第19話 ファナ、冒険者ギルドに再び顔を出す
がやがやがやがや。
ガヤガヤガヤガヤ。
――はい。
ここは、ジグリスの王都ファタルにある冒険者ギルド。
――の奥まった部屋にある、応接室のような部屋。
私は今、エリクに連行されて、王都の冒険者ギルドに来ています――。
「お待たせしました、エリク殿」
「ギルド長。こちらこそ忙しいところを申し訳ない」
応接室でソファに腰掛けて待っていた私たちの元に、ドアをガチャリと開けてやたらとガタイのいいおっさんが入ってくる。
どうやら、この人物がギルド長らしい。
……う〜〜〜ん。なかなかに食えなそうなおっさんである。
「あっ、ファナさん」
「……リサ?」
そうしておっさんの後に続いて入って来たのは、実家の近くの街のギルドで受付嬢をやっていたリサである。
思わぬところで知り合いに出会したことで、私もおっと驚いていると、
「なんだリサ。知り合いか?」
「あ、はい。ファナさんは、私が勤めていたギルドのトップクラスの冒険者で」
「おおそうか。いや、これは失礼した。娘がいつも世話になっております」
そう言って、リサと会話のやり取りをしたギルド長が、私に向かって握手を求めてきた。
……お、親子……?
私が驚きつつもさりげなくギルド長とリサを見比べると、ぱちりと目があったリサが『えへへ……』と聞こえて来そうな表情をしていた。
世間狭っ!
てかリサ、お偉いさんの娘だったのかあ……!
「ファナです。こちらこそ、お嬢さんにはいつもお世話になってます」
そう言いながら、ギルド長から差し出された手を握り返す。
「ギルド長。ファナは今回の冒険者コンでの俺のマッチング相手だったんだ。腕が良かったから、そのまま俺のパーティーメンバーになってもらった」
「おお……、それほどの使い手なのですね」
それはますます、今後ともよろしくお願いしないといけませんな! とギルド長が握ったままの私の手をブンブンと強く振った。
「おっと。立ち話もなんですし、ひとまずおかけください」
「ああ」
そう言われて、ギルド長を出迎えるために立ち上がっていたエリクと私は、再びソファに腰掛ける。
「さて――、早速だが。ギルド長、先日の冒険者コンのアンケート結果、取りまとめてもらえて非常に助かった」
「とんでもありません。エリク殿のお役に立てるならば光栄です」
「おかげで、王宮内部の連中を説得するのにとても役に立った。あらためて礼を言わせてもらおう」
……なるほどお。
この間の会議で使った冒険者コンのアンケートは、冒険者ギルドに取りまとめてもらっていたのか。
私、書いた記憶ないけど。
「礼を言うついででなんだが――、できれば次は、実際にマッチングが成立した冒険者たちの話も聞けるといいな。広告に使わせてもらえれば今後の企画のPRにもなるし」
「おお、確かに」
ふむふむ。
実体験を載せて、参加者の申し込み意欲をかき立てようという作戦か。
確かに、ないよりはあったほうが効果はあるよね……。
こうやって聞いてると、エリクは意外とやり手だなあと感心する。
「現状、参加者は国内のギルドに籍を置いている冒険者のみに限定しているが、ゆくゆくは国外からの参加者も参加できるようにしたい――というか、もともとそこが狙いだからな」
「そうですね……。外国からの移住者によって国力を上げるという目的も加味しますと、そう遠くないうちに受け入れ態勢を整えたいですね……」
他国からの移民に関しては、先ほどギルド長が告げたように単純に人口が増えることで国の収入が上がるという利点がある。
反面、国民性の異なる他国民が移住してくることで、原住民との摩擦が生じるという問題もある。
国益のことを考えると、人口を増やしたいというのが国の思いだろうが、移民によって国が荒れることで逆に国民の国政に対する非難が高まったり、他国に流出されてしまっては本末転倒である。
そういった点も含めて、ナイーブな問題ではあるよね……。
「まあ、そこはおいおいだな。差し当たっては回数を重ねていくことのほうがまずは重要か」
「はい。幸いなことに、今回の話を聞きつけて、出資者となりたいと手を挙げる者たちもいくつか出ておりますし」
「そうか」
それは上々だな――と言いながら、順調に打ち合わせは進み。
次の冒険者コンの会場はどこがいいか。
次回、主催となる冒険者ギルドはどの街のギルドが適しているか。
だとすると、開催時期はいつぐらいがいいだろうか――。
それに加えて、どこそこにこんな著名な冒険者がいる、などの世間話も交えつつ。
「うん。とりあえず今日のところはこれくらいで問題ないだろう」
「は。貴重なお時間をありがとうございます」
と言って席をたち。
ギルド長とリサに送られながら、冒険者ギルドを出ようと玄関まで歩いていた先のことだった。
「あのっ……! 困ります……!」
「ここに来ているということはわかっているんだ! 少しだけ時間を……!」
冒険者ギルドの玄関ホールの方で、何やら騒々しい声が聞こえてきたのは。
「……なんだか騒がしいな」
そう言ってエリクが何気なく小首を傾げたが、その声を耳にして、私は嫌な予感しかしなかった。
「お前みたいな下っ端じゃ話にならないんだ! いるんだろうギルド長が!」
その声の主を目の当たりにして、嫌な予感が確信に変わる。
私たちが向かっていた先。
冒険者ギルド階下の、玄関ホールで騒いでいたその人物。
それは――、私をクレイドル家から追い出した張本人。
元婚約者のコーネリアス――、その人であった。




