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【パパの《死に支度⒌》後は上手に死にたい? 】 side サリュー

 

「ターラン総括司令閣下、あなたにどうしてもお渡ししたい物があります。」


 今週3回目だよこれ。


 はいはい‘お渡ししたい物’は、爆弾かな?


 ゴミ貴族撲滅したら、すっかり人気者になっちゃって。


 2日に1回はお客さんがいらっしゃっています。

 暗殺者ホイホイになっている、俺今。


 体力落ちているけれど、目が見えないんじゃないから全然オッケー。

 そんなぬるい暗殺、太刀筋止まって見えるもーん。

 どんどんいらっしゃい。


 最近は実戦では使っていなかった、懐剣やら銃やら。

 ここのところ大活躍。


 今日のお客さんは、回りのガードが取り押さえて組伏せてくれたから。

 俺は銃を抜かないですんだ。


 なんか火傷の(あと)(ひど)い暗殺者だね。

 素人かな?動きがトロい。


「サブル少佐からお預りした物が。」


 ん?また手の込んだ演出してくれたもんだね。



 ******************



「ええ?面倒臭い。本物だったって事?」


「親父が戦死した時の若年の従卒?おかしいじゃんその話。


 死んだとき、うちの親父‘少佐’だよ。

 将軍職でないと、従卒なんてつかないんじゃないのか?」


 だいだい、若年の従卒って制度が胡散臭くて嫌いなんだよ。


 何で、子供を戦場に連れて行くのさ。

 茶ぐらい自分で淹れたらいいだろうよ。


「親父の上官の中将の?」


「ええ?いろいろおかしくない。

 親父が死んだとき俺14か15?

 だったら、俺と同じくらいの年ってこと?


 ミルゼス少将よりも、年上に見えたぜ。」


「うちの親父が日記?

 聞いたこともないって。


 苦労したから老けて見えるって?

 俺と違って?


 ああ、すいませんね。

 全然苦労したことないもんで。」


「ああ、だからさぁ、その日記に爆弾が仕込んでなくても、薬剤の噴霧(ふんむ)をしてなくっても。


 あの親父が、日記を気に入らない息子に残すなんてメルヘンチックな事は絶対にしないんだってば。」


「もう、切るぞ。」


 *******


「何を騒いでいる?」


「いえ、陛下のお耳を汚すような事ではありません。」


 俺、結局《第二回円卓会議場》から部屋に戻ってから、床上げまで2ヶ月。


 リハビリして、軍服着て仕事に出て元気なふりをするまで1ヶ月。


 合計3ヶ月の空白期間を作ってしまった。


 まるで、肝心な時に逃げて飛んだみたいで。

 みっともなくて自己嫌悪で頭抱えている。



 *****************



 理想はこうだった。


 あの、円卓第会議場でバーン!!『紺』軍服·『灰』軍服の主要メンバーにざーっと並んでもらって。


「じゃあ、連携のマニュアルは『紺』·『灰』両方とも納得ですね。


 マニュアルが外に漏れると、俺が敵方だったら、マニュアルシステムに侵入して、ぐちゃぐちゃに撹乱して、一気に攻めちゃおうか?

 と、思うので。


 頭に、叩き込んでおいて下さい。


 では、後は宜しく。」




 そのはずだったのに、どうしてこうなってるんだろう?


 円卓会議場の使い方、全然違う事になっているし。

 円卓部分は半円になって、役所や図書館の受付みたいで。


 その受付には、俺と幕僚達が座らせられて。


 クローレス上級大将はミルゼス少将と日替わりで。

 時々、ヤジ·キタ(ヤジール大将とキタップス中将)のコンビも座って貰って。


 不定期で、陛下や宰相閣下の秘書官の日もあったりしてる。


 円卓の後ろに広がった大会議場は、順番待ちの軍服がいっぱい座って、病院の順番待ちか?


 自慢のモニターには、本当に順番待ちの番号が表示されちゃって。


 何なんだよこれ。



 ********



 結局俺は、最後の仕上げを‘かっこ良く’は出来ないわけかよ。


 身にそぐわないってやつか?

 はいはい、自分の分際は存じておりますって。


『紺』·『灰』を連携で動かすのに、大きな問題の軋轢(あつれき)は、ほぼ無かった。

 《ゴミの6貴族》撲滅作戦も、シュシュっと終わっていたし。

 俺が意識無くしてる間に。カッコ悪。


 後は、小さな根本的な行き違いがちょこちょこ。

 それが発展してトラブルになって、あっちこっちで揉めた。


 ひとつひとつは、俺から見たらなんでもないようにみえる。


 昔やった仕事の、《通訳兼、文化説明》みたいな感じで解決できる事。


 産まれ方、育ち方が特殊である『灰色』軍服のマケル家工場出身者と、普通の女の人から産まれている『紺』軍服では、悪気のある無しではなくてすれ違う事も出てくる。


 外国人どうしで付き合うようなもんだから。


 お互い違いを理解できれば何でもないのに、わからないから揉めてるっていう。


 ご近所トラブルみたいなの事なのに、扱う重火器が軍用だから事が大きくならないうちに歩み寄って貰わないとね。


 それで、結局カッコいい円卓が《ご相談カウンター》になっちゃった。


 俺、体調と相談しながら日々そこに座って、チミチミと‘トラブル処理稼業’発動しています。


 バーンがチミチミになっただけだけど。

 何か残念です。


 その上、誰がみたって非効率。


『相手にアポとらして、司令のところに上がってくる前に精査をさせたらいいじゃないですか?』


『変、変。』


『無理』


 と、各方面に言われて、そうしようかと。


 先に部下が精査をするのをみていたら、捨てちゃう案件の中にもほっとけないのが混じっていそう。


 アポは、無理です。

 日によって俺の調子が違うから。

 朝起きてみないと、何時間働けそうか分からないから予定が立てられない。


 あんまりキャンセルばっかりしていると、詮索(せんさく)をされたら面倒臭いし。


 クロさんが、


「いっそ、献金箱でも置いて、怪しい水晶玉でも置いてみたらどうだ?

 どっかの、なんかみたいで面白いぞ!」


 どっかの何かってなんだよ?

 インチキ占い師の真似?


 あんたも当事者でしょう。


 全然面白くないよ。


「これいつまで続くんだよ?永遠に終わんないのか?」


 と、思っていたら、ここ数日だいぶ落ち着いて来た。

 やーれやれ。


 少し時間に余裕ができたので、とんぼ返りの大急ぎで自宅に戻った。

 滞在時間15分。


 ミラ様、マコ·孫軍団は、現在マケル宰相閣下の邸宅に危険回避で預かって貰っている。


 アロマは、ユニヘ戻ったそうで。


 今、こっちの俺の家は、スールさんと、数人のメイドさん、庭師さんが残っている。


 庭師さん、初めましてだけれど、目付きも体幹もただ者ではないのが丸分かりで、笑った。


 スールさんのスカウト凄い。


 スールさんに渡しておきたい物があって俺、家に。



 仕事のあれこれでレヴィオン·ビステル少将に会ったときに


「マコ、(ふく)れているだろう。

 俺、赤ん坊見にも行っていないから。」


 レヴィオン君、口が滑って。


「大丈夫です。司令閣下がお忙しいのはわかっておりますから。

 マコーレットが

『ゾンビ司令が、本当にゾンビになっちゃうからしばらく会えないのはしょうがない』と、

 申しておりますから。」


 言ってから、ハッとして口を押さえても、聞こえてるよ。


 えっと、俺の今の‘二つ名’ってそんな事になってるんだ?


 なんだよ、《ゾンビ司令》?最悪!


 まだ、今は死んでませんけど?


 今日俺が、あわててスールさんに会いに来たのは、厄介な物を預かって貰うため。


 あの、“親父の日記”、本物だったんだ。


 親父の上官中将の若年従卒だった、この間の男。

 親父が戦死をした時に真っ先に(のが)されたんだと。

 

 まあ、まっとうだよね

 子供を先に逃がすのは。


 その時に、親父の上官の中将に、子供だった従卒君が言葉と何か遺品を家族にと託されて。

 

 親父も‘ついで’?に内縁の妻にと、従卒君に託した日記だったんだってさ。


 うちの母ちゃん、帝国の言語ほとんど読めなかったぞ?


 その従卒君、爆発で、酷い戦傷を負って回復するのに随分と時間がかかったんだと。

 そうだろうね、酷い火傷だったから。


 動けるようになってうちを探したらしい。

 

 うん、無理だったろうね。お手数かけてすみませんでした。

 当の母親は死んでいるし、俺と妹はこの帝国を出ていった後だから。


 で、最近になって、俺がどういうわけか?『サブル少佐』の息子らしいって噂が耳に入ったらしい。


 今はおれ、“親父の日記”読む気持ちにはどうしてもならない。


 それでも、最初のページだけ『いやいや我慢して』開くと。

 確かに目にした事のある親父の字だった。


 角ばった四角四面の親父の字だ。


 燃やしてしまおうかとも思った。


 誰かに託して、俺が死んだ後に燃やして貰おうと卑怯な事を思い付いて。


 誰に託そうかと考えたら、スールさんの顔が浮かんだ。

 肉親には、不思議と託す気にはならなかった。


 スールさんに、短く説明をして、今はどうしても目を通す気持ちにはならない。


「勝手なお願いですけれど、預かって貰えないかな。


 もし、俺が死んだ後は身内にも託さずに、スールさんの手で処分をして貰いたいのですけれど。」


 スールさんは、何も言わずに受け取ってくれた。




 *******************



 《サリューのオモチャ》製作、最終段階まで来ました。


 だいぶ目鼻がついた。


 陛下の大型戦艦高速艇、その他諸々。


 その他の中のひとつに《星を丸ごと膜で覆うようなガード》も設計してみた。


 オーロラシステムの変形型。


 常時張っておくことは、エネルギーの量がかかりすぎるし。


 軍用機の離発着の邪魔になるので緊急時だけだね。


 いつの時代かエネルギー源が確保できたり、帝国軍の飛行艇だけが膜をすり抜けて上手く離発着できるようになったらいいね。


 それは、先を生きる人間に任せた!




 *****************




 部屋でパジャマになって、モニター画面とにらめっこをしているといつの間にか陛下が後ろに立っていらっしゃった。


 この頃、陛下のお気に入りの俺へのかまわれ方で。


 俺が、画面を覗いている後ろから、おぶさりかかって来るようになさって両腕を俺の前に回される。

 ちょっと足を後ろに引かれて、腰を低くなさって。


『もう、仕事を止めろ』の合図らしい。


 これ、既視感があってクスクス笑っちゃった。


 子供達が小さかった頃に家に仕事を持ち帰ると、マコが陛下の位置で俺に背負われるように甘えて、アロマは(ひざ)に乗ってきた。


 たまたま、それを見ていたクロさんがその様子を、写真に隠し撮りしていたことがあった。


 プリントアウトして、執務室の机の引き出しに入っている。


 俺が、子供まみれで苦笑している、そのたった一枚しか子供達との写真ってなかったかも。


「陛下、近日中に御前で正式にお目通りを頂きたいのですが。」


「今も『お目通って』おろうが。

 何をまたわざわざ?」


「ちゃんと、御前で軍服を来て、言上(ごんじょう)つかまりたいんです。」


「なんだそれは。クク。まあ好きにしろ。」


 俺が今、陛下に差し出せる精一杯がここまでです。


 親父に仕込まれた上に重ねて生きて来た技ではなく。

 本当に俺がやりたかった仕事の『オモチャ作り』。


 今世(こんせい)で、悔いなく作らせて頂けました事を心から感謝しております。

 まあこれ、口に出しては言えないけど。


 ざっと、完成予想図をお見せするくらいがいいところかな。ははは


 宰相閣下にひとつは‘意趣(いしゅ)返し’ができそうだしさ。


 あの《マケル家人間製造工場》でプカプカ人工子宮ポットに浮いてた可愛そうな俺。

 使えるまでに5年?って言っていたよね。


 上手いこと、間に合わなさそうだから。セーフ。


『命根性が汚ない!』をみっともないと思うくらいの、恥じ?プライド?はあるんだよ、俺だってさ。


 あの親父の息子だし、傭兵稼業でも染み付いてる。


『生き恥じ』を(さら)して、命にしがみついてみっともない生き方するのは、死んでも嫌だから。


 思い通りになった人生でもなかったから、せめてそこは自分の好きにさせてもらう。


 後は上手に死んでやるだけ。


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