【パパはちょっと疲れている?】 side サリュー
大会議場を大々的に使うのは、3年以上ぶり?
俺が、一回死んでみた直前の会議以来です。笑
今日は、前回よりもぐっと出席者は絞ってある。
将軍職の中将から上だけと、陛下のお側近くの筆頭書記官数名と筆頭秘書官。
マケル宰相閣下の幕僚に代わる仕事をしている『灰色』さんは勢ぞろい。
もちろん、逆モニターで、皇帝陛下も、宰相閣下もその横でミラ様も見ているはず。
マケル宰相閣下が倒れられてから半年以上が経過した。
宰相閣下は順調に回復なさってきているが、隠し通す事もそろそろ限界で。
下手な隠し方をすると、下手な憶測を呼ぶとマケル宰相にお伺いしたばかりです。
マケル宰相は、足とお口はリハビリ中、それでも頭はちゃんと切れ切れのままです。
通信では、聞き取りにくい時もある。
俺は現在、週一くらいで、直接マケル宰相のお屋敷に伺ってご指示を仰いでいる。
ついでに、たいがい4世代でご飯食べて息抜きしちゃったりしてくる。
《ひいおじいさま、
おじいさま(嫌だけど俺ね)·おばあさま(ミラ様なんかすいません)、
マコ夫婦、フレイアちゃん。》
で、4世代ってちょっと壮観。
結構楽しみです。
********
「ほ~らほら。そういうこと言われると思ったんだよ。
なになに、俺が奥さんまで総動員して宰相閣下の不在にこれ幸いと?
”帝国の主権を思うままに簒奪“でもするってかよ。
どっかの時代劇じゃあるまいしよ。」
俺が、ミラ様を宰相閣下の臨時の秘書官に据えたいと言ったら、
案の定のざわざわ。
「おーい!ターラン司令“かっか“。
思っている事が口から出ちゃってるぞー?」
クローレス上級大将が、叫んでいる。
クロさんは、この頃”暴走ストッパーのクローレス“って言われているんですと。
何の暴走を止めるんですかね。
「ターラン総括司令閣下、
おそらく誰も、
閣下のご提案に異議を唱えている訳ではなく。
皆さん、分かり易い説明を求めていらっしゃるだけではないのかと。
ええと、拝察いたします。」
中将に成り立てのレヴィオン君が、おずおずと発言。
一昨日も一緒にマケル宰相邸でご飯食べたのに、他人行儀ですねえ。
少し前にレヴィ君を中将に上げた時に、”ざわざわ”言ってた奴らには、
『大丈夫です。
ちゃんと死ぬ程こき使うから。
彼はこれから生涯、俸給の10倍分は働かされるわけだけど。
羨ましいか?本当に?』
と、言ったら首を振っていたです。
嘘ですよ。せいぜい5倍くらいだよ。
‘職権乱用’?
だって、やっぱり使い易いんだもん。
それに、レヴィ君はちゃんと優秀だよ。
「ごめん。ちょっと俺も熱くなって。」
「あのさ、実は全部‘よろしく’なる方法があるにはあるのです。
でも、今は無理。
自分は、メルキオーア皇帝陛下が望まない事は絶対にしない。
宇宙の理の是非は関係なく。」
「今上皇帝陛下の時代の、帝国の一番の不運は何だったと思いますか?
そこの、文句言いたげな方達、如何思われますか?」
????の皆さん。
「それはですね。
《ミラージェン·マケル》がこの帝国に男として生を受けなかった悲劇です。」
「あのさ、うちの奥さんをそこらで近所の噂話している奥さんと一緒にしないで貰えないかな?
マケル宰相の一番近くで、宰相の政治手腕を見てきているのは他ならぬ《ミラージェン·マケル》その人なわけさ。
あれ、ターラン?か。今は。まあいいや。」
「とにかく‘彼女’が‘彼’だったら、
今、俺達がこんなところで会議なんか開いてる時間なんか、いらなかったわけです。
その場合はとっくに、ソロ·マケル宰相閣下の元でちゃっちゃと手腕を磨き上げていっていただろうから。」
***
この帝国が‘もし’女性の宰相を用いる事ができるなら、ミラ様が次の宰相になってくれれば全部上手くいくんだけれどさ。
皇帝陛下が、傍らに女性のミラ様を置くはずはないから、‘もし’を語ってもしょうがない。
***
「それがマケル宰相閣下の君等を直に受けて生きて来た、ミラージェン嬢と言う逸材です。
自分はその逸材を《臨時の宰相》にさせてくれって言ってるんじゃないんですよ。
たかが、《臨時の秘書官》になって助けて貰いたいと言っているだけ。」
「そうしないと、回らないんだよ。今は。」
「異議なし!」
「異議なし。」
「異議なし。」いっぱい同調の声。
ふう、助かった。
陛下に先にお願いをしたら《議会の承認がとれたら》ですと。
陛下が、1度でも議会の意向なんか気にかけられた事がありましたっけ?
絶対に、遠回しの意地悪だよね。
「ひとつ、ターラン総括司令閣下にお尋ねしたい。
その、司令閣下がご立腹なさるようなら、
クローレス上級大将、宜しくお願いしたい。」
ええええ?それは何ですか?
俺ってそんなに?そんなですか?
「心得た。」
クロさん、酷いぃ。
「今回のマケル宰相閣下のご病状と、
ご回復に向かわれていらっしゃる御様子をお聞きして、
一同胸を撫で下ろしております。」
はい、それが何で俺が怒る事になる?
「ですが、失礼を承知で申し上げたい。
マケル宰相閣下のお年に比べて、ターラン総括司令あなたはだいぶお若い。
まだまだ、帝国の為に働いていただく時間は、あなたには充分にあるはずだ。
我々には、あなたがマケル宰相から受け取るべきであるものを執拗に固辞しているようにさえ見受けられる。
あなたが、この先の帝国の有り様を
考えていらっしゃらないとは思えないが。
どのようにお考えになっているものかをお聞かせ願えないか。」
「ううう。(困った)」
俺が宰相閣下の仕事を引き継げって事か?
いやいや、それは無理だろう。
「ええと、自分は、宰相閣下の職分から逃げ回っているのではなく、
職分が余りにも違って、
八百屋に魚屋もやれと言われても、
それって無理と思うわけで。」
会議場、凄く変な雰囲気。
俺、糾弾されちゃってるのか?
いや、だって逃げてるんでも卑怯でもないと思うよ。
よし!負けないぞ。頑張れ屁理屈小僧。
「それは、俺に限った事ですか?」
「ひとりの巨人に‘御輿’を担いで貰っていた事に、
我々は慣れすぎていたのではないのでしょうか?」
「巨人に‘御輿’を担いでいただけない未来が来たのなら、
小さな人間が10人で担げばいい。
10人では無理と言うのなら、
50人、100人で担いで運べば良いのではないのでしょうか?」
「自分は、それから逃げるつもりなど生涯ありません。
でも、巨人の代わりはできません。
先代皇家から帝国を担いで来た巨人とは、
‘役者’が違いますから俺では。」
「他人事ではないですよ。
あなたも、あなたもみんな。
この帝国の人間として産まれ、要職についている。
我々にはそれぞれの手も足もあります。
巨人の代わりがたとえ1000人の小さな人間を必要としても、
皆で担いで行きましょうよ。」
「若輩者の自分はこの危機に、その様に考えております。」
「皇帝陛下の御下知を聞く耳が、
巨人の不在時にはこちらから100の耳を差し出して、
陛下のお声を聞くと言うのは不遜でありましょうか?」
「この帝国が今の世で、その様な事で倒れるとは思わない。
それについては、確信を持ちます。」
ふーーー。頑張った。
何か、拍手頂いてる。
ちゃんと、声出てる時で良かった良かった。
あー早く帰りて~。
***********
会議を終えて。ふう。
もともと、宰相閣下の病気療養を伝えるだけの報告会議のはずが、
結構疲れた。
クロさんとレヴィ君と、上級将監カフェで少しお休みをしている。
何だか、今日は疲れた。
「顔色悪いぞ?大丈夫か?」
「大丈夫です。頑張って話をしたら息が切れただけです。」
飲んでるお茶に、砂糖を入れてみたら
‘ちゃんと甘味’があったから、
まだ大丈夫です。
「まあ、色々お前さんの考えも分かって良かったんじゃないか。まずは。」
???
今、入り口の向こう側を横切ったのは何だ?
俺、変なものが見えたかも。
「クロさん俺、やっぱり大丈夫じゃないかも。
何か今、幻覚が見えたんだけど。
見間違いならいいんだけど。」
「レヴィ君、
今、入り口の向こう側を横切った、
仕官学校の制服みたいのを着た、
うちの‘アロマ’にそっくりな坊やが見えたんだけど。
きっと、体調が悪くて幻覚が見たんだと思うんだよ。
悪いけど、その坊やを連れてきてくんないか。
たぶん人違いだとは思うんだけどね。
それならほっとするからさ。」
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「で?」
何で、アロマがここにいるわけだよ?
しかも、俺以外は誰も驚いていないのは変じゃないか?
黙っていたらわかんないぞ、何とか言えよ。
ユニは卒業したのか?早くないか?
アロマ、パパちょっと切れそうだから声は上げない。
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結局、アロマとは言葉を交わさなかった。
自分の頭に血が上っていたのが分かっていたから、
口を開いて怒鳴ったりしたら。
親父と同じになるのが分かっていたから。
息子が自分の思うようにならないことに苛立った親父様。
かろうじて、踏みとどまった。
アロマは、顔さえ上げなかった。
何だか今日は酷く疲れた。
親父様の日記の事をを思い出していた。
************
入院中に、
『俺って‘マゾ’気質でもあるのか?』
くらいの感じで《親父の日記》を手に取った。
前に、親父の上官の中将の若年従卒だった男が持ってきた‘親父の遺品’。
開く前から、どれだけ俺の悪口やらが書き連ねてあるのかは想像がついていた。
『落ちるところまで落ちてやる!』
そういう気分の時は、いい引きがねだと思って開いてみた。
?はあーー?
拍子抜け、て言うんだろうなあ、こういうの。
ただただ、恥ずかしくって赤面した。
親父からうちの母親への、『愛の告白?』なわけですか?これ。
自分の親の‘これ’を読むのは拷問だったよ。
これを、あの従卒だった男が目に入れていない事を祈りたい。
そういえば、秘書官が俺に“従卒だった男の伝言”だと言っていたのは、
『内縁の妻に』、
託された?だったような。
最後まで戸籍もない他国人だったうちの母親は、
帝国の言語の読み書きをほとんど覚えようとはしなかった。
数字と、あとは食品やら花の種の袋の文字を読むくらいだけで。
だから親父が、まさか本当に『内縁の妻に』あてた
‘文字を書いた日記’を託すとは思わなかった。
仕事の事はあまり書いていない。
そうだよな。
帝国軍人が内部の情報を文字で残して外に漏れでもしたら。
恥がどうのどころじゃなくて、
情報漏洩させた馬鹿野郎になるもんな。
親や、家に対する不満が多少文面から垣間見えた。
子供の俺や妹の事は、本当に一言程度。
俺の事は、『あれは、何とかやって行くだろう。』
妹には、『幸運を祈りたい。』
いやいや、それだけですか?
何か、笑い泣きしそうだった。
親父が俺の事を何も分かってはいないと、
長年じたばたしてきたのに、
息子の俺も、
親父がどんな人間であったかは少しも理解していなかった。
お互い様。違う人間だもんな。
親父の見たくもない一面を見て、
親父の方こそ俺に見られたくは無かっただろうと、
少し同情したいような気分になった。
その時は、そう思っただけだった。
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あれ?今、ちょっと自分に置き換えて考えております。
俺はアロマに、必死に軍服を着せる事を拒否しようとしてきた。
アロマの為に、《するだけの価値のない苦労をさせたくはない》と思っての親心。
ここでは、どうしても‘俺の息子’がついて回る。
アロマの為を思って、それは嘘ではない。
マコが時々怒り出すほど、俺は確かにアロマが可愛い。
でも、それだけではないのか?
自分に尋ねてみる。
親父が息子の俺に知られたくはない顔があったように、
俺にもそれが十二分にある。
アロマに陛下との事を知られるのは、死ぬ程嫌?だな。
ものすごく、人生今まで他に無かったろうと思うぐらい‘嫌’かもしれない。
マコに知られるのは、もちろん嫌だ。
でも、アロマに知られたくはないという‘嫌’さは、
マコやら他の誰にも比較にならないぐらいに、
嫌というよりは怖れている?
何だか今日は、汚く生き残った自分の事が重く感じられる。
少しだけ、疲れたのかな?
********************
マケル宰相閣下の不在に、過不足なくとはとても言えたものではないが、
何とか回している。
今は急に戦端を開こうと吹っ掛けて来そうな他国は、
思い当たるところはない。
旧ドゥーダン領も落ち着いて、
帝国内のいち辺境地に定まりそうだ。
マケル宰相閣下の仕事分割に、
皇帝陛下に請け負って頂く事が多分にある。
もともと、陛下が大酒を飲んでるだけの愚帝であるはずはない。
ただいつも、人嫌いの陛下に、
宰相閣下が間に立って取り次ぎをなさっていらした。
宰相閣下が全面に出るように見える事で、
宰相閣下が独断で政治を牛耳っているかのように見える。
事細かく、陛下に伺わなくても、
宰相閣下ならではの呼吸で、
陛下の御下知をかぎ分けていらした。
些細な事は陛下を煩らわせる事もなく、
宰相閣下の御判断で進められる。
けれども決して陛下のご意志を無視した
逸脱した摂政政治をなさってはいらっしゃらない。
マケル宰相閣下が不在である以上、
陛下に直接に御判断頂く事も出てくる。
御在所に呼んで話を聞く相手が、
いつもそう気に入った相手であるわけではない。
それでも、だいぶ絞ってから陛下の元に上げている事であるのに。
陛下のご機嫌が急降下で悪くなってきていた。
「いったい、これはいつまで続く?」
陛下が仰るのを、適当にかわしておけば良かったのに、
俺は相当に参っていたので、つい憎まれ口をきいた。
本当は
『だってあなたは皇帝陛下だからしょうがないじゃないですか!』
と言いたいのを、我慢はちゃんとした。
「でしたら陛下、さっさと次代をお育てして御一緒に楽隠居をいたしましょうか?」
と、口が滑った。
久しぶりに、色々飛んで来た。
3連発で飛んで来たので、最後のは面倒臭いから避けなかったら
花瓶ごとはちょっと痛かったです、陛下。
その夜の陛下が意地悪を言うおつもりでいらしたのか。
「お前は、そんなに知られたくはないのか。
こういうことは、お前のうちの息子には?」
窓辺のカーテンに俺を押し付けて顎に手をかけられて、立ったまま足の間に足を入れられて、口をまさぐられる。
‘こういうこと’と、仰るのを聞きながら急に不安に翻弄される。
アロマの事がもう陛下のお耳に入っていたのだろう。
陛下は、いつもの前戯のように近づかれて口をまさぐられた様子で。
俺、急に立ちくらみがして、頭の芯が白くなった。
自分の顔色が変わって行くのがよくわかった。
背中のカーテンと壁沿いに力が抜けて、急に血圧が下がった。
今になって、陛下がアロマに制裁を加えられるとは思わない。
かといって、その点の陛下を全面的に信じてはいない。
俺が陛下からうっかり気持ちを離した時の、
陛下の激怒される様子を知っている。
俺、またホントに“ふらっとクラっと”で、貧血を起こしたようだった。
久しぶりにひっくり返ってしまった。
そんなに、長い時間の空白ではないと思う。
そばにあった長椅子に寝かされて、額にタオルが置かれていた。
陛下から、明日は医者の検診を受けるように言われた。
確かに少し疲れたかもしれない。
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早朝、まだあまり人に会わないうちに病院に来た。
廊下を歩く足がだんだん重くなって来て、
右足をちょっと引きずって歩いている。
あれ、これはちょっと危険信号が出てるかな?
嫌だなあ、これじゃ“剣術大会”なんて取っても無理だろうな。
ちょっと楽しみにしていたのに、残念。
嘘ぉ!、診察ってシルト先生とかじゃないのか。
ドクター·マドク氏って、余計に気分が下がった。
「司令、あなたさあ、内臓入れ換えただけで不死身になったとか思ってんじゃないですよね?
調子に乗りすぎで、調子悪過ぎですよ。
見てくださいよ、この検査の数字の悪さ。
入院、またして行きますか?
早いうちに手を打った方が、後々良いですよ。」
「今、ほんとに仕事困るんだってば。
気を付けるから、入院は勘弁してください。
お願いします。」
マドクなんかに、俺ペッコペコ頭下げちゃったよ。
宰相閣下が療養中に、俺まで入院って色々まずいし。
それでも、譲ってもらえず、
2泊3日だけ入院治療になっちゃいました。
対外的には、定期検診の検査入院で‘ぎりぎり’体裁を整えた?
びっくりするほど、ただ延々と寝ちゃってた。
点滴の針を刺されていたのも、寝っぱなしで気がつかなかった。
この頃はちゃんと夜は睡眠とってたんだけれど。
それなのに、眠り病みたいに、爆睡しちゃって。
マドク氏に、薬で眠らせられたのか?きいたら。
ほんとに全然薬で眠らせてないって。
まあ、いいや。
寝溜めができるのは、若い証拠って誰かが言っていたような?いないかも。
向いていない仕事していると、そりゃ体に悪いですって。
『マケル宰相、早く元気になぁーあれ!』
暫く、自宅から執務室に通って良いって許された。
どうせ、そんなに長い‘暫く’ではないと思うけど。
マコも誰もいないから、うちの方は静かでゆっくり寝るのにはありがたかったです。
その分、ミラ様が大変なんだろうな?




