第22話 自由の町
皆が再起動するまでの間に残りの作業を終わらせてしまおう。
木造建築の長屋、倉庫、そして、スティールソードとスティールランス、スティールシールドを各500セットだ。
ついでに鉄製の農具も1000個ほど用意しておこう。彼らには自給自足する術を身に着けてもらわなければならない。畑も掘り返しておいて何を植えるかは彼らに決めてもらおう。彼らが取り扱ったことのある作物の方が育てやすいだろう。
後は衣服も必要になるだろうが、なんせ人数が人数だ。素材も足りないので全て無地のTシャツになってしまうけれどもそれは我慢してもらおう。
「ソウ兄、皆さん落ち着きを取り戻しましたよ」
「そうか、それじゃあ今後のことを話し合わないとな」
彼らのケアはミハルたちに任せっきりになっていた。まったくもって頭が上がらないな。
「皆さん改めまして初めまして、私はただの旅商人ソウサクといいます」
ざっと彼らを見渡すと、子どもが4割、大人が6割でそのうちお年寄りが2割といったところだ。
誰しも真剣な眼差しで俺を眺めている。こんな子どもの言うことを真剣に聞くなんて殊勝な心がけだ。彼らなら自分達でもやっていけるだろう。
「あなた達は新しく住む場所を手に入れました。ここには王族や貴族なんてものはいません。つまり、あなた達から理不尽に何かを奪う者はいないということです」
王都を追い出された時とは絶望に染まった顔をしていた彼らだが、今ではその顔が希望に染まりつつある。
「俺たちはもう怯えなくてもいいのか?」
「一杯ご飯食べれるの?」
「家族を守ることが出来るのか?」
「もう叩かれないでいいの?」
せっかく育てた作物は税として奪われる。
最愛の子どもが奴隷にされる。
期限が悪いだけで殴られ、蹴られる。
彼らは今まで沢山奪われ、虐げられてきたのだろう。しかし、これからは違う。頑張った分だけ自分たちに返ってくる、努力は必ず実るのだ。
「そうです。あなた達を縛るものはここにはありません。あなたたちは――自由です!」
俺の言葉に一時の静寂が訪れる。
「自由……」
「自由だ」
「俺たちは自由だー!」
「「おおー!!」」
一人の声を皮切りに、ダムが決壊したように次々と歓声があがる。
さあ、ここからが彼らの人生の再出発だ。
歓声が収まると、今後の生活方針を伝えていく。まずは町長と農業、討伐部隊のリーダーを決めだ。町長は一番の年配者が、農業は壮年の女性が、部隊は一番屈強な男性がそれぞれ就くことになった。彼らに今後のこの町を管理していってもらおう。
その後住む場所を決め、魔物の対処法、王都の国民への対応、そして育てていく作物などを決定する。作物が出来るまで半年近くかかる可能性もあるため、魔狼などの食料になりそうな魔物は彼らに譲る事にした。
魔物も生物であることには変わりがないため、そのまま置いておけば確実に腐ってしまう。そのため、俺はカード化したまま彼らに託しカードの使い方を教えた。その際に、つい悪戯心で「神の御業です」と言ったら茶化すことなく納得するふりをしてくれた。子どもの戯言に付き合ってくれるいい人たちではあるが、スルーされると逆に恥ずかしくなるから突っ込んで欲しかった。
次に子ども達が遊べる遊具を作ることにした。なんてっいったって子どもは遊ぶのも仕事だからな。外で元気に遊びまわって体力づくりが出来るようにしよう。超大型の滑り台、ジャングルジム、ブランコ、鉄棒、雲梯など、思いつく限りの遊具を作る。完成すると皆から歓声が響き渡り、待ちきれない子供たちに許可を出すと、何故か我先にと主に男性陣が走り出した。
「すごい、こんなに面白いものが世の中にあったなんて」
「ブランコというの思ったよりも難しいな」
いやちょっとまて、なんでお前ら大人が先に乗っているんだよ。子どもに譲れよ……。でもまあ仕方がないのかもしれない。彼らは大人になるまで遊ぶ事も許されず過酷な労働を強いられてきたのだ。今日くらいは好きにさせてあげるべきだろう…………今日だけだよ?
畑の整地を行っている間に、自警団の皆には男性陣に戦闘の指南をしてもらうことにした。いっては何だが、予想以上に教えるのが上手だった。あの様子ならば、そのうち下級の魔物程度なら簡単に退治できるようになるのではないだろうか。
中には中級以上の魔法を使える適正の者もいたため、指輪型の魔力増幅装置を創りプレゼントした。チョコさんやミントさんよりも性能は落ちるがこれでも十分に戦えるだろう。今回は勘違いのないように、先に「魔力増幅装置です」と伝えてから渡すようにした。チョコさんとミントさんの顔がほんのり赤くなったように見えるが、きっと気のせいだろう。
最後に町の名前をつけることにする。何が良いか皆に尋ねてみると、俺に決めてくれと懇願された。
あそこまで頼み込まれたら引き受けるしかあるまい。この街の命運は俺のネーミングセンスにかかっている。ファンタ1号みたいにカッコいい名前があればいいのだけど……。
「マリなにか良い案はないか?」
「え? うーんとね、あんぱんの町!」
「あー、マリらしい名前だね」
「えへへー」
それはマリの好きな食べ物じゃないのか?ごめん、マリに聞いたおにいちゃんが馬鹿だったよ……。しかし、尋ねた手前マリの意見を邪険にするわけにもいかない。助けを求めるようにチラリと右隣を見る。
「そうですね、マリの名前も良いですが、それよりもここの人たちならではの名前が良いかもしれませんね」
「そっかー」
さすがミハル、俺の言いたいことを分かってくれるなんて。
「ソウ兄は何か思いついたのあるのですか?」
「そうだな、誰にも邪魔されない自分達だけの街だから略して『ダジャジブチョウ第1号』なんてどうだ?」
うん、我ながらカッコいい名前だと思う。
「あー、それも良いですけど、もっと短く覚えやすい名前が良いかもしれませんね。例えば自由を表すような言葉などあれば良いかもしれません」
「あー、確かに少しだけ長すぎたかもしれない。そうだな、自由か……フリーダム、なんてどうだ?自由って言う意味があるんだ」
ただ英語にしただけだけどね。さっきの方がカッコ良かったんだけど確かに名前が長いと覚えるのが大変だから仕方がない。
「フリーダムですか。フリーダム……。うん、良いと思いますよ」
「よし、それじゃあ今日からこの町はフリーダムだ!」
町の名前が決まり再び歓声が鳴り響く。
ミハルが何かホッとしているような気がするのだけど何かあったのだろうか?
「それでは皆さんお元気で」
本来ならば数日ここにいて街がちゃんと機能していくか見守りたいのが本音だ。しかし、この先には助けを必要としている街がまだまだ沢山ある。だからここに留まるわけにもいかない。少々名残惜しいが、次の町を目指すことにしよう。
「いえ、私達のためにここまでして頂きありがとうございました」
「俺達の手でこの町を、そして家族を守ってみせます」
過酷な境遇の中で生活してきた者たちだ。彼らならきっとこの先もやっていけるだろう。俺達の姿が見えなくなるまで彼らは頭を下げ続けていた。
車内では何故かマルナさんが運転席の横に座っていた。なんというか、すごく笑顔だ。
「ふふ、さすがソウサクくんね」
マルナさんに頭を撫でられた。
嬉しいし役得だけれども少し恥ずかしいな。
お読みいただきありがとうございます。ソウサクの名づけは天下一品ですね。
問う作品がGWの暇つぶしになれば幸いです。
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また明日も宜しくお願い致します。




