【嘘‘は’ついていないパパは皇帝陛下の愛人?じゃないと思うんだけど】side サリュー(パパ)
子供、友人、部下 誰にでも言ってきた。
「軍服で皇帝陛下の御前に立って、陛下に2文節以上の直答を申し上げた事はない!」
嘘はついてないよ。‘軍服で’‘御前に’では、本当だよ。
公私において、自分にとって何かの便宜を要求するような事、意地でもした事ないからね。
自分の意地よりも、守るべきものがあったのだろうか。
少し思わないでもないけれども。
今さら、変えられないよ。可愛げのない性分は。
俸給以上は、働いて来たつもりだし。
滅私奉公で15年以上、生きてるのか死んでるのかわからないブラック労働で、やっと最近地に足がついている心地になってきた。
陛下に初めてお目通りいただいたのは、13歳の時。誰にも言って無いけどね。
父親のバドゥ·サブルに、無理矢理ぶちこまれた士官学校の幼年下部学校に在籍中で腐っていた時の事。
俺本人は士官のエリート下部学校などまっ平ごめん。
本当は軍の工学技術に特化したTechnology school[テクノロジー学校]に進むための書類を用意して、父にサインを貰えばいいだけに用意万端で準備していた。
それを目の前で破かれて、幼年下部学校の試験場に引きずられて行った。
当時は父のサブル姓を名乗っていたが、もともと母の戸籍はこの帝国にはない。
母は父のセカンドワイフであったのだが、戸籍上は幽霊であった事になる。
この星から自分とたった1人生き残った妹の手を引いて逃げた時に、父の姓も捨てて、母が末席の王女として産まれた宗教公国の名ターリスランに近いターランを名乗って現在に至る。
幼年下部学校には、戸籍上は父の正妻の息子にあたる、父と血縁のない(父は正妻に会ったこともないらしい?)息子が先に在籍していた。
本家の息子。一応ね。
父のセカンドハウスである俺の育った家は、スラムのご近所程度の暗い色の海に近い場所にあった。
そこに、身重の母、自分、妹、たまに宇宙の航海から戻る父の家である体裁をとっていた。
困った事に?本家の腫れ物に触るように扱われていた息子と違って、子供の時から近所の悪いお兄さん達と、官憲をからかって遊んでいた自分とでは、頭も体も回転が違うわけで。
いやいやながら入学した下部学校でも、本家の息子よりは、うっかり手を抜くのを忘れているとはるかに成績も上位なわけで。
嘘です。片手間でトップでした。
そうしたら、父の兄にあたる気の毒な伯父が俺のところにふっとんでやって来た。
伯父は元嫡子であったのに、父とその母親によって嫡子から逆に脇腹へと下ろされた事情があるらしい。
自分と俺を重ねて、お節介を焼きに来たらしい。
「分際をわきまえろ!」
あきれた事に、伯父は嫌がらせに来たのではなくて、自分と同じ立場の俺に‘利口に生きる’助け船を伝授してやろうと親切心を出したらしい。
口があんぐり。
あんまり面白いから、その本家の息子が前年にとった成績の、ぴったり1点下を調整してとってやった。
嫡子君、あんまり成績も体幹運動神経もよくなかったみたいで、落第点のところは、満点とっといた。
だって落第するのも面倒臭そうだから。
何で、嫡子君の成績が分かるかって?
それはね、その頃の帝国のシステム管理なんて、ユルユルの穴穴。
今は違うよ。俺、頑張って改修したからね。。
やれるもんならやってみな!レベルに格上げしてあるって。
その頃の簡単に侵入できて、覗き見しほうだいシステム。
退屈しのぎにちょうどいいハッキングの練習。
親元に学校から送られる成績表を見た親父様が気がつくかな、何て言うかな?
何て言い返そう?ってちょっと楽しみにしていた。
『お前は本当に小賢しい!』親父様は一言。
職員室で成績見てきたくらいに思ったのかも。笑
当時の幼年下部学校にやってくるような、定年間近の軍属の教師は威張るのが目的のモラハラ野郎はもちろん、おとなしい同級生にセクハラする野郎も居やがって。
男の子にだよ。
自分に矛先が向かなくても、胸糞悪いのなんのって。
つい、ユルユルシステムを覗いてみたら、そういう奴に限って暴露されたらヤバい形跡が。
主に金銭関係やら、アホで脅迫文書を送った形跡まで残ってて、掘ると出る出る。
そーーーと、発見しやすい人の部署に。
何気なーく間違って発見できちゃうように、悪い足跡をちょこちょこっと、静かーにばらまいて遊んでたんだよね。
だって、退屈だったから。
つい調子に乗って遊び過ぎたのか、学期末に寮から家に帰ろうとするとスーーっと俺の前に車が停まったんだよ。
中からグレーの軍服の、隙のない出で立ちの人がワラワラ。
これは、ヤバいやつだ。
とっさに逃げようとしたけどすぐに意識落とされちゃった。
親父様に拷問のように鍛えられてはいたから、そんなにあっさりやられるとは思ってもいなかったのに。
手も足も出ませんでした。
流石に血の気が引きました。
親父様がどこでどんな風に死んだとしても、あの人の事だから自分で納得した理由があるんだろうし、たいして心も動かないだろうと思っていたけどさ。
でも、それには親父様の大義があるんだろうに、まさか息子の不始末で腹を切らせる事になるのは、流石にちょっと申し訳なく思って、あちゃーって思ったです。
で、いつの間にか、陛下の御座す、奥に連れて行かれたみたいで、
グレーの軍服がずらーっと並んだ壇上の玉座に、陛下が鎮座していらっしゃった。
その横に控えている、ちょっと偉そうなグレーの嫌みっぽいおっさんがこっち向いて薄気味悪い笑顔で見下ろして。
「あなたは、そんなに機械いじりがお上手なんでしたら、将来はそれを生かしてお仕えなさるとよろしいですね。」
横の陛下は、何をおっしゃるでもなくて、ずっと面白そうにクスクス笑ってらっしゃった。
縛りあげられて牢にぶちこまれるか、即刻処分だろうと(事故で死んだ事にでもしてくれたら辺りに迷惑拡散しないかも?)覚悟したのに、なぜか縄も打たれずに、車で自宅近くまで送ってもらって、何事もなく帰宅してしまった。
それから、帰宅する週末とか長期の休みになると、(裏門からばっくれようと画策して頑張ったんだよ)どこからともなくすーーっと車がやって来て停まって拉致されちゃったんだ。
連れて行かれたのは、海に囲まれた島。
無人島って言うより立派なリゾートコンドミニアム?
家の近くの漁港に面した暗い色の海とは大違い。
見たこともないコバルトブルーの絶海の孤島。
だけど、誰もいない‘無人島’に建物がひとつ。
人の気配がなくて、たったお1人で、少しラフなお召し物の陛下が景色に溶け込むように座っていらした。
正確には、グレーのお仕着せの男の人がワラワラ居たんだろうけれど、彼ら気配がないんだもん。
陛下が静かにグラスを傾けながら
「好きにしていれば良い!」
と、おっしゃるのをいいことに、ホントに好きにしていた自分に今さらながら冷や汗。
だってなにも無くて、誰もいないなら、海辺育ちの悪がきがやることってひとつでしょう。
海に潜ってみるしかないじゃないよ。
俺の‘巣潜り(すもぐり)’は物心付いたときから、たんぱく質確保の仕事のようなもんだからさ、得意ちゃ得意。
母親は宗教上の理由だかで『四つ足のものは食さない!』だし。
父親の中途半端な世間知らずは『妾の家の留守宅には俸給の支給がない!』なんて、わかってなかったんじゃないかな。
その辺の枝を拾って、父親に持たされていたナイフで先っぽ削って即席‘銛’で、普段見慣れない魚突いたら、大漁で。
流木拾って火を起こして、焼いて食べてみたら、なかなか美味しい。
皇帝陛下が、指をちょいちょいってするから、『召し上がるって事だよね?』
お行儀よく両手で捧げたのに。
いきなり何処からか、グレー軍団が飛び出して来て、腕を押さえつけられちゃった。
結局、グレーがお毒味したあと、陛下は召し上がった。
お酒のつまみにちょうど良かったんじゃないかな?
包丁とまな板があったら、刺身も出来たのに残念!
そんな、時々何だかよくわからないけれど、考えたってしょうがないみたいな事を挟んで1~2年。
親父様の戦死が、学校に所属していた親父様の同期生の温情?(本宅でないと戦死の広報も来ないのさ)で知らされた。
あわてて、家に帰ったら家が燃えてるところで。
燃えきっていないから、俺は水をかぶって飛び込んだ。
中に入って目にしたのは、母が梁から吊るされて、産まれたばかりの弟は人形みたいに転がっている様子。
すでに息がないのはわかった。
腰を抜かしている妹を抱えて、外に出たとたんにバラックとたいして変わらない家が焼け落ちた。
母の頑な宗教教義のひとつに、『絶対に自ら命を絶たない。』があった。
これは、おかしい?でも、どうしてだか訳が分からなかった。
放心状態の妹が片言で
「灰色の男の人が来た。」
父はたまに家にいる時は、サーカスの曲芸の熊にするような虐待ぶりで俺に剣術を仕込んだ。
なのに、肝心な情報を何ひとつ伝えてくれていなかった。
父の実家である本家のどろどろを含めて。
今思えば、自分にも降りかかってくる原因になるのなら、探りに出ても良かったようなものだったのに。
子供だったのか迂闊だったのか、関わりたく無いことを避けて来た事が遅れをとった。
妹が呟いた『灰色』に、下部学校生徒が知っている知識など、
『灰色』は、天上に御座す、ただ1人方の周辺としか思い至らずで。
前に渡されていた、陛下の横でニヤニヤ笑いをしている秘書官?みたいな人に
「何かの時は」
と、連絡先を握らされていた事を、思い出しもしなかった。
もっとも、誰が敵だか、何が何だか分からなかったのだから。
対策なんて考えようもなかったし。
父への反抗心は、年毎に増すばかりだったので、16歳になって傭兵に採用される年齢になったら、父の目の届く所から出ていこうと計画を綿密に練っていた。
それが、少し早めになって、妹も一緒になったのだけれど、とにかくここにはいられない。
自分1人なら、何故?誰が?と足が止まって考えもしたのかもしれない。
妹が居たことで逃げる事を最優先に、ここから出ていこうとしか頭が回らなかった。
もう少しで15歳になるところだった。
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今日の暇潰しや気分転換になってたりしたら嬉しいなあと思っております。
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