最終回⒎【パパに見せたかったな?】 side あっちこっち
**********[side メルキオーア皇帝陛下 パパの最愛の皇帝陛下]
相変わらず、私は“立派な皇帝”としてこの帝国を治めている。
冷徹で臣下に畏敬の念を持たせる、
帝国を統べる絶対者の顔に変わりはないはずだ。
ただ、あれが突然に逝ってから、何もかもが煩わしい。
側の者の言う事に‘嘘’がないのであれば、
あれ以来、私は口を開いて声を発してはいないらしい。
少し昔に、あれが病んだ時に“声が出ない”事もあったが、
私の場合はそれではない。
ただ、声をあげるのも煩わしいだけの事。
側の用人には、目線ひとつ指先ひとつで用は足りる。
ただ、それだけの事だ。
嘆くほどの事でもない。
昔に戻っただけの事。
あれを見つける前も、
私は今と同じようにただ“退屈”に身を委ねていた。
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酒の弱い“あれ”をからかって、
口に含ませてやった時に珍しく甘えたように申していた。
その時は、腹立たしくも思いはしたが。
思えば、あの夜があれを腕に抱いた最後であったのか。
あれは、不思議なほどに年をとらぬ様子をしていた。
五十の声を聞いても、とてもそうは思えぬ容姿であった。
あれの妹を、
世間では“化け物”のように美しいままであると、
噂をしていたという。
同じ血をひく‘あれ’もまた心も見た目も若いままだった。
笑う顔がたまに子供の頃のように見え、目を見張った。
ただ、年月に追い付く病からは逃げきる事が出来なかった。
あの夜に、私の寝台で“あれ”は、
『メルキオーア様、
メルキオーア様のお子様をとても大切に思っております。
ですから、何かの時には……
俺の子供も、少しだけは可愛がってはいただけませんか?』
調子に乗りおってと、腹を立てて少し無体に扱ってやった。
私の“子供”?
お前の“子供”?
どちらも、私がひとつとして望んだものではあるまいに。
その上、“あれ”は1枚の写真を見せて、
悪気のない《性悪》のように私を翻弄する。
昨年立太子をさせたローズマリーやらと、
サリューの孫娘が共に遊び笑う写真であると。
確かに1人の子供は私の髪と目の色、もう1人はサリューの顔立ちによく似ている。
なんとも落ち着かぬ、奇妙なものを見せてきたものだ。
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“あれ”は今は、目の前の小さな陶器の中に収まっている。
荼毘に伏した後に、“あれ”の骨の一辺とても、
他人にくれてやるつもりは無かったのだが。
“あれ”の娘がキーキーと騒ぎ立て、
分けて分骨をする羽目になった。
だから私は、《女》という生き物がいけ好かない。
いつか、気が向いた時に、
これを“あの島”の海にでも撒いてやるのも良いだろう。
まだ、そのような気は向かぬが。
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あまりの退屈さに、根をあげたものであるのか。
ほんの気まぐれに、“あれ”の息子を呼びつけてみる事にした。
“あれ”を誑かした女の腹から産まれた息子など、
たいして“可愛がり”たいはずもない。
暇潰しにもならぬのは分かってはいるのだが。
目に入れて下さった方が、どう思って下さったのだろう?
今日の暇潰しや気分転換になってたりしたら嬉しいなあと思っております。
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