第19話 新たな仲間
「そ、ソウサク君なの?」
「この鉄の塊は一体全体何なのかしら?」
「かっけーっす」
グレンさん以外の団員達が、顎が疲れないのかと思うほど大きな口をあけてこちらを眺めていた。
未だに移動手段が馬車であるこの世界からしたらこんな巨大な鉄の塊が動くこと自体信じられないのだろう。
しかし、こんな中で一人だけ違う反応を見せている男がいた。
「いやー、さすがソウサクさんですね。こんなものまでお持ちとは!」
う~ん、グレンさんってこんなに気持ち悪かったっけ?
「皆さんお久しぶりです。それよりも詳しいお話は魔物を倒してからにしませんか?」
さっきからグレンさんやトリゾウさんの腕が魔物にガブガブかまれている。白衣じゃなかったら腕が無くなっているところだ。というか、指までは防具で覆えないんだか気をつけないと指なくなるよ?
「はっ、そうだった。皆、あと少しだもうひと踏ん張り行くぞ」
「「おおー」」
再度グレンさんたちが魔物に立ち向かっていく。どうやら苦戦することなく今いる魔物は倒しきれそうだ。手を出す必要もないだろう。
改めて周囲を見渡すと200は超えるであろう魔物の死体が転がっていた。よくもまあ持ちこたえたものだ。彼らがいなかったらこの町は地獄と化していただろう。剛狼という雷狼に劣らない魔物も倒していることから、あれからグレンさんたちの成長がうかがい知れる。
「ソウ兄、あの人たちは知り合いなのですか? 魔物をあんなにあっさり……すごく強いですね」
「ああ、あの人たちの強さなら低級魔物なら余裕さ。悪い人達じゃないから仲良くしてくれ」
もしかしたら仲間になるかもしれないしな。
話をしているうちに魔物もあらかた片付いた。そろそろ俺の出番だな。ファンタ1号から1人で降りて団員の側まで向かう。他の皆はお留守番だ。
「それにしても、戦っているのはグレンさん達だけですか? 街の兵士や冒険者たちは……」
「はっはっは、あいつらならビビッて街に引きこもっていますよ。なんでも街の中を守るとか言っていましたがね」
おいおい、それは駄目だろう。街の中を守るって、街の中に魔物の侵入を許した時点で蹂躙されるのは眼に見えているというのに。きっとグレンさん達がいなければ、この街も落ちていたに違いない。
「リリース!」
硬石の壁で町を囲い一息つく。これで一先ずは安心だろう。
しかし、これで硬石は使い果たした。この先スペルビア王国もあるため、何か代替案を考えなければいけない。
「こ、これは土魔法?」
「でもこれは土ではなく、全部石で出来ていますわ。こんな魔法聞いたことないですわ!」
「一体全体どうなってるんすか」
人では到底起こしえない奇跡を見て、団員達は魔物と相対していた時よりも警戒心をよりいっそう強くする。ここでの対応が分岐点かもしれない。この場所で彼らに出会うと思っていなかったために、納得しそうな説明をまだ考えることが出来ていないのが痛い。特に彼らは自分で国を捨てた者達だ。中途半端な説明では付いて来てくれないだろう。
「ソウサクさん、少し質問してもいいでしょうか?」
皆と違い警戒心を解いて俺に近づいてくる。さすがリーダーだ肝が据わっている。もちろん拒否せず質問を許可する。
「ソウサクさんはどこかの国に所属しているのですか?」
「どこの国にも所属していません」
「ソウサクさんの旅の目的は?」
「この世界を見て回りたかったことが一つ。後は信頼できる仲間探しですね」
旅の目的を答えると、グレンさんの口角が少し吊り上ったように見えたが気のせいだろうか。
「あの鉄の塊やこの壁は一体何なのでしょうか?」
「私の能力です。他の人には真似できません」
「今後はどうなさるおつもりですか?」
「そうですね。人々が平和に過ごせる居場所――少なくとも私の仲間達が幸せに暮らせる居場所を作ることです」
「ソウサクさんにとって幸せとは?」
「お腹いっぱい食べ、おしゃれも楽しみながら清潔な環境で過ごすことができ、不当に他者に害されることがない。そして魔物に怯えないですむ力を身につけ自分で自分の居場所を守れる、皆で笑いあって過ごせることです」
そんな国を作れたら……そして出来れば他の国の人たちにも幸せになって欲しい。
「質問にお答えていただきありがとうございます。よく分かりました。ソウサクさんは理想の国を仲間と作り上げたいのですね。そのためにも信頼できる仲間が必要ということですね」
「ええ」
「だってよ皆。今の聞いてどう思った?」
グレンさんは嬉々とした表情を浮かべ団員達に声をかけた。
「お腹いっぱい食べられるって大事よね」
「おしゃれも大切ですわ」
「魔物に怯えないですむ……普通だったら理想と笑い飛ばしたいところっすけど、もらった装備やあの鉄の固まりに、この壁まで見せられたら、実現も夢じゃないっすね」
「こんなことができる人が作る居場所か。やっぱ興味あるな」
「今のその日暮らしもいいけど、ちゃんとした居場所ってのもいいよな」
いつの間にか団員達から警戒心が無くなっていた。今の答えで納得できたのであろうか。
「満場一致だな。さて、ソウサクさん。俺達はまだ信じるに値することができないかも知れないですが、どうか仲間に入れていただけないでしょうか。もちろん理想のため、協力できることはさせていただきます」
「皆さん……、こんな子どものいうことを信じてくれるのですか?」
「あなたがただの子どもじゃないことはあの力を見せられたら一目瞭然で分かりますよ。それに、悪い人には子どもは懐かないものです。ほら、後ろのお仲間があなたのことを心配していますよ」
振り返って後ろを見るとファンタ1号から皆が心配そうにこちらを眺めていた。武器を構えた大人たちに囲まれていたのだ、心配するのが普通ってものなのだろう。
少し嬉しいじゃないか。取り合えず、手を振って心配ないことを伝えよう。皆には笑顔のほうが似合うからね。
「それではソサクさん、返事を聞かせていただいても良いですか?」
すこし緊張しているグレンさん。他の団員も固唾を呑んで返事を待っている。もちろん答えは一つしかない。
「もちろん大歓迎しますよ。なにより、大人の人がいると心強いですからね」
「おお! ありがとうございます!!」
げっ、グレンさんが涙を流しながら喜んでいる。さすがにちょっと引くんですけど。
「やったー、仲間にしてもらえるってことはあの鉄の塊に乗せてもらえるよな!」
「おまえもあれに興味があったのか。実は俺も乗ってみたいと思ってたんだよな」
「俺も俺も。小さいころからあんなカッコいいものに乗ってみたいと思ってたんだ」
「だよな。大人になってからはそんなものは存在しないと現実を見ていたが、まさか今になってその夢が叶うとは!」
男達のロマンは世界を超えるのかもしれない。というか、俺を信頼したのではなくこれに乗りたかっただけじゃないよね?
「ソウサクさん、俺たちは今からどうしたらいいでしょうか?」
涙で目を赤く腫らしたグレンさんがやってきた。彼らは仲間だ。そこに上下関係はない。だからこそ先に言っておきたいことがある。
「その前に一つだけいいですか?」
「ええ、何でも言って下さい!」
「私たちは仲間です。そこには貴族と平民のような上下関係はありません。だからいつも通り普通に接してください。特にグレンさん、少し気持ち悪いです」
必殺の天使スマイルを浮かべながら言葉を投げかけると、グレンさんは崩れ落ちる。
「あ、私も最近のリーダーは気持ち悪いなって思ってたのよね」
「急にニヤニヤしたり何を考えているのか分からなかったから気持ち悪かったですわ」
「さすがっすね。俺達の言いたかったことを代弁して言ってくれるとは。いい仲間になれそうっす」
団員からの言葉の刃物に対しグレンさんは再び涙を流した。
今度は先ほどとは異なる涙だろう。ドンマイ!
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