第150章 武道僧の蓄積
リリネッド、クロウの前にヒロコと名乗る記者が立つ。
「貴方が勇者ですね。まさかここで会えるとは思いませんでした」
「記者だあぁ? というかお前、冒険者か? それにしても」
「フフッ。 見えませんよね」
「その記者さんがどうしたの?」
ヒロコは目を開き二人の間に入り込んでリリネッドの方へと向き合う。
「勇者・リリネッド。いろいろ聞きたい事がありまして。何から話そうかな。まずは貴方の出生の事なんですけど……」
とヒロコが早口でまくし立てる感じで喋りだしているとヒロコの仲間のショーヒダが顳顬を軽くど突く。
「また、目を輝かせやがって。勇者、久しぶりだな機関車事件ぶりかな?」
リリネッドは首を傾げ、眉を寄せる。
「今は話をしてるところ。邪魔しないで」
「うるせい。俺達は、勇者に会いに来たわけではないだろう? 目的を間違えるな」
「でもこんなチャンス」
「次は止めない。" ライ " を元に戻すために時間がないんだよ」
ショーヒダは手元の拳銃を見る。
「ショーヒダ……。うう~~~ん!! わかった! でも本当に次は止めないでよ」
「ああ。 じゃ~な、勇者とその仲間」
「クロウだ。勝手に現れて勝手に行くのか? 勝手な奴だな」
「そうだな。俺達は勝手な奴らさぁ。勝手に調べて、勝手に辻褄を合わせる。それが記者さあ」
「へぇ~」
クロウはあまり納得してない感じで適当に返事を返す。
ショーヒダとヒロコその場を離れる。最後にヒロコはリリネッドの方を見て言う。
「そうだった勇者さん、伝言を頼まれてました」
「伝言? 誰から?」
「ブラッド・ム―さんからです」
「え」
驚くリリネッドのその表情はクロウが見たことがない顔をしていた。
「リリネッド?」
「あ、うん。なんて?」
「『元気でと、ごめん』。 ちゃんと伝えましたから。では、また会いましょう」
ヒロコはそう言って立ち去っていく。
「ブラッド・ム―って誰だ?」
リリネッドはクロウの問いを聞いていないのか答えなかった。
俯き何かを考え込むリリネッドにクロウはもう一度、声を掛ける。
「おい、リリネッド!?」
「え!! あ、何?」
「ハァ~……。ブラッド・ム―って誰だよ」
「ん……。なんていえばいいのかなあ。私の養い親かな」
「養い親? そう言えばお前の過去の話とか聞いた事が無かった。まあ~俺も話した事ないけど」
「別に聞きたいなら話s」
二人が話しているところにシンノスケが帰って来た。
「何ですか? 少しくらい空気ですが。二人はもう買い物を終えたんですか? 僕はいろいろと買い込んでしまいました。クロウ、不思議な袋を出してください」
「ああ、いいよ。てか、ちゃんと正式名称で言えよなあ~。(コイツ、話を逸らしやがった。ワザとだな。そう言えば、コイツはリリネッドの過去を見たって言っていたなぁ~。その話も逸らさられた) 」
睨むクロウに笑顔で返すシンノスケ。
「そう言えば、リリネッド」
「ん?」
「美味しそうな、チョココロネがありましたよ」
「本当にどこ?」
「あっちです」
シンノスケが差す方に走り出すリリネッド。
「シンノスケ、お前、なんで」
「クロウ、自分も話したくない癖に相手の事を知るとするのは失礼ですよ」
不服な表情のクロウは椅子に背をくっ付けて肘を付く。
シンノスケはリリネッドの後を追う。
「(申し訳ございません、クロウ。リリネッドの過去の苦しみは僕だけが感じてればいい。話すことは彼女の苦しみを再発するだけ)」
シンノスケは去り、クロウは仏頂面な表情で座っている横に何も知らないナギが帰って来た。
「ん? どうしたんじゃあ? なんじゃ?」
●●●
パン屋の外から見えるパンを眺めるリリネッド。
魔帝界のパンはどくどくな形が多いなかで、チョココロネが一番きわどい形をしていた。
「これ美味しいのかな~。美味しそうだな~。食べたいなあ~」
キラキラした表情で窓越しで見ていると、知らない男が近寄って来た。
「君、可愛いね」
「ん?」
「俺、タル。君は魔帝界の人ではないね」
タルは自分に自信があった。
●●●
タルはある日、力に目覚めた。
それは好感度のパラメーターが見えるという物だった。
好感度のパラメーターはタルしか見れない異能の力である。
その力を使い、いろんな人と交流を持ちそして女性に困らない人生を送っていた。
「(最初は戸惑ったし扱いも困ったけど、使いこなしたら。フッ……。)」
タルは次の狙う女性を探していた時、リリネッドに視線が入った。
「(マジかよ、かなりの大物! 可愛い。他界の人間か? いろいろ聞き出してやろうかな。ベッドの上で)」
タルはリリネッドに近寄り話す。
「君、可愛いね。(近くで見るとやっばいい。上目遣いも両目の青い目……でもよく見たら髪で隠れた左目の色少し……)」
「何か用ですか?」
タルはリリネッドの顔を見ていたことで好感度のパラメーターの力を使うのを忘れていた。
力を使い好感度のパラメーターを生み出してリリネッドを見る。
メーターは0~100までの数字がありその都度に自分の好感度が見れる。
リリネッドのタルへの好感度のメーターの針は38度を差した。
「(まだまだ、だか。すぐに上げられ…。ううん!!?)」
リリネッドの好感度の針は79度に上がった。
「(な、何で!?)」
また リリネッドの好感度の針が動き次は、21度になった。
次に98度、54度、10度、36度と針はぶらぶらと左右に動き続けた。
「(こ、こんなの見たことがない!! な、なんだ! この動きは!! いや、そうか! わかった!! こ、この女は!!)」
タルはリリネッドを見て恐れる。
「(コイツ、人への興味がないのか!! いや違う、普通の奴なら決まった角度で止まりその都度上がったり下がったりと一度づつ変わる物。それなのに、この女は尋常じゃないほどイカレてやがる!!)」
黙りつづけるタルに、リリネッドは無視して去ろうとしたがタルが腕を掴む。
「(こんな攻略したことがない女、そうそう手放すかよ) なあ、少しだけ話さない?」
強く握るタルの腕をシンノスケが掴み返す。
「な、なんだお前!!」
シンノスケは笑顔でリリネッドに話す。
「すみません、遅れて。リリネッドは先にパン屋に入っててください」
「うん」
「お、おい、待て!」
リリネッドがパン屋に入ったのを確認したあとシンノスケはタルの顔面に裏拳をくらわせる。
「くうわ!」
続けて首根っこを掴んで裏通りに移動させて蹴り上げる。
蹴りをくらったタルは転び地面に倒れる。
「こう言った事は僕のやる事ではないんですけど。すみません、八つ当たりさせてください」
タルは起き上がりエネルギーを纏う。
「他界の人間が俺に勝てると思ってんのか? テメェーの女は俺が貰う! あんないい女、躾けてやる」
「そうですか、先に僕が貴方を躾けてあげますよ」
タルは好感度メーカーを生み出し、シンノスケのメーターを確認する。
「(こう言った時にでも使えるんだ。低ければ低いほど舐めてかかってくるもの)」
シンノスケの好感度のメーターの針は大ブレした後、吹き飛んで壊れた。
「(な、な、なんだとおおおおうう!!)」
シンノスケは両手を硬化して瞬発力でタルを殴り続ける。
その拳は全体にぶつけるがその中でも顔面に多く攻撃して行く。
タルが殴られ続けられフラフラとしたところに回し蹴りの足に首元を引っかけて廃墟の壁に投げ飛ばす。
「ああ、神よ。この哀れな罪びとをお許しくださいませ」
タルは壁に寄り添い倒れる。
「僕としたことが少し、やりすぎました。ヤバいヤバい」
そう言ってシンノスケはタルの傷を治す。
治したと同時にハッと起き上がる。
「な、なぜ、助けた?」
「こう見えても僕は元僧侶なので」
「そうか……なら、俺を傷付けられないって事だよなあ!!」
タルがメリケンサックを手に付けてシンノスケの顔面に殴りかかる。
「そうですね、でも」
タルの攻撃よりも素早く顔面に攻撃をするシンノスケ。
「ぐぅはわ!!」
「結構、魔力使うのでやりたくなかったんですけど、貴方なら心置きなく使えます」
「ぐわ?」
何本かの歯が落ちながらその意味が分からないタル、そのタルを笑顔で見るシンノスケ。
治して殴る、治して殴るを続けていくこと10分。
最後に完全処置して再起不能になったタルは倒れる。
「さてと、女性にだらしないのは仕方がないとして。良き女性には手ごわい男性が付き物ですよ。誰かさん」
シンノスケは颯爽とパン屋に向かう。




