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【パパの《死に支度⒉》ボケちゃった皇太后様をどうしよう?】 side サリュー パパと陛下…ちょっとだけ♡

 ざわっとした。嫌悪感?違うな、なぜだろう。


 月に2回くらいは、家に帰らせて貰っている。最近。


 普段、通信でスールさんとミラ様とは連絡がとれているけれど、どうしても陛下や陛下の‘耳’の横で話をしにくい事もある。


 今日は家で。

 ミラ様から話を聞いて、俺は腕組みをしている。


 俺には関係がないし、むしろ考えたくも巻き込まれたくもない事なのに、何か引っかかる。


 ああ、わかった俺。


 “陛下の御手を”汚されるのが嫌なんだ。


 何だか陛下がそこまでなさる裏側に‘俺の’事情も絡んでいるような気がして。



 《皇太后様の()け具合に拍車がかかってきた》件。


 ミラ様から聞いていたところ。


 皇太后様の今の状態が、あまりにあからさまになると、外聞が悪すぎる。


 その上、皇太后様は、ぱかぱかと止め金が壊れた入れ物のように、ぎょっとするような事をおっとり口調でしっかりとお話になるという。


 あの世に持って行くしかない事を、胸に収める事も出来なくなっているそうで。


 普通なら病気療養と銘打って、隔離する事が解決策なんだろうけど。


 皇太后様は、(かたく)なに、今いらっしゃる離宮を離れようとはなさらない。

 そうなっている皇太后様に、力を尽くして守る人もいないしね。

 陛下は、もちろん。


 皇太后様の頭が(ゆる)くなっている、その隙を狙って取り入ろうと。

 もっと頭の悪い貴族も、絶滅はしていないようで。


 皇太后様が、たいした情報を持っていらっしゃるとも思わないけど。


 皇太后様と、皇帝陛下の間には、そもそも連絡パイプも親子の心情も通ってはいらっしゃらないから。


 皇太后様に誰かが何かのお願いをしたところで、陛下には届かない。


 皇帝陛下は、いつものように

『興味がない』と、仕草で表していらっしゃるのが目に見えるようだ。


 どうしようもなくなった時には、《永久のお休み》をしていただく未来しか見えない。


 マケル宰相の中では(すで)に確定なんだろう。

 ミラ様の口振りからわかる。


『手を下すのが誰か』よりも気になるのは。

 

 陛下の御下知(げじ)を形だけでもいただかないと、マケル宰相だって勝手に陛下の‘お母様’に手をかけることは出来ないだろうから。


 結局、陛下のご命令で、事が運ぶことになる。

 陛下が御手を自ら汚された事になるんだよな、それって。


 歴史の表に決して出る事にはならないだろうし。

 

 絶対君主が聖人君主なんていう国はすぐに滅びる。

 

 結局君主と臣民が心中するしかなくなるのも知ってるって、俺だって。


 だけど、あの超絶潔癖な皇帝陛下が、他の事ならともかく親を両方?は、切ないような、苦しいような。


 俺の勝手で、ざわざわとするわけよ。


 たぶん、《‘大甘の成り上がり小僧’の俺》にはね。

 言われそうな事を自分で先に言ってみた。ちょっと自虐的。


 先代を知らない若造だからさ。



 **********



 仕事をするかしないかを決めるのも、まずは情報収集だね。


 これ、トラブル処理屋さんの俺の信条。

 

 行動の第一歩は情報集め。


 “夜に”皇帝陛下にお会いする時に、お聞きしてみた。


「皇太后様をお見舞いに伺うことをご許可頂けますか。」


 陛下の眉間にいきなり(しわ)が発生、片方の眉がびびっと上がって雲行き怪しい。


「んん?また、何を言い出す。」


 ちょっと、甘えん坊バージョンの41才で気持ち悪いのは承知。


「ダメですかぁ、陛下ぁ?」


 よっし、妹のアンムート風に頑張ってみたぜ。


 陛下が、長いため息をつかれた。


 すかさず叩き込みます。


「きっと、皇太后様は見たくもない俺の顔をみたら、その場で憤死なさっちゃうかもしれませんけど。

 その時は、不敬罪にならないように、(かば)って下さいますかぁ?」


「バカが。何を考えているんだか。

 サリュー、お前が手を汚す必要などない。」


 切り替えしてキリッとして言うよ俺。


「皇帝陛下、自分はそのような事など致しません。

 ただ、ちょっと‘物見遊山’みたいな?」


「勝手にするがよい。」


 ため息付きで、ご許可頂きました。



 ************



 軍服脱いで、普段着に着替えて、マコの友達の美容師さんにお願いする。


 探しまくって出てきた死んだ親父様の写真、拡大と修正かけて。


「コスプレイベントがあるもんで。

 この写真の男の人と、同じ髪にして欲しいんですけど。

 色も同じ黒で、お願いします。」


 出来上がり鏡見て、ちょっとぞっとした。


 子供の時は似ているなんて思った事もないのに、年のせいか結構似て来たみたい。

 俺と親父。ショック。


 皇太后宮に、

 『甥が大叔母上様にお見舞い申し上げたい』

 と面会の許可を申請した。


 何か持っていった方がいいもんか?と、

 ミラ様にお尋ね。


 ミラ様こういう時、本当にありがたい。

 陛下以上に、どうしてだとか聞かないでいてくれるから。


「ブルーベリー。」


 一言で。

 楽です、ありがとう奥様。


 皇太后様が、先代の皇帝陛下の元に上がる前に‘サブルの糞ばばあ’と一緒に住んでいたところって。

 少し北の方の色んなベリーの産地の田舎だったんだって。


 季節が合わなくて、新鮮なブルーベリーを取り寄せるのは大変かと思ったら。


 あら不思議!うちのスーパー執事さんが、地元農家で使うような大きな(かご)にいっぱいいっぱい新鮮なブルーベリーを山盛りで用意してくれた。


 (かご)を立派な献上用のものに取り替えたり“しないで”!、そのまま素朴な籠に、ミラ様に素朴なリボンを結んで貰って、素朴なナプキンを掛けて貰った。


 俺も、素朴なシャツとズボン、上着の下には素朴ないつもの銃と懐剣を忍ばせて。

 素朴だらけで、いざ出陣。笑


 さあ、サリュー君41才、演技賞を貰えそうな舞台に挑戦です。



 ******************



「懐かしいのお。懐かしいのお。

 姉上様は息災か?」


「いえ、少し前に病を得てなくなりました。」


 本日、このやり取り5回目です。


「あの意地悪な姉上様も病には勝てはしなかったのじゃな。

 

 息子のお前の前で申し訳ないがのお。

 姉上様は本当に気が強くて、意地悪なお方だった事よ。」


 おっと、これは変型で来ましたね。


「いえいえ、叔母上様、私もそう思います。

 

 本当に母上は、意地の悪い女でしたね。

 アハハハハ。」


「そうであろう。ほほほほ」


 すっかり、親父の母親の‘くそばばあ話’で盛り上がったところで。

 

 しっかり、人払いしてあるのを確認してから。


「叔母上様、先の皇帝陛下もお隠れになり、私の母も亡くなりました。」


「ほお、陛下もお隠れあそばしたのか?いつじゃ?」


「だいぶ(せん)の事になりますね。

 光陰矢のごとしと申すとおりですね。

 叔母上様。」


 いやいや、そこも忘れちゃったかね。

 

 最高の優しいスマイルで大サービスです俺。


「そうで、あったかのう。

 この頃は、記憶もうっそうとしておってのお。」


「叔母上様には、たくさんの大事を越えていらっしゃいましたから。

 

 要らぬ記憶までお抱えになるのもお疲れになりましょう?

 

 皇太后様が、楽しくお過ごしになられる事を、帝国の臣民も望んでおります。」


 ぷぷぷ、笑。サリュー君我慢、我慢。


「やはり、血縁の身内よのう。

 甥のお前ぐらいしか、私の事など誰も案じてはくれぬわ。」


「叔母上様は故郷のブルーベリーがお好みであると、亡くなった母より伺っておりましたが。

 お口には、合われましたでしょうか。」


「そうか。あれは、故郷の味であったのか。

 懐かしいのお。

 帰りたいのお。

 帰りたい。帰りたい。帰る。

 我は、もう帰る。帰るのじゃ。ここは嫌じゃ。」


 よっしゃ、待ってました。


「叔母上様、私と御一緒に叔母上様と母上の暮らしていらした、北のお屋敷を訪ねてご覧になりませんか?」


 はい、こっち見てくれましたね。眠そうなお目も開きましたね。


「私も母から聞き及んだ故郷の景色を、是非とも拝見してみたく存じます。」


「本当の事か?まだ、故郷の屋敷が残っておるのか?」


「母より命じられて、ずっと御二人のお屋敷に手入れをして参りました。


 いつでも、母と叔母上様が遊びに参られますよう、屋敷も広げました。

 

 今時の暮らしに合いますように少しずつ建て替え。


 使用人もこちらの者よりも、気配りのあるものを揃えて待っております。」


「私の母がいなくなった今は、叔母上様お1人ですと寂しくなられますね。

 

 それでもよろしければ、別荘としてたまにお出かけ下さい。」


「‘お寂しく’など、あるはずもない。

 

 姉上さえいなければと。

 私は子供の時からずっとあの屋敷で考えていたものを。」


 へえ、なかなか闇が深そうですね。


「いつじゃ、いつ私を伴って故郷に帰してくれる。

 明日でも、いいぞ。」


「叔母上様、では私の次の遠征軍務の後の休暇に。

 必ずお連れいたします。

 

 それまで、お体をお健やかにお過ごし下さい。」


「きっと、きっとじゃぞ。

 待っているぞ、我が甥バドゥ·サブル。」


 あれ、親父の名前なんか知ってたんだ。

 

 よーっし、かかったぞ!《くそばばあの妹ばばあ》


 最近、『帰る、帰る』と騒いでいると聞いていたから、ちょっと釣糸を垂らしてみたぜ。


 さあ、仕事を突貫で敢行だよ。


 故郷に屋敷?あるわけないじゃん。

 

 証拠隠滅に、マケル宰相が全部焼き払ってるに決まってるって。


 (きさき)の一族が不要なのに、出身を残すような手ぬるい事を。

 妖怪爺マケルがするわけないって。


 ゆる頭婆さんを、楽しく幽閉できる外部遮断施設。

 ブルーベリー畑付きで。


 施工注文と配置人員、どこに受注発行したらいいんだろう。


 陛下さえ口説いたら、あっちこっちから魔法使いが出てきてくれそう。


 そうしたら、こっちは一丁上がり。



 ************


 それよりも、俺。


 後は、この人生の最後の宿題

 《『紺』と『灰色』の有事の時の連携》の上手い落としどころを、もう少し形にしておきたいんだ。


 西の反乱の時は、俺も頑張ったし、クロさんが形相変わって間に入ってくれたから、何とかなったけれど。


 今後、俺抜きで、紺色灰色·融合部隊で上手く動くかっていったら、

 たぶん難しそうだし。


 紺色の軍服と、灰色の軍服が一緒にエールジョッキで乾杯して、

『出身どこよ?おたく』なんて会話は、

 天地がひっくり返ってもないだろうけれど。


 一緒に酒を飲めなくても、一緒に戦争する時に手を組むのはできるから。


 お互いの力を認め合えれば、気なんか合わなくて全然オッケーだから。


 チームワークは心を合わせて?ってないでしょうスポーツじゃなくて軍隊だよ。

 

 合法殺人部隊だよ、平たく言ったら。


 お互いに裏切らないってわかってりゃいいだけ。


 だからさ、連携を取れれば、帝国軍·皇帝陛下の兵力はもっと楽に上手く回ると思うんだけど。


 終わらせられるかな?俺の‘宿題’。





 ***********[陛下、髪の毛フェチだったんですか?♡]



「趣向が変わるのも、たまには良い。」


 髪を親父の色に染めて、元に戻すのが間に合わないうちに御前に呼び出された。


 軍服の色が親父の紺とは違うけれど、鏡を見たら親父がいるみたいで気持ち悪い。


 顔立ちは、今でもあんまり似てないと思うんだけど。


 どっちかって言うと、俺は母方の顔だと思っていたから。

 俺の母親の死んだ弟に似ているって、母にも母の姉にも言われた事があるし。


 なんか、陛下の目付きが変なんですけど。


 少しだけお待ちいただければ、落として来ます。親父の色。


 待っては頂けないようで。

 自室に戻って汗を流して、陛下のいらっしゃる奥に向かおうと思ったら、

 陛下もうこっちの俺の部屋にいらっしゃる。


 嘘、今日はこっちでですか?


 でも俺、今日は頑張る気合い充分です。


 皇太后様幽閉屋敷、幽霊屋敷じゃないよ!

 これの、ご許可をいただけなればちょっと困る。


 もし陛下が

『回りくどい事をする必要がない!』と、仰ったら。

 はい終了だからさ。


 一筋縄ではいかなさそう。


 明日から、何日かダウンする覚悟はできています。



 ***************



「あの、陛下にお願いがございます。」


 (から)め手をやめて、直球勝負に出ようとしたら。


 陛下がニヤニヤしている。


「この帝国の後宮に、枕での陳情を処刑する法があったな。

 遥か昔の事であったか?

 今でも有効か調べさせてみてもよいぞ?ん、どうする?」


 早速に口を塞がれては、‘陳情’できませんですが。


 陛下、いつにも増して今日は意地悪ですね。


 さすが、陛下も意地悪ばばあの血縁ですこと。


「所望のものがあるのなら、自分から誘ってみよ。」


 くあー!意地悪。

 俺の行動なんて、全部陛下に筒抜けだろうに。


 自分から誘えって、そっちの実力はありません。


 あったら、こんな危ない商売を初めからしていません!


 ううん、どうしよう。


 テレビで、前に見た。

『お情けちょうだいいたします。』って言えばいいんだったけか?


「くくく、まあいい。お前はお前だ。

 こっちの色も似合うな。」


 黒く染めた俺の髪に手を入れながら。


「何のためだ?偽善か?」


 えっと、髪の毛の話ではなくて、本題ですね。はい。


「お前は、あの姉妹を憎んではおったのではないのか?

 この度は随分と‘お優しい’事であるな?」


 うわあ、これは嫌味?嫌味ですよね陛下。


「………、勝手な事をいたしました。

 申し訳ございません。

 本当は、自分でもよくわからないまま動きました。」


「ほお、まあお前らしいと言えばお前らしいか。」


「まあそっちは良い。」


 えっと、良いって?


「老人の幽閉の手配など、後は適当な者に采配させる。」


 わーい。これは、オッケーって事かな?


「ブルーベリーの畑を近くに御用意いただければ、おとなしく楽しんでいただけるご様子でした。」


「ん、もうその話は聞きたくはない。他の者に話すが良い。」


 陛下の秘書官とマケル宰相に話してみないとな。


「サリュー、こっちは染めぬのか?」


「えええ、陛下ちょっと、そっちって、そっちですか?」


 陛下、変装する時に下の毛なんか染めません普通。

 あれ、場合によっては染めないとばれちゃうか?


 陛下、下の毛を引っぱってイタズラするのやめて下さい。


「しょうがない、お前は修道女の息子であったな?」


 陛下、そのしょうがない修道女の息子は、どこにかかるお言葉ですか?

 今回の行動でしょうか?下の毛?そっちの話ですか?


 まあ、いいや。


 色々聞いていただけるんでしたら、お好きにどうぞ。


 あれれ、陛下この頃、俺を上に乗っけられるの定番ですね。


 もしかして、俺の体の負担を軽くして下さっているのですか?


 じゃあ、せめて頑張ります。


 この夜は、陛下がずっと俺の上の毛か下の毛をかき回したり、握ったり。


 体を繋げている時も、そのあとも。


 そんなに、親父と同じ黒髪がお気に召しましたか?


 なんか、面白くないので、ちょっと伺ってみた。

 怒らせちゃってもいいや。

 親父の色の方が好みですかね?陛下。


「陛下、毎回上も下も色んな色に染めましょうか?

 ピンクでも、黄色でも。」


「ほお、悪くないな。

 次は私が選んでやろう。水色はどうだ?」


 げえ、嘘。そんな色の頭で軍服着れないよ。


 まあ、陛下がどうしてもって仰るなら、考えてもいいかな。


 たぶん、そんなに回りに驚かれなかったりして。


 また、バカやってるくらいにため息つかれるだけだったり?


 いや、それはそれで情けないか。



 ******



 結局、3日ベッドで点滴の人になったので、俺しばらく黒髪のままだった。


 そのあと、しばらくして皇太后様の宮殿の一時閉鎖と療養の為に故郷にての静養が発表された。


 故郷がどこであるかは、知らしめる必要もなく是非とも知りたがる者も皆無であったそうだ。


 一度皇太后様の様子を伺いに行ってみた。

 俺は、髪を染めて無かったので遠目から。


 実は始末されていたり?なんて事があると寝覚めが悪いから。


 ちゃんと、即席故郷が作ってあった。


 ブルーベリー畑で、幼女の仕草で歩いていらした。



 やれやれやれ。


 次の《宿題》頑張るぞ!

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