【パパは自分をカウンセリングしている?】 side サリュー
「あーー!」
‘魂’見えて無いことを気がついたら、
ビックリして声が出た。
今晩の出窓タイム。
病室の同じ階のフロアの両端に大きな出窓がある。
ちょうど腰の辺りの高さで座り易い。
夜中になると、
そこへ行っては外を見ながら
《自分カウンセリング》
をしていた。
クッション代わりに、枕をズルズルと持って行く。
余計に出窓の座り心地が良くなった。
護衛が呆れたように見ていて、
その後ろから若い医師シルト君?が見ている。
シルト先生、隠密行動には向いてないね。
気配がビンビンだよ。笑
病室は、また陛下か宰相の監視付きなんだろう。
部屋にひとりでいても、いつも‘人’の目線を感じて息がつまる。
こうして、弱っちゃった時に『しょうがない!』と、けつを捲れない自分の性格が嫌いだ。
つくづく嫌いだ。
いろんな人の顔が浮かぶ。
『あの人ならこうではないだろう、
この人なら割り切るかな?
親父なら、黙って陛下に《剣を捧げ続ける》だろうか?』
俺って、めちゃくちゃコンプレックス強くない?
いくつだよ?気がついたら43?44か?
ティーンエイジャーかよ?気持ち悪いなあ俺。
でもこれが俺だから、これで‘しょうがない’。
落ち込んだ時は、とことん底まで沈んで、考え尽くす。
そうやって、ここまでやって来たから今さら変えられないよ。
本当は、『運命は受け入れるしかない!』とか行って、
スパッと受け入れる性質だったらな。
それが出来たら、ここまで自分が嫌いじゃないかも?
嫌いでも、‘俺’に付き合っていくしかないから、ウジウジ考えていた。
出窓でね。
********
出窓での課題《この苛立ちってなんなんだろうか?》について。
結論『敗北感』と『罪悪感』。
はあ~、これだから親父に嫌われたわけだね俺。
《敗北感》の方は、
自分が自分の支配者に成れなかったっていう敗北感。
結局、俺は自分の生きたいように生きられなくって、
死にたいようにも死ねないのか?
どっかの、カウンセラーにそれを言ったら
『みんなそうです。生きとし生ける人間は。』
って言われるね。
俺がカウンセラーだってそう言うもん。
俺は、皇帝陛下に負けた事が、悔しくってしょうがないんだ。
負けっぷりの悪いこと、悪いこと。
子供がスポーツで負けて、悔し泣きしているのと同じかよ?
みっともねー!
その上、なんて『不遜』なんだろう。
帝国一の‘不遜な臣下’?
だって、俺は何もいらないから、その分の清濁与奪の自由は欲しかったんだもん。
もともと、‘他人に構われる’はの嫌いだから、
放っといて欲しいんだよね何もかも。
そうしてくれたら、頑張って働くのに。
俺は、そういう‘生き物’、そういう‘動物’っていうのでは、
どうしても駄目なのかね?
《自我の崩壊》?の苦しさ。
だね、これは。
***
《罪悪感》の方は、
戦う事で‘人も物’もたくさん壊して来た罪悪感とかでは全然なくて。
すいません、神様。笑
そっちの天国に行く予定はないです。
ちゃんと地獄の方にに落ちますからお許しを。
俺は、『自己評価』が、可哀想なくらい低いのよ。
実はとっても。
だって自分が自分で気に入っていないから、
ウジウジして大嫌い野郎だね。俺って。
無理やり生かして貰う程の価値が、
自分にない事を自分が一番分かっているから。
『何で陛下?俺?』
苦しくってしょうがないんだよ。
この先ずっと、生きてる間これかと思うと、
《演技》してるのがしんどくてさ。
で、やっぱり苦しいのさ。
なんて事を粘着質の、さっぱりしていない嫌いな俺が、
考えていたら、気がついた。
『あれれ、俺、見えてないよな?
ちゃんと見えなくなってる?
‘人’の『魂の色』?見えない全然。』
で、叫んじゃったら、シルト先生がふっとんで来た。
****************
次の日から、活動開始。
《魂の色》全然見えていないから、
これは働けるほど体が回復している。
動けるって事で良いんだよね?
帝国に借りが込んでいる。
俺は、陛下に死んでも言わない。
《命を繋いで頂いた》、それに対してはお礼なんか言わない。
だって、それは借りてないよ。
こっちの都合じゃないもん、全然だよ。
でも、こうやって病室で寝ている間も、
帝国からの俸給は出ているそうで。
『俸給泥棒』もいいところ。
手術費用も入院費用も払っていないって。
スールさんが言っていたから。
せめてその借りは、働いて返そう。
はあ、つくづく俺って庶民感覚、貧乏性?
まず、医師団と交渉。
退院を目処に、《面会の許可》《外出の許可》を獲得。
これは、思ったより大変だった。
色々頑張りました。
ちゃんと、部下に会って話をできるように、まず体を作る。
最初は、とにかく歩く。
歩けるようになったら走る。
ちょっと調子に乗ったら、発熱騒ぎでちょっと反省。
でも、検査の数値は日に日に上がって来ている。
《病は気から》本当だね。
病院の庭園で少しずつ走ったり、止まったり。
少しだけど、手応え。
今日は、勝手に外出してしまう作戦。
マコの用意してくれたスポーツウエアなら、ギリギリ街中歩いてもオッケーかな?
スールさんに、現金とカードも置いて行って貰っておいたし。
護身用の武器を持っていた方がいいんだろうけれど、
預けては貰えなさそうだから。
何かあったら、逃げの一手だね。
******
やって来たのは、“帝国図書館”です。
至急調べたい事があったりはしません。
何となく来たわけです。
俺って、何て健全なんでしょうか?
残念な気持ちになるよ。まったく。
困ったのは、身分証。
次はちゃんと持って来よう。免許証でいいのかな?
今日は、すったもんだで護衛の兄ちゃんが困って、
あっちこっちに連絡をしてくれた。
個人ブースで、本とか映像を見ていたら、
ゲラゲラと声を上げて笑っちゃった。
司書のおば様に、えらい剣幕で怒られました。
今のように、元気を足したい時は、
深刻なものを読んだら駄目なんだよね。
お笑いじゃなくちゃね。
俺が選んだお笑いは
『各地の宗教と文化行事 宇宙には異なる習慣が満ちている』
と
『心の迷いを分析する 恋愛で迷子になっているあなたへ』の2つ。
いやー。笑った笑った。
笑いって、薬よりも病に効くってどっかで言っていたもんな。
最高の爆笑ポイントは。
どっかの、宗教文化だとかの坊さんが、
『自分などが生きている贖罪を神様にお許し頂く』って、
自分でブッさブッさ、針の長いので刺すんだよ。
いくら針だって、刺しどころ間違えたら死ぬよ?
一回刺すと、暫くは神様が生きてるのを許してくれんだと。
どんな、神様だよ?
映像付きで、えぐいヤバい。
これ、年齢制限つけてるのか?
『何これって? 俺と同じ?』
生きててすいませんの今の俺じゃん。
俺って、やっぱり相当に痛い。
自虐ネタって、死ぬ程笑えました。
『いやあ宇宙って広くて神秘に満ちてます』
司会者の言葉に、ほんとですねえ。
もう一冊は、この帝国の恋愛アドバイスの達人のおばちゃんの。
凄い売れてるベストセラーなんだと。
全然知らなかったわ。
こっちのお笑いポイントは。
『男性が女性に捧げた物品は、あなたの価値を表すものです。
あなたは、差し出されたものに、ただ微笑みをお返しなさい。
城でも、宝石でも、お金でも。
それを差し出されている間は相手の愛を信じなさい。
あなたに同等の価値があると言うことです。
相手はあなたに捧げたいのです。
それを受け入れるのが愛です。』
どうして、これがベストセラー?
乞食かよ。
本当に好きな相手からは、差し出され過ぎたら苦しくなるんだってば。
自分が、相手に何を差し出せるのかを考えるんじゃないのかね?
貰わない‘意地’が、愛情だと思ったりする訳ですよ。
立派な中年のおじさんとしては。
まあ、そんな大きな事は言えないけど。
城より宝石より凄いもの押し付けられちゃって、気が重すぎる今日この頃です。
どんな、貰い上手なお姫様でも‘命’貰っちゃったりしないでしょう?
そんなものを貰っちゃったら、どうしたらいいのさ。
微笑みひとつで、返せるわけない。
俺、ほんと困るわ。
‘帝国図書館’で笑って、元気になったので、ウオーキングして病院まで戻った。
6キロで、丁度いい距離。
明日は、行きも歩こうかな。
帰ったらドクター·マクド氏が来ていて、頭から湯気をたてて怒っていた。
「あんた、いったい何を考えてんですか?
こっちが、免疫力落ちてるあんたに感染症予防にどんなに気をつけてんだか分かってんのか!
血液やら、リンパ節までは取っ替えられないんですから、またすぐ死にますよ。そういうことしてたら?
あんた、馬鹿じゃないんですか?」
聞こえるよ?他の医者に。
とうとう、‘あんた’で‘馬鹿’ですと。
言われなくても分かってますよ。
でも嘘ついてんじゃねーよ。マドクの嘘つき野郎。
血液もリンパ液も、人体ってだいたい2ヶ月で入れ替わるの知ってるよ。
俺、基礎医学は、ユニで講義受講したもんな。
脅しかよ。
死ぬのは、脅しになんないの!
この商売してたらね。
ばーかばーか。
そろそろ、脅しにならないその商売に、復帰するか。
***********************
「みんなで来たんだ?」
狐だけ呼んだのに、幕僚4人でワイワイ来ちゃって。
「これだって、止めたんですよ。
《おもちゃ》組の困ったちゃん達の4人を押さえて置いて来るの、
えらい苦労しました。
大変だったんですからね。」
んん、なるほど?かな。
「なんか、色々すまんかったわ。」
「はあー。」
「いやいや。」
「心配させられました。ほんとに。」
狐ガッレトが、
「司令、あんた死ぬ気でいたんでないんですか?
後から辻褄合わせると、色々変な事ありまして!」
「ええと、まあすいません。
けっこう、そんな感じだったんだけど……
何か、生き汚くて死に損なった?
みたいで。」
「とによー。」
「がー。」
「まったく。司令!」
「生きてんだか死んでんだかさっぱり分からないから、どれだけ気を揉んだと思ってるんですか!!」
「ごめん、ごめん。」
そんなこと、言われたってこっちだってさあ。
「何か、途中ぐちゃぐちゃで、意識あったりなかったりで。
気がついたら、時間が経ってたんだってば。
俺だって、よくわかんねーよ。」
「まあ、良かったって事にしておいてあげますよ、
あなただからしょうがない。司令。」
「はあ、どうも。
で、そっちは?
仕事どうなってる?」
「新しい案件はこっちには回されないで済んでいます。
司令の不在を分かってますから回りも。
一応、俺達のところは、皇帝陛下直轄、
仮の‘頭’が宰相閣下って事になってますから。」
「えええ? どういう事だ?」
「いやいや、司令。
名目上だけですって。
俺らこの2年半、宰相閣下にお会いしたこともなけりゃ、
ご命令も何も、
声さえかかってないっすから。」
「まして、その上の御方なんて、
とってもとっても。
もう。全然ですから。」
うちの部隊を、守っていて下さってたって事か?
陛下も、宰相閣下も。
「それで、じゃあその間、
あんたら、何をしていたんだよ?」
「溜まった残務整理を片付けたり、まあ片付けたりでして。」
「おい、人が死にそうになってる時に随分と楽に俸給を貰ってたんだなあ。
お前ら。」
「いいじゃないですか。
今まで、どれだけあなたの無茶振りに泣かされて来たことか。
ずっと休み無しで働かされてたでしょうが。
どうせまたこれからも、
こき使うつもりでいらっしゃるんでしょうが?」
「はあ、まあ………。
少しずつ、頑張るか。」
「無理はやめて下さいよ。
もう、こんな思いをさせられるの真っ平ですから。
こんなんだったら、休み無しで働かされてる方が、まだましですから。」
うんうん、みんなで頷きながら、
なんだかなあ。
「俺の宰相閣下のところからの派遣‘秘書官’さんって今どうなってる?
所属って宰相閣下のところに戻ってるのか?」
「所属は、上から下まで1人も動いていませんから。
一応、まだこっちに所属になってるんじゃないですか呼びますか。」
「うん、連絡つけてみて。」
病室のベッドサイドに、軍服の男が4人も。
横で看護師とシルト先生控えてるし。
病室が一気に暑苦しくなったよ。
「司令、来るそうです。」
「ええと?今から?」
「15分で来るそうです。」
残務整理っていってもそれなりに色々あったみたいで。
報告聞いてるうちに15分はすぐにたった。
息をきらせてやって来た‘秘書官’様に、お願いした。
「会議場のある建物に、新しく俺の執務室作ってよ。
そんな立派なものでなくていいから。
こいつらと連絡とったり、
自分の仕事が簡単に出来ればそれでいいから。」
「前の執務室から、物品を至急に運ばせましょう。」
「ううん、それはいらないから。
やらないで!」
「と言いますと?」
「考えてみたら、あの世まで持って行きたいものは、
あっちにひとつもないからさ。
端末とモニターがあって、机あったらいいんだよ。」
「前のところの物は、運んで貰う手間をかけるより、
全部処分して貰うようにあなたから伝えておいてよ。」
「ですが、ターラン司令閣下がお作りになりました数々の設計図等が
あちらに残っておりますのでは?」
「大丈夫です。入ってるから、
ここに。」
俺は、頭をちょんちょんと人差し指で突っついた。
「あっちこっち、壊れたけれど。
頭は大丈夫そうだからさ。」
*************************
今日の病室に来て貰ってるのは、ミラ様とスールさんです。
「ごめんなさい。ミラ様。
俺、家に一度帰ったら、
居心地が良すぎて2度と仕事に出掛けられなくなる。
もうそれは、絶対に自信がある。
今度は、無理をしないように、
ちゃんと定期的に休みを入れて仕事するようにするから。
休みの時は、ちゃんと‘お家’に帰るから。
その時は、よろしくお願いします。」
「執務室を陛下のお側から、
大会議場の近くの空いてるスペースに
作って頂くようにお願いしたんだ。
上に置いてきたものは、処分していただこうと思って。
また、少し普段着るものとか送っておいて貰えないかな?
何でもいいから。
後、簡単に食べられる保存食とかもあったら便利かも。
お手数をお掛けします。」
「司令の秘書官の方と、お話を直接させていただいても差し障りはありませんか?
ご相談の上で万事整えさせていただきますわ。
どのような様子に致しますか?」
「そうだなあ。
大学生のひとり暮らしのアパートとか、
学生寮の部屋?みたいな感じで
それが一番落ち着きそうだから。
会議の時は、会議場行くよ。
パーティーションで区切って貰ったら、大きすぎる会議場でも、
打ち合わせもできるから。」
「分かりましたわ。
初めはシンプルに、
足りないものは足していかれるのも宜しいですわね。」
「ミラ様には、子供達の事も、すっかりお任せで。
申し訳ないです。
ありがとうございます。
また、家に帰れた時にでもゆっくりお話させいただければ。
今、お急ぎの事がありましたら?」
「大丈夫でしてよ。
こちらの事はご心配なく。
司令閣下は、お体を無理なくお過ごしくださいませ。」
「スールさん、あのお金は足りているかな?
困らせてはいない?」
「何もご心配なく。
万事滞りなく回っております。」
「今度、スールさんとミラ様に、
俺が若い頃に働いていた時の蓄財も、
お渡しさせて貰うね。
俺、心のどっかで妹が宇宙で路頭に迷った時の事と。
子供達が俺と妹のようにこの帝国から追われる事になった時の不安が拭えないで。
外貨だての方を、保険にしてあった。
でも、一度死んでみたら、もういいかなって気がして。
妹も、子供達も俺が居なくても、
何とかやっていきそうだし。」
「司令、ご心配には及びません。
司令の帝国からの俸給で、充分に我が家は潤っております。
ご家族皆様、無用な浪費癖などございませんし。
かえって蓄財に回すばかりです。
その事も、またお話を出来ましたらと存じます。」
「ありがとう。ほっとした。
俺、ここ数年働いていないし。
どうなってるか、ちょっと気になっていたんだ。」
「司令閣下、それよりも。」
ミラ様が、何か言いたそう。
ミラ様この頃は外で‘あなた’とか呼ぶのに、
ここに‘耳’がついてるの分かっている感じだね。
「マコに、なぜお会いくださりませんの?」
「順番になっただけで、別に避けてる訳じゃないよ?
ううん、ちょっと避けてるか。ごめん嘘ついた。」
「なぜ?
あのこが一番心配しておりますのはお分かりでしょうに。」
「えっと、上手く伝わるかな。
マコーレットとアロマ。
それと皇帝陛下にお会いするのは……
俺、何かエネルギーがいるんだよね。」
「?」
「体はともかく、心が元気でないと会うのしんどくて。
つい、ちょっとね。
子供達に気持ちがないのではないよ。
もちろん。
ええと何だろうこれ?」
「たぶん…俺が生まれつきパパをやっている訳ではなくて、
けっこう、どっかで頑張ってパパをやってるいんだと思う。
子供達には言えないけれど。
情けない親で、申し訳ない。」
「嘘でも、演技でもないんだよ。
いやいやにパパをやっている訳でなくて、
むしろ救われて来たのはこっちの方だから。」
「私やら、スールの方が
‘素顔’のサリュー·ターランを拝見出来ているですか?
それは光栄ではございますが。
ですが、お心の方が整いましたら、
ちゃんとパパ様でお会い下さいませ。
フレイアも、おしゃべりが可愛らしくなりましてよ。」
「フレ…イア?」
「孫の名前もご記憶下さっておりませんの?
流石にマコーレットに同情いたしますわ。」
ありゃりゃ。フレイアちゃんかあ。
フレイアちゃんに会うのは楽しみなばっかり。
だけど、俺は一番に会わなければならない方を避けている。
マコ以上に‘あの方’にどんな顔で会えばいいのか全然分からない。
『ありがとうございます。』と、
おお嘘つきで言うのは簡単だけれど。
俺、あの方に嘘だけは、ついては来なかった。
だって、頼んでないもん。
いらないプレゼントは、頂かないよりも厄介です。




