第18話 ファナ、冒険者コン実行委員に入れられる
――ファラ・アストリア。
いまから三百年ほど前の時代を生きた【伝説の魔術師】と言われた彼女は、出自も不明であればその突然の死も謎に包まれていた。
彼女の功績。
それは、無詠唱魔術の基礎を構築し魔術の世界だけでなく一般社会においてもめざましい発展を遂げる一助となったこと。
魔導灯。
魔導かまど。
魔導湯沸かし器。
冷蔵・冷凍庫。
彼女の研究で、人類の文化レベルが加速的に発展した。
彼女が三十代半ばで早逝していなければ、人類の文明はもう二段階はあがっていただろう――などという者もまことしやかに存在する。
☆ ☆ ☆
……でも私。
単に面白い発見が好きでやってただけで、別に社会貢献とか何にも考えてなかったんだけどね――!
さてさて。
そんな私が、今何をしているかというと。
「ではこれから、次回冒険者コンについての会議を始める」
エリクに引き摺られて、冒険者コンの会議に参加させられています――。
いや!
なんでだよ!?
って私も思ってるよ!
でもエリクに、
「俺を助けてくれるって言ったじゃないか」
と平然とした顔で言われ、
「冒険者コンの次の会場選びにも付き合ってほしいし、なんならいい案があれば意見も出して欲しい」
と言われて引き摺られてきたのだ。
まあね、一宿一飯の恩義もあるし。
戸籍も都合してもらったし。
いいですよそれくらいのことなら。
それにしても。
……まだやる気なんだねー、冒険者コン。
前回の時も、リサが人集めに苦労しているようなことを言っていたのに……。
「……しかし王子。そこまでしてこの企画を押し通す必要があるのですか?」
おっと、どうやら私と同じ考えの人がいるみたい。
エリクに対してこんなに率直な物言いができるということは、それなりの役職にある人物なのだろうけど。
「貴君の言わんとすることはわかる。冒険者に時間と金をかけるより、市民に割くべきだと言いたいのだろう。俺ももちろんその点については異論はない」
自分に対して渋い物言いで問いかけてきた相手に対して、エリクが毅然とした態度を崩さずに返す。
「だが貴君は知っているか? 数ある職業の中で、一番国家間の流動が多いのは商人と冒険者だ。そして、人は財産だと俺は思っている」
だから優秀な冒険者にこの国に居着いてもらい、この国の財として留めおきたい――というのが。
少子化対策とは別の、冒険者コンのもう一つの理由なのだと。
……なるほどなあ。
いろいろ考えているのねえ。
「ちなみに、今回の冒険者コン参加者の事後調査とアンケート結果がこれだ」
いつの間にそんなものをとっていたのか、まとめられた資料をエリクが会議参加者に配布する。
ふむ、どれどれ……。
質問1) 今回の冒険者コンで、新しい出会いはありましたか?
・今回の冒険者コンをきっかけに付き合い始めた 6人
・今回の冒険者コンで新しい仲間を見つけることができた 10人
・今回の相手は悪くなかったが、次に繋げようとは思えなかった 58人
・今回の冒険者コンのマッチング相手が良くなかった 8人
・その他 8人
………………その他、ってなに?
ていうか、思ったより結構な人数が参加していたことにちょっと驚いた。
で、えーと次が……。
質問2) 次回、また開催されたら参加したいと思いますか?
・ぜひ参加したい 24人
・どちらかというと参加したい 35人
・どちらかというと参加したくない 9人
・参加したくない 4人
・その時の状況次第 18人
質問3) 質問2で『ぜひ参加したい』『どちらかというと参加したい』と答えた方。なぜそう思ったかをご記入ください。
・ダンジョンに入れる機会がそうないから
・パーティーを組むのに知らない人に声をかけるのは不安だから
・真剣にパートナーを求めているから
・結婚して引退したい
質問4) 質問2で『参加したくない』『どちらかというと参加したくない』と答えた方。なぜそう思ったかをご記入ください。
・さすがにダンジョンを二人で攻略するのは厳しかった
・やっぱり自分はソロが性に合っていると思った。人と組むのは向いてない。
・ダンジョン攻略じゃなく普通の合コンがよかった
………………。
なるほどなあ。
いろんな意見の人がいるなあ。
だけど、過半数以上はこの企画について好意的なのね。
けっこう意外……。
「見ての通り、参加者の反応は思いのほか悪くない。また、こうやって冒険者コンを開催することで有力な人材の情報を得ることもできる」
有事の際、頼れる冒険者とのパイプを繋いでおくことも国益につながる。
そうまとめていくと、開催すること自体はマイナス要素ばかりではないと思わないか――? と尋ねるエリクに。
意を唱える者は、誰もいなかった。




