第13話 2つ目の王都
目の前に大きな槍を持った門兵が口を硬く閉ざして佇んでいる。どれだけの時間が経過したであろうか、ついにその口が開かれた。
「滞在1日につき3金貨だ」
はい、思ったとおりの値段でした。30金貨もってけドロボー!
10日分の滞在費を支払い、さっさと王都の中へ足を進める。声を荒げないなんて、俺も大人になったものだ。
王都の中はスペルビア王国とは違い、清潔な服装で肉付きの良い人々ばかりで、家も豪華な造りのものばかりだ。恐らく、金を持っている人しか王都に住むことができないのであろう。そのため、治安は良さそうだ。
しばらく歩くと、市場のような場所を発見した。人々が多く賑わっており、期待が持てそうだ。
「すみません、少し市場を覗いてみてもいいですか?」
「ええ、私もどんなのがあるか興味があるわ」
「食べ物!? 美味しいのあるのかなー!」
マルナさんは料理のレパートリーが以前の10倍以上に増えていた。今なお新しい料理を作る為に日々研究を重ねている。そのため、新しい食材を前にすると子どものように目を輝かせている。そしてマリ、いや妹よ、お前さんは食い意地が張りすぎではなかろうか。おにいちゃんは将来が心配だよ……。
鮮度が良さそうな魚や貝などの海の幸が数十種類並んでいる。どれもこれも値段は大分お高いが、魔物が住んでいる海で漁をするならば、この値段も仕方がないだろう。この世界に来て初めての魚介類だ、例え高くても今買い込むしかない。しかし、1つだけ問題がある。すでに死んでいるためカード化できない。すなわち、1から自分で調理をしなければならないのだが、魚を捌いた経験などもちろんあるわけがない。
「美味しそうなお魚さんだね! 今度はおにいちゃんどんな料理作ってくれるのかな?」
「そうね、私達の国じゃ魚を食べる機会なんてなかったから楽しみね」
「おにいちゃんのことだから、とっても美味しい料理なんだろうね」
ヤバイ、何故か知らないけどハードルがものすごく上がっている。しかし、ここまで期待されたのなら男としてそれに答えねばならない。よし、腹をくくったぞ。
「マリ、このお金で一番美味しそうなお魚買ってきてもらってもいいかな?」
「マリが買ってくるの?」
「ああ、マリの方が美味しい食べ物を見極めることができるからね、頼むよ」
「しかたがないなあ、マリに任せて!」
よし、マリは今は人ごみの中。近くにいるのはマルナさんただ1人。
「マルナさん」
「どうしたの?」
「実はかくかくしかじか……そんなわけで、美味しい魚料理を作ってください!」
「あら、ふふふ、そうだったのね。ええ、任せて、頑張るわ」
よし、美味しい魚料理を食べて俺が魚料理を作らないのをごまかそう作戦実行だ。マルナさんにかっこ悪いところを見せてしまったが、マリの前ではカッコいいおにいちゃんでいられる。もし、マリに失望されたら生きていけない。ヤバイ、想像するだけで涙が止まらない。
ふと隣を見ると、マルナさんが微笑んでこちらを見つめていた。なにこれ恥ずかしい。
「どっどうしたんですか?」
「ふふっ、ようやくソウサクくんの役に立てると思ったらなんだか嬉しくなっちゃってね。いつもソウサクくんに頼りっぱなしだったから」
「なんだ、そんなことですか。マルナさんみたいな美人と一緒に町を歩けるだけで十分元は取れてますよ」
「あらまあ、おばさん相手に嬉しいことを言ってくれるわね。ふふっ、ありがとう」
むむっ、本心で言っているのに子どもの戯言としか思われていない。マルナさんでおばさんとか言っていたら地球の女性のどれだけを敵にまわすことになるか……。俺が大人になったらもう一度同じことを言って赤面するマルナさんを拝んでみたい。
「おにいちゃん、一番美味しそうなお魚さん買ってきたよ」
「おお、さすがはマリ、ありがとう」
「えへへ、どういたしまして」
マリから魚を預かると、周囲の人に見られないようにさっさとアイテム袋へしまう。その後、頭をなでてあげると嬉しそうに目を細める。可愛いなあ。
「1泊1金貨だよ」
買い物の後、さっそく宿屋に向かった。食事つきのプランを進められたが、3食付きで1人金貨1枚という値段であったため、丁重にお断りした。
10金貨を支払いさっさと2階の部屋へ向かう。今回は、路地に入った所で人がいないのを確認してから人力車をカード化したため、駐車代を取られる心配はない。
宿屋内で調理は出来ないため、宿泊中は久しぶりの中華まんシリーズだ。全て自分で入手した食材であるためタダ同然であり、この街の料理よりも美味しいため、勿論不満が出ることは無かった。
お腹も膨れた所で、3人で10日間の予定を話し合う。話し合いの結果、マルナさんは町で食材を見て周り、料理の研究を行うことに、マリはその補佐。俺は冒険者ギルド・鍛冶屋・武器屋などを見て回り、この世界の冒険者の強さや、武器・防具の性能がどの程度なのかを把握することにした。
2人と離れることに多少の不安はあるが、治安は悪くないし、服も俺のお手製だ。そう簡単に怪我はしないだろう。念の為に、お手製の手袋と防犯ベルを渡しておいた。2人の安全のために自重せずに作製したため、これが日の目の見ることのないように祈ろう。
マリは俺だけが別行動を取ることに大変不満がり、リスのように頬を膨らましていたが、夜に遊び相手になり一緒の布団で寝ることを約束すると機嫌を直してくれた。
……怒っているマリも可愛かったです。
翌朝、俺は不安と期待を胸に冒険者ギルドへと向かったが、ここで一つ問題が発生した。
冒険者ギルドってどこにあるのだろう?
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引き続き物語を楽しんでいただけたら幸いです。




