【パパはマケル宰相を逝かせない?】 side サリュー
「頭は、ハッキリなさっているんですよね?」
「『車椅子では、皇帝陛下の横に立つのは見苦しい』?
ばっかばかしい。
今すぐ、宰相閣下の執務室から陛下の御在所まで、全部バッチリ、バリアフリーを敷きますから。
なんでしたら、ジェットエンジンを付けた空中を飛ぶ‘空飛ぶ車椅子’でも作りますよ。
高速艇よりも全然簡単ですから。
ずるいわ。宰相閣下!
人には‘三途の川’から首根っこ掴んで、引きずり戻しておいて。
自分だけ、楽隠居って卑怯ですよ!!!
第一、マケル宰相閣下はもとから、体で敵を蹴散らす武闘派ではないですよね。
‘頭’さえあればいいんじゃないですか。
首から上さえあれば、今までと何も変わりませんでしょうに。
ここまでやっていらしたんですから、
《皇家を三代牛耳った妖怪》をちゃんとやってから死んで下さい。」
「こ…こ……この、痴…れも…のが!」
「ほ~ら?声だってちゃーんと出るじゃないですか。」
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マケル宰相閣下の病状は、ひとまず安定。
肝が冷えました。
脳内出血で倒れた時に、直ぐに近くの者が気がついて緊急手術ができた。
マケル宰相閣下は、余暇にお一人で読書をなさって過ごす事が多いので。
ひとりの時ではなくて本当に良かった。
この手術は、時間が勝負だからさ。
宰相閣下の遥か昔に亡くなったお父上も、脳の梗塞で逝かれたとの事だから。
安静とリハビリで、何がなんでも復帰していただきますから。
怒鳴られついでに。もう一発かませておきました。
医者とミラ様にちょっと怒られちゃった。
「この世にメルキオーア皇帝陛下がたったお一人であられるのと同じように。
《ソロ·マケル宰相閣下もこの世にたったお一人。》
どちらも唯一無二のお一人だけ。
忘れないで下さい。
今は、どこにも丸投げは無理ですよ。宰相閣下。」
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宰相閣下の術後に今後の事をミラ様と話し合うために、長い通信回路を開いた。
宰相閣下の病院での療養と、
退院後の段取りはミラ様と宰相閣下の近くの『灰色』軍服に任せれば間違いはないだろう。
ミラ様が気にかけて下さっているのは、うちの家庭内の事。
俺は、ミラ様にこんな時にまで気を使って頂いている事に申し訳なくて、
『今はどうぞこちらの事は忘れて、
宰相閣下の事だけお考えください。』
と、頭を下げた。
その後、いつものミラ様と違い、
ご自分の心情を熱心に長い言葉で語って下さった。
『マコにフレイアを‘預けられて’迷惑などはしておりませんの。
どう申し上げたら伝わりますかしら。
もちろんマコからフレイアを横取りをするつもりも、
フレイアの人生に私が何かを託そうとも思った事はございませんわ。
そこは、どうぞご理解下さいませ。
ただ、フレイアが可愛いのです。
世間で申す通り《可愛い盛り》でございますの。
あのこが幸せな月日を重ねる事を目にすると、
自分が洗われていくような。
幸せな人生を生きなおしている心地が致しますの。
私の‘思い’がフレイアの重荷になるような事がないようにと、
重々心しております。』
「ありがとうミラ様。
俺達、親娘は、ずいぶんと狡いよね。
ミラ様に甘えっぱなしで。
宰相閣下が大変なこんな時まで。」
『養父の療養に力を尽くすことは、
娘として出来る限りの努力を惜しむつもりはございません。
ですがこの時にこそ、フレイアの笑顔を日々に目にする事は、
私の何よりの力になると存じますの。
マケルの屋敷には、人手もありますので、
フレイアには今まで通り不自由をさせずに、
安全に預かって参れます。
もちろん、フレイアの気持ちを大切に。』
今は、ミラ様も俺も会って話をする余裕がお互いにない。
長い通信をミラ様と開いて、話あった。
ミラ様の気持ちをありがたく受け取って、
俺からの提案をしてみた。
後日にマコ夫婦と話をする事にした。
ミラ様は俺の提案をのんでくれた。
ミラ様の心配は、
活発なフレイアがマケル宰相邸で目を離した隙に、
冒険を始めそうだということ。
マケル邸は庭が広くて、ジャングルやら、植物園やらの大きな娯楽パークみたいだ。
怪獣やら、猛獣を散らばせたら、撮影所になりそう。
子供には、迷子になりそうな広さ。
侵入者を防ぐ仕掛けもありそうだし。
そりゃー面白いだろう。
『その冒険が危険な事に繋がらないかだけが心配だ』
と言うのを聞いて、
ひとつアドバイス。
フレイアは、冒険をやっちゃいそうな3歳児なわけなんだ。笑
「うん、マケル宰相のお屋敷面白いだろうから。
やるねフレイアちゃんは絶対に!」
「ねえ、ミラ様。
一回フレイアの目の高さに腰を落として、
目を合わせて話をすると良いかも知れない。
子供だからと思わないで、ちゃんと状況を説明するのさ。
今ミラ様の力を宰相閣下が必要としている大変な時だって。
『だから、フレイアも助けてくれないか?
フレイアを頼りにしている。』
って言ってみるのはどうかなあ?」
「俺、賭けてもいいぐらい、
あのこは
『“いいこ”にしていなさい!』
では絶対に“いいこ“にしてはいないよ。
納得しないことが、
出来ない性質でしょうフレイアちゃんは。
俺、凄くわかる。
でも、あのこはちゃんと懐に物事が落ちれば、
納得して自分がどうしたら良いのか考えて動くでしょう?
俺が子供の時、大人にそうして説明をして欲しかったから。
だから、それはよくわかるんだ。」
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ミラ様、マコーレット夫婦、スールさんが今日の家族会議のメンバー。
ミラ様は、今後マケル宰相邸で宰相閣下の傍らで、
療養を手伝う事が1番大事な仕事になるだろうから。
絶対に良い子にしているお約束のフレイアちゃんは、ミラ様のお膝でそろそろお眠かな。
時間短縮の為に、既にミラ様とは話合いがついている。
今日の交渉相手は、主にマコーレット夫婦だな。
一応パパは、トラブル処理稼業で軍服着ているんだからさ即日解決するつもり。
「マコ、端的に聞くけどさ。
マコの仕事の将来の展望って、
今勤めている病院でなければお前のキャリアって積めないか?」
「パパの言う事は分かっているわ。
私に、仕事をやめて家に入れって言ってるんでしょう?」
「お前さあ、帝国の言語を理解出来ないのか?
ちゃんと、聞けよ。
パパは、“今の病院”ではなくて、
他の病院では駄目なのかって聞いてるんだろうよ。
このアホが。」
フレイアちゃんは、眠いお目々擦ってにらめっこしないでね。
おじいちゃんは、ママを助けるつもりなんだよ。
宰相閣下が退院なさった後に、
自宅で療養をなさりやすい様にを一番に。
尚且つ家族が皆で、楽しく助け合うシフト会議です。
「スールさん、マコにあれをお願いします。」
「マコこれどうだろうか。全部でいくつだったけ?スールさん。」
「リストアップした病院が、全部で7つになりました。」
「とりあえず、お前さあ、全部の病院を自分の目で見てこいよ。」
「この7つは、いわゆるパパの息のかかった病院ってわけ?」
「いや、全然。パパは病院でお世話になるばっかりで、
息なんてかけるどころか
‘息も絶え絶え’
くらいのお付き合いだよ。」
「リストアップの条件は、
マケル宰相邸かここの家から
マコが通勤が出来る距離であること。
デメリットは、それほど医師の俸給は高い病院ではない事。
俸給が安いのは、交渉次第でメリットになる素地があるかもな。」
「勤務形態に、こちらの無理も通るかも知れない?ってこと。」
ほう、マコなりに察しがいいじゃん。
「ああ。レヴィ君、ええと失礼な事を聞いたらごめんよ。
今、君たち夫婦に借金とかはあるのかな?」
「いいえ、一切ありません。
貯蓄に関しましては、
マコーレットに任しておりますので、
自分ではなんとも。」
「パパ何を言うのよ。レヴィに借金なんて無いわよ。」
「わかった。
だったら、お前の俸給が安くっても、
今の《ビステル家》は、回るんだろう?
レヴィオン·ビステル少将は、
うちの帝国軍の若手の出世頭だぜ。
お前は、稼ぎを中心に物事を考えなくてもいいはずだ、
今はな。
キャリアを積む上で、
収入を表す事が評価の価値を示し易いってのはあるよな。
でも今のお前は、
その部分を排除して考えられる事を強味にも変えられるんじゃないか?」
「マコ、親の優等生でもない俺が言えた義理ではないけどよ。
子供の安全を損なってから、後悔しても取り返しがつかない事を、
俺が分からないと思うか?
お前が、やむにやまれずミラさんを頼ったのは、
ミラさんには申し訳ない限りだけれど、
パパはマコの英断だとは思う。
フレイアちゃんには、お前やアロマのような思いをさせたくはないから。」
「でな、俺もお前もミラママに甘えっぱなしだからさ、
ここらで少しだけ恩返しを2人でしないか?」
「恩返し?パパと私で。」
「ああ、お前さあ、
週の半分くらい腕が落ちないように病院で修行させてもらえよ。
安く雇われてワガママ医者にさせてもらう交渉してさ。
お前は、交渉ごとが子供の時からうまいじゃん?
残り時間をちょっと都合して、パパに雇われてくれないか?
ソロ·マケル宰相閣下の自宅療養に手を貸して、
あの頑固じいさんをビシバシ鍛えて尻を叩いてもらえないか?
まだ、引退してもらっちゃ俺、困るんだよ。」
「レヴィ君には、
ただでさえ面倒臭い義理の親で煩わしい事が多いだろう。
さらに期間限定でも、
面倒臭い上官の家で同居するのは気詰まりだよね。」
「いえ、自分はしょっちゅうターラン司令のお宅に出入りさせて頂いておりますし。
航海で、長く家を開ける事が多いので。
妻と子供が、
安全に暮らせる事は何よりも喜ばしい事ですので。
実は結構自慢なんです。皆に羨ましがられて。」
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1週間でマコーレットが結論を出してきた。
マコが選んだ病院は、
うちよりもマケル宰相閣下の屋敷から距離が近い立地にあった。
ちょっと意外に思った。
うちの方が帝都の中心に近く、付近に病院の数が多いので。
マケル宰相邸は、立地が広大な分少し郊外にある。
マコは、何か考えるところがあったのかもしれない。
困った事に、ミラ様がマケル宰相邸の敷地内に《マコたちの家》を作ってしまうという。
『簡単な鳥小屋のようなものですから。』
いやいやいや、‘鳥小屋’ってお嬢様。
費用やら色々と俺がゴニョゴニョ言っていると。
『私はマケル宰相家のひとり娘ですわ。
それくらいの事を誰に咎められますの。
この家の娘としての自負もございます。
養父は、娘が庭の空き地に楽しみの鳥小屋ひとつ建てる事に、
なにも申したりは致しません。』
と、言われてしまった。
俺の至急案件は、公私でそれぞれひとつづつ。
大至急、マケル宰相邸にもう一枚厚くガードをかけよう。
上空からの探索と防衛を軍の基地並に厚くさせて貰いたい。
宰相閣下に、今何かあると本当に厄介だから。
もうひとつはレヴィ君に、マコにも‘内緒’の部屋の鍵を渡させてもらった。
スールさんは知っているけれど。
別に変な部屋ではありません。
前に、ちょっと足を伸ばして大きな公園の回りのコースランキングをしていたら、凄く心地が良くて。
季節が暑い時で、この近くでシャワーを浴びて帰れたら良いのにと思ったら、
ちょうど売り出していた部屋があって、
つい衝動買いしちゃった。
結局、走るなら軍施設の中にしろって怒られて、1度も使えなかった。
レヴィ君も四六時中、上官の家でって気詰まりなのは、
俺がよーーーーく分かっているからさ。
俺のは”上官の家“ではなくて、陛下のお休み処?だったけれど。笑
レヴィ君には、その部屋の鍵を《マコには言うな!》と、渡しておいた。
何なら、女の子のお友達を呼んでも全然いいよ。
と言ったら、
『とんでもありません!』
と、結構本気でムッとされちゃったよ。
仕官学校出たエリートさんって、
やっぱりガッチガチなんだなあ。笑
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陛下にもう必死でお願いをした。
軍服を着ている時に、そういう流れになったり。
仕事の途中でそういうのは、本当の本当に俺は嫌なんです。
と。
陛下が、もの凄く不機嫌に
『ほお。』
っと仰った。
俺も、たいしたもんだとは思います。
辺りでは、陛下が俺に‘激甘’ということになっているらしい。
主に、陛下の周辺の『灰色』さん達だけだけど。
そんな事を言うのは。
俺も、よく考えてみればわかるよ。
陛下が、《親だって必要とあらば切り捨てる》凄絶潔癖な御気性なのも知っている。
その冷たいように整った美貌で、物事を静かにバッサリの陛下を
皆が敬愛と“畏怖をしている”事もよく分かっている。
その陛下のなさる事に注文をつける俺は、
とんでもない‘ワガママ’なんでしょうか?
どうせ、恐れ知らずの俺が悪いんですよ。
でも、やっぱり《軍服で》なんて楽しくはないし、
倒錯して嬉しくなる趣味なんて俺にはないし、
自己嫌悪で落ち込むだけなんですって。
俺が、ちゃんとした臣下として務めを果たしたいって言ったら
そんなにワガママになるんでしょうか。
そうしたら陛下に逆切れされちゃって。
『お前は、夜にも仕事をしている。
週末は、先週は病院の検診。
その前はたいした用も無いのに自宅に戻っておって。
いったいいつなら、私の前で服を脱ぐ。
軍服だろうと、私服だろうと脱いでしまえば違いはあるまい。』
赤面が、止まりません。
陛下、その御尊顔で似合わないです。
口から出ているお言葉が誤作動起こしていらっしゃいませんか?
週の中日と、週末は残業を禁止?されてしまった。
変なの。
週末に家に帰ったり他の用事は、俺の態度次第だそうです。
へーんなの。
それでも、上手くすると週末日帰りで家に帰ったり、
ちょっぴり遊んだりする余裕が出て来ました。
少しずつ体力ついたかな?
マケル宰相閣下が療養をしている事は、一般には広く知らせてはいない。
この頃は、上級将監にはちらほら不在がちなのがバレて来たけれど。
でも、下には広がってはいないから。
俺が遊び歩いても、かえって回りに不信感は持たれない。
安心してもらえるはず?
それに、俺が遊ぶって、
道場行ったり、図書館行ったり、プールで泳いだり、凄く健全なんだけど。
それでも、その時間を確保するのに‘俺の態度次第’を頑張っているのって
俺って健気だと思うんだよ。
どこがワガママだよ。
週末は、本当に‘いいこ’で陛下の言うこと聞きっぱなし。
服も脱ぎっぱなしで。
孫のフレイアちゃんよりもよっぽど‘いいこ’だと思う、
おじいさま44才です。
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そんな何時もの週末の、後の一報。
ちょうど、軍服で陛下の御前で報告を受けた。
『皇太后様·御崩御』
ああ、あれから3年以上経っていたのか。
そろそろ、ない事ではなかったか。
陛下が
「ほうっておけ。」
はあーーそれは駄目でしょう?いくらなんだって!
俺、一生懸命言葉を尽くして説得しました。
皇帝陛下の御生母の‘御崩御’が秘密裏?
じゃなくて陛下は面倒臭いだけなのか?
帝国臣民、心の中で『この国どうなの?』思うって。
陛下は、
『お前は、仕える皇帝よりも臣民の機嫌をとるのか?』
訳のわかんないごね方をなさるし。
頭抱える俺。
このポーズ覚えがあるよな。
宰相閣下がよくやってるやつ。
俺、演技ではなくて本当にクラっとしてふらっとして。
近くにいた、『灰色』軍服に支えられちゃった。
前日に、《とても寝不足》でしたので。
誰のせいででしょうか?陛下!
俺の体調は、以前と比べて物凄く上がっては来たけれど、
やっぱり若い時のようにはいかないようで。
疲れが貯まってくると、
危険を知らせるようにサインが出てくる。
まず、味覚障害。
次に右目の視力低下。
その後の”足が上がらなくなって引きずる!“がでてくると、
医者を呼ぶことになるのが自分で分かって来た。
味がよく分からなくなった時点で、
そこからは、引き返すように気をつけている。
今朝の朝食は、あまり美味しく食べられませんでした!
誰のせいでしょうか?陛下。
俺が”クラっとふらっと“ので、
ちょっと陛下が軟化して下さった。
「どうせよと言う?」
俺は、皇太后様の御崩御を公式に発表の上で、
葬儀その他は‘秘密裏’でもいいけれど。
臣民はせめて1日は喪に服し。
軍服には、暫く喪章くらいくっ付けさせておきましょうよ。
と、お願いした。
「お前は、どこで《喪に服す?》」
陛下のお尋ねがあったので。
「陛下のお側でお気持ちに添わせていただけましたら、
ありがたき幸せに存じます。」
で、
「好きにするがいい。」
を、いただけました。
やれやれ。
今度、鏡見ながら”クラっとふらっと“を練習してみよう。
これ、ちょっと使えそう。
陛下がお臍を曲げられてしまった時。




