第4話 グレンと愉快な仲間たち②
ルーナ国から数キロ北上した所でそいつと出会った。
虎と獅子の双頭に大蛇の尾をもつ前兆5メートルは超える化け物だ。虎の牙は高温で熱されたように赤く輝いており、近くを通りかかった害獣をひと噛みするとそれは一瞬にして黒焦げになった。また、獅子の鬣は電気を帯び黄色く煌めいており、放電により他の魔物達を炭に変えていた。
「これは間違いなく新種っすね」
「ええ、見たことも聞いたこともないですわ」
「ふふ、中々の大物ね。絶対倒してやるわ」
「まずは遠くから牽制で様子見だな。あと、大蛇の目は絶対に見るなよ」
ソウサクさんから頂いた双眼鏡なるもので500m先を見据えながら各々が声をあげた。報酬に吊られているのか3人ともやる気は満々だ。まったく……俺も負けておれん。
他の魔物と合体している蛇の目は人を石に変えてしまうという話はソウサクさんから聞いている。どうしてそんなことがわかるのかを聞いたら、そういうことになっているとのことだ。俺には難しいことは分からんが、ソウサクさんがそうだと言うならそうなのだろう。
「まずはチョコとミントが遠距離魔法を——」
「グレンさん、それは無理そうっすよ。相手に気づかれたっす」
レンズ越しに魔物を見ると目が合った。獲物が見つかったことに喜んでいるのか一直線にこちらまで向かってきている。
くそっ不味い。あの速度では数秒でこちらに到着するだろう。
「大丈夫っす。こんなこともあろうかと既に準備は出来てるっす」
言うや否やトリゾウが魔物に向かって走り出した。これは本格的に不味い。
「おい待て!」
「止めてトリゾウ!」
「トリゾウ待ってください!」
各々が引き留めようと声を荒げるも、トリゾウは両手に持つ双剣を掲げてその歩みを止めない。
くそっ、失態だ。俺がついていながらなんてことを!!
魔物とトリゾウがすれ違い、勝負は一合で決した。
そしてそれは俺たちを絶望の淵に落とすのには十分な光景だった。
「あんの馬鹿っ!」
「絶対に許さない……」
「あいつだけは私の手で殺して差し上げますわ」
沸々と湧き上がる怒りの気持ちが俺たちを支配する。
もうこの怒りはあいつにぶつけるしか無い。
「いやー、一瞬で終わったっすね——って危ない! グレンさん何するんすか!」
空振りした渾身の右ストレートを引っ込める。
ちっ、急所を狙ったはずが外れたか。
「ト~リ~ゾ~ウ~く~ん?」
「ふふふふふ」
「ちょっと皆どうした——っ!!!!!!」
合掌。
チョコとミントのダブルキックが男のシンボルに見事命中し、トリゾウはその場で倒れ伏した。
改めて先ほどの魔物に目をやる。
魔物がいたと思われる場所には、紫色の泥状の物体が広がっているだけだ。暫くあそこには生物は寄り付かないだろう。
「自分の武器の特性を考えろ。強力な毒によって魔物が完全に溶け切ったじゃないか」
はぁ、折角ソウサクさんへ良いお土産が出来た思ったのに……。
「おい、あっちに魔物の集団がいるぞ」
暫く歩くとダークラビットリング(改)に100体程の魔物の反応があった。双眼鏡で覗くと視界一杯に魔物で埋め尽くされている。あれは虫型の魔物だろうか?
全長およそ2メートルで形は楕円形だ。茶色い甲羅で全身覆われており、日の光が当たってテカテカしている。速度も思った以上に早く、獲物を見つけてはカサカサカサカサ高速で動いている。俺ならば影を追うことをギリギリ出来るかどうかといったところだ。しかも面倒なことに甲羅は羽にも変形し、空を飛ぶことが出来ると来たものだ。
「これは厄介っすね。倒すことは出来ると思うっすけど、空まで飛ぶ相手に1体も逃さず狩りつくすというのは難しそうっす」
「なんだ、お前生きていたのか」
「ひどいっす!」
はは、まだ俺は先ほどの恨みを忘れてないからな?
さて、どう討伐するべきか。これだけの数だ、剣だけで相手にするのは時間がかかりすぎる。ここは完全に魔法の力が必要だ。作戦としてはまずはミントの土魔法で――。
「「きゃぁぁぁぁぁぁぁ」」
突然の絶叫に耳を抑え、声のする方を見るとチョコとミントが全身鳥肌を立たせながらも、指ですでに狙いをつけていた。全身から高度に練り上げられた魔力が溢れ出ている。
「おい、お前ら早まるな!」
「ふぁ、フレイムジェイル!!」
チョコが放ったそれは、俺も初めて見る魔法だ。
100体の魔物を囲うように炎の柱が昇り、次第にそれは一つの檻へと変化した。檻の中は想像を絶する熱さなのだろう。魔物の甲羅から煙が立ち上り、ひび割れ、所々が炭化してきている。不味い、これではさっきの二の舞だ!
「もういい。チョコ、もう十分だ!」
「まだよ! ミント!!」
「え、ええ、分かっていますわ。アースプレス!!」
「ちょっ」
ミントがこれまた聞いたことのない魔法を唱える。
ああ、なんてことだ。その魔法によってもたらされる結末を見るまでもなく、俺は諦めるしかなかった。
「あ、あああ……」
「ま、マジすか……」
周囲の岩石が上空に集まっていく。ものの数秒もしないうちに、魔物を覆っている炎の檻よりも広大な石の板が上空に出現した。そしてそれは重力に従い地面に向かって下降した。
落下の衝撃で地面が揺らぎ、遠く離れたこの場所でも立っていられなくなる。
あー、この森ってこんなに多くの鳥がいたんだなぁ……。
同じく振動によって揺らされた木々からとびっ立った鳥を見て思わず現実逃避をしてしまう。
「お前ら、どうしてこんなことを……あれも未知の魔物だったんだぞ?あれだけの数だ。ソウサクさんに持っていったらどれだけ有効活用されたことか」
「どうしたもこうしたも! なんか知らないけどあれは無理! あれを素材にしたものは身につけたくない!!」
「心の奥底から嫌悪しますわ! 殲滅、殲滅ですわ!!」
あれでは素材の回収はとてもではないが無理だろう。なにより、この二人が許可するとは思えない。
あの甲羅は鎧や盾に最適だっただろう。肉は食用にも向いていたかもしれない。
それなのに……それなのになんでこんなことに。俺はただソウサクさんのお役に立ちたいだけだというのに。まあ、願わくば新たな装備を賜りたいという思いはあるが。
「やれやれ、勝手な行動は困るっすよね」
「お前がそれを言うな!!」
次魔物を見つけたら俺が倒そう。もちろん速攻で。うん、それしかない
お読みいただきありがとうございます。
ゴキは殲滅殲滅‼




