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第20話 ファナ、コーネリアスと再開する



「なんだ。なんの騒ぎだ」

「ギルド長……!」


 階下の騒ぎに眉をひそめたギルド長が、ゆっくりと階段を降りていく。


「ギルド長……?」


 コーネリアスが、自分の目の前にいる女性の発した言葉を受けて、階段を降りてくる人物がギルド長なのだと察した。


 それから、その後ろに続くエリクと、私を見て――。


「……ファナ?」


 驚いたような顔で、私の名前を呼んだ。

 その瞬間、その場にいた人たちの意識が一斉に私の方に向いたのがわかった。


「知り合いか?」


 隣のエリクが私に向かってそう尋ねてくる。

 が、私はそれには答えず、なんともいえない苦笑いで返した。


 いやー! だってさあ!

 確かに知り合いではあるけど、知り合いとか言いたくなくない?

 明らかに今、ギルドの玄関ホールで問題起こしてる人間だし。

 何より、自分勝手に人を婚約破棄して家から追い出すような相手だよ?

 そもそも『YOU! 縁切ろうぜ!』って言って来たのも向こうなんだし、もうこれ知り合いじゃなくてよくない?

 いいよね!?


 と私が内心でそんなことを思っていたら。

 どうやらそれで、エリクもある程度事情を察してくれたようで、彼自身も値踏みをするような顔でコーネリアスを見やった。


「ファ、ファナ……。この間のことは悪かった。あれは俺がどうかしていたんだ」


 だから、この後ちゃんと俺と話す時間をもらえないか、と言うコーネリアス。

 どうやら、場の空気が自分に不利であることは悟ったようね。

 取り繕うようなことをこっちに向かって言ってきたんですけど。


 ……う〜〜〜ん。

 でもねえええええ……。


「でも私、『もう再び縁は結ばない』って誓約書も書かされましたしぃ」

「そんなもの、撤回すればいいだろう……!」


 ぶりっこモードでもったいぶる私に、妙に焦る様子を見せるコーネリアス。

 うわあ……。

 自分勝手も極まれりでしょ。

 何が撤回よ。そもそも言い出したのもそっちでしょーに。

 ……これは、何かあったんだろーなあ。

 撤回してでも私との関係を修復しなければいけない事態が起こったのだ。

 そうは思えど、助けてあげたいという気持ちは微塵も起きないけれども。


 ――そこに。


「……すまんが、内輪の話ならばここではなく別の場所でお願いしたいのだが」


 私たちのやりとりを間で見ていたギルド長が、そう言って申し訳なさそうに口を挟んでくる。


「……いえ! むしろ今日、用があったのはこの者ではなくギルド長のほうで」

「……ほう? 私に」


 どことなく焦りを浮かべながらも私を見ていた目線をギルド長に移すと、コーネリアスはギルド長に向かって話を続けた。


「失礼しました。おれ……いや私は、バーケンレーグ子爵家の次男で、コーネリアスと申します。今回私は、冒険者ギルドで冒険者コンというものが開催されたと聞いて、次回開催の際に出資者として資金提供をさせていただきたいと手紙を書いたのです。それについて返事をもらえていなかったのでどうなっているのか話をお伺いしたく」

「……その件については、現在今後の方針を決めて選定を進めていく予定だ」


 後日連絡をするのでそれまで待て、と言うギルド長に、なおもコーネリアスが食らいつく。


「後日とはいつ頃になりますでしょうか。いえ、はっきりと申し上げましょう。一体いかほどの金額を提示すれば、他家ではなく我がバーケンレーグ家をお引き立ていただけますでしょうか」


 なかなか引こうとしないコーネリアスに、だんだんギルド長も苛立ちを見せ始める。

 そんな中、隣のエリクがこそっと私に耳打ちをして来た。


「……もしかしてあれか? あれが前にお前が言ってた『一方的に婚約破棄を言い渡して家から追い出した元婚約者』か?」

「あ〜〜……、まあ……」


 エリクの言葉に、言葉を濁しながら肯定する。

 さすが王子殿下。

 人をよく見ていらっしゃるというか、察しがいいというか……。


 最終的に、ギルド長が「くどい! 今ここで即答できないということは、私の一存では決定できないことだとなぜわからんのだ! あまりにしつこいと、今後の選定にも響いてくるが、それでよろしいか」とコーネリアスを一括し、とりあえず一旦の終着を見せた。


 そして――。


「……わかりました。この場はこれで、一旦引かせていただきます」


 そう言ってギルド長に向かって殊勝にそう告げたコーネリアスは、そのままこの場を立ち去り、この騒動がようやく終わると思ったのだったが。


 ギルド長に挨拶をしたコーネリアスは、再び私に視線を戻し、まったく悪びれない様子でこちらに話を戻して来た。


「ではファナ。この後少し、話す時間をもらおうか」


 黙って俺について来い――と。

 いかにもコーネリアスらしい、高圧的な態度で私に促してきたのに対して。

 答えたのは、私ではなくエリクだった。


「それは困るな。うちのパートナーに用があるなら、俺を通してもらわないと」


 私を庇うようにたちはだかり、コーネリアスに向かって泰然と笑って見せる。


「……なんだお前は。パートナーだと?」


 こうして。

 冒険者ギルドの玄関ホールで、謎の第二ラウンドが始まったのだった――。

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