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時は復讐を忘れない  作者: 23
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第二十九話 集まらない計画

八月九日。


八月十五日のための話し合いは、五つの場所を電話で繋いで始まった。


黒瀬家。

病院。

御厨家。

一時保護所。

学校。


湊は、最初の十分で嫌になった。


誰がどこにいるか。

誰が同行するか。

電話が切れたらどうするか。


大人の声が順番に流れる。


「全部決めたら、結局一枚になるじゃん」


湊が言った。


高井の声が止まる。


『安全計画には、位置を把握する必要があります』


「外の兄ちゃんの場所では、それをやって俺が消えた」


『同じ現象とは決められません』


「でも怖い」


湊は理屈を続けられなかった。


「全部知ってる人を作りたくない」


電話の向こうで、佐伯先生が言う。


『学校は設備だけを持ちます。誰が来るかではなく、使える出口と閉鎖区画だけ』


児童相談所の職員も続ける。


『保護先は、自分が預かる人の情報だけ』


直哉は工具箱の位置だけを警察へ伝えると言った。


黎一が神社へ行くと言う。


傷のある澪がすぐに遮った。


『私の場所を叔父さまが決めないでください』


『決めていない』


『今、私が御厨家にいる前提で話しました』


黎一は黙った。


現在の颯真は黒瀬家を選んだ。


「外の俺が来たら、家にいる」


湊が訊く。


「俺は?」


「知らねえよ」


「兄ちゃんのいる所に行く」


「それやめろ」


「何で」


「俺の場所をお前の答えにすんな」


湊は紙を握った。


兄と離れたくない。


それだけだった。


「じゃあ、今は決めない」


高井が確認する。


『空欄にしますか』


「十五日の朝に決める」


宗一郎の声が病院から入る。


『湊は黒瀬家から離せ』


「祖父ちゃんが決めないで!」


『工具箱と外の颯真と湊を同じ場所へ置くな』


「それ、分かってること?」


『危険だ』


「分かってないんじゃん」


湊は受話器を睨んだ。


『危険を避けるには――』


「俺の場所を先に書くの、やめて」


宗一郎は黙った。


その後、話は宗一郎自身の扱いへ移った。


時計へ手を伸ばした場合、身体を止める。


高井が読み上げた時、宗一郎が言う。


『同意しない』


全員の声が止まった。


「昨日、止めろって言った」


湊が言う。


『私は、誰かが思い込んだだけで縛られることには同意しない』


「じゃあ、どうしたら止めていいの」


『私の名を呼べ。それでも手が止まらず、家族以外を含む二人が確認したら止めろ』


『遅い』


高井が言う。


『それでも、俺はその条件でしか同意しない』


宗一郎は協力するふりをしなかった。


湊は腹が立った。


でも、少し安心もした。


「祖父ちゃん、ほんとは開けたいんだね」


『ああ』


「最悪」


『そうだな』


「そこで同意しないでよ」


電話の向こうで、颯真が吹き出した。


『もう切れ。これ以上やると、会議だけで八月十五日になる』


珍しく全員が反対しなかった。


決まったのは三つだけだった。


誰か一人が全員の位置を持たない。


工具箱を開けない。


宗一郎の右手を止める条件は、本人が言った通りにする。


それ以外は、その場所にいる人が決める。


通話を切った後、湊の紙には自分の行き先だけが空白で残った。


直哉が覗く。


「怖いか」


「うん」


「今決めるか」


「決めない」


「それでいいのか」


「分かんない」


湊は紙を折った。


翌日まで、答えを作らないことにした。


その夜、御厨家から警察へ連絡が入るまで、誰も黎一が外出したことに気づかなかった。


情報を分けたことで、一人が持ち場から消えても、別の場所にはすぐ伝わらなかった。


安全のために分けた。


そのせいで、連絡は遅れた。


湊がそれを知った時、もう黎一の車は学校へ向かっていた。

最後までお読みいただき、ありがとうございます。


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