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勇者を利用する者たちの冒険  作者: とり飼ジン
魔帝界 篇

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第169章 一喜一憂


 クロウとタツヤとの戦闘は50分ぐらい続いた。


「全く、君との戦闘にももう飽きたわ。それそれ終わらせよかいな?」


「ああ!! 何を!」


「何を? それキミの口癖かいな?」


 タツヤはクロウを押し倒し、膝で首を押さえつける。


「さて、この茶番は終わりやわぁ!」


 タツヤはクロウに首を圧し折る。

クロウは水風船の様に割れて液体を散りばらける。

リリネッドが目を大きく開き、タツヤが一瞬にして前に立ち、掌を顔の前に出して止める。


「そう、瞳孔を開きな。慌てるな、よく見ろ」


 リリネッドはクロウの遺体を見ると魔力が少しづつ消えて行くのが見えた。


「そやさかい、その剣を下ろしてくれへんかいな?」


「え?」


 リリネッドは無意識で剣を手元に戻し、その刃をタツヤの首筋に向けていた。


「あっごめんなさい!!」


「そないな事はどうでもええ、クロウがおらへんあいさに来る前に、君に話さなあかんことあるんや。疑問に思わへんかったかいなあ? なんで、世界は勇者を平和をもたらす者と思うんか。 なんで、僕やジミニ―がまだ生きてるんか。 なんで、怪物の王が1000年物を倒すこと出来へんかったのか」


「(少しだけ、気になったけど) うん」


「ほな~、勇者の話をしたる」


 爽やかなイケメン男はリリネッドにそう言った。




 ●●●



 クロウはクキチを追っていた。


「(リリネッドの方に向かわせた分身体が消えた?) さすがに元勇者パーティー相手には分身体では勝てなかったか」


「な、なぜ、追ってくるんだ!?」


「お前が逃げるからだ、ボケが!!」


「(確かアイツ、勇者の仲間。 ならいい実験材料になりそうだが!!)」


 クキチは懐から掌サイズのフィギュアを後ろで追ってくるクロウの方に投げる。

投げたフィギュアは実体化しバケモンの様な姿となってクロウに襲い掛かって行く。


「クキチという名前、アナグラムかあ? 組み替えれば『菊池』と読めるが。お前は500年前の姿からまるでなにも変わっていない。それはお前の能力の力なのか?」


「お前も!! まさか!!」


「その先を口に出せるかどうかで誰の手先かわかることだ。でも、今はそんなことはどうでもいい。俺は今は、お前を倒したい」


「いやだよ。まだ。勇者の体を手に入れてないんだから」


「てめぇーの目的は知らねえーが思い通りになると思うなよ!!」


 クロウは杖を取り出して火、水、風、土の4つのエレメントを放ちバケモノを一瞬で消し去る。

さらにクキチの前に移動し、ただの拳で殴り壁に叩き付ける。

倒れ込むクキチは口角を上げると同時に体がぐにゃぐにゃと動き出しゴムの様にクロウの体に引っ付き、絡みつき、包み込んだ。


「ふざけるな!! 出せや、コラァー!!」


 袋の中に閉じ込められた様になったクロウはジタバタしたが出る事が出来なかった。


「移動魔法も発動が出来ない。魔力自体を無効化してやがる。あの野郎(クキチ)、ただの科学者しゃないんだな」


 クロウが閉じ込められた中の外でクキチが話しかける。


「君が転生された人物だという事が分かった。それはそれとして」


 クキチの横にアウロがよっくりと近づく。


「アウロ、コイツを見張っていろ。もし怪しい行動したら君の毒を使ってくれ」


「はい」


「君の命は僕が救ったんだ。その恩を忘れるな。僕は君の理解者だ」


 そう言ってクキチはその場をアウロに任せて離れる。

アウロは右腕を上げて触手を伸ばすクロウに巻き付かせる。


「何もするな、時間が来たら出してやる」


「その声は、リリネッドの友達を名乗った奴だな?」


 アウロは包まれたクロウの方を見つめ話を聞いていた。


「あんな純粋で無垢なリリネッドを騙して仲間を懲らしめるとか、友達がそんなことをしていいのかなぁ~?」


 歯を食いしばり目線を逸らし、口を開く。


「仕方がないだろう」


「ああ?」


「私がこうして生きていけるのはアイツが居たからだ」


「自分の命の為ならたった一人の友達を裏切れるのか? 友達って簡単だな」


 左手の拳を強く握り、地面を蹴りって叫ぶ。


「うるさい!! お前に何がわかる!!」


「わかんないよ。 友達を裏切ってまで自分の命を守ってのが」


「もういい、もう遅いんだ。私はもう取り返しがつかない事をしてしまったんだ。もう無理なんだ。アイツの命令を聞かなければ」


「……。」


 身動きの取れないクロウはアウロの叫びを聞きながらその場に座り込む。


「そうか、やっぱりアイツがすべての元凶か。 アウロだっけか? これだけは覚えておけよ」


「ん?」


「俺らは勇者の。いや、お前らが知る勇者を超える勇者のパーティーだってことを」


 天井から側近のトータルをが倒れながら崩れて落ちて来た。その上にはシンノスケがいた。

左半身が半分吹き飛んだ状態のシンノスケは涼しい顔でトータルの倒した。


「この言葉は貴方のお言葉ですよクロウ。ヤレヤレ、何をしてるんですか?」


「よう、シンノスケここから出る為に手を貸してくれ!」


「そうしたいのは山々ですが体が半壊しているんですよね。見えてないようですが」


 クロウは寝っ転がりながら足を組み外の様子を魔力探知で理解する。


「そうか。ナギは?」


「戦闘中の時に倒れているのが見えました。多分、もう起き上がって本能で動きまくって」


 シンノスケは体をゆっくりと再生しながらわずかに感じるナギの魔力の方に目線を向けた。



 ●●●



 アラシュと残った幹部メンバーがリリネッドの方へと向かう場所にナギが大回転しながらアラシュの首を狙った。


「油断じゃな!! ほれ、貰ったぞい!!」


 ナギの刀がアラシュの首を飛ばした。

ナギが斬った場所から血しぶきが光の塊となりナギに向かってビームの様に打たれたが刀で弾くも顔が無いアラシュの体は動き出して手をかざす。

翳した手のひらから強力な雷撃が放たれると同時に重量で体が重くなり動き無いところに体を貫通するほどの高圧量のビームが打たれた。


「ぐっわああああ!!!」


 ナギは重い腕を上げて刀から魔力を放ちその場から少し動く。

重力から解放されたナギは貫通した体に魔力で塞ぐ。

態勢を整えると同時に幹部たちが襲い掛かる。


「これじゃ、コレじゃあ!! もっと楽しませろ! もっと暴れさせろ!! もっとワシは " ナギ " じゃあ。 ここで負けたらリリネッドの横に立てぬわ!!」


 ナギはルギアラ、オルガ、リヴァナラ、ヴォンズ、デラーズを相手に、そしてアラシュを相手に、たった一人で立ち向かう。



 ●●●



 がちょっと待て! ナギが一人で戦いそうなった時のその瞬間の事。


「ガハハハ、久しいなあ、少女の剣士!」


「はあ!?」


 それはバカの様で無鉄砲などこまでも届きそうな声をした男のバカが一人立っていた。


「お主は!!」


 その男はオルガの拳を簡単に受け止めデラーズの再生よりも素早く斬りつけ、リヴァナラの吸収を無効化してルギアラの剣裁きを受け止めるほどの実力を兼ね備えていた。


「さて、勇者・リリネッドはどこだ!! そしてここはどこだ!!?」


「サイガ! お主、サイガではないか」


 以前、リリネッド達と共にドラゴンを使って悪さした者達を共に戦い止めた者である。

他にも深海底国の時も手を貸してくれた剣士の冒険者である。


「なんで主がここに?」


「ガハハハ。うん、わからない。気が付いたこの辺を彷徨って魔力が強い方へ歩いていただけだ」


「相変わらず、バカじゃの? まあいい、少し邪魔じゃが奴らを正気に目覚めさせるのに手を貸せ!!」


「よくわからないがの首がない奴をどうにかすればいいのだな。ああいいわかった!!」


「マジで、理解が気持ち悪いがよろしくじゃあ!!」


 思わぬサイガとの再会。

ナギは勝ち筋がさらに見え始めた。



 ●●●



 タツヤの話しが終り、リリネッッドの修行も終わった。


「それが僕が戦いの中で手にした力だ。それをどう使うかはキミ次第だよ」


 結界は壊れ外に出る二人。


「予定より意外と早いけど、どうする?」


「仲間の場所に向かうよ」


「そうか、気を付けて。僕は見守っているから」


「ありがとうございました」


 リリネッドはしっかりと頭を下げて仲間の元へと走り出す。


「あっ、リリネッド」


「はい?」


「逆方向じゃない?」


「えっ!?」


 リリネッドは確実に仲間の方へと向かうのであった。


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