【パパの《死に支度⒋》さあ、いっぱい恨まれるぞ?】 side サリュー
2回目の集合、円卓会議場。
びっくり、本当にガレット大佐以下、3日で情報掴んで来た。
クローレス上級大将が、新たに若手将監3名を連れてきた。
マコ旦那のレヴィオン·ビステル少将もその中の1人で。
へえー。
ミルゼス少将が新たにお連れになった2人に目をやって、ちょっとギョっとした。
帝国軍の古株と、やや古株。
生ゴミ達とは違う、軍の生え抜きのお偉いさんだけど、
うっかり、当の生ゴミと繋がっていたら厄介だから。
ミルゼス少将を信頼していないのではないけれど。
ここは、ちょっと情報を集める時間を作ろうかな。
「お忙しいところ、ご足労をお掛けいたしました。
ヤジール大将閣下、キタップス中将閣下。」
「至急、お二方のお席を失礼の無いように整えますので、いま少しだけ次室にて、お茶でも召し上がってお待ちいただけますでしょうか。」
「そっちの若いの3人は、えっとその機械類の後ろにでも座っといて。」
へえ、レヴィ君、パパの意思わかってる顔して。
偉い偉い。
わざとらしくて、ごめん。
では、まず全員着席のまま。
「ちょっと一本、通信入れさせてね。
この前みたいに偉い人にモニター繋いだりしないから、皆さんお楽に。」
「忙しいところごめん。」
モニター画面には、マコの赤ん坊抱いて哺乳瓶抱えたままのミラ様。
「あら、司令閣下。どういたしまして?
この子今日は朝からむずかって、少し熱があるようですの。」
ごめん、単刀直入で。
「ヤジール大将と、キタップス中将ってどんな方。」
「ヤジール大将は、気象学を修めた方でしたわね。
艦を動かす自然の流れを読まれるのがお得意でいらして。
気象だけではなく、時流の流れ、人の勢力分布を読まれる事も長けておられて。
その功績で今の地位を得られたとか。」
「風見鶏と揶揄される向きもおありのようですけれど。
どちらが強い風であるかを読み違えて、いたずらに逆風を煽る愚はなさいませんでしょう。」
はい、了解。
俺が強い風のうちは、こっちに見方しているタイプって事でいいかな。
「キタップス中将の事はあまり良くは存じませんが、確かご器量の良いお姉様がいらっしゃって。
軍閥の貴族高官に見初められて無理やりに嫁がされて、早くに亡くなっていらっしゃいます。
嫁ぎ先のお姉様への眉をひそめる仕打ちの噂が、人の口に上っていたようですわ。
私も司令閣下も、まだうんと子供の頃の話ですわね。」
みんなに、これ聞かせているけどいいね。
「ありがとう、ミラ様。
あなた今度さ、
《帝国1の嫌われものの娘》から《帝国1の嫌われものの妻》に
昇格できるみたいなんだよ。」
「ちょっと、身辺を気をつけてね。
スールさんにも伝えておいて。」
「あらまあ。
それは、賑やかですこと。」
「それでは私はしばらく、孫と子供とマケル邸の方へ籠っておりますわ。
こちらよりも、守りが堅固になっておりますから。
少しは、枕を高くして休めましょう。」
「ありがたいけれど、いいのかな?
俺の方から宰相閣下にお願いするのが筋だよね。」
「ホホホ。
義理とはいえ、ご自分の孫と‘曾孫’に娘の私。
門前払いのは喰わされませんわ。」
「ねーねー。
その子、しゃべるようになったらさ。
真っ先に
『“ひいおじいさま”』って言うように仕込もうよ。」
「宰相閣下、絶対に苦虫潰したような顔をなさって面白いかも。」
「ふう。
お戯れは、結構です。
まずは、しっかりご自分のお仕事をなさいませ。
『サリューおじいさま!!』」
うわ。それ言われたくないよ。
『おじいさま』嫌過ぎる。
ブツっと回線を切られました。
ミラ様、声を低くすると迫力あって怖いし。
これ絶対、宰相閣下もご覧になってるよな、マジックミラー状態で。笑
「ミルゼス中将閣下、色々失礼を申し訳ありません。
お手数ですが、次室に控えていただいているお二方のお迎えをお願いできますか。
お二方には、前回の会議場での経緯から、今回に繋げる説明をお願いしてもよろしいですか?」
「心得た。私への気遣いは不要だ。
かえって、礼を述べたいところだ。
ターラン総括司令閣下は良い妻女に恵まれていらっしゃる。」
「みんなはちょっと、その間休憩をとろう。
ガレット大佐、若いのに状況説明しておいて。」
俺、俺の秘書官に目で合図する。
別室でアンプルを打ちたいんだよ。
ちょっと、ぞくぞくして冷や汗が出て来てる。
このところ1本打っても、数時間しか持たなくて。
1日に何度か打っとかないと仕事になんないんだ。
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出てくる、出てくる。
埃どころの話じゃ全然なくて。
全員、真っ黒。
生ゴミ、《高位軍閥の世襲貴族様》。
みんな代々、仕事はしないのに将軍職にふんぞり反っている。
総勢11人。
結局、みんなで精査、検討して6ゴミを間引き、5ゴミを自然消滅に回す事を決定したら、半日の10時間かかっていた。
途中の食事と休憩に、俺が隣室でシコシコとアンプル打ってるところを、うっかりみられたらジャンキーみたいだから、要注意。
同じ程度の、ゴミ案件の場合は、年寄りの方を間引かないで残した。
残したゴミには、名誉職の官職でも作ってもらって。
普段は、その名誉なゴミ様だけが使える特権階級の特別室にでも籠っててもらおう。
子供の絵本に出てくる‘天国’みたいな‘いかにも’なスペースを軍のどこかに作って、綺麗なお姉さんに、サービスでもしてもらって。
過剰なサービスの要求は駄目だけどね。
今後の軍務会議に出て来られると面倒臭いからさ。
そっちは、年々数が減って行くだけだから、最終的には自然消滅してもらおう。
間引くゴミの罪状が、笑っちゃうくらい凄かった。
捏造しなくても、出てくる出てくる。
脱税は、まあ全員。
公金横領。
違法薬物作成、転売。
人身売買まで出てくるには、もう本当にゲラゲラ笑っちゃったよ。
大概そういうのは、前皇帝陛下の時代の負の遺産を家ぐるみで継続してて。
変な宗教団体から金貰って、庇ってやる見返りに大儲けとか。
裏の組織と繋がって、やっぱりお金ばかばか吸い上げて大儲けとか。
それで、セットで‘違法薬物’に‘人身売買’。
残したじいさんゴミは、脱税の3ゴミ、公金横領の1ゴミ。
残り1ゴミは、若い男の子に合意なく……ってそれは強姦だよ。
この頃は、年のせいでやってはいないっていうけれど。
それもどうよ?と思ったけれど。
そのゴミじいさんは、珍しく少しは役に立って軍務働きもしていたらしい。
全員間引きすると、『貴族撲滅を企てるターラン司令』とかになりそうだから、
少し残して正解なのか?うーんちょっとわからない。
『~撲滅?』そういうの今は、相当に面倒臭いから。
*******
ヤジール大将、キタップス中将が意を決したように俺に尋ねた。
「ターラン総括司令、貴兄は最終的にこの帝国をどのような方向に向かわせたいのであるのか。」
ここは、スイッチ真面目に入れて答えるところだ。
でも、きついっす。
体きついと‘余所行き言葉’はエネルギーが倍以上いる。
頑張れ俺。
「メルキオーア皇帝陛下の時代の臣民が、
後世の歴史家に
『あの時代の民はおっとりした顔つきをしていたらしい。』
って、言われるのあたりが理想かな?」
「おっとり?はて」
「陛下に対して反旗の思想を持たぬように、民の思考を操作なさると言うことか?」
「ぶほー。」「ゲラゲラ。」
俺を知っている奴らから、笑い声が上がった。
あれ、ヤジール大将、キタップス中将、怒ったら駄目ですよ。
「部下の無礼はお許し下さい。
うちは、自由な発言、自由な思考。
でも、使えない奴はぶったぎる。
そういう方針でして。」
「えっと、少し回りくどいようでしたらお許し下さい。」
「んむ。是非とも拝聴したい。」
「まず、自分は帝国に忠誠は誓っておりません。自分が忠誠を誓うのは現皇帝陛下、メルキオーア皇帝陛下お一人です。」
ざわざわ。いやちょっと聞いて。
「前皇帝陛下の時代は存じません。
次の皇帝陛下の時代も知ろうとは思わない。
メルキオーア皇帝陛下の時代の臣民が平和な日常を送る事を望んでおります。」
「どんな素晴らしい功績や発展を持つ国でも、地盤から崩れて国ごと瓦解すれば、全てが宇宙の塵になる。
無になった後には過去の努力も未来も残らない。」
「閣下より年若い自分ではありますが、間違いなく自分はそれを数多く実際に目にして来ております。
その後始末に駆り出される、‘トラブル処理稼業’に従事しておりましたので。」
「ふん。異存はない。続きを聞かせていただこう。」
「ええと、守ってくれる者のいない子供や年寄りは、
なんと言うか?ガツガツといたしますよね。
自分を自分で守らなくてはならない為に、常に周囲に目を配り騙される事を怖れて、必死で自分を守る為に。」
「それは、国の単位でも同じようで、
国が国民を守ると確信がないところの人間は、なんというか?
‘こすっからい顔’をしているんですよ。
いろんな国の同級生を目にして参りました経験から。
そういう‘こすっからい顔’の同級生は《生き上手》で、落とし穴に落ちる事がなく、そこそこ器用に生きる。
裕福な環境が人を作るなどとは決して申しません。
その始末を今、我々が話しあっていたところのように。」
「国の土台がぐらぐらしていたり、明日はどこかの火種で消え去りそうな国の民は、信用は国よりも自分。
そういう国では親は、自分の子供に家の中でそっと囁く。
『自分を守るのは自分だけ。国などを信じている阿呆は、真っ先に時流に乗り損なう。』と」
「利口な子供は、ちゃんと親の意を汲み、抜かりのない目をして生き抜いて親を喜ばせる。」
「メルキオーア陛下の時代に帝国の地盤が揺らぐ確率を少しでも低くする為に、微力を尽くす事を心より望んでおります。」
「陛下を見上げる臣民の瞳が、ガツガツしているよりおっとりしている方が、メルキオーア皇帝陛下にはお似合いになると思うんですよね。
その方が、なんか美しいような?」
「あい、分かった。」
「いやいや、最後のところがよくわかんなかったがな。」
ううう、クロさん、フォローに回ってくれないんですか?
陛下、モニターみて下さってるかな?
結局、夜遅くになっちゃったから、みてはいらっしゃらないかな。
俺、一世一代の《告白》を陛下にしているつもりだったんですけど。
可愛げのない《告白》では、伝わってはいないかな。
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「実動突入計画は迅速に成功させたいから。
こちらで、3日の譲位を成功させた方にお知恵を拝借して来るから。
なんせ俺は、この間産まれた若造なもんで。」
「若いおじいさまですか?」
お前、ミラ様との通信見てたな。うるせえよガレット。
「次回に仔細計画を発表しますので、
それまでくれぐれも‘敵方’に露見
しないように気をつけて下さい。」
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はー、1年分くらい演説しちゃったよ。
疲れたー。
解散と同時にマケル宰相閣下から通信が入った。
思わず、今日最後の力を振り絞って深呼吸。
さあ頑張って話し出そう。
とする前に、宰相閣下から。
「全て了解した。
こちらで詰める。
それよりは、1度休むがいい。」
あれ、ずいぶん優しいですね。
確かに、薬の1日の使用量上限を越して打っちゃって。
ちょっとヤバい感じ。
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部屋に戻ってから、記憶がなくて。
気がついたら夜だったので、気絶ちょっとだけしちゃった。
と思ったら、中2日たっていた。
夜は夜でも次の次の日。
ここは自分の執務室の隣の寝室だよね。
やだな、腕の点滴と、下に導尿管。
これ、嫌いなんだよね。
好きな奴はいないか。
瞼が重い。
もう一眠り、でもあっちこっち詰めないと実動計画まだ全然できていない。
情けない。だけど動けない。
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時々目が覚めたり、うとうとに引っ張られたり。
まずい!仕事?
一週間くらい無駄にしちゃったよ。
びっくり、一週間でなくて1ヶ月も経っていました。
うわあ、どうしよう。
血の気がない顔がさらに真っ白。
どうも、なかったです。
全部終わってた。
いや、全部ではなくて《6ゴミ貴族》全部捉えられて、罪状が開示されて、後は判決を待つばかり。
家はもちろん取り潰し。
マケル宰相閣下の配下『灰色』の画策と、『紺』軍服が実動突入を主軸にあっという間に6家同時に捉えられたって。
いったいどんな騒ぎになっているんだ外?
なんだよ、俺なんか全然要らないんじゃん!
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気がついたら、陛下が横に座っていらした。
黙って俺の髪を鋤いてため息をつかれる。
俺、まだ声がかすれて上手くでない。
「もうしわけ…ござい…ません。」
変な声。
「何を急ぐ。命を縮めて急ぐほどの事ではあるまい。」
ご立腹ですね。声が怖い。
「もうし……わ」
「もう良い。休め。」
瞼が重くなって、目を閉じた。
眠りに落ちる前に、陛下の声が聞こえたような気がした。
「ずいぶんと回りくどい事を。
あれでお前の、想いを拾えと言うのか。」




