最終回⒍【パパに見せたかったな?】 side あっちこっち
***************[side アンムート パパの妹]
とうとう、ひとりぼっちになったのね。
私を求めた人間はいくらでもいたけれど、
それは皆が自分の為に、私を欲しがっただけ。
お兄ちゃんは、手枷足枷にしかならない重荷の妹を、
無条件で背負って私を守ってくれた。
対価を求めずに、私を愛してくれたのは、
お兄ちゃん《サリュー·ターラン》だけだった。
覚悟はしていたの。
私にはわかってはいたから。
だから、理由をでっち上げて今一度だけと、
お兄ちゃんのいる帝国に会いに行っておいたの。
お兄ちゃんの顔を見て直ぐに分かった。
もう、あまり時間がないのだと。
しんみりお話しをてくれるような、お兄ちゃんではないものね。
会ったとたんに、私にこう言ったのよ。
『お前、いいところに来た。
ちょっとは、役にたっていけよ。』
お兄ちゃんの帝国では、
ちょうど次代の皇子様、皇女様の宮殿が出来上がったところで。
宮殿ができても、中で仕える女官が間に合わなくて、
人選に困っていたところに。
“女の人を見極める魔女”の私が現れたのね。
私は、声音ひとつで嘘と真をかぎ分けられるから。
特に女の声は、音楽や鳥のさえずりと同じ高さで声を出すので、
とても分かりやすいわ。
『お兄ちゃん、私が間者の女でも忍ばせたらどうするの?』
『お前、やらないだろう?俺の頼みに。』
うん、やらないわね私。
お兄ちゃんの周りの人達も、変なお顔をしていたけれど。
お兄ちゃんが。
『うちの妹は、これだけで生き抜いて来たんだから、
人間の判別だけは確かなんだ。』
なによ、その説明?
でも、周りがそれで納得するのも、
お兄ちゃんだって私以上に色々やらかしているんじゃないのかしら?
宮殿に仕える“男の人”は、間に合っているのね。
お兄ちゃんと一緒に、
『見かけと違うわ。お腹が真っ黒。』
『あれは、コロコロと寝返るわ。』
お兄ちゃんも、ほぼ正解を出していたわね。
うん、さすがねぇ。
でも、珍しい楽しい兄妹の体験だったわ。
それに、少し嬉しかった。
私が、お兄ちゃんの役にたった事なんて?
あらやだ!人生で初めてじゃないかしら。
こんな、『最初で最後』は悲しいわね。
もっと、お兄ちゃんの役にたつ妹だったら良かったのに。
私は、とうとうお兄ちゃんから奪ってばかりの妹だったわね。
その後、2年も経たないうちに、お兄ちゃんの訃報を知らされて。
いくら覚悟をしていても、普段は忘れるように努めていたから。
足元から崩れるように、体の力が抜けてしまって。
こちらの陛下に、
お兄ちゃんの“葬儀”に出席をしたいかと尋ねられたけれど。
私は寝台の上で、水を口にするのがやっとの状態で、
とても立ち上がれなかったの。
きっと陛下が、代理の使者を立てて下さったのでしょう。
この頃、私はひとりで“歌”ばかり歌っているの。
周りにたくさん心配をかけているのが分かっているのだけれど、
今はこうしていないと心が保てないの。
お兄ちゃん。
お兄ちゃん。
お兄ちゃんに『ありがとう』を言いに行けるようになるまで、
もう少し時間がかかるわ。
お兄ちゃん、ごめんなさい。
目に入れて下さった方が、どう思って下さったのだろう?
今日の暇潰しや気分転換になってたりしたら嬉しいなあと思っております。
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