第24話 休息
翌朝、宴はまだ継続していた。
曰く「魔物の肉消費するの手伝って欲しい」だそうだ。
まあ、今はもうこれ以上あせる必要もない。しばらくここでのんびりしてもいいだろう。
それに、皆も俺のわがままにここまで我慢してついてきてくれたのだ。たっぷり英気を養ってもらおう。そのためには俺の能力を久々にフル活用しなければ……。
「というわけで、女性の皆さんには今から服をプレゼントしたいと思います」
「マリね、おにいちゃんの作るお洋服好きー」
「そうね、ソウサクくんのおかげでこの年になって始めておしゃれに興味を持てたわ」
マリとマルナさんには合計で20着ほどの服をプレゼントしてある。服は今まで創ったことはなかったが、イメージするだけで出来上がるのだ。前世の記憶を最大限に活用すれば、かわいい服を創るなど朝飯前だ。
彼女たちにプレゼントすると、いつも喜んでくれるものだからついつい創り過ぎてしまうのが玉に瑕だけど。
「ほんと? マリちゃんが着ているような服を私も欲しかったの」
「私もー、お姫様のようなお洋服着てみたかった!!」
ミミたち年少組は、目を輝かせて期待の眼差しでこちらを眺めていた。彼女達には白Tシャツしか与えていなかったため、今回を機に10着ほど洋服をプレゼントするつもりだ。女の子にはおしゃれが必要だろう。昔、そうやっていっぱい怒られたっけな……今まで我慢してきた分、目いっぱい楽しんでもらおう。
「ソウサク君がどうしてもっていうなら貰ってあげないこともないけど」
「そうですわね、ソウサク君が私達にプレゼントしたいというのであれば、貰ってあげないこともないですわ」
純粋に喜んだ年少組と比べてチョコさんとミントさんは素直じゃない。子ども達の手前、威厳を保とうとしているのかもしれないが、チラチラこちらを伺う視線が台無しにしている。しょうがないので、どうしてもプレゼントしたいと申し出ることにする。やれやれ、難儀な性格だ。
「うちも貰ってええの?」
「ああ、もちろんさ」
トラのぬいぐるみの少女――ネスはようやく普通に会話する程度まで回復した。今では時々笑顔も見られるようになり、経過は良好だ。新しい服を貰えることが嬉しいのか、茶色いツインテールがピコピコ動いているように見えた。目の錯覚なのだろうが、まるで喜びを表しているかのようだ。トラぬいぐるみがお気に入りであったため、それのお揃いとしてトラのきぐるみパジャマをプレゼントしてあげると、くりくりとした目を大きく開きツインテールを上下に揺らしながら大喜びしてくれた。
最後にイヤリング・ネックレスなどの装飾品をプレゼントすると、もう大はしゃぎだ。今ではファッションショーならぬ、お披露目会をしている。後は彼女達だけで十分に楽しんでもらえるだろう。
男性陣のところに向かうと、団員がタークさんたちになぜそこまで強いのか尋ねているところだった。
「実は俺らは冒険者ってのにあこがれててな」
「そんな時に坊主が置き土産として武器をくれたんだよな」
「最初は襲ってくる魔物に対して逃げ腰になったが、逃げられない状況に追い込まれたから皆覚悟を決めたんだよな」
「おう、それにこのまま逃げても老いていくのを待つだけだし、それならいっそ今こそ夢を実現してやろうってな」
そんな夢があったなんて知らなかった。でも、それも分かる気がする。彼らは荷物を運び、畑を耕す生活を送ってきたのだ。やりたいことも出来ずにただひたすらとそれだけを繰り返してきた。男だったら誰しも冒険に憧れるものだ。十分に動く肉体があり、そこに強力な武器まで手に入ったのなら動かない理由はない。
「最初はやっぱり危険な場面も沢山あっったし、大量に魔物が押し寄せてくるもんだ。勿論怪我も沢山したし、死ぬのを覚悟していたが、皆で協力してスライムやら魔狼とかを倒しているうちになぜか力が湧いてきて負けなくなってきたんだよな」
「ああ、体の調子が若いころよりも良くなっている気がするぜ」
それはあなた達が沢山魔物を倒して身体能力が急上昇したためだと思われますよ。予想以上に強くなっていてびっくりしましたとも。
年少組はタークさんたちの話を羨ましそうに聞いている。やっぱり男の子だな。この先魔物と戦うことになる頻度は確実に増えるだろう。それに向けて自分のことは自分で守れるように、そして大切な人も一緒に守れる力を身につけて欲しい。
後でグレンさんたちに希望する子ども達の訓練をお願いしてみると、二つ返事で了承してくれた。お礼というわけではないが、この機会に他の団員達の装備も一新しておこう。それに、物欲しそうな視線がさっきから突き刺さっているからね。
年少組に訓練のことを伝えると、両手を挙げて大喜びだ。練習用の木剣と、木槍をプレゼントしてあげると、さっそくグレンさん達が面倒を見てあげていた。その中でもバンが一番張り切っている。
ふふ、愛い奴愛い奴。
しばらくすると、ファッションショーを終えた女の子たちも訓練したいと申し出てきた。女の子に荒事をさせるのはどうかと思ったが、遊びではなく本気の目をしていたため承諾した。
俺よりも困った顔をしているのがグレンさんたちだ。男の子ならまだしも、女の子の取り扱いが分からず、四苦八苦している。がんばれ皆!
私たちも何かしたいとチョコさんとミントさんが言うため、後ほど魔法講座を開くことにもなった。
本当はリバーシや将棋、すごろく、トランプなどの遊戯を楽しもうと思ったのだが、これだけ皆真剣に訓練をしているんだ。これはまた今度の機会にして、後程美味しい料理でも用意しておこう。
端で訓練風景を眺めていると、タークさんがやってきた。
「いい仲間に出会えたな」
「はい、僕にはもったいないくらいです」
本当に彼らとの出会いには感謝している。
「本当はな、坊主に信頼できる仲間が出来るのか不安だったんだ」
「不安ですか?」
「ああ、坊主は世間知らずで、常識はずれだ。だから他の奴らに畏怖され、避けられるのではないかってな」
「うっ」
否定できない。だから俺が仲間を連れてきたことに安堵してくれていたのか。
「坊主たちはこれからどうするんだ?」
「そうですね、あっちの方向にある森に向かって進み、新たな国を創ります」
そういってシムシティした方向を指差す。
国を創るっていうか、運営できるようにしていくって言った方が正しいかもしれないけど。
「魔の森の中で国作りか。楽しそうじゃないか」
「もちろんタークさんたちも付いて来てくれますよね」
「はは、今更俺達が断る理由はねえよ。新しい冒険、いいじゃないか。まさかこの年になって楽しみが出来るとは思わなかったよ」
最高の笑顔を浮かべて厚い握手を交わす。
もちろん退屈させませんとも。
それから3日後、人と荷物そして夢を乗せて、新たな国を目指しファンタ1号を走らせた。
お読みいただきありがとうございます。
タークさん達マジ強です。




