第8話 天使像
私の名前はロウジ。分不相応ではあるが、フリーダムの町の町長をやらせていただいている身だ。町の住民たちは、元気よく本日も過ごすことができている。子供たちの笑顔も絶えず、皆やる気に満ち溢れている。そんな町民の姿を見ていると、自然と笑みがこぼれてくる。つい先日まではこんな生活を送れるようになるとは夢にも思わなかった。
俺たちは元奴隷だ。朝から晩までぶっ通しで働き、体を酷使する。そして、食事は美味しさなんてない動物の餌みたいなものだ。時には理不尽暴力を受けることもあった。最早、何のために生きているのかも分からなかった。死んだほうがマシだと何回も思った。しかし、いざ自殺しようとするも恐怖に押しつぶされ、実行に移すことはできなかった。未来への希望も何もないのに、死ぬのは嫌だった。だから、体調がどれだけ悪かろうと、処分されないために必死に働いた。そして、今日も1日生き延びることができたと喜んだ。とにかく生きることに執着していた。
そんな人生に終わりを告げる時が来た。
町の外から大量に迫ってくる魔物たち。奴隷以外の住民たちは恐怖し、俺たち奴隷を犠牲にして生き残ろうとした。俺たちは門の外へ強制的に出され、戦いを命じられた。しかし、戦いなんて専門外の俺たちが魔物に勝てるはずもなかった。どれだけ門をたたいても、再び町の中に入れてもらえることはかなわなかった。抵抗した奴隷の中には、兵士に切り捨てられる者もいた。この時ばかりは、もう無理だと、このまま兵士か魔物に殺されるのだと思った。今まで死なないように必死で生きたのに、こんな最後は嫌だと、こんな結末はあんまりだと人生を呪った。
しかし、そこに天使様が現れた。
私たちは促されるまま城壁から離れると、先ほどまで自分たちがいた場所が遥か地中に沈んでいった。これならば、町の中は先ほどよりも安全になっただろう。しかし、私たちの状況は全くと言っていいほど好転していなかった。しかし、見捨てられたわけではなかった。彼の言うとおりに木の板の上に乗ると、魔物が迫るスピードよりも速くそれは動いた。これだけでも十分衝撃的だった。しかし、それからも驚きの連続であった。目の前で、あっという間に町が完成した。城壁よりもさらに高くそびえたつ壁、それに囲まれたことでようやく安心することができた。
天使様はソウサクと名乗った。
ソウサク様は、兵士が持っていた剣よりも輝きを放っている素晴らしい武器を我々に提供してくれた。武器だけではない、武器と同等の輝きを放つ農具に、衣服に至っては全員分用意してくれた。
そして、ソウサク様は語った。ここは誰にも奪われることのない、自由の町だと。
この時、私は悟った。この偉大なるソウサク様と出会うために今まで必死に生きてきたんだと。
それからも、ソウサク様はあっという間に町が機能するようにいろいろと決めていった。また、子供達のためにと遊具なるものも作られた。私は特に、ブランコが気に入った。いや、子供ではないのだが、あの時は心が抑えられなかった。
これだけで終わりではない。ソウサク様は、我々に畑を与え、食べ物を与え、戦い方まで指導してくれた。
奴隷であった我々が、人間になった日であった。
その後、ソウサク様は我々に見返りを求めることもなく颯爽と去っていった。自分にはまだやるべきことがあるのだと。
あれから暫くして、我々はいつかこの恩をソウサク様に返すため必死に努力した。そして、その努力も実り、美しくて凛々しいソウサク様の像が完成した。我々にはソウサク様のご加護がある。あんなちっぽけな魔物なんかもう怖くなかった。時々、兵士たちがこの町にやってきたがすべて追い返した。あんな奴らにソウサク様から頂いたものをひと欠片でも渡すわけがない。
もう十分幸せだと思っていた。これ以上の幸せはもうないだろうとも思っていた。しかし、それは間違いであった。
ソウサク様の国の民にならないかと話をいただいた。それはつまり、我々がソウサク様と一緒に過すことが出来るということ。ソウサク様の成される伝説をこの目で見ることが出来るのだ。この時、幸せが限界突破していた。
「ふう……第1章はこんなものか。タイトルは『天使様降臨』でいいかな」
俺は、後世に伝えるためにソウサク様の逸話を本にまとめることにした。これは、ソウサク様の民となる者の義務であり、全人類の財産だ。
「さて、次は持ち運びのできる像を造らないと。あの像は流石に持ち運びできんからな。ソウサク様が迎えに来てくださるまでの間に、たくさん作って布教しなくては!」
【名称】 天使像
【クラス】?
【詳細】 信じる者は救われる
お読みいただきありがとうございます。
少し短めではありますが、あの町の町長が語り手です。
ソウサク教がそのうち全土を支配する時が来るかもしれません。




