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最終回⒏【パパに見せたかったな?】 side あっちこっち

 ***************[side アロマ パパの最愛の息子]


 皇帝陛下のお召しを受けて御前に上がる事になった。


 僕は、慌てたよ。


 パパが亡くなって以来、きちんと軍服を着たのはパパの葬儀の時だけ。


 パパの仕事を引き継ぐ事に夢中で、顔を洗った憶えもないから。


 しわくちゃではない軍服なんて、手元にあったかな?


 パパの跡なんて継ごうとは思わない。


 パパのいない、この帝国軍に未練なんて何もないから。


 せめて、パパの残した仕事を綺麗にして、

 パパにホッとしてもらえるくらいにしてから辞表を出そう。


 パパのいないここでは、息をするのも辛くてしょうがない。


 **************


 いったい、僕は何でここに呼ばれたんだろう?


 皇帝陛下は、玉座に座ったままで。


 片手で頭を抱えて、反対の手の指をひじ掛けにとんとんとしている。


 もう、ずっとこの様子で、ずいぶん時間が経った。


 陛下にお目にかかるのは、今回で三度目。


 一度目は、ずーっと前に僕がパパに内緒で、

 勝手に仕官学校に編入した頃。


 二回目は半年前に、パパの葬儀の直前に。


 パパの棺が置いてある斎場に、ふらっと皇帝陛下が(おもむ)いてくださって。


 陛下は、しばらくパパの顔を見つめてから、おもむろに短剣を出されたので何をなさるのかびっくりしていたら。


 パパの髪の毛を少し切って、布に包まれて持っていかれた。


 その後、僕もマコも同じようにパパに飛び付いて、刃物を振り回していたら。


 ミラお母様に、


『やめてちょうだい!』


 と、泣き声をあげられてしまった。



 ************



「父と同じ学舎(まなびや)に行ったのであったか?」


 あれ、散々待ってこれ?


 皇帝陛下は、話を探していらしたんだろうか?


 僕も、もうなんだかどうでもいいような気持ちで。


「はい。陛下。

 僕は、少し頭がおかしいので。

 父が好きで好きでたまりません。

 あっちに行ったら、

 父の知らない顔や、情報が手に入るかと思いましたので。」


「ほお。」


 皇帝陛下が体を起こされて腕を組まれ、(あご)をくいっとされた。

 話を続けろって事かなあ?


「父は、向こうで僕には“彼女”でも見つけておいで、

 と送り出してくれたのですが。

 そんな事、とってもできませんでした。」


「なぜだ。」


 うわ、陛下が超絶、面倒臭そうに仰ってる。


「だって、僕が一番好きなのは“父”ですから。

 女の子は、みんな付き合う相手の、

 自分が一番でなければおさまりませんから。

 大学の頭の良い女の子は、

 直ぐに自分達が一番ではないのを感づきます。」


「‘たち’か?」


「はい、僕はパ…父に似てけっこうもてましたので。」


「戦果はあったのか?」


「はい。けっこうたくさん。

 行った甲斐がありました。

 パパえっと父が16才から19才?くらいの、

 映像やら情報が、バッチリ集まりました。

 誰にも見られないように、秘蔵のファイルに入れてあります。」


「秘蔵?今はないのか?」


「今は、手元にはこれだけです。

 ぼ…自分の端末の裏画面に隠してあります。

 ご覧になりますか?」


 陛下が、手のひらを上に向けてクイクイとされている。

 持って来いって事かなあ?


「グループ研究の後の集合写真なので、ちパパ?あれ?

 父は、小さく写ってるだけなのですが。

 笑顔が可愛いかったので。」


「さっさと、見せろ!」


 ありゃ?


「これだけですが。」


 皇帝陛下にお見せすると、

 ずいぶん長い時間、食い入るようにご覧になった陛下が、

 しばらくしてから、表情を緩められて。


「あまり、変わらぬな。」


 と、仰った。


 下がって良いと言われて、御前から退出した。


 扉を出て直ぐに、陛下の侍従の人に声をかけられた。


「ありがとうございました。」


 何でお礼を言われているのかな?


「ターラン司令がお亡くなりになられましてから、

 陛下は、どなたとも会話をなさっていらっしゃいませんでした。」


 ええ?半年…たつよね。その間ずっと?


 僕は、急にどうにも感情がコントロールできなくなってしまって。


 ぐぐーっと変な我慢した声と、

 涙が止まらなくなってしまった。


 僕は、子供の時から絶対に人前では泣いた事はないんだ。


 特に手の事で虐められた時に泣いたりしたら、

 パパが絶対に苦しむから。


 それなのに、声をあげて泣いている自分に、

 自分自身がびっくりしながら泣いている。


 パパ、陛下に大事に思われていたんだね。


「どうなさいました?」


 侍従の人に声をかけられても、止まらなくって。


 頭のどこかで、年を考えよう“僕は26!”とは思ってはいたよ。でも。


 僕は、声に出したつもりはないのに、絶叫しちゃっていた。


「パパに会いたい!」


「パパの声が聞きたい。」


「もう一度、もう一度だけ。」

「いきなりなんて、あんまりだよ。」

「パパぁ。」


 ちょっと、騒ぎ過ぎたのか、

 他の侍従の人がやって来て、

 こっちの侍従の人に耳打ちをしていた。


「こちらへ、いらしてください。」


 連れていかれたのは、陛下の宮殿の奥。


 陛下の御在所のようだった。


目に入れて下さった方が、どう思って下さったのだろう?

今日の暇潰しや気分転換になってたりしたら嬉しいなあと思っております。


少しでも気になりましたら、ブックマーク、評価をお願いいたします。

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