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『0歳から始める異世界転生生活~世界を救う建国物語~』  作者: nyanta
第2章 傲慢と強欲の国
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第25話 本音と決意

「今日はここで休憩にしましょう」

 

 日も暮れてきたことだし、お腹もすいた。周囲に魔物の群れの反応はないしここで野宿しても問題ないだろう。皆に指示をだして、ファンタ1号から降りていく。


「いやー、すごいな坊主。馬車と比べられないほど乗り心地よかったぞ」


 俺とは違う場所、ファンタ1号の後ろの車両から降りてきたタークさんが話しかけてきた。

 タークさん達が仲間になると全員で80人という大所帯になり、ファンタ1号では収まりきらなかった。そのために急遽、連結車両を創った。


「まだまだです。これからもっと上を目指しますよ」


 アレだけではまだ物足りない。車内にはキッチンもトイレもお風呂もない。まだまだ改良の余地はある。これからの俺の成長に是非とも期待したいところだ。


 皆が下車したのを確認すると、1枚のカードを取り出す。その名も『大型ログハウス』である。

 この時のために設計図を考え、こっそりと創っていたのだ。これならば100人程度まで問題なく泊まることが可能だ。


「今日の晩御飯は私に任せてね。マリやソウサクくんは何かリクエストあるかしら?」

「お腹にどっしり溜まるものがいいです」

「う~ん、ハンバーグ!」

「ふふ、了解したわ」


 今日の晩御飯はマルナさんが腕によりをかけて作ってくれるそうだ。すごく楽しみだ。

 

「ねーねー、ソウ兄ちゃん、家の中探検してきてもいい!?」

「ああ、いいぞ。怪我のないようにな」

「「はーい」」


 それなりに大きな建物だ、冒険心がうずいたのだろう。俺も経験があるからその気持ちはよく分かる。


「ソウ兄についてきて本当によかったですよ」


 俺の隣にやってきてミハルは年少組を眺めていた。


「あの子達がこんなに笑顔を見せることは以前はあまりありませんでした。それにお腹いっぱい食べれて飢えの心配も要らない。それどころかきれいな服や暖かい寝床まで与えてもらって感謝してもしきれないです」

「なに、子どもは本来あのようにあるべきだ。だから気にするな。それに今後はもっと忙しくなる予定だから頼りにしてるぞミハル」

「ええ、精一杯恩返ししますよ」


 ミハルと拳をコツンとぶつけ、共に笑顔で笑いあう。

 

 こんな関係がずっと続けばいいな。

 



「いやー、マルナさんの料理は本当においしいですね」

「タークさんったら、おだてても何も出ませんよ」


 美味しかった。カードで作るのとでは天と地ほどの差がある。なんていうか温かみがあるんだよな。


「お前らもこれ位作れたらな……」

「私だって練習すれば!」

「そ、そうですわ。本気を出せば私達だって……」


 チョコさんとミントさんは今後に期待かな。

 マルナさんの料理を手伝おうとしたが、玉ねぎの皮むきを任せると身がなくなり、野菜を包丁で切ろうものならいつの間にか赤色に染まった野菜たち。まさか料理にHP回復ポーション使う事になるとは思わなかったよ。もちろんしばらくの間料理禁止令を出しましたとも。がっくりと方を落とした彼女たちには心苦しかったが、鉄の味する料理は食べたくないので仕方がない。そのうち年少組向けにお料理教室でも開いて、それに参加してもらおう。うん、それがいい。


 夕食も終え、寝るまでの間自由時間ということで俺は星空を眺めに外に出ることにした。地球と違い自然の多いこの世界の夜空は気持ちがいい。月がないため少し風情に欠けるが、それを補うだけの星々が爛々と輝いている。


「おにいちゃん、隣いい?」

「マリか。もちろんいいよ」


 マリは俺の隣に腰を下ろすと、腕を絡ませて、頭をコツンと肩に乗せてきた。役得で、もちろん嬉しいのだが、今のマリはなんかいつもと違うような気がする。

 しばらく静寂の時間が経過し、マリは何かに満足したのか手を離し立ち上がる。その頬からは何かが通り過ぎた痕が見えたような気がした。


「おにいちゃん」

「ん、どうした?」

「マリね、お兄ちゃんに出会えてよかった。美味しいもの食べれて、毎日が楽しいし、友達も沢山出来たの。だからね、マリはこの生活を守りたい。そしてなによりここまで育ててくれたおかーさんを守りたい」

「……マリ?」


 マリが振り返ると、いつもの柔らかい笑みではなく、何かを決意したような顔がそこにはあった。


「私ね、本当は知っているんだ。おとーさんがもうこの世界には居ないと言うこと」

「――!?」

「おかーさんがね、時々泣いていたこと知ってるの」


 まさか、マリに知られているとは思わなかった。マリはダリンさんのこと口にしたことがなかったし、いつもどおり常に笑顔でいたものだから、父親は生きているのを疑っていないと思っていた。

 確かに当初はダリンさんのことを思い出しては泣いていたのを俺も知っている。でもそれはマリが寝てから、マリにはバレないようにしていたはずだ。


「マリね、これでも演技力抜群なんだ」


 その笑顔はいつもよりどこか大人びていた。


「マリがいつも通りしていたら、甘えてさえいれば、おかーさんはマリを育てることに集中して一時はつらさを忘れることができる。そう思ってた――いや、力のないマリにはそうすることしか出来なかったの」

「マリ……」


 マリの笑顔にそんな気持ちが隠されているなんて全然気がつかなかった。俺は一体全体マリの何を見てきたのであろうか。

 

「でもね、今はみんながいるおかげで、おにいちゃんのおかげでおかーさんが泣くことはなくなったの。そして思ったんだ。今の生活が続く限りおかーさんは前を向いて生きていけるって」


 今のマリの姿は絶対忘れない。

 

 マリの一言一句聞き漏らさないように集中力を高める。


「でもね、気がついたの。今の生活が続く保証はないって。もし今いるみんなが悪い人に、魔物に殺されてしまったら今の楽しい生活は唐突に終わりを迎えるって。また、おかーさんに悲しい思いをさせてしまうって」


 マリは右手を握り、その拳を俺の前に突き出す。マリの決意がその拳から伝わってくる。


「だからね、おにいちゃん、マリに武器を与えて、戦い方を教えて。マリにも自分を、そしてみんなを守る力を、誰も悲しまないですむような力を下さい」


 子どもは知らないうちに成長するものか。相変わらず俺は人を見る目がないな。マリは可愛いだけの女の子じゃない。もう立派な女性だ。俺もこの気持ちに真剣に向き合おう。


「死ぬほど怖い目にあうかもしれないぞ?痛いことも沢山あるぞ?それこそあの焼き払われた街々のように。それでもいいか?」

「うん」


 俺の言葉に躊躇うことなく返事を告げる。


 決意は固いようだ。


「やれやれ、マリには敵わないな。いつの間にか大人になっているんだから」

「ふふ、おにいちゃん、女の子は隠しごとがうまいんだよ。覚えておくといいよ」


 なにそれ、ちょっと女の子が怖くなったんですけど。


「さ、中に戻ってみんなと遊ぼう!」

「そうだな、折角だから沢山楽しもうな」

 

 マリの後を追いログハウスへと戻る。

 今日は人数も多いことだし、何個かのグループを作って大様ゲームでもやるか。それぞれの仲も深まるし、なによりあれは盛り上がること間違いなしだ。

 

 マリの背中を見つめる。その背中はどこか懐かしく、いつもよりもどこか大きく見えた。

 

 星空の下でみたマリの大人びた表情に、いつもとは違う意味でドキッとしたことは秘密だ。

  

お読みいただきありがとうございます。

第2章はこれにて終了になります。

続きが気になりましたらブクマ又は評価を宜しくお願い致します。

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