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【パパは妹にびくびくしている?】side サリュー

「陛下、今日だけはお願いいたします。

 どうか、今日だけはご勘弁下さい。」


 俺、陛下にペコペコと床に頭すり付けてお願いをしている。


 妹‘アンムート’がこの帝国に来ている。

 現在、我が家に滞在中。


『里帰り、里帰り。来たい、来たい。』


 アンムートの大騒ぎは、1回来させるまでおさまらないので。


 アンムートの迎えに、途中まで帝国の高速軍艦を出してもらった。


 私事(わたくしごと)に、それはおかしいので、陛下にご遠慮を申し上げたら。


『俸給から引いておく!』と、仰って。


 陛下、どこでそんな俗っぽい“お言葉”を覚えられたんだろう?


 不思議に思ってお尋ねしたら。


『お前が、部下にしょっちゅう言っておる。』

 ですと。

 あれー?


 アンが来ることで、一番迷惑をかけているのは、結局ミラ様。

 今は、マコーレットも仕事を休んでいるから多少は役に立つかなぁ?


 いったいあいつは何をしに来たかったんだか。


 アンムートの世話をミラ様丸投げで、放っておくわけにもいかないので、

 明日は会議の後、週末にかけて様子を見に家に戻ろうと思っている。


 その前日前夜、陛下と“そういう事”になると、絶対にアンは嗅ぎ付ける。


 ものすごーく面倒臭い事になるので、陛下に『今日だけはご勘弁下さい』のお願いをしている。


 陛下、跡が付くとか付かないとかの話ではないんですってば。


 あいつは、まるで‘動物’のように、嗅ぎ付けるんです。

 信じていただけなくても、本当にそうなんです。


 うちの‘母方’の魔女の系譜が出まくっておりますので、妹のアンムートには。


 一回、顔を出して戻ってからは、仰せの通りに致しますからと、お願いしまくって。

『ほお、“仰せの通り”だな、しかと聞いた。』


 こっちも、相当に面倒臭い事になりそうだけれど、先の‘面倒臭い’をとりあえずやっつけるしかないもんな。


 はー、面倒臭い。



 ********************[上級将軍位·幕僚収集会議]



 将軍位にある者と、その幕僚を集めての上位官位の会議。

 今日は先日の続き。


 大きな議題が二つ。


 本来なら、別々に分けるべきの内容。


 事を急ぎたくて、1日に(まと)めた。


 時間が長くかかる事は事前に、《重要会議》の開催と連絡をしてあるので、皆さん覚悟をして集まってくれているはず。



 ************



「亡き皇太后様の離宮があった場所に、皇帝陛下のお子様方の離宮を建設着工する。」


 ざわめきが起こった。



「この先、お子様方が御自分で物事の御判断がお付きになるまで、

 皇帝陛下の近くの者、及び諸君による軍部の人間で周辺をお守りする。


 (ひら)たく言うと、


()らない‘甘言’やら‘雑音’をお子様方のお耳から遠ざけたい。』


 と、言うことです。」



「もっと平たく言うと、未来の皇帝陛下に取り入りたい人間から、

 完全に隔離をさせて頂きたいと言うことです。」




「お子様方には、ダンスの踊り方、社交のマナーよりも、


 帝国を見通す真の“知性”を身につけて頂くことを、皇帝陛下はお望みでいらっしゃいます。」


 いらっしゃってもお望みでもない‘皇帝陛下’を勝手にご出演させて申し訳ありません。


「《軍部による殿下方の囲い込み》と、キャーキャー言い出す(やから)が出て来るでしょうし。

 後世の歴史では、そのように記述されるかもしれません。」



「でも、それは承知の上。あえての理由はたった1つ。


 殿下方の周りに‘虫’をまとわせる事で、

 殿下方が知らないうちに(かつ)がれてメルキオーア皇帝陛下に向かい合う‘愚’を、決して犯しては頂きたくはないからです。」


「どのお子様方も、皇帝陛下の知性を受け継いでお産まれになっていらっしゃいます。


 間違った雑音に接する事がなく、真っ直ぐにお育ち頂きたい。


 その上は、皇帝陛下のお子様である前にまず陛下の‘臣民’であるという事を、

 ご理解になられると信じます。」



「そのご成長の過程で、時には‘軍部の横行’‘軍部の囲い込み’と、()われのない罵りに皆さんが腹をたてられる事もありますでしょう。」


「ですが、申し訳ありませんが、()えてそれには耐えて下さい。


 そういう(やから)には、心の中で、

『お美しい陛下のお子様方のお近くで“遊びたい”馬鹿者どもの戯言(たわごと)』と、笑ってやって頂きたい。」


勿論(もちろん)、殿下方のご教育には、相応(ふさわ)しい教授陣から教えを準備させて頂きます。


 皆さんには折に触れ、機会に触れ、殿下方に帝国の臣民としての心、

 皇帝陛下への忠誠と敬愛をお伝えいただけましたら。


 それがこの先の帝国の繁栄と充実の礎に繋がると信じます。」



 ひとつ問いたいと、声が上がった。



「司令閣下による殿下方の環境の布陣に不足があるはずもなく、

 この帝国の誰より信頼に値するものと、一同疑うべくもない。


 ただ、ひとつお聞きしても宜しいか?」



「どうぞ。」



「司令閣下が仰る『殿下方』『お子様方』に少し違和感を覚える。


 皇帝陛下の考え深い“ご意志”に、

 自分ごときが口を挟む無礼を案じながら質問させて頂くのだが。」


 なんか、汗をふきふきの質問。


 ああ、あれだな!


「お世継ぎの指名の事をお聞きになりたいのですね?」


 どよどよ。ざわざわ。


 みんなそれを思っていた訳だ。そりゃそうだよね。


 俺だって、陛下に聞いたもん。



「皇帝陛下は、ご長男、ご長子の皇帝位の相続に固執せず。


 ある程度のご成長とそれぞれのお子様方の個性を判別なさってからの御判断をお考えです。」


「もちろん、ご長男の殿下の心身の健康、頭脳に今現在不足があってご命じられた事ではありません。


 この帝国のより良い未来をお考え故と存じます。」


「だからこそ、先ほどの殿下方を軍部での保護の件に戻り、重ねてのお願いを申し上げる。

 皆さんには‘目を光らせて’殿下方をお守り頂きたいのです。


 殿下方に、それぞれの派閥ができるような事を、

 皇帝陛下がお望みな訳ではありません。


 現在4人のお子様方は、とても仲の良い関係を築いていらっしゃいます。

 それぞれの長所、得意を生かしあい、

 “ある場所”でご成長をなさっておられます。


 このままご信頼をしあったままに、ご成長頂く事を願ってやみません。」



「よく分かった。

 皇帝陛下と同じく、殿下方にも心よりの我々の忠誠を捧げたい。」


 あっちこっちから、同意の叫びが聞こえる。


 でもさあ本当は、皇帝陛下に誰を皇太子にしたら良いのかをお尋ねをしたら。



『知らん。マケルとお前が勝手に作った人形など。

 お前が勝手にしたら良い。』


 そりゃないよ!俺、作ってないし。


 皇帝陛下、

 “あなたのお子様だから”少しでも良い人生をと、

 微力を尽くしておりますのに。



 メルキオーア皇帝陛下は、決して俺に治世を丸投げになさったりはしない。


 俺も、報連相(ほうれんそう)をちゃんと詳しく的確にしているつもり。


 陛下は短い言葉で判断を下される。

 それを拾って、陛下のご意志に沿っての形を模索している。


 その上で軍部以外の帝国の役職にも示唆(しさ)する事で、この帝国は回っている。


 それなのに陛下は、“お子様方”の話になると、途端に聞こえないふりをなさる。


 誰に言っても信じて貰えないだろうけれど。


 なんか、俺‘嘘つき’あっちこっちで、ハゲそうです。



 ***************



 今回の会議の一番の“難所”と思っていた山。


 あっさり登って降りられて、びっくりした。


 うちの帝国の端の偏狭地帯に試しにちょっかいを出して来た例の奴ら《洗脳軍国》の説明会と対策。


 前回は、時間切れで報告発表だけで済ました。


 今回の説明には、


『たまたま端っこ手を出された位で、何で大騒ぎ?』


 を黙らせて、納得させるところからが‘一仕事’と覚悟をしていた。


 俺が今、陛下から預からせて頂いている‘権限’の高さなら、

 ただ命令をする事でも、同じ布陣の用意は整えられる。


 けれど、俺は知っているから。

 この将軍位につくまでの人間達になると皆、考える‘頭’を持っている。


 戦闘で混乱した状態になった時に、理解をしている‘頭’が判断をする事で、

 ギリギリで勝敗がひっくり返る事は凄く頻繁に起こる。


 びっくりの一番は、『意外と俺でも《信頼》をされているんだ?』ということで。

 この“まだ起こっていない戦闘の準備”に異議を唱える者が全然いなかった。


 聞く体勢が出来ているところには、説明をするのも入りやすい。


 実際の事実を羅列する資料が、俺の手元に残っていたのも助かった。


 俺は、若い頃に連邦から傭兵所経由で回って来た《奴ら》絡みの仕事をやった時に。


 報告に上げるものを、自分用にもとってあった。


 本当は、絶対やったら契約違反なんだけどね。


 それに、持っている事自体が危険だしね。


 先の人生で使う予定も、あの当時この帝国に戻る事を考えてもいなかったけれど。


 《青春の記念》笑?


 その資料をアロマが上手く組み合わせて編集をした。


 これは、息子でなくても褒めるだけの‘いい仕事’だった。


 うちの幕僚プラス‘アロマ’で、もう(すで)に幾つかの攻撃パターンと、それに適した将軍と部隊。


 組み合わせ方も作り上げてあった。


 後は、詳細を詰めて、それに沿った軍事訓練を重ねておけば、まずは帝国の本星に奴らを近付ける事は起きないはず。


 軍事訓練にかかる経済的負担は、どこに何を言われても今は必要経費だ。


 後は、最後に追加で俺が、体験談を少し。



 ****** 



「前に、俺が設計した戦闘機に、『これいったい何ですか?』

 って、パイロットの若いのに聞かれていたんだよ。


 答えを言っちゃうと、試しにやっちゃう馬鹿が必ず出るから、教えなかったんだ。

 ちょっと、図面上げてみて。そうそう、ここのところ。」


「俺、この《洗脳軍国》からの脱走兵が海賊やってる奴らに、交渉に行かされた事があって。

 この脱走しにくい所から、脱走したんだから凄腕集団の奴ら。


 もちろんこの《洗脳軍国》からの依頼ではないよ。

 周辺の商業組合の大きい所の依頼で。」



「その、詳細は今は置いといて、またね。

 で、この特殊ブレーキね。

 この《洗脳頭おかしい軍国》はね、


 ちょいちょい自国の戦闘機を敵の近くでエンジンを切らせて、

 こうガーッと上から落とさせちゃうんだよ。」


 俺、手振り身振りで説明しています。


「まるで、どっかのチキンレースみたいに。

 でも、チキンレースと違うのは、

 ほとんどそれで自国の戦闘機も戦闘員も潰しちゃうんだよ。


 それがまた、悔しいほどに相手に効果的なわけ。

 だって、向かって来るなら、玉砕されると分かった時点で逃げきる事もできるけれど。


 ビュンビュン飛んでた敵機が、いきなり戦闘不能になって、ガーット自分の上に乗っかって爆発って予測しないでしょう?


 落ちて来る場所が的確だったら、小型の軍艦ぐらいなら戦闘機一台で潰れるからね。」


「で、‘洗脳’解けたんだか、もともと不満あったんだかの脱走した集団が海賊やってたのをみてたら。


 この、装置、これねー。


 俺がちょっとアクセサリーみたいに取り付けちゃったんだけど。


 これのもっと簡単な粗っぽいのを海賊がつけていたんだ。


 これ、物凄く腕に自信があるやつが、チキンレースのギリギリで避けて生きて逃れられる最後の手段の装置になるんだよ。


 それで、上手に死んだふりをして《洗脳軍国》抜けて来たんだってさ。


 俺さ、この装置をうちの戦闘機にも、じゃまにもならないから試しにつけちゃったわけ。」



 ねー呆れた!という事を、平気でしちゃう‘頭おかしい国’が台風のようにやって来る、‘災害用対策’。


 その為の軍事訓練を宜しくお願いします。


 当たらない台風の予測よりも、ずっとこっちの《災害》が来る確率は高いと断言します。



 ********



 会議の後に、クローレス上級大将·クロさんに言われた。


「アロマを、ちゃんと誉めてやれよ。」


 俺、ちょうどアロマに頼むことがあって呼んであった。


「アロ、パパの私用で頼まれてくれないかな。」


「うん。何?」


「俺の代わりに、‘葬儀’の代参をしてきてくれないかな?


 お前も忙しいところ悪いんだけれど。

 俺、今行くとかえって迷惑かけそうだから。


 軍服じゃないのを着て、ちょこっと。


 俺が、子供の時にお世話になった人。

 友達のお母さんで。


 俺と、妹によく‘動物性たんぱく質’食べさせてくれたんだ。

 うちの母親、宗教上で、『四つ足の物を口にするな!』だったから。


 俺の代わりに、お礼を言ってきて。


『おばちゃんのポークソテー絶品でした!』って。」


 ガンちゃんの、お袋さんが亡くなったそうで。

 明日が、お見送りになるそうだ。


 俺も、本当は行きたかったけれど。当日は避けた方が良さそうだし。


 少し気持ちを込めた金額を包んだ封筒をアロマに託した。


 周りに、人が居なくなったのでアロマに改めて話かけた。


「アロ、パパ少し夢を見ちゃったよ。今日のお前をみていたら。」


「え?何で。パ 司令?」


「パパさあ、夢の早期退職しちゃってさ。

 そのうち世間にこう言われるのさ。


『アロマ·ターランの父親も息子に似て、

 けっこう仕事ができたらしいよ。』


 って。」



 アロマ、その顔子供の時みたいだわ。

 アハハ、かーわいい。




 ***************[妹アンムートと対面]



 会議終了後、自宅まで戻った。


 夜になってしまった。


 仕事で‘いい具合’にくたびれて、

 今の俺は、間違っても“甘ったるい”空気は(まと)わせてはいないはず。


 俺の家には、アンムート以外の家族はいなかった。


 ミラ様も今日はマケル邸の方に居るそうで、わざと気をきかせて下さったのかな?


 妹と向かい合って、食事をとってもなかなか会話が弾まない。


 ‘積もる話’も、あんまり積もり過ぎると、

 ‘割愛(かつあい)’すると、

『とりあえずお互い生きていたね!』になってしまって。


 今さら何を話したら良いのか分からない。


「なんか、そっちの陛下に色々お気遣い頂いたみたいで。

 宜しく申し上げておいてくれよ。」


「うん。お姉様がそれ以上に御心配を下さって。

 帝国のお土産を持って帰って、皆に自慢が出来るわ。

 お兄ちゃんありがとう。」


「いや。

 あのさ、俺お前に渡しておきたいものがあるんだわ。

 良かったら、持っていけよ。」


 *******


 「この『絵』、持っていけよ。」


「まあ、これ。まるでお父様とお母様ね。」


「これが、俺にとっての‘墓参り’だったのかもな?

 一番きつかった頃、若い時に。


 小さな美術館でこの絵を見つけて。

 時々、行き詰まると見に行っていた。


 皇帝陛下がいつの間にか、買い取って下さっていた。」



「へええ。お兄ちゃん、皇帝陛下に大事にされているんだね。

 良かった。」


「お兄ちゃん、同じなんだ私と。」


「え?」


 ドキドキ、何がだよ?


「私もね、1人になりたい時によく墓地に行っていたの。

 私を守って味方してくれた人も、ずいぶん鬼籍に入ってしまってね。


 ‘私の陛下’も、私を……大事にして下さるけれど、時にはひとりになりたい時もあるでしょう?

 でも、いつも陛下の目と気配があるから。


 ありがたいのだけれど、どうしても苦しくなると‘お墓参り’に行っていたの。


 そうしたら、陛下ね。

 私がとても‘お墓参り’が好きだと思われたみたいなの。」



 妹と顔を見合わせて、笑いあった。



 たぶん、気配と情念に敏感な妹には、みんなお見通しなんだろう。


 俺と陛下の事、ミラ様との関係。


 アンは俺の留守の間に、ミラ様とも子供達とも充分に接していたから。



「お姉様、お兄ちゃんとお似合いね。」


 ?


「‘親友’の夫婦。

 そういう関係もあるのね。

 お兄ちゃんらしい。

 お姉様は、ちゃんとお兄ちゃんを愛して下さってる。」


「お前、やっぱり頭ふわふわだなあ。」


「やーね。お兄ちゃん。

 お兄ちゃんの方が、お姉様よりも‘怖がり’ね。」


「ああ?」


「お兄ちゃん、お姉様との結婚はいきなりだったんでしょう?


 今度は、いきない『別れろ!』って言われるのをいつも少し心配しているんでしょう?


 あの子達、マコーレットもその子供達も、そんな事を考えもしないで。

 お姉様の(ふところ)にすっかり入ってしまっているものね。」



「はあ、お前って。」



「でも、大丈夫よ。


 お姉様も、お兄ちゃんの子供達も。

 絆はお兄ちゃんを通してではなくて、もう充分固く出来上がっているもの。


 明日、勝手に離縁をされても家族の絆は続いていくわよ。


 心配しているのはお兄ちゃんだけよ。」



 アンムートは、俺と陛下の事には少しも触れなかった。


 母の国の石、父の日記を渡したら、子供のように喜んでいた。


 ただ、また変な事を言っていた。



「お兄ちゃんって、本当は私以上に『人を翻弄(ほんろう)』するでしょう?

 お兄ちゃんが気がついていないだけで。


 私を、『歴代王を狂わせる妖婦』なんて言っていた人の口が、今ではすっかり閉じているの。


 それはね、私はお兄ちゃんができない事を、ちゃんと出来ているからよ。」



「お前まで、俺に絡むなよ。」


「フフン。誰に絡まれてしまったの?お兄ちゃん。」


「あのね、お兄ちゃんは、相手に告げられてばかりでしょう?

 ずうっと今まで。誰にでも。


 私達兄妹、お母様の血統書付で‘もてる’事があるものね。


 お兄ちゃんと違って私はちゃんと言うのよ!

 皆の前でも家臣の前でも。


『陛下だけが好きです。陛下だけを愛しております。』って」



 こいつ、やっぱり頭が“ふわふわゆるゆる”だ。


 お前と俺のどこに共通点があるよ。


 大丈夫かな?これが‘皇后’?


 クリサーリダの陛下、よっぽどひとりで頑張んないと。


 こいつの政治的な協力は皆無だろうなあ。


 なんか『うちの妹がすいません』って、

 あっちの‘陛下’に謝んなきゃなんない気分になってきた。




 ******




 後日、“墓参り好き”の兄妹で連れだって、

 ガンちゃんのお袋さんの墓参りに(おもむ)いた。


 ガンちゃんに会えてアンもとても嬉しそうにしていた。


 ガンちゃんは、

『アンちゃん綺麗になったな!大人になったな!』を鸚鵡(おうむ)のように繰り返して口をあんぐり開けていた。



 アンムートが、墓の前で、‘鎮魂歌’を歌いだした。

 そうだった、こいつ歌が得意だったんだ。


 空気が変わって、辺りが震えるような不思議な現象が起きた。


 こいつ、やっぱり‘魔女’が入っていそう。


 ガンちゃん、涙ぼろぼろ。


 周りの参拝者、護衛が魂が抜けたような顔をして。


 ‘巫女’っ毛があったのかアンムート?


 いやいや、こんなに‘生臭い’巫女さんはいないって。



 **************



 陛下に絡まれたお返しの“絡み返し”のように。


 陛下に飲まされる(たび)に、俺はやっちゃってたらしいんだ。


 覚えていないんだけど全然。



『陛下ぁ、御一緒に早期退職しちゃいませんか。

 それで、あの‘島’で暮らしましょうよ。


 若い者に、さっさと仕事押し付けて。

 ふたりっきりでのんびりしちゃいましょうよー。


 ねー陛下ぁ。ダメですかぁ?』



 これ、真面目に受け取ったら《譲位の進言》を重臣がしたって事になるのか?


 酔っていなければ、不敬罪でしょっぴかれるよ。


 皇帝陛下は呆れたのかな?笑って仰っていらした。


 ‘軍法会議’には、俺かけられなさそうだけど。


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