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最終回⒋【パパに見せたかったな?】 side あっちこっち

 ***************[side アクル·クローレス上級大将 パパの親友クロさん]


 《親友》だったんだな。


 サリュー·ターラン、あいつと俺は。


 親父やら、お袋を見送った時とは違う、

 断腸の苦しさだな。


 ましてや、俺の方が年もだいぶ上だろうよ。


 若い時から、奴が無茶苦茶をしてきたのは、

 俺が誰よりも知っているから。


 今さらだろうが。

 この割りきれなさをどうしたもんだか、

 酒を浴びるように呑んだところで、

 出口が見つからない。


 酒のビンとグラスを、

 妻のハイシアと息子のヨシュカに取り上げられた。


「あなた、

 ターラン司令が一番頼りになさっていたのは‘あなた’ではありませんでしたの?

 あなたの悲しみは、

 私達にも分かっております。

 でも、今こそターラン司令は、

 あなたを《頼りに》思っていらっしゃるはずです。」


 横で、ヨシュカが俺から取り上げたグラスを握って泣いている。


 その、顔を見ていて思い出した。


 昔、あいつの子供たちが小さい頃に、俺があいつに言った事を。


『お前に何かあった時は、子供は俺に任せろ!』


 あいつは、ああいう奴だから表情を隠して何も言わなかったが、

 なんとも不思議な表情をしていた。


 そうだな。俺は帝国の上級大将である前に、

 奴の“友”であったはずだ。


 あいつが、一番気にかけて残して逝った者達に、

 俺ができる事を探してみよう。


 友人として、あいつの家族と近しいのは俺だけだ!

 なぜ、そんな事を忘れていたのだか。



 **************


 マコーレットには、亭主のレヴィオン·ビステルがついている。

 マコのように、感情を外に出せる人間は、

 落ちるところまでは落ちはしないだろう。


 パパっ子のアロマは、必死であいつの穴を埋めるように頑張っている。

 アロマは、今は悲しむ余裕さえないはずだ。


 一番気にかかるのは、ミラージェン·マケル·ターラン。

 あいつの奥方だろう。


 ターラン司令婦人として、葬式の時には、

 涙も溢さず凛とし立つ姿を世間に見せていた。


 世間の口さがない奴らが、要らぬ事を囁いて。


『所詮、政略結婚。

 たいして胸もいたまないから、冷静なもんだ。』


 何も知らない奴らの言う事とはいえ、思い出しても腹が立つ。


 あの2人は、心が繋がった真実の夫婦だった。


 あいつが、奥方を評して。


『頼りになる家庭内幕僚。家庭内の親友。』


 と、言っていた。


 ******


 ハイシアとヨシュカに礼を言って、

 俺はまず風呂に入って酒を抜いた。


 ターラン司令婦人に連絡を入れて、

 見舞いに訪れさせて貰う約束を入れた。


 ハイシアにも、同伴を頼んだ。


 直ぐに、会える事になり、

 ハイシアが気持ちばかりの手土産を用意してくれてあった。


 ミラージェン婦人は、葬儀の時よりずいぶんと小さく見えた。

 俺たちから、話の口火を切ることはしない。

 ただ、黙って親友の残した奥方の話を聞いた。


 ミラージェン婦人は、とつとつと話をした。


 帝国一番に“頭の切れる女性”とあいつが評していたのとは違う、

 少女のようにポツリポツリと話をしていた。


 あいつとの出会いから、

 2人で訪れたワインの採れる村、

 ケンカをした事。

 あいつが、彼女に言った言葉。


 途中からは、涙がとまらなくなっていた。


 彼女は、あいつが亡くなって最初の時から、

 涙を流して泣けないでいたそうだ。


 俺たち夫婦が、彼女に救いの言葉などあるはずもなく。


『ああ、そうだろう。

 あいつなら、そういうだろう。そうするだろう。』


 相槌を打つ他に、なす術もなく。


 帰り道、そのまま家に戻る気にもならずに、

 ハイシアと2人で気まぐれに“帝国タワー”へ足を伸ばしてみた。


 高い塔の上から眺める、帝都の発展と人々の暮らしは、

 ほんの一時代昔と比べると、雲泥の差の様相だ。

 今さらながらも目を見張る。


 この帝国の発展に、

 《サリュー·ターラン》という人間が居なかったのなら、

 今目にしている風景は現実にありえはしなかった。


 この先、この帝国はまだまだ登り調子を続けていけるはずだ。


 外からの侵略、攻撃にもあいつは、

 でき得る限りの遺産を残して逝った。


 次代のなんと!“女帝”を迎えるこの帝国に、

 新しい時代の到来の予感と、未知への希望で帝国中が沸き立っている。


 この時代に生きる巡り合わせに、皆が喜びに満ちている。


 その礎を作って逝った、俺の“友”に、

 もっとこの先を見せたかった。


 すっかり爺になった後に、若い者に『俺たちのお陰だ!』と、

 鬱陶しがられながら恩をきせてもやりたかった。

 あいつは、それは言わないか。笑


 ミラージェン婦人から、訪問の後に礼状が届いた。


 あいつから婦人への毎年届く贈り物のワイン、

 うちにもお裾分けでいただいているのだが。


 婦人は、あいつが逝ってから、

 そのワインをどうしても口にできなくなっていた。


 俺たちに、話をした後に、

 やっとそのワインを口にする事ができるようになったと。


 何をできたわけではないのだが、

 少しでも力になれるのならありがたい。






目に入れて下さった方が、どう思って下さったのだろう?

今日の暇潰しや気分転換になってたりしたら嬉しいなあと思っております。


少しでも気になりましたら、ブックマーク、評価をお願いいたします。

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