第五十話表裏一体
「天道、立てるか?」
蛇山は天道に手を差し出す、だがその手は弾き飛ばされる。
「自分で行ける…どけ」
さっきは強力で来たかと思えたのだが、ピリピリした雰囲気で近づいたら殺されそうな勢いだ。
「厚治!」
そこにいた鳴神や真崎をどかし、天道はすぐさま一直線に真崎の方に駆け寄る。
「悠仁…大丈夫だ…それより他の奴らにも感謝してやれ」
息が上がりながら天道にそう伝える。
「そうか…すまないみんな」
鳴神が壁を伝って立ち上がる。
「すまないじゃないだろ?」
「……ありがとう」
そのまま皆、自分の場所へと変えていった。
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次の日にBIRDの集会が開かれた。もちろん周囲は修羅場としか言えない状況だった。
「来たのか、お前ら」
無言のまま突き進む天道と真崎、そしてその前には紀村がしたり顔で笑っていた。そのしたり顔を殴るが、紀村は動じない
「幹部が抜けたけど…ウルフガングはどうする?」
天道は机を叩く。
「決めた…ウルフガングは解散しない」
意外な返事だが紀村は笑いが止まらなかった。
「へぇ…で?」
だがもっと予想外の返事を後ろの真崎がする。
「俺らはBIRDを抜ける…犯罪はもうこりごりだ」
ウルフガングの解散…天道または真崎の脱退は予想内だったがBIRD自体を抜けるということはもっと予想外だった。
「ふっ…まぁこれはこれで…」
だがしかしもっと予想外なことをいうものが現れた。
「あっ俺も抜けまーす」
それは渋谷デベロッパーズのリーダー佐鹿だった。紀村もそれは流石に想定外だった。
「何でだ?お前まで抜ける必要ないだろ?」
佐鹿は椅子に大胆に腰掛け言う、ため息をつきながら言う
「ショージキさぁ…あれはないわぁ…俺がBIRD抜けたくなるのも分かるっしょ?」
「俺らも同意です」
他のメンバーである、寺尾や鈴木もそれに賛同し、ウルフガングと渋谷デベロッパーズの面々が出口へと向かおうとする。
「へっ…ここも終わりだな…」
すると独り言を言った太田を
ドスッ
「ギャアァ!」
何者かが蹴り飛ばす。
「今日はボスがいないからって随分調子に乗ってるな」
そこいたのはキャップと白いパーカーのフードを被った男、村雨雅人だった。
「村雨さん」
「言っとくけど今回の件は紀村の単独犯じゃない、俺ら能面一家も協力してるってこと忘れない方がいいよ」
確かに、あの時何故か村雨は急にあの場に来た。今回の件に村雨が噛んでいるとすると辻褄が合う。
「お前が来たとて何の得があるんだ」
天道がにじり寄るが村雨は飄々とした態度を続ける。
「いやぁ?そもそも俺は今回の件が失敗したら人員を派遣するだけだったんだ、でも紀村が上手くやってくれたから、俺はただ後押ししただけってことになるな」
「結局お前は何をしたいんだ」
「何か面白そうだったからな事業も広げたいし?」
その特に理由のないとしか言いようがない態度はウルフガング全体の神経を逆立たせた。
「お前いい加減にしろよ!一チーム潰されるほど俺らはやわじゃないんだよ!」
村雨に近づき拳を握りしめる天道、それに対して村雨もガンを飛ばす
「なんだ?ここで一回やるか?」
だが奴は目をそらし少しの間沈黙が続く。
「なんだ?」
「いやちょっと考え事…あそこにいた銀髪ってウルフガングじゃないのか?」
「銀髪?」
一瞬誰のことが分からなかったが、それはあの時にいた蛇山のことだと理解した。だが理解が速かったのは佐鹿の方だった。
「おい、アイツは関係ないだろ」
そう村雨に突っかかるも、村雨は大きな声で笑う。
「でも、あいつも強そうだっただろ?それにあの場にいたってことはどっちかの戦力…いや天道と協力して紀村と戦ってたから佐鹿側か?でも資料で見たことはある、光源クルーの藤森と戦って中山だっけ?」
「蛇山だ、それにあいつはそこでボコればいいだけだ負けたのはしょうがない…」
すると後ろのドアが大きく開く。
「聞き捨てならないな、蛇山がまたなんかやったのか」
そこにいたのは光源クルーリーダーの藤森といつの間にかヘアバンドを着けてイメチェンした榊原潤だった。それに他の幹部である南田智と松岡翔がいる。
「村雨はどうしたい?蛇山を潰すなら俺らも協力する。」
榊原の予備声にもう村雨の隣にいた黒いマスクをつけた男が立つ。
「どうします?村雨さん?」
「何言って…」
佐鹿が反論しようとするも、続々と能面一家の幹部が立ち上がる。
「ビビってんのか?佐鹿?」
金髪の男は言う
「馬鹿か…お前ならいつでもやれるだろ?」
その言葉に激高し、殴り掛かろうとする金髪をニット帽が止める。そしてキャップと鼻ピアスを着けた男が紀村に近づく。
「お前は能面一家に入るのか?」
「俺?さぁ…でも必ず協力はするさ」
紀村は元々天道とは別の組織、天道に敗北した結果譲ることになっただけだ。
「BIRDが割れ始めとる…」
宮下が心配する中カーテンで仕切られた部屋からあの女が出てくる。
「話は聞かせてもらいました、それで…お二方は本当にBIRDを脱退するのですか?」
「俺は抜けるよ、2人は知らないけど」
その女は能面一家、ウルフガング、渋谷デベロッパーズの幹部、そして紀村に印刷した紙を渡す。
「これまたアナログだな」
その紙が渡された糸が読み取れず、混乱するものが多数だったが、女は説明を始める。
「それが渡された、チームの皆様は1週間以内に抗争を行ってください、それに勝利した方はBIRDを抜けることができます」
他のグループがざわめく中、村雨は大きな声で笑う
「いいじゃん!それでどこで戦う?」
天道の方に手をかける、たがその村雨の挑発に天道はビクともしない
「そうだな…どのチームも属してない場所…中野なんてどうだ?」
もちろん、異論はなかった。だか1人だけそれに意見を言うものがいた。
「俺らも参加させろ」
それは光源クルーリーダーの藤森だった。だがその肩を榊原が叩く
「お前は別にやり合う必要はないだいろ?無駄な争いに首突っ込むなら事業を立て直した方がいい」
肩に添えられた手をそーっと放す。
「俺は知ってる、お前が松岡と南田に襲撃させたときにお前も蛇山たちに協力してたってことに」
佐鹿は「バレたか」とでも言いたげにほんのり笑顔を浮かべる。だがその笑顔は藤森にとって聖書に出てくる悪魔が笑っているように感じた。
「まぁ、あの時はたまたまいただけだよ、たまたま」
そして一直線に指をさす。
「俺はお前を潰す。」
そして両者が立ち上がり互いに睨み合う。
「いいじゃん!俺はどっちにしろ参加するから、お前も参加したら。」
女に手を振り紙をもらう。
「日程はこちらで決めさせてもらいます、今から一週間後、六月二十四日です」
「あっその日雨ふるらしいぞ、別にいいよな?」
スマホをポチポチいじりながら話聞いていた村雨が急に話に入って来た。
「関係ない…蹴りを着けられるならな」
「俺も悠仁に賛成だ」
ウルフガングの面々に文句はない。
「いいよっ、でもあいつらは連れてきた方がいいのかな?」
アイツらとは恐らく蛇山のことだろう、村雨以外はそれを感じ取った。
「勿論だ」
「あの金髪とは俺ももう一度戦いたいからな」
光源クルーはむしろそれに大歓迎だった。
「じゃ、今日は解散か?」
紀村の一言を受け取った女がカーテンの裏のリーダーに告げる。そして村雨に頷いた。
「また明日ここに来てください、決戦の準備は明日です」
こうして会議は終わった。様々なグループが絡み合うこの抗争が起こるのは六月二十四日…だが本格的な戦いが起こるのは明日からだと、予想できたものはいなかった。




