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勇者を利用する者たちの冒険  作者: とり飼ジン
魔帝界 篇

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第174章 自分が決めた事


 結界が消えたことで幹部は動き出す。

勇者たちがいる場所とは違う場所で幹部たちは魔帝界の住人を集めていた。

クキチが作った通信蝙蝠でそれぞれが連絡を取っている。


 ステンバーは城の回りの人たちを集め、アウラと連絡をしていた。


「勇者がうまくいったようだな」


『ええ、さすが』


「また閉じるかもしれん。その前に」


『そうね』


 ステンバーは空間を開いて魔帝界の住人を地上界へと誘導する。

人々は心配や困惑、懸念などありつづも応じる。

入って行く列の中から一人が抜け出してステンバーの元へと近づく。


「君は幹部の一人だな」


「アナタは確か、オルガの」


「はい。アイツの身内のジョセフです」


「オルガな遠くの方の人たちを助けているはずだ」


「では勇者は?」


 ステンバーはジョセフの言葉と心配する表情を見て何となく理解した。


「勇者はアラシュと戦って追いこんでいるはずだ。 その証拠に先ほどまでこの世界を包んでいた結界が壊れた」


「よかった。 彼らも無事なのだな」


「無事とはいかないと思うが。そろそろ終わらせないと」


 遠くの方で最初の落下が始まった。



 ●●●



 ブラックエンティドラゴンは暴れる中でリリネッドがその状況を見つめる。


「なにボケーッとしてんだ! お前も戦え!」


「でも悲しんでる」


「ああ?」


 ブラックエンティドラゴンの心の声を聞く。


『いやだ、暴れたくない。もう死なせてくれ!? オルガ、すまない』


「わかった」


 リリネッドは剣を強く握りしめてブラックエンティドラゴンに向かって走り出す。

勇者パーティーも動き出し、本能的にサイガも動く。

ブラックエンティドラゴンが紫の炎を吐く、ナギが刀を抜き刃に猛烈な炎を出し止める。

続けてシンノスケが両手でバフ魔法の魔術を溜めた塊りをリリネッドに投げて体に溶け込む。

それを見てサイガが走るリリネッドに前に立ち、近づいたところで掴んでブラックエンティドラゴンの真上へと投げ込む。


 リリネッドはちょっとだけビビッたがサイガを信じて飛ばされる。

クロウはブラックエンティドラゴンの動きを魔法の鎖で止める。


『俺を止めてくれ!!』


「剣の人、失敗したら捨てるから!」


 リリネッドは剣を構え振り被る。刃はブラックエンティドラゴンの首を通り斬り、地面に着地する。


 斬ったあとリリネッドはすぐにブラックエンティドラゴンの方を確認する。

ブラックエンティドラゴンの首は斬りと落とされずにちゃんと繋がっていた。


 ブラックエンティドラゴンに掛けられていた魔法が解かれ倒れ込む。


 そこいるみんなが気が緩んだ時、アラシュが復活し、リリネッドは後ろから掴まされてしまった。


「目的は果たした」


 アラシュはリリネッドに何かを流し込んだあとで横に飛ばし倒す。


「怪物の王は肉体を作り、クキチは先代の魔帝王の命の球(コア)を使い、私が生まれた。怪物の王は言った。 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()にと。 その後、クキチによって怪物の王の(めいれい)が消え、クキチの言われた通りにやって来た」


「で、リリネッドに何をした。てか、何で動けるてめぇ~の命の球(コア)は」


 クロウが目線をリリネッドに向けながら顔はアラシュに向けていた。

アラシュは真剣な目で言う。


「私は言われた通りにした。そして私がやりたい事をしました」


 アラシュの体が零れ落ちる砂の様に消えかかって行く。


「幹部はみな王が選んだ異種人。」


アウロは異様な生き物・黒く塊(こくつちくれ)。滅びゆく者達との繫がりを。オルガはドラゴンとの繫がりを。ルギアラは天空界との繫がりをリヴァナラは人との繫がりを。ヴォンズは深海底界人との繫がりを。ヴォワゴレレは魔帝界と人を繋ぐために。デラーズは研究と知能を買い国の発展などの為に。ロヤアマーンは犯罪者を寄り添うために。ステンバー は」


 アラシュが最後まで話す前にクロウが叫んで止める。


「何が言いたい?」


「魔帝王と戦うなら覚えておけ! 彼は魔帝界を救うために動いていたことを」


 アラシュが消えかかる前に、クロウが魔法で消えかかる体を遅くする。


「俺の質問に答えろ! リリネッドに何をした!?」


「神の軌跡を消した!!」


「「「「 !!? 」」」」


「ん? それってなに?」


「君の不死身を消した。魔帝王、いや兄と話すなら必要ないだろう」


 アラシュはクロウが掛けた魔法を弾き消した。


「勇者よ、本当の黒幕はクキチの様な三下ではないぞ」


「え? それって……」


 足から崩れ、体が落ち、腕を崩れていく


「私はお前を知っているぞ。未来を見た。頼むぞ、リリネッド」


 アラシュは本当に生き灰も残らず消えていった。

クロウが持っていた命の球(コア)も消えた。

タイミングよく都合がよく、そして決められたかの様に消えた。


 リリネッドは急に頭を抑え始めたと思ったら嘔吐してしまう。

シンノスケが近寄り背を撫でる。


「大丈夫ですか?」


「ごめん、ありがとう。 でも、もう大丈夫。それに時間はないよね」


 城の周りに隕石が落ち始める。


「早くこの界から出るのじゃあ!」


「そうですね。でも、どうやって?」


「ハハハ、手詰まりだな」


とそこに幹部が勢ぞろいし始めた。


「親父……」


「オルガ、今は」


「わーってるよ」


 幹部は皆、リリネッドの前に横並びに立ち、そして片膝を付き頭を避けた。


「うっえぇ!!」


 幹部の皆がまるで王様に下げるように綺麗な姿勢だった。

ルギアラがみんなの代表として頭を上げて口を開く。


「勇者、君の力。いや、君のその剣ならあの隕石をどうにかできるのではないか? いや、如何にかしてくれ。最後の希望だ。もしこの世界を救ってくれるのであれば魔帝王を共に立ち向かう手を貸す。ここにいる幹部全員がだあ!!」


「マジかよ」


「信用は……。まあいいでしょう。あとでで」


「兎に角、それじゃ~やろうぞ! リリネッド!」


 リリネッドはアウラに近づく。

アウラは震えていた。リリネッドはそっとアウラの肩に手を置く。


「大丈夫、頭を上げて」


「リリネッド」


「アウラ、お願いがあるの」


「ん?」


 リリネッドはアウラの耳元で何かを囁き終わるとステンバーが聞いていたのか動き出し、リリネッドを除く、クロウ達を木の根っこの触手で体を巻き付かせる。


 クロウがどかそうとしたが体に印が浮き出て使えなくなっていた。

シンノスケや、ナギ、サイガも動こうとしたが他の幹部がそれを止める。

と同時に4人の足元に地上界へと行く空間を開けた。


「ごめんね。みんなまた逸れちゃうけど」


「おい! リリネッド!!」


「でも今回は私が選んだから、許して」


 口角を上げてリリネッドはみんなに伝えて4人は魔帝界から出て行った。

残った幹部メンバーとリリネッドは細かい隕石を無視して城に向かっている大きな隕石に目線を向ける。


「アラシュって人から過去を見たよ。クキチって人を思い出した」


「ああ、運命は面白いよなあ~。俺はお前の過去を見た。 勇者リリネッドよ。お前がこの世界を救わないで誰が救うんだ!」


 リヴァナラは言った。


「(私も観たけどね。今は黙って置こう)」


 ヴォワゴレレはそう思った。


 ブラックエンティドラゴンは起き上がる。


「ドラゴンさん、力を貸してください」


「ああ」


「親父、終わったら話をするぞおお!!」


「ああ、わかっている」


 リリネッドはブラックエンティドラゴンの上に乗る。

そこにザクタマは猫の姿で隠れていた。


「アナタも手を貸して」


「にゃ、にゃあ」


「よし、行くよ!! みんな!!」


 降り注ぐ隕石の中、滅びゆく世界の中、命を狙おうとした者、利用した者達、リリネッドをどうにかしようと企んだもの達の世界を救うためにリリネッドは勇者の名を胸に今、動く。


 自分の意思で動いた。



 ●●●



 クロウ達は地上へと戻って来た。

一行が悔しさと後悔などが湧き上がっている中、サイガは素の顔になる。


「さて、結果はどうであれ。戻れたな」


「ああ?」


「すまない。君たちを見つけ次第、こうなる事になっている」


「「「 ん? 」」」


 その瞬間、数百体の兵隊がクロウ達を囲んだ。


「な、なんだ!!」


 兵隊の軍隊から偉そうな者が3人前に出て来て、クロウ達の話しかける。


「私は、中央王国1番隊隊長の()()()。君たちを拘束する。そして死刑を執行する」











 魔帝界篇 完





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