第7話 男の子に女心は難しい
「あー、なんて綺麗な花畑なんだろう……」
本当ならミミと二人で見に来る予定だったのに、なんで俺は1人でこんな所にいるのだろうか……。最近ミミニ蔑ろにされているような気がする。昔は俺の後ろをチョコチョコついて回っていたのに、今ではその影を見ることも無い。
それもこれも全てソウ兄ちゃんのせいだ。ソウ兄ちゃんと出会ってからミミは変わった。ちょっと大人っぽくなったような気がするし、いや、それはそれで悪くないんだけど、ともかくミミは変わった。ソウ兄ちゃんが俺たちを救ってくれたことは間違いないし、俺たちを大切にしてくれていることも分かっている。勿論、ミハル兄ちゃんと一緒くらいには尊敬もしているし、憧れている部分もある。だがしかし、それとこれとは話が別だ。なにより、ミミのソウ兄ちゃんを見る目がキラキラしていることが一番許せない‼
「はぁ、とりあえず帰るか」
ここで愚痴っていてもどうしようもない。絶対ソウ兄ちゃんよりイイ男になってミミに振り向いてもらわないと‼
肩を落としながら帰っていると、視界の端に薄紫色のみつ編みが映った。あれはミミだ。こんな畑で何をしているんだ?
「お~い、ミミ。なにして……」
あれ? てっきり一人かと思ったら、隣にいるのはソウ兄ちゃんじゃないか。優しい笑みを浮かべながら何かを話しているソウ兄ちゃん。それを見つめる、頬がちょっと赤くなっているミミ。なるほどなるほど、こんな所で何をしているのかと思えば……ソウ兄ちゃんとイチャイチャしていたのか!!
許さない、もう俺は怒った。ソウ兄ちゃんには悪いが、ここはもう最終手段を使わせてもらうぜ。
「マリ! いるか!?」
「ん、バン?」
急いで城へ戻り、食堂へ向かうと案の定、銀のスプーンを手にしたマリがいた。この匂いはクリームスープだろうか? 相変わらず食欲旺盛な奴だ。
「食事中に悪い、ちょっといいか?」
「別にいいけど、どうしたの?」
「ああ、ソウ兄ちゃんのことで少し話しておきたいことがあって」
「おにいちゃんのこと?」
俺は知っている、ソウ兄ちゃんはマリに頭が上がらないことを。マリに、ソウ兄ちゃんが女にだらしないということを伝えて注意してもらおう。
「実は、さっきミミとソウ兄ちゃんがイチャイチャしているところを見たんだ」
「ミミと……イチャイチャ?」
「ああ、ちょっとソウ兄ちゃんって女にだらしないと思うんだ。男らしくないというか。だからマリから注意してくれないか?」
ちょっとマリの雰囲気が変わったような気がする。うん、やはり自分の兄がそんな男だって知ったら怒るよな。よし、これはいける。悪いなソウ兄ちゃん。
「……ふう。バン、それって見間違いじゃないかな?」
「いや、確かにミミとソウ兄ちゃんが仲良く話しているところを見たんだ」
「うん、でも、話している内容まで聞いたわけじゃないでしょ?」
「う、いや、確かにそうだけど」
「それに、ミミがおにいちゃんに恋をすることなんてないはずだから、バンはそんなに焦らなくて良いと思うよ?」
「な、ななな」
なんで俺がミミのことを好きなことがバレているんだ!? 今までバレない様に必死に隠していたのに。マリは俺の心でも読めるというのか?
「なーんのことだ。俺は別にミミのことなんて……」
「いや、態度でバレバレだよ? それで隠せていると思ったの?」
「くっ……。バレているなら仕方がない。ミミには黙っていてくれ」
「それは勿論言わないよ? で、そのさっきの話だけど、一度ミミに確認してみたら?」
「で、でも」
もし、ミミが本当にソウ兄ちゃんのことが好きだったら、今の俺ではちょっと……いや、ほんのちょびっとだけ勝てない。ミミの口から聞いてしまったら俺は立ち直れないかもしれない。
「絶対大丈夫だから。もう一度言うけど、ミミがおにいちゃんに恋をすることは絶対にないよ。私を信じて?」
「そ、そこまで言うなら」
あのマリがここまで断言するならきっと大丈夫なのだろう。もしかしたら、女の子って恋だの愛だのって話が好きらしいから、2人で色々話をしていて、マリは色々知っているのかもしれない。
「(だって、おにいちゃんは私の物ってミミ達には何度も言ってるからね)」
「えっ? 何か言ったか?」
「ん~ん、何でもないよ。ほら、そうと決まれば行動あるのみだよ。もう少ししたらミミも帰ってくるだろうし、私と一緒に下で待ってよう?」
「あ、ああ。一緒にって食事はもういいのか?」
「うん、いいのいいの」
よし、早速ミミが戻ってきたらさっき何を話していたのか聞いてみよう。
食器を片付けてくるから待っていてといわれ、大人しくドア付近で待つことにする。女を待つのも男の仕事だしな。
それにしても、あのスプーンってあんなに曲がっていたっけ?
暫くすると、ミミがホクホク顔で帰ってきた。幸いにもソウ兄ちゃんの姿は見えず、一人きりだ。
「ただいまー」
「ミミ、おかえり」
「あれ? バンとマリが2人でいるなんて珍しいね。なにかあったの?」
「ああ、ちょっとミミに聞きたいことがあってな」
「ん? 聞きたいこと?」
よし、聞くぞ。スーハースーハー、よし!
「あー、さっき、ソウ兄ちゃんと畑の前にいたけど何を話していたのかなーって」
「えっ? 何って植物についてお話してもらっていたの。ソウ兄って凄いんだよ! 何でも知っているんだ。この本もね、ソウ兄がくれたの!!」
「そ、そうなのか。よかったな」
どうやら、俺が思っていたような話はしていなかったらしいが、そんなにソウ兄ちゃんソウ兄ちゃんって言われたらやはり安心できない。ここはもう、このままの勢いで聞いてしまうか?
「な、なあミミ。もしかして、ソウ兄ちゃんのこと……その、す、好きなのか?」
「えっ?」
ああ、遂に口に出してしまった。マリは大丈夫って言っていたけど、もしも本当に好きだったら……。
「ち、違う、違うよ! そんな好きだなんて。た、確かに好きは好きだけど、それは信頼しているし尊敬しているっていう意味で、恋とかそっちの好きって意味ではないから! 私がソウ兄に恋をするなんてぜーったい、絶対ないから安心して! ね?」
「お、おう。そうなのか……」
良かった。ミミはソウ兄ちゃんに恋はしていなかった。それにしてもソウ兄ちゃんに恋をすることは無いから安心してか……。あれ? もしかしてミミって俺のことが好きなのか? は、そうか。だからマリは大丈夫だって……。
「じゃ、じゃあ、私はまだ勉強したいからまたねっ‼」
脱兎のごとく自室へ戻るミミ。きっと恥ずかしかったんだろう。なんだ、そうだったのか。もしかして普段のは照れ隠しという奴なのか?
それにしても、なんであんなに震えていたのだろうか?
「ね、大丈夫って言ったでしょ?」
「おっと、そうだった。マリも一緒にいたんだったな。ずっと黙って後ろにいたから忘れていたぜ」
マリはソウ兄ちゃんが女にだらしなかったわけではなかったから、安心したのか満面の笑みだ。仕方ない、ある意味ソウ兄ちゃんのお陰で、ミミの本心を知ることが出来たんだ。今回は許してやろう。
お読みいただきありがとうございます。
今話よりリメイク後からの新規の話になっております。これからも宜しくお願い致します。




