第9話 ダンジョン
俺は手にした1枚のカードを眺めていた。
【名称】 感情のダンジョンコア No.1
【クラス】神器
【詳細】
様々な世界の感情から作られた負のエネルギー又は正のエネルギーを集約し消費する。管理者:旁宗作
早々に新たなダンジョンを作らなければ、他のダンジョンコアへの負担が大きくなる。他の皆と相談した結果、ダンジョンコアを使用する忌避は薄まったが、問題は何処にどんなダンジョンを作成するかだ。
ダンジョンは適切にさえ管理できれば、人々を魅了する場となるだろう。例え、死の危険があったとしても今までと比べれば格段とマシになる。恐らくではあるが、ダンジョンコアはこの世界の広さやナンバリングから最低でも3個以上はあると考えていい。
「といっても管理上、最初の一つはこの街で作ることは確定なんだけどな」
とりあえず、起動してみないことにはどんなダンジョンが作れるのかもわからない。もしかしたら、俺の手が加わることなく勝手に作られるかもしれない。
「よし!」
気合を入れて、ダンジョンコアを実体化させる。すると、ひし形のキラキラした石が俺の目の前にい浮かんでいた。思わずそれに指で触れると、頭の中に膨大な情報が流れ込んできた。そして、ご丁寧にも音声付きの音声が頭の中に響いた。
『管理者認証官完了』
『魔物の種類を選んでください。1:植物系 2:食肉系 3:魚介系 4:アンデット系 5:虫系 6:その他』
なるほどなるほど。これは食料問題解決に役に立つかもしれない。ここはやはり食肉系一択だな。野菜や穀物はなんとかなるが、タンパク質の確保が一番現状では難しいからな。定期的に肉を得られるというのは有難い。
『ダンジョンの階層を選択してください(10~100階層)』
魔物がダンジョンから溢れるのを少しでも防ぐためには階層が多い方が良いだろう。それに、生成される魔物の強さは階層が下になればなるほど強くなる仕組みらしい。階層が多ければ多いほど、一階層毎の魔物の強さの違いは緩やかになる。つまり、討伐する際に魔物の強さのギャップによる死亡率を減らすことができる。そのため、MAXの100階層を選ぶべきだろう。
『正のエネルギーを使用しますか?』
正のエネルギー、これがこの世界にどれだけの影響を及ぼしているのかは正直分かっていない。ただ、この正のエネルギーを消費することで得られる特典は思っていた以上に魅力的だ。
「これならば、思ったよりもダンジョンで人が死ぬことが格段に減る!」
得点は数十種類にも及んだが、負のエネルギーが溜まりすぎるとよくないのと同様に、正のエネルギーが少なすぎても良くないだろう。だから、今は必要最小限の機能さえあれば良い。幸いにも、後からでもこの特典は変更することが可能の様だ。
他にも細かい質問がしばらくの間続き、数十分後、ようやくダンジョンの設定が完了した。
「それでは今からダンジョンを設置しようと思います」
俺はまず、町の門から数百メートル離れた場所の木々を切り開き、直径100mほどの更地を作った。今はその場所に全員集合しており、これから起こることを固唾を飲んで見守っている。
『ダンジョンをここに設置しますか?』
更地のちょうど中央を中心として、ダンジョンの設置を決定した。
「「おぉぉぉー」」
ドンっという轟音と共に、見上げるほどに巨大な漆黒のタワーが出現した。直径は20mといったところであろうか。しかし、ダンジョンはこの外観通りという訳ではない。空間が歪められているのか、実際の中の広さはその数十倍にも及んでいた。それに、2階層への階段は下向き、つまり地下だ。上に登るわけではない。それなのに何故、わざわざ上に伸びるような外観になっているのか……。
そんなことを考えていると、ドスドスと何かが近づいて来るような音を耳が拾った。
「ねえ、おにいちゃん、私嫌な気がするんだけど」
「ああ、俺も同じ様なことを今考えていた」
音のなる方角、それは明らかにダンジョンの入口から聞こえてきていた。
「皆、戦闘準備‼」
全員が一斉に入口から距離をとり、円形で囲むようにして獲物を各々取り出した。非戦闘員は、俺の後ろで待機だ。
その足音は1つではない。臨戦態勢を整えて数秒もたたないうちに、ダンジョンの入口から無数の赤い点が見え――――白い魔物の集団が姿を現した。
「コケェェェェ‼」
「皆、嘴の突進攻撃にさえ気を付けていれば問題ないです‼ 」
「「うぉぉぉぉぉ」」
それから2時間、休む間もなく死闘が繰り広げられた。今日の晩飯は、焼き鳥で決定だ。
「ソウ兄、お疲れ様」
「ミハルもお疲れ様……、皆大きな怪我もなくてよかったよ」
まさか、負のエネルギーがここまで溜まっていたとは思わなかった。定期的にダンジョン内で魔物を間引かなければ、今みたいにあふれてしまう恐れがある。ダンジョン内で戦闘するならまだしも、ダンジョンの外で戦闘になってしまえば特典の恩恵を受けることが出来ない。それは正に致命的だ。ダンジョンを管理していくうえでまだまだ様々な対策を考える必要がありそうだ。
「ところで、このダンジョンに名前は付けたのですか?」
「ああ、『肉の塔』だ!」
俺が自信満々に宣言すると、ミハルは苦虫を嚙み潰したような表情をしていた。一体どうしたのかと疑問に思っていると、トテトテと少し離れた場所にいたマリがこちらへやってきた。
「ねーねー、おにいちゃん」
そういえば、マリの魔法が一番多くの魔物を倒していたな。きっとそのことを褒めてもらいたいのだろう。最近大人びてきたかなと思っていたが、やはりまだまだ子供っぽいところもあるもんだ。
「流石にその名前はちょっと……」
俺はその日、枕を濡らした。
お久しぶりです。もはや迷走状態でございます……。ノリで執筆していると、こういう時困りますね……。




