【パパは少しずつ平常運転? 】 side サリュー パパと陛下…♡
「孫はやっぱり可愛いだろう?」
2年半以上のお久しぶりで、《紺》上級将監のカフェルームに来ていて。
会う人、会う人に
『ご心配をお掛け致しました。』
のペコペコでご挨拶しました。
クローレス上級大将、クロさんに捕まったところです。
「全然です!
憎ったらしいだけ。」
「んあ?どしたあ?」
「家に3年以上ぶりで帰ったら、
マコの奴、あの馬鹿娘が。
子供をこっちに預けっぱなしで、
ほとんどミラさんが育ててるんですよ。
たいした仕事をしているでもないのに、
自分の子供を他人に押し付けて
何のつもりなんだか。
俺が『少し考えろ』って言ったら、あの馬鹿娘が。
『パパは、親になっている事さえ知らなかった癖に!』
言いやがって。
まあ、その通りなんだけど!
『わーわーギャーギャー』言い合いをやっていたら、
あのチビすけが
『ママとばーばをいじめるな!悪者め!
お前なんか、さっさと帰れ!
もう、うちにくんな!』
って熊のぬいぐるみで俺に殴りかかって来やがって。」
「ギャハハ!それで、奥方様は?」
「『世間では、《亭主元気で留守が良い》と、仰るそうですわ。
あなたは、まず‘元気で’があやしいから、
それだけ気をつけて下さればこっちの事を気にして下さらなくてよろしい』
みたいな?感じ。
何なんだか。あいつら。」
「ヒーヒーヒー笑。」
クロさんまで、何がそんなに可笑しいんですかね?
「まあ、その。
亭主が元気になって良かったじゃないかよ。」
「それはそうと、お前さん軍訓練所の管理と、教官を泣かしてきたって?」
「はあ?何の事ですか?
覚えがないなあ?」
**********
嘘、ちょっと‘覚え’ある。
とにかく、落ちた筋肉と体力を、もう少し何とかしようとしている。
病院を退院した後に、
軍の訓練施設で走ったりぴょんぴょん跳ねたりしていた。
軍の施設だと、護衛がついて来ないから楽なのが嬉しい。
それなのに、
頼んでもいないのに、その訓練施設の責任者の大尉だかと、
『体を作るのをお手伝いさせて下さい。』の、
トレーナーのマッチョの兄ちゃんが出てきて。
煩いってば。
俺は、人に構われるのは、大の苦手。
何でほっといて頂けませんか。
兄ちゃん、あんたが産まれる前から、自分の体作って‘戦場’走り回ってるの。
こっちは。
兄ちゃんみたいな、重い筋肉つけてたら短距離でしか使えないんだよ。
長距離では息がきれるのさ。
格闘技をやる筋肉は、俺系の仕事には要らないんだよ。
俺の仕事の体の出来上がりは、どこに混じってもあんまり目立たない事。
陸上の中距離ランナー辺りの筋肉ぐらいが理想的?
筋肉マッチョの、海で泳いだらすぐに沈みそうな君が、
何を‘お手伝い’してくれるって!
俺は、せっかくの遊び場見つけて、
気持ち良く体力体調が上がってきてたのに
退散をしなきゃならなくて。
いらっとしてタオル持って出てきた。
無言で。
怒鳴ったりしてませんよ。
出てきてそのまま行かなくなっただけ。
ここでは、回りがあえて無視していてくれたのが温かくて。
凄く楽だったのに。
残念でムカムカはしていた。かな?
しょうがないから、この頃は執務室の近場で早朝か夜中に走ったりストレッチしたり。
朝方に走り出した俺に並走してくる護衛が、
迷惑そうにしている。
だから、それを思い出すとちょっとムカつく。
俺が2年半寝ている間に、部下達やら、宰相閣下の『灰色』さん達が頑張ってくれていた。
色々な残党を潰しておいてくれてあった。
ゴミ貴族叩きの残りの奴ら。
お陰で、前みたいに襲いかかって来る奴は居なくなっているけれど。
それでもやっぱり、ひとりで外に走りに行ったら駄目だってさ。
少しむくれていたら、またいいところを見つけて最近はちょっと気分爽快。
剣術の道場と、サバイバルゲーム場みたいのを発見した。
ちょくちょく遊びに行っている。
道場は、いろんな木刀があって、みんなと振り回して‘俺は’楽しい。笑
俺にやられちゃってる、みんなは迷惑かもよ。
親父に花を持たすみたいで悔しいけれど。
結局、子供の時から使っていた体の動きを再現する事が、
今の体のどこが足りなくなっているかが、凄くビンビンと分かる。
どこを、鍛え直すべきかの判別に最適。
偽物の剣でも握ると、まだ‘目’は生きているのも分かって嬉しかった。
‘目’さえ見切れたら、道場の兄ちゃん達には一本をとられはしないからさ。
へへへ。
サバイバルゲーム場はさすが‘正規軍’。
傭兵部隊の練習場とは大違いだよ。
拍手しちゃうような設備。
こんなの、あったんだ?最高のゲームセンター。
俺が、本当の戦場で銃を握って転がり回って身に付けた事が、
疑似戦場で身に付けられる訳だもんな、贅沢。
失敗しても、死なないんだからね、サバイバルゲームって。
軍施設のどっかにプールもあるらしいよ、まだ行ったことはないけれど。
泳ぐのはけっこう得意だったんだ。
ぼろぼろになる前はさ。
海の近くの産まれ育ちだし。
肺活量の安定には、水泳はいいかも。
近いうちに行ってみたい。
ちょっと俺のスイッチが入ってるのには、理由があって。
道場に、募集ポスターが貼ってあったんだ。
流派は何でもありの剣術大会があるんだって。
剣術なら流派は問わないって書いてあった。
持ち物の刃は、長いのでも短いのでもいいらしい。
ちょっと暇潰しに、予選の刃を潰してやるところまででも、
遊びに行っちゃおうかな?
あんまり無様だと恥ずかしいから、
少しずつ体幹を上げておとこうと思っている、おじさん44才です。
寝てる間に、年とってました。
若い兄ちゃんばっかりだと、おじさんは浮くかなあ?
様子見て、場違いだったらさっさと帰ってくればいいかな。
辺りを見回すと、結構楽しいね。
帝国の軍隊遊園地。笑笑
************
俺が、お礼参りに行けって事ですか?
宰相閣下の執務室に呼び出された。
ドゥーダンの‘母’《産卵》さんが、時間がないから、早く俺に顔を出せって。
毎日のように催促が来ているそうです。
宰相閣下のうんざりした顔の前に、立っております。
今、ビシッと。
宰相閣下にしては、歯切れが悪い。
ご命令をちゃんとしていただきたい。
俺は、何をすればいいんですか?
お礼に、金品でも運びます?
それとも、過剰接待?
やれって言うならやりますよ。
それで、帝国がスッキリするなら。
ペコペコ、土下座をして来ますか?
宰相閣下が、全部ブッ壊して来いと仰るならそうしますし。
如何様にも。
ご命令通りに任務を遂行いたしますが。
要するに、うるさい取り引き相手が来いと言うので、
黙らせたい。
けれど、上の方は無視をしろと。
でも、毎日のようにうるさいし。
宰相閣下が珍しく中間管理職のお顔になっていらっしゃる訳ですね。
『詳しい事は分からん。』
でも、どうしてこうなったかは、
詳しくなくても情報を頂けませんと。
俺は、動きようがありませんし。
**********
で結局、小型高速艇で、旧ドゥーダン領地に向かって来たわけです。
なんだか、戦隊を組んじゃって大々的になっているのは、
3年以上経っても、まだこの地はブスブスと煙が収まっていない。
俺が寝ついている間に、ますます混沌としてきて、
前より鬱陶しい土地になっている。
現時点では、『ちょっと、お邪魔します。』ってわけにはいかないほどに荒れている。
ここを、どうにかしろとお命じになっているかというと、
そうではないのですか?
じゃ、いったい俺は何をすればいいのですか?
で、とにかく顔を出しに来た。
あの、不思議な《サンラン》‘母さん’に。
**********
「このまま、ドゥーダンがあなたに嫌われたままだと
かわいそうでしょう?」
「何でですか?」
『やっぱり、命を返せ』と言われたら返してやるよ!
気合い充分だから、負ける気も、媚びる気も無いですよ。
悪いけど。‘サンラン’母さん!
負ける気はしないです。
「だって、私はあの子を産み出したものですから。」
「母性愛でドゥーダン提督のなさった事を許せ!と仰る訳ですか?」
「ふふふ、そうなのドゥーダンはね。
皇帝陛下もあなたも大好きだったのだから。
仲間外れにしないで遊んで欲しかっただけなのよ。
長い時間存在していても、お友達は初めてだったのよ。
かわいそうでしょう?
分かってげてくれないかしら?」
知能が一般より低いのか?この‘母’?
だったら、難しい事を言っても通じないよな。
「分かりません!
もう一度言います、分かりません。」
「まああ、ひどい子ね。」
この‘母’前回みた時より様子が相当に変化した。
白髪の妖怪みたいに髪を振り乱して狂気をはらんでいる。
ヤバいか?刺激し過ぎると。
前は見た目が30才位にだった。
今は80過ぎの老婆に見える。
これが人間じゃないのは、今さらだけれど。
ええい。
「その理屈ですと、俺は怒り続ける権利がありますよ。
‘サンラン’さん。」
「なぜよ?」
「ドゥーダン提督が、自分にしてきた事でしたら、
煮え湯を飲んで忘れる事もできます。
ですが、‘母’のあなたが産み出した‘子供’ドゥーダン提督を亡くなった後にまで気遣われるのでしたら、
俺が許せないのはお分かりになるはずです。
同じ事でしょう?
ドゥーダン提督が手をだしたのは、
俺の“こども”です。」
「たとえ、どんな代償を差し出されても、
許す事などできません。」
「あらいやだわ。
それで、怒っているの?
だったら先にそう言ってくれたらいいのに。
あなたが怒っているのは、ドゥーダンがほんのイタズラで、
あなたの子供の‘手を’切っちゃった事を怒っていたの?
なんだ、知らなかったわ。」
「?」
こいつ、脳ミソはないのか?子宮だけ?
「それなら、私の力が残っているうちに
あなたの子供の‘お手’を作ったら良かったわ。
もう、今になってるから言われてもどうしょうもないじゃないの。」
「皇帝陛下は、あなたの一部を育てたら、
ドゥーダンの事を許してくれるって言ったのよ。
それなのに、あなたったら意地悪だわ。
えーーーーん。悲しいわあ。
えーーーーーん。」
鍾乳洞の中、泉の前で
‘サンラン’の泣き声がこだましている。
なんだこの、オカルトホラー。
もう、知らね。
かーえろうっと。
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陛下から宰相閣下を通して、
《旧ドゥーダン領地の平定と選別》を正式に命じられた。
俺とドゥーダン‘母’のやり取りを、
陛下も宰相も‘見て聞いて’いらっしゃったみたいな御様子だ。
あそこにも、色々設置をしてあったんだろう。
命令通りに私見を交えず、
選別のみを行い御前に並べる事に注視しよう。
なるべく性急に。
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ということになったので、久しぶりに俺の幕僚会議。
幕僚4人の各々さらに下の、幕僚達も集めた。
すでに、旧ドゥーダン領地を押さえれば、
直ぐに領地·兵の選別を可能にするまで調べがついていた。
やるじゃん。俺の幕僚君達。
寝付いていた俺だけ‘蚊帳の外’だった訳だ。
すいません。
ドゥーダン属領の一般領民は、あまり多くはないようだ。
そっちの処遇も俺の仕事ではなさそうだ。
宰相閣下がちゃちゃっとして下さるよ。
一番揉めたのは、奴らが、何とか俺を実働に遠征させないでおこうと頑張る事。
ふざけんなよ、
俺は、かなりもう大丈夫だから。
昨日は、5キロ走ったんだぜ。夜中に。
たまに、俺が咳をしたぐらいで皆で飛び上がるのやめてくれってば。
幕僚達と俺がそれで揉めて、
落としどころがつかないので、一回ブレイク。
ちょうどそこに家から俺に通信が入った。
休憩中だったから、この場で取ってみた。
家の内訳の内緒話ではないようだったから。
モニターには、ミラ様と、泣きべそのフレイアちゃん。
「少し、厳しく言って聞かせましたの。
私も、つい甘やかしてしまいましたようで。
ほら、フレイ あなたから、おじいさまに仰る事がありますでしょう?
なんて言うのですか?」
「ごめんなさい。」
睨み付けながら、目に涙溜めて。
悔しくってしょうがないのか。笑笑
可笑しいったら。かわいいぞ。
「おじいさまのおうちに、
またかえってきてください。
もう、フレイはいじわるはいいません。」
「へーー。ぷぷぷ。
あはは、泣けちゃうくらい悔しいんだ。
俺に謝るの。あっはは。おかしーい。」
「バーカ、バーカ。
おじいさまのクソジジイ。
クルクルパー。」
ドタドタと、フレイアちゃんモニター画面からフェイドアウト。
「まあ、まあ、まあ。
何ですか!フレイア。
そんなごめんなさいはありませんよ。
お戻りなさい。」
「司令閣下、申し訳ありません。
決して、ひねくれた子供ではないんですのよ。
我が儘をさせて来たつもりもございませんのに。
どうしてあなたにだけ、あのように。
よくよく言って聞かせます。」
「いいよ、ミラ様。
あれは、言えば言うだけ意地になるよ。
たぶん。
俺、なんか覚えある。
ああいうの。」
「マコも、アロマもあそこまで意地っ張りでは
ありませんでしたでしょう?」
「もっと前。
40年以上前。
あんな、顔して親父にわめいたのに既視感があるわ。俺。
あははは。面白過ぎる。」
その後に、爆笑している幕僚と、
今回の旧ドゥーダン領の分別の俺の出所ポイントを話しあった。
何だか‘フレイア通信’の後に変に温い会議になっちゃって。
「子供の時のターラン司令を見ているようでしたね。」
「手の焼ける大物に成りそうですね。」
「おじいさま、クソジジイは傑作です。ぷぷ」
お前ら結局、俺の意見を聞かないつもりかよ。
俺、そんな‘深層のお姫様’扱いしていただかなくても、
戦後処理作業って得意科目ですけど?
やめてくれよ、そういう腫れ物扱いは!
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皇帝陛下から、御前にお呼びだしを受けた。
うわー、とうとう?
軍服着て御前に立つのは、本当に3年以上ぶり?
もっとか?
もう、逃げられないよな。
はーーー気が重い。
目茶苦茶気が重いよ。
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「お召しにより、サリュー·ターラン総括司令、参上いたしました。」
あれ、こう言う時は、ファーストネームは要らなかったか?
まあいいや。
「ああ。来たか。」
うわあ、陛下また黙りですか?
この長い沈黙、気詰まりで嫌だな。
10分位?
今日は宰相閣下はご臨席していらっしゃらない。
いつの間にか、陛下の秘書官もいなくなっている。
「サリュー?」
「島にでも出向くか?」
俺、ムッとしたのが顔に出ただろうと思う。
陛下から何か飛んで来るのは覚悟の上。
今日は、避けるのと避けないのは、どっちが正解ですかね?
陛下、もういい加減お分かり下さい。
これだけ長く俺をお使いになって、まだ分かって下さいませんか?
俺は、そういう流されちゃって『もう、しょうがないですウフフ』の、
イチャイチャができてしまう風に、出来てないんですって。
屁理屈野郎なんです!かわいくないでしょうけれども。
時間限定の仕事で、やれって言うんならやります。
かわいこちゃん。
一生涯、それを‘素で’でやるのは無理なんですってば。
出来るもんならとっくに楽になってます。
「お前とて、貯まってきつかろう?」
えっと、陛下はまた何を仰っているんだろう?
陛下がさも可笑しいというように、モニター画面を示された。
???うわー、まさかね?
「ええええっっ!!」
嘘だろう?
あの病室って、全包囲で陛下のお‘目’に届いていたって事かよ?
シャワー室やトイレまで?
俺、顔が真っ赤。
3秒で泣けそう。顔が上げられない。
俺、『魂』が見えなくなって、元気になってきたら、
ちょっと思いもかけずに元気になって来た?事が。
ここ10年、体調が落ちて来てから忘れていた。
『‘健康な成人男子’だったら、そういうことあるよね。』
の生理的なゴニョゴニョ……。
いかに、今まで‘健康’ではなかったのかが、よくよく分かった。
『親に隠れた10代の子供かよ!』と、
ちょっと複雑な思いで。
シャワー浴びるふりの後ろ向いて、ちょっとそのぉ、処理作業?
見ていらしたって事ですか?
陛下、俺死にそうです。
今すぐ爆死したいです。
作業しながら、陛下を思い浮かべはしました!
だってしょうがないでしょう。
俺の、生涯の実働作業は、あなたが9割ですから。
顔が上げられない。上を向けない。
「言いたい事があるのなら聞いてやる。
事の後でな!」
陛下? 『事の後で?』‘事’?ですか?




