第12話 ぼったくり
グレン団と別れて2日、ようやくアワリティア王国の国境にたどり着いた。
「さて、ようやく隣国アワリティア王国に着きました」
「もう着いたのね。馬車で来ていたら後何日かかったかわからないわ」
「景色がびゅーんと変わって面白かったよね」
「荷物も少ないというか、アイテム袋に入れれますからね。重さがないので楽でしたよ。さて、ここから本題なのですが、金貨も少なくなってきたため、村や町を巡って商売をしようと思っているのですが何かいい商品はありませんか?」
「いい商品?」
「ええ、その、悪目立ちしないというか、目をつけられないような商品がいいのですが」
今後生活をしていく上で、金策は避けて通れない。俺が考えるよりも、この世界の常識を知っている大人のマルナさんの方が考えた法が良いだろう。
「そうねえ、マリにくれたぬいぐるみっていう置物は貴族には売れるかもしれないわ。平民には置物よりも食べ物のほうがいいけどね」
「うーん、甘くて美味しいもの!」
「甘いものは、めったに手に入らないらしいから貴族に目をつけられる可能性が高いわ。まあでも、たまたま手に入ったといって売れば少量なら問題ないかもしれないわね」
「そうですね、ぬいぐるみはよさそうですね。ただ、あんまり貴族とお近づきにはなりたくないのでぬいぐるみを売るとしたらこの国の商人がいいかもしれないですね。甘いものはその時考えましょうか」
うん、ぬいぐるみなら別段怪しまれるようなこともなければ、目を付けられることもないだろう。今回はマルナさんもいるため、子どもだけで売るよりも商売はしやすそうだ。
「あとはお肉は売ってもいいと思うわ。ただし、魔物のお肉じゃなくて害獣に限定したほうがいいと思うけど」
「害獣のお肉に限定ですか?」
「ええ、そしてそれを売るときソウサクくんが倒したって宣伝しながらね。そうすれば、あまり変なのがちょっかいかけてくることがなくなると思うわ」
「なるほど、抑止力にするわけですね」
「逆に魔物だと、それこそ悪目立ちしてしまうし、貴族に囲い込まれてしまう可能性もあるわ」
ふむふむ、なるほどなるほど。やはりマルナさんがいてくれて助かった。一人だったら何を売っていたか検討もつかない。マリは……うん、頭を悩ませている姿がかわいい。
「すみません、街中で商売をしたいのですが」
「商売か、今日中に出て行くのなら一人当たり金貨1枚、1日滞在するなら一人当たり金貨2枚だ」
はい、安定のぼったくり価格きましたー。道中マルナさんから聞いたが、スペルビア王国の場合、王都以外の町では1泊銀貨3~5枚程度らしい。この国ではある程度の出費は覚悟しておいたほうがいいかもしれない。
また、金額以外にスペルビア王国とこの国には大きな違いがある。この国自体にはスペルビア王国のような奴隷制度はないらしい。ただし、奴隷が禁止されているわけではなく、借金を返せなかったり税を納められないような場合、奴隷として売られることはあるそうだ。だから貴族や王族は好き勝手に奴隷にすることは法的には出来ないらしい。ただし、好き勝手に命を奪ってもお咎めなしとのことだから、あまり変わりは無いように思うが。
「とりあえず、まずは商会に向かいましょうか」
「そうね」
「わあー、いろんな建物があるね、人もいっぱいだよ」
街行く人々の服装は、以前のマリたちとさほど変化は見られない。街の中央に向かっていくにつれ、清潔な服装になっていき、建物も華やかなものになっている。
マリは様々な建物や人に目移りしている。マルナさんは平静を装っているが、自国以外の街を見ることが珍しいのか街中にチラチラ視線を送っている。もしかしたら、スペルビア王国でも中央に行く機会はなかったのかもしれない。
「うーん、やっぱり商会に向かう前にあそこで少し腹ごしらえでもしましょうか」
「ごはん? わーい、やったー!」
「で、でも、大丈夫かしら。私たちこんなきれいな建物でご飯食べたこと無いわよ?」
「大丈夫です。今のマルナさんとマリはどこからどう見ても上流市民に見えます。堂々としていれば問題ないですよ」
店の駐車場らしきところにいる人に声をかけ、人力車を駐車する。この人はどうやら馬車などの見張る係りらしい。ちなみに、大銀貨1枚とられましたとさ。駐車代高すぎだろう。
店内は銀製のシャンデリアで煌々と照らされており、温かみのある雰囲気になっている。マリもマルナさんもこの店の雰囲気が気に入ったのか、どことなく嬉しそうな表情を見せている。これは食事も期待できるかもしれない。メニューを手にとり開いてみると値段が書かれていなかった。きっと、デートや接待で来たときに、相手が気兼ねなく頼めるようにという工夫だろう。異世界のわりになかなかやるじゃないか。その代わり、お金持ち以外ではいくらかかるか未知すぎて二の足を踏んでしまうに違いない。
「マリ、好きなもの頼んでいいからね。ほら、どれにする?」
「えっほんと?やったー!!」
「マルナさんも遠慮せずにどうぞ」
「ふふ、ありがとう」
字の読めないマリのためにメニューをみながら口頭で説明していく。うんうん悩んだ末、マリはステーキセット、マルナさんは野菜セット、俺はフィッシュセットを頼んだ。セットにはパン2つと日替わりスープ、そして日替わりスイーツがついてくるそうだ。お米はどうやらないらしい。
待つこと十数分、お待ちかねの料理が運ばれてきた。さてお味はどうか……。
「うーん、おにいちゃんの料理のほうがおいしい」
「そうねえ、不味い訳ではないんだけれど、ソウサクくんの料理に比べるとねえ」
「味付けが全体的に薄いのかもしれませんね」
不味い訳ではない。でも物足りなく感じるのは成長期真っ只中だからであろうか。パンは固くボソボソしており、スープは出汁は効いているが、塩っ気が足りない。メインの焼き魚は素材そのものが良い為か調味料がなくてもまあまあ美味しくいただけた。デザートはバナナみたいなフルーツだったが、糖度がすごく低く美味しくはない。
料理を食べ終わった後、支払いのためにレジへ向かう。レジでは優しそうなお姉さんが仕事をしていた。
「ごちそうさまでした、支払いお願いします」
「ありがとうございました。ところでお客様はよその国の人で間違いありませよね?」
「ええ、それがなにか?」
「いえ、なんでもありません。それでお会計でしたよね。セット3人分で合計3金貨になります」
「……3金貨ですね、どうぞ」
「ありがとうございましたー!」
優しそうなお姉さんなんていなかった。そしてメニューに値段が書いていない理由が良くわかった。もうお店では絶対にご飯を食べない。果たしてこの国に良心的な場所があるのだろうか。
結果を言おう。そんな幻のような場所はなかった。商店に害獣の肉や砂糖・塩を売りにいけば、質が悪いだの、不純物が混ざっているだの様々な難癖をつけて安く買い叩かれた。しかも、それだけではない。安く買い叩かれたといっても、実際は質がよく量も多いためそこそこまとまった金で懐は温まっていた。ところが、そこに商人が連絡したであろう領主軍が現れ、税金だといって売り上げの6割を徴収していった。そろそろ堪忍袋の緒が切れるかもしれない。
その後様々な街を巡ったがどこも似たり寄ったりだ。王都ではもっと酷いかもしれない。幸いなことに、マリはお金のことは良く分からないため、純粋に旅を楽しむことができている。マルナさんもそんなマリを見て幸せそうにしているためよしとしよう。ただ、この国からはさっさとおさらばしたい。
ぼったくり価格以外では何も問題なく順調に旅が進んでいった。最近では何もしないのは悪いと、マルナさんが料理を作ってくれることも多くなった。俺の料理と違って、その人の好みに合わせた絶妙な味付けに調理されていて、これがまた美味しい。日に日に料理の腕を上げているようだ。彼女のスキルに「調理技術lv1」が追加されているのが何よりの証だろう。実に今後が楽しみだ。よし、王都では珍しい食材を買いあさろう。すべては美味しい食事のために!
お読みいただきありがとうございます。
少しでも続きが気になりましたら評価やブクマしていただけると著者は喜びます。
今後ともよろしくお願い致します。




