第四十九話二人の過去
2018年二人はまだ小学二年生だった真崎の家では父親が亡くなり、それによって精神を病んだ母はカルト宗教にのめりこむようになった。
「あなたは誰にでも敬語で話しなさい。」
「占いの先生が言うにはあなたはここの中学に行きなさい」
「貴方は医者を目指して先生のところに就職しなさい」
そう母に言いつけられ、誰とも話さずただ勉強をするだけの日々が続いていた。だがそんなある日塾の隣の席に変わった奴がいた。
「ねぇ~コレ楽しい?」
何だこいつと心の中で思いながらも勉強を続ける、だがそいつは何故かまだ話しかけてくる。
「ねぇ、なぁ、おい」
「何です?勉強してるんですけど?」
俺の返事を聞いた瞬間、その紫髪のガキは大声で笑った。
「何だよそれ!俺別に上級生とかじゃねーし」
一回本気でぶん殴ろうか考えたが人と話したこと自体久しぶりなことに気づいた。
(ここでならため口でも…いいか)
「別にいーだろ、つか折角塾に来てんだから勉強しろよ」
そいつは首を上に向け目を瞑る。
「いやめんどいし…これからどっかいかね」
久しぶりに人と話すのはかなり楽しかった。だからは何もかも忘れていつの間にか勉強も忘れてよく一緒に遊びに行くようになっていた。その後知ったことはこいつの名前は天道悠仁という、昔から空手を習っていて俺と同じ中学にいるということだ。何故だが悠仁前では俺は気を使わなくていい気がしていた。
「天道って知ってます?」
他の生徒にも聞くが天道なんて知らないという生徒が過半数だった。授業も忘れて探し回ってるとあの紫の髪が目に付いた。
「ここにいた…なんだサボってんのか?」
そこにいた悠仁は傷だらけの顔で裏庭に座っていた。
「誰にやられた!?俺がぶちのめす!」
俺の袖を引っ張って悠仁は言う
「待って!…あんまり問題起こすのもあれでしょ…」
「でっでも大丈夫!俺こういえてレスリングやってるから!誰にやられた!何組のどいつだ!」
他にも怪我がないか体を見回すとその足にいじめられている理由はあった
「お前…義足なのか…?」
「うん…小さいころに交通事故にあってそれから義足なんだ」
ボコボコの顔に義足…いじめの要素はかなりあった、だがその確証も得れないままは俺たちは中学二年生になった。流石に中学生になればいじめがなくとると俺は楽観的に過ごしていた。
朝早く学校に来た日なんとなくでトイレに行った、その時数人のガラの悪い同級生に囲まれ殴られている悠仁を見つけた。俺は考える暇もなくそいつを殴った。
「真崎!んだよぉ!」
(振りが大きい!)
そのままそいつの顔面に拳を叩きこむ
「なんだよ真崎…お前も金か?」
悠仁を同級生の田中朔という人物だ、お札を握りしめている点からも見て悠仁のいじめの確証は得られた。これで遠慮なくぶん殴れる。
田中の拳は格闘技未経験者丸出しの弱弱しい拳、そして元々筋肉質な体とレスリングは相性が良かった。すぐに相手の腰を掴み、投げ飛ばす。
「大丈夫か!悠仁!」
「おい待て真崎…」
田中の顔面を踏み潰し悠仁に手を伸ばす、だがいつの間にか呼ばれていた田中の取り巻きの他の三人が後ろから羽交い絞めにしてくる。そこで俺は悠仁が空手を習っていることを思い出した。
「悠仁!お前も空手やってんだろ!そんなところで立ち止まってないで!反撃しろよ!」
その言葉に何かハッとしたのか、友人は立ち上がり俺の横の生徒の顔面を殴り始めた。
「天道てめぇ!」
もう一人の男がそっちに向かっていったと思ったらそいつの顔面目掛け見事な回し蹴りをくらわせる。躊躇なく同級生たちを一瞬にしてボコボコにする悠仁に俺は言葉を失っていた。だがあいつらがカツアゲをしていたことを思い出し倒れた奴らに近づく、だが俺の言葉を読み取った悠仁が言う。
「その金はやるから今回のことは痛み分けにしよう」
田中はゆっくり頷きこのとこは学校中に知られることはなかった。
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初めて試合以外で人を殴った感覚は忘れることが出来なかった、もういじめられることがないということよりもアドレナリンが溢れ出しもっとあの感覚を味わいたいという気分になった。
「厚治…なんかデカいことしないか?」
俺は無意識に厚治にとんでもないことを提案していた
「デカいことって?」
「そこら辺の不良をボコボコにしてそいつから逆に金を奪う逆カツアゲビジネスだ。」
厚治の母がハマっていたカルト宗教の教祖が逮捕されそのまま母も失踪厚治は一人で暮らさなきゃいけなくなった。俺は無意識に厚治の心の弱さに漬け込んでいた。
ここは池袋治安を見れば真夜中に歩けばカツアゲなんてすぐ見つかる、初めての相手を殴り飛ばしたとき後ろから緑髪の男が近づいてくる。
「ここじゃ見ない顔だな…見る感じ同い年くらいだし何もんだ?」
こいつの仲間か?と思いつつすぐに目に入ったのは握られている木刀ともう片方に着けたメリケンサックだ。
「悠仁…こいつに突っかかったらヤバいぞ」
厚治の警告は耳に入れつつも今のところそいつ一人…二人で行けば勝てる算段はある状況だその男はさっきボコボコにしたカツアゲ野郎に近づき頬を軽くたたきながら話しかける。
「小林~起きてるか…」
(小林が起きない…中々強いぞこいつら…もしかしてチームに誘うこともありだな)
「お前ら…強いな!俺らのチームはいらないか?」
「何でだよ!俺らはお前らみたいなんにスカウトされるためにやってんじゃーねーぞ!」
突っかかりに行ってしまった俺の肩を厚治が掴みつつ緑髪は話を続ける。
「まあまて、自己紹介がまだだな俺は紀村乃武彦、こいつは幹部の小林っていうんだけど…幹部をここまでコテンパンにしたのはお前らが初めてだ」
次の瞬間、紀村は木刀を振り回すそれをガードしバックステップを取る
「てめぇ!」
厚治の拳が顔面にクリーンヒットし紀村を吹き飛ばす。
「まあでも…俺は悠仁に従うまでだどうする?」
少しの間思考を巡らせる…だがどう転んでもこいつらとの関りは切れない気がする…だから結論は一つだった。
「一回タイマンして…勝った方がチームを統べるそうしないか?」
一見無茶苦茶な提案だが紀村はそれを飲み込んだ。
「いいねじゃあ今からだ!」
紀村の拳が俺の顔面に突き刺さる。メリケンサックをハメている状態ということもありお互いのダメージは増幅しているはず。
「クソッ!」
苦し紛れに出した周り蹴りが首あたりを直撃した。
「へぇ…結構いいじゃねぇか!名前くらい聞きたいぜ!」
紀村が木刀を振り下ろす、それを受け今度は正拳付きを腹部に叩きこむ。
(スピードが速い!)
それに対応しきれていないであろう紀村の顔面に何度も拳を叩きこむ。
「クソガキぃいいいい!」
振り回された木刀を掴みひびが入るほど強く握りしめる。そしてそれを奪い取った。
「止め!」
そしてそれで紀村の顔面をぶん殴った。
「カハッ!」
場数が少ないのにも拘わらず見事なまでの一撃が効き紀村をノックアウトさせた。
「俺…勝ったぞ…」
「そうだな…悠仁」
その時の厚治はどんな表情をしていたのか…俺はあまり覚えていなかった。
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紀村がフラフラの天道をボコボコにしている
「何だよ!お前ら仲間じゃなかったのか!」
一瞬何か分からなかったが佐鹿や真崎もその異様な光景に気づいているようだった。
「紀村ぁ!」
目の前にいた佐鹿を振り払い真崎が紀村へタックルする。
「真崎ぃ…お前は俺と戦ったことなかったなぁ!」
鉄パイプを振り回し真崎を殴る。何が何だかわからないが紀村は今天道の味方でも、こちらの味方でないようだ。
「紀村ぁああ!」
紀村の顔面を殴ろうとする真崎の手のひらをアーミーナイフで突き刺す。
「グッ!」
思わず手を抑える真崎、紀村はその顔面を殴ろうとするが足が何かに掴まれる。
「天道か…」
天道が息も絶え絶えな状況で紀村を止めようとする、だが止めようとするのは天道だけではなかった。顔面に重いフルスイングが紀村の顔面に飛ぶ。
「誰だぁ…」
それは蛇山だった、三つ巴だと思っていた状況は紀村の軍勢VSその他になっていた。
「お前らぁ!ウルフガングは思う終わりだ!」
龍申高校の制服を着た構成員が立ち上がる、龍申の統治しているのは紀村、つまり龍申高校は丸々ウルフガングを裏切ったということになる。
「天道、どうする?俺らについて行くか…このままくたばるか」
蛇山は天道に選択を迫る、だが一秒もしない間に天道は立ち上がる。
「くたばる…?ちょっと疲れてただけだよ!」
天道と蛇山は紀村に一斉に突進する。
「二手からか…上等だ!」
ポケットから大量の武器を取り出し天道を切り裂くナイフとナイフが直撃する。その後ろからメリケンサックで背骨を殴る。
「やったれ!てめぇら!」
宮下が他の軍勢を連れるがそれを真崎が全員殴り飛ばす。
「何やぁ!真崎ぃ!」
真崎を飛び越え、他の構成員を佐鹿が吹き飛ばす。
「一時的な協定だな!」
佐鹿が気さくに話しかけるも真崎は黙ったまま…と思っているが何か独り言を言っているようだ。軍勢をひたすらに殴り続ける。
「殺す!殺す!殺す!殺す!殺す!殺す!殺す!殺す!殺す!殺す!殺す!殺す!殺す!殺す!殺す!」
声がどんどん大きくなる。それは周りに丸聞こえだ。
「殺す!!!」
ついには人を投げ飛ばし武器にし始めた。
「なんやぁ!お前はバケモンかぁああ!」
「俺は…アイツの忠犬だぁああああ!!」
顎に手を伸ばし宮下の顔面を歯が抜け落ちるほどの威力で殴る。
「アがぁあ!」
口を押える宮下の顔面をさらに殴る。その横で大きな音がする天道と紀村の決着がついたようだった。
案の定倒れていたのは紀村だった。だが倒れただけでまだ意識はある。
「お前は何がしたい?紀村」
倒れた紀村に天道は問う。
「何がしたい…?そもそもここは元々俺のチームだったろ?それを戻したいだけだよ」
(何?こいつら別のチームだったの?)
蛇山は何も知らないため取りあえず話を聞かなければいけない状況だ。
「この機会に応じて裏切ろうとしてたのか?」
「ハハッ…どっちがBIRDを抜けるかは分からないが…俺は行く当てがあるんだ」
「行く当て…」
すると大きなバイクの排気音が会話を遮る。
「ハーハッハァ!おいおい…ボコボコじゃないかぁ…!」
ヘルメットを外し白いパーカーのフードとキャップを被り直す。
「BIRDを抜けようが抜けまいが、俺のとこについてきてくれるんだろ?」
「村雨さん…何でいるんすか…」
聞きなじみにない名前に二人は混乱を隠せなかった。
「誰だお前!」
そういって近づく蛇山の腹部をその男は蹴った。
「ガハッ!」
少し嘔吐しそうになるものの、蛇山はバックステップを取り距離を置く。一回でも戦ったらすぐに負けそうな気配を一瞬にして感じた。
「君、天道だろ?」
キャップの男は後ろのバックから金属バットを取り出す。
「野球しようぜ」
「誰だ…」
それに対し、天道はナイフを取り出す。だがそいつは腕時計を確認するとすぐにバットをしまった。
「そろそろ時間だ、俺は紀村くん回収して帰るよ」
紀村を連れ帰る天道と蛇山に振り返りその男は最後に行った。
「俺の名前は村雨雅人、能面一家リーダー…君らの先輩さ」




