第14話 冒険者ギルド
町行く人に銀貨を握らせて聞き込みすること数回、ようやく目的の場所までたどり着くことができた。冒険者ギルドは3階建ての大きな建物だった。この建物の中に害獣や魔物を狩ることを生業とする奴らが沢山いるのだろう。冒険者と言うぐらいだ、屈強な男達が集まっているに違いない。そんな中に子どもの俺が入っていって果たして無事に生還できるのかどうか。
意を決して扉を開け放ち、建物の中へと足を踏み入れる。
室内は調度品が整えられており、値段の高そうな見てくれだけの良いイスやテーブルが並べられていた。想像とは違いとても清潔だ。冒険者の風貌や格好は想像していた通りだが、正直この空間とマッチしているとは思えない。
もっとボロボロの机とイスで、昼間から酒飲みの冒険者がたむろしているのを想像していたんだが。
受付まで足を進めるが、まったく絡まれる気配がない。それ以前に視線も感じないなんてちょっと寂しい。いや、何も問題なくていいんだけどね。
「すみません、冒険者の登録をしたいのですが」
「登録ですね。今まで他の国で冒険者登録をされてますか?」
「いえ、していません」
「分かりました。それではこの水晶に手をかざしてください」
予想以上にすんなり登録が進んでいる。この受付のお姉さんは子どもが登録することに何の疑問も持たないのだろうか?
「あら、子どもなのにHPとMPが凄く高いわね。とても努力したのね」
あっヤバイ。自分の能力が高いこと普通に忘れていた。これは騒ぎになるかもしれない。あれほど目立たないように気をつけなければならないって思っていたのに、気を抜くとすぐこれだ。どうやってこの状況を切り抜けるか……。
「はい、これがあなたの冒険者カードよ。初めての登録だから新人ランクからね。あなたの年齢でこの能力値なら将来エリートランク冒険者になれるかもしれないわね」
「あ、ありがとうございます」
ん?思ったより騒がれない。もしかして冒険者だったら俺ぐらいの能力はありきたりなのだろうか。もしそうならマルナさんやマリが危険だ。今すぐ引き返さないと――って、あれ?
『冒険者カード』
【名前】ソウサク
【ランク】新人
【HP】100/100
【MP】100/100
【魔法】
初級魔法
明らかに今の自分の能力と食い違っている。それに、スキルの表示もない。この水晶では俺のHPやMPが高すぎて正確に表示されないのか?そういえば、マリやマルナさんからはスキルという単語を聞いたことが無かった。もしかしたらこの世界の人々にはスキルという概念がないのかもしれない。だけど、あの小屋に会った水晶にはしっかりスキルが表示されていたし、アイルックリングでもスキルは表示されている。一体どういうことだろうか。取り合えず、これに関しては帰ってからマルナさんと要相談だな。
「はい、それではお支払いお願いします。冒険者カード作成代として2金貨頂きます」
物思いに耽っていた思考を現実に引き戻される。うん、まあ予想はついていたよ。この国にただなんてものがあるとは思えないもの。
「ありがとうございます。ついでにギルドの説明を聞きますか?」
「あっはい、おねがいします」
「わかりました、ありがとうございます」
ふむ、意外といっては何だけど説明してくれるサービスなんてものがあるのね。ま、2金貨も支払ったからそれ位はしてもらわないと割に合わないよね。
「まず、子どもでもすんなり冒険者になれたことを不思議に思われているのではありませんか?実は、王都内では害獣や魔物の買取ができるのは冒険者ギルドだけであり、冒険者にのみ取引が許可されていますので、必然的に皆さん冒険者に登録されるのです。ですので、子どもが登録しくるのも珍しくありません」
「そうだったんですね。でも王都外では冒険者でなくても普通に売買できましたよね?」
「はい、確かにその通りです。しかし、王都外では基本的に買い叩かれるため、冒険者ギルドで取引したほうが断然お徳です」
「へ、へーそうなんですねー」
損していた……だど?受付のお姉さん、それもっと早くに言って欲しかったよ。
「それではギルドについて説明していきますね。ギルドにはランクというものが存在します。ランクは一番下から新人、一般、プロ、エリートと4段階に分かれています。ランクアップは討伐した害獣や魔物の種類や数、ギルドへの貢献度などによってこちら側で決めさせていただきます。ランクによって王都内のお店で割引が着くようになりますので頑張って上を目指してください。つぎに依頼のお話をします。ギルドでは基本的に依頼というものはないのですが、時々害獣の退治であったり、魔物の素材集めの依頼が張り出されることがあります。特に魔物の素材集めは依頼料が高額となっていますので人気があります。ただし、魔物相手ですので、死亡率も高いです。ですので新人冒険者にはお勧めしません」
ふむふむ、とりあえずランクの名前がダサいことはよく分かった。俺が冒険者制度を作るならばもっとましな名前にしよう。やっぱり一番上は白衣ランクかな。このランクまで上り詰めた人には白衣を贈呈する。うん、いいかもしれない。依頼に関しては俺は関係ないしスルーでいいや。
「最後になりますが、冒険者カードは年に1回の更新が必要になりますのでご注意ください。更新の際は1金貨必要になります。また、カードを紛失された場合、再発行にも1金貨必要となっておりますので無くさないようにしてください。以上で説明を終わらせていただきます」
「はい、わかりました。ありがとうございました」
ふふん、心配しなくても更新しに来ることはないから安心してくれ。もうこのギルドには1銅貨たりともお金を落とさん。それではお姉さん、さような――――ん?なんだろう、この差し出された手のひらは。
「それでは、説明代金として1金貨頂きますね」
しぶしぶお代を支払っていると、扉が新たに開く音が聞こえた。途端に先ほどまで静かさとはうって変わってざわめき出した。周囲の視線がギルド内に入ってきた大男に集まる。大男を見つめる彼らのその瞳には憧れの様な感情が込められていた。
「おいおい、エリート冒険者様だぜ」
「あれが噂の魔黒狼殺しか」
「ああ、プロ冒険者数十人の死者を出した魔物を1人で倒した英雄さ」
強面フェイスに丸太並みの腕、筋肉はゴツゴツとしておりまるで岩石のようだ。全身は黒色の装備で固められている。あれがこの国で最強に分類される冒険者か。ふふふ、まさか初日で出会えるとはな。さてさて、どれ位の強さがあるのだろうか。
【名前】ユン(28歳)
【職業】剣士
【HP】550/550
【MP】300/300
【スキル】
「剣技lv5」「剛剣lv3」「剛力lv4」
【魔法】
初級魔法
【装備】
武器:ブラックホーンソード
防具:ブラックレザーヘルム、ブラックレザーベスト、ブラックレザーパンツ、ブラックレザーシューズ
うーん、グレンさんよりは確実に強い。装備も魔物の素材がふんだんに使用されており、今までの人と比べると段違いだ。だけども、正直思った以上の強さは感じない。この程度を冒険者の基準として考えてもいいのだろうか?
しかし、考え方を変えてみればこれは喜ばしい情報だ。万に一つでもマルナさんたちを傷つけることは出来ないだろう。
「すみません、換金お願いします」
もう用事は済ませたため帰ろうとした矢先、10歳程度の男の子が害獣を引っさげてギルド内へ入ってきた。何でかは分からないがユンさんの時と同様に周囲の視線が彼に集まっている。しかし彼の場合、そこに嘲笑が含まれていた。
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