ。評価基準は“愛”と“味”。
ヨシオ「愛ってなんだよ!? そっちの試練の方が重いぞ!?」
◆
──調理開始──
ヨシオは見よう見まねで鍋に野菜を放り込む。 その隣ではリリィが真剣な眼差しで包丁を握っていた。
リリィ「……ねぇ、ヨシオ。料理ってさ、想いを込めるって、どういうことだと思う?」
ヨシオ「……たぶん、“誰かのために作る”ってことじゃないか?」
リリィ「ふふっ、そっか……じゃあ、わたし……」
リリィはそっとヨシオの方に体を寄せ、肩に頭を乗せた。
リリィ「ヨシオのために、作るね。心込めて……」
ヨシオ「……お、おう……なんか、近くない……?」
リリィ「え? そう? 近い方が……気持ち、届くかなって」
その距離、数センチ。 ふわりと香るリリィの髪、頬に感じる柔らかさ──。
ヨシオ「……(この試練、もしかして天国では……)」
リリィ「……あのさ。終わったら、少しだけ……二人で話そ?」
ヨシオ「……ああ」
◆
──審査──
料理魔神《クック=デス》は、一口ヨシオの鍋を食べ──悶絶した。
クック=デス「う、うまァァァァい!! この“無知の味”が逆に純粋ッ! 魂の初恋のようだッッ!!」
次にリリィの料理。 一口で、魔神は涙した。
クック=デス「これは……恋……愛……重っ……重いィィィ!! でもうまい!! そして……惚れる!!」
■試練、突破──!
鍋が光を放ち、転移ゲートが開いた。
◆
──その夜。
キャンプ地の森にて、ヨシオとリリィは並んで腰を下ろしていた。
リリィ「……今日ね、ちょっと本気出したんだ。ヨシオのためにって思ったら、手が勝手に動いてて……」
ヨシオ「俺、料理下手だけど、なんか嬉しかったよ。お前の味……ちゃんと分かった気がする」
リリィ「そっか……じゃあ、もう少しだけ、伝えてもいい?」
リリィがそっと顔を近づけた。 ヨシオの頬に、柔らかい唇が触れる。
──ちゅっ。
リリィ「……今日だけは、わたしのこと、ちょっと女の子として見てね」
ヨシオ「……お、おう。むしろ、見ざるを得ない……!」
◆
夜空に輝く星の下、ヨシオの冒険は、少しずつ色づいていく──。
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