第20話 ミハル専用武器
この街の人々にも武器を与え例の言葉を投げかける。最初は戦うのを恐れていたが、グレンさん達が直ぐに去ると伝えたので自分たちで何とかするしかないと分かったようだ。しばらくの間はこれで大丈夫だろう。
「それにしても皆さん強くなりましたね」
前は魔狼1匹相手に4人がかりだったのに、今ではあれだけの魔物を倒せるようになっている。彼らの強さは依然とは別次元になっていた。
「いえ、ソウサクさんの装備のおかげで――おかげだ」
グレンさんがそう言って謙遜しながら答えた。確かに武器のおかげもあるだろう。しかし、あくまでも武器は道具だ。使い手の技能が共わなければ宝のもち腐れとなる。たとえどれだけ最強の武器があったとしても攻撃が当たらなかったら意味が無いのだから。
「でもねー、これだけいいのもらっといてなんだけどしっくり来ないのよね」
「なんだかこの装備の全ての力を引き出せていないような気がしますわ」
「あ、お二人もそう思ってたっすか。俺もこのシザースが何か我慢しているように感じるんすよね」
お、本来の力を解放していないことに気がつくとは。よほど武器を大切にしてくれていたのだろう。今の彼らの実力であれば、彼らに与えた武器の本当の姿を見せてあげても良いかもしれない。
「皆さん一度武器を渡してもらってもいいですか?」
4人から武器を預かるとカードに戻す。全員の目が点になっているがここはスルーしよう。よし、これで後は登録してもらうだけだ。
「はい、これに魔力を通しながら『レジスタ』と唱えてください」
「いろいろ突っ込みたいことがあるけど……」
「今は聞かないほうが良いですわね」
「これでいいんすか?『レジスタ』」
目をつぶっていてよかった。これ意外に眩しいんだよな。
「これでカードはあなた達のものです。そこに描かれているのが本来の武器の姿です。『リリース』と唱えてください」
「ライトニングホーンソードか」
「これが本来の姿……」
「どういう仕組みなのかしら」
「ちょっと楽しみっすね」
「「リリース」」
それぞれの手元に武器が出現した。先ほどまでと違いシルバーの指輪はそれぞれ、ルビーとエメラルド色に。同じくシルバーの剣と大ハサミはそれぞれ、シェリートパーズとアメジスト色に変化した。自分で言うのもなんだが、客観的に見てすごく綺麗だ。
「おお、力が溢れてくるようだ」
「はわー」
「綺麗ですわ……」
「かっけーっす……」
女性二人は手を頬に当ててうっとりしている。
女性が宝石好きなのは世界共通なのだろう。
「とまあ、これが私の能力の一部ですね」
「凄いということしか分からないけど」
「細かいことは気にしないほうがよさそうですわ」
うん、それが正解だな。
全て説明すると時間かかるし面倒くさい。そのうち皆にまとめて話すつもりだからそれまで待っていてもらおう。
「それでは皆さんお乗りください」
魔物の脅威が去ったわけではないのに時間を少し潰しすぎた。続きの話は車内で行い、皆に彼らを紹介することにしよう。
「あら、マルナさんにマリちゃん久しぶり」
「お久しぶりですわ」
「あら、チョコさんとミントさんでしたよね。お久しぶりです」
「チョコねーちゃん、ミントねーちゃん久しぶりー」
「あら、今日は一段とかわいい服ね」
それはそうだろう。今マリが来ている服は俺が三日三晩寝ずに考えて作った服だ。マリのかわいさを最大限引き出すための服といってもいい。
「えへへー、おにいちゃんにもらったの」
「羨ましいですわ。私たちももらえないかしら」
そういえば、ごたごたしていたせいで孤児院の子達にも服を与えることができていなかった。これを気に皆の分の服を作ってプレゼントしようかな。
「他の子達も皆かわいいわね、よろしくね」
「チョコちゃんとミントちゃん?よろしく!」
「よろしくー」
「うっ、可愛いですわ。お持ち帰りしてもいいかしら」
女性陣はさっそく和やかに会話を進めている。さすが女子、コミュ力高いな!それに引き換え……
「おう、坊主達よろしくな!」
「よろしくっす」
「よろしく」
「よ、よろしく」
「…………」
「…………」
会話が続いてない。まぁ、子ども達は大人達に苦手意識が根付いているため仕方ないかもしれない。がんばれ大人組、ここが最初の試練だぞ。
「なあミハル、男子達がこちらを見ているような気がするが気のせいだろうか」
「それはソウ兄が彼らを放置しているからじゃないですかね。しかも僕に運転させているせいで僕も助けに行けないですし」
「まあまあ、魔力は俺が注いでいるのだから運転位してくれても良いじゃないか」
それに、何でもかんでも俺らが解決していたのでは彼らのためにならないしな。今後のことも考えると、是非とも1人で世渡りしていける力をつけて欲しいものだ。
「今のところソウ兄の力になれることはないからこれ位はさせてもらいますけどね。それに、バンたちも僕から自立するいい機会ですし」
ふふ、やはりミハルとは気が合いそうだ。考えていることがまったく一緒じゃないか。
「だろ?後、折角だから今のうちに皆の服を作ってあげようと思ってな。ミハルはどんなのが欲しい?」
「ソウ兄、ちょっとは休憩してくださいよ……」
ジト目でミハルが抗議してくる。いくら顔が整っているからといって、男の子からのジト目は嬉しくない。
「いいじゃないか、物作りが俺の息抜きなんだよ」
「息抜きになるなら良いですけど。あと……ソウ兄と同じ服が1着は欲しいんですけどいいですか」
「もちろん!1着といわず予備用に10着でも20着でもプレゼントしてやるよ!!」
まさかこんなところに白衣愛好家がいるとは!もちろん100着だって作ってあげるとも。
「いや、そんなに沢山はいらないです」
あっそうですか、調子乗ってすみません。
「後は皆に装備を作ってあげないとな。いつ魔物に襲われるか分からないし、自衛手段はあったほうが良いだろう」
「ああ、それは助かりますね」
「ミハルには遠距離武器のほうが良いかな。今まで倒してきた害獣も全部罠を使って捕えたんだろう?」
「はは、バレていましたか。僕は運動神経は高くないですし頭を使うほうが得意ですからね」
「俺は何でもお見通しさ。ミハルには最高の遠距離武器を作ってやるよ」
さて、そう見栄を張ったのは良いが何を作ろう。正直何も考え付いていない。遠距離……遠距離……。やはりこの世界なら魔法しかないよな。しかし、ミハルは魔力が少ないからチョコさんたちのような単純な魔力増幅装置じゃあまり意味がなさそうだ。
「ソウ兄!」
「――!? びっくりした、どうした?」
「前方の丘の上に石の化け物が10体もいます」
「石の化け物?ゴーレムか!」
【名前】グラスゴーレム
【HP】 1000/1000
【MP】 250/250
【備考】堅固な防御力を誇り、生半可な攻撃は通じない。核からの魔力供給により稼働している。
さすがゴーレムだ、HPが相当高い。ファンタ1号での突撃はやめたほうがよさそうだ。胸に埋まっている核さえ取れれば倒せそうだが……幸いにも見た所ガラス性だ。ちょっと試してみよう。
「そのままゆっくり進んでくれ。ちょっと一足先に試してみる」
「ソウ兄、大丈夫ですか?」
「なに、無理そうだったら逃げてくるよ」
遠くから見ている限りでは、その巨大な体躯のせいでそこまで素早くなさそうだ。逃げるだけならばなんとかなるだろう。
「みんな、ちょっと魔物倒してくるから留守番よろしく」
反応を待たずして車外に飛び降りる。
「タイガースネーク・レフトアーム、 ダークパンサー・ブーツ『リリース』」
さて、頑張るか!
新幹線並みのスピードで音も立てずにゴーレムに忍び寄る。よし、まだ奴はこちらに気がついていない――今だ!
「タイガオン砲!」
【名称】 タイガースネーク・レフトアーム
【クラス】装備
【詳細】 MP消費により超音波攻撃が可能。MPの消費量に伴い振動数が増加する。
ゴーレムの心臓部に左手を突き出す。高振動波により、1cm、2cmと左手がゴーレムの中を進んでいく。
流石にゴーレムも気がつき、俺を振り払おうとする。右、上、下とゴーレムの腕が頭スレスレを通っていく。一度地面に拳が当たったが1メートルほど地面が陥没した。頭に直撃をくらったら潰れたトマトになりそうだ。だが速度が遅いため、避けるのは容易だ。ただしそれは相手が1体に限るが。
今まさに残りの9体のゴーレムが俺を倒さんと迫ってきている。さすがにこれはやばいかもしれない。出し惜しみしている場合じゃないな。
「はぁぁぁぁぁ!」
先ほどの10倍のMPを左手に注ぎ込む。一気にゴーレムの中に突き進む腕の進行速度が上がった。
5cm……10cm――――いけっ!
ゴーレムの核に触れた刹那、シャンデリアが地面に落ちたような派手な音をたてゴーレムが崩れ去った。
よし、なんとか倒せそうだ。ただしMPの消費量が桁違いだ。今の1体で1000弱は持っていかれた。これは気を引き締めていかないといけないな。
「ただいまー」
「ソウ兄お疲れ様、まさかこんなに早く倒してくるなんて思わなかったよ」
あれから5分ほどで残りのゴーレムを片付けることができた。ガラス製だったからよかったものの、あれが伝説の鉱石とかで出来ているゴーレムだったら勝てなかったかもしれない。皆を守るためにも、俺はまだまだ強くならねばならない。
「ま、まあ余裕だったよ」
内心焦っていたことを隠し、笑顔で答える。
「それにいい戦利品が手に入ったからね」
「戦利品?」
「ああ、これさ」
【名称】 グラスゴーレム
【クラス】魔物
【詳細】 空気中の魔力を核に集めて稼動するガラスでできたゴーレム。核の中に刻まれた10個のパターンによって行動する。
これを使えば男のロマンの実現も夢でない!!
グラスゴーレム10体の核を融合、そして、炎虎、氷豹、光犀、ペアルック、火の結晶、水の結晶を使おう。
ペアルックはそれぞれの視界が繋がっている2体の魔物で、片方が死ぬともう片方も死ぬというなんとも不思議な魔物だった。正直弱かったし、使う用途も思いつかなかったため倉庫の肥やしとなっていたがこんなところで役に立つとは思わなかった。
「ミックス」
【名称】 自立型ゴーレム
【クラス】武器
【詳細】 右足は全てを焼き尽くし、左足は全てを凍らせるといわれている。俊敏が高く、音を置き去りにして走り去る。隠密行動も得意である。100パターンの行動を核に刻み込むことが可能。付属されている指輪を介して、ゴーレムと視界を共有することが可能。
よし、一発で完成だ。やはり、どれだけ具体的に想像できるかが武器を創造する時のポイントだな。全身が暗黒色でその額には光り輝く角が生えた虎型ゴーレム。なかなか男心をくすぐるものが出来た。
「ほら、ミハル。お前専用の武器だ」
「これが僕専用の武器……ですか」
出来上がったカードをミハルへ手渡す。
「はは、面白そうな武器じゃないですか」
「そうだろう?期待しているよ」
「ええ、見事に期待に応えて見せますよ」
ミハルのことだ。俺が考え付かないようなすごい武器に成長することだろう。このゴーレムがどうなっていくのか今後が楽しみだ。
「う、うーん」
「「!?」」
他愛もない話で車内が賑わっている中、少女のうめき声が聞こえた。思わず、車内は静寂に包まれた。
「あら、起きたようね。おはよう」
「おはよう――てあれ? ここは……」
「魔物に町を襲われていたところをソウサクくん――あの子が助けたんだけど、覚えていないかしら」
マルナさんの膝で寝ていた虎のぬいぐるみの子が目を覚ましたようだ。当時のことフラッシュバックしてパニックを起こさなければいいが……。
「魔物――そうだ、他の皆は!?」
「残念だけど、町の生き残りはあなたしかいなかったの。ごめんなさい」
「そんな……」
その表情が絶望に染まり、涙が流れ落ちる。一度崩壊したそれは留まることがない。車内に嗚咽が木霊する。
今はマルナさんに任せよう。心の傷はそう簡単には直せない。好きなだけ泣ける場所、沢山の温かいご飯、温かい寝床。俺が彼女に与えられるのはそれだけだ。どれだけ時間がかかってもいい。彼女が前を向いて歩き出せるその日まで、皆で彼女を守っていこう。
お読みいただきありがとうございます。
ゾ〇ドみたいって?気のせいです。
投稿遅くなって申し訳ありません、仕事から帰ってすぐ、意識を失っておりました……(言い訳)
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