【パパは兄妹(きょうだい)喧嘩を目撃される?】 side サリュー パパと陛下…♡
「お兄ちゃん、絶対それおかしいわ。
お兄ちゃんって、やっぱりどっか欠けてる気がする。人間としてどうかしら?」
「うるさい、色気化けだぬき!お前に言われたくないよ。」
「何よ、お兄ちゃんのバカ。
私、手紙たくさんたくさん送ってたのに、ちっとも返事もくれないで。
やっと来ることが出来たのよ。」
は?どこ宛で出したってさ?
年下のそっちの陛下を誑かしてこの帝国に来たってか?
アンの口車に乗って連れて来るって、あんまり利口ではなさそうだな?
そっちの陛下。
うちの皇帝陛下と違ってよ。
ったくバッカじゃねーの?
いつかは故郷で親の墓参りがしたかったという、妹のアンムートに親の墓は作っていないと言ったらこの騒ぎ。
妹は、いつの間にか《クリサーリダ王国》という古い君主制の国家の後宮で、成り上がって、今回皇后?役でなくて本物なのか?
で、年下陛下と一緒に、船の補給にこの帝国に立ち寄って、ついでにこっちの皇帝陛下に謁見ってどれだけ無礼千万よって話。
ついでってなんだよ。ついでって!
************[陛下からの賜り物]
少し前の事になる。
奥向きの陛下の御在所にお呼びがかかった時。
もっとも奥の奥、に、誘なわれて、陛下が寝台の上にポイっと懐剣を一振。
鞘に納めたまま、放り投げられた。
「使え!」
と、一言仰せで。
寝台で懐剣を使えって、どういうプレイだよ?
意味が分からないので、つい眉を寄せて困って固まっていた。
陛下が俺から懐剣に向かって顎をしゃくって手にするように促される。
懐剣を手に取って陛下のご様子を伺いみる。
「失くしたと聞いた。持ち慣れた得物が手元にないのも不自由であろう。」
どこからか、陛下のお耳に入ったのだろうか?
長年俺が持っていた、親父から渡された懐剣を。
大学·ユニに旅立つアロマに、御守り代わりに持たせてやった。
「くれてやる。使うがいい。」
この懐剣を下賜して下さると言うことだろうか?
「気に入らないか?」
「とんでもございません。」
ええと、ここは、ははーで『家宝にいたします』かな?
いや俺、‘家‘宝も何も家を存続させる気なんかさらさらないしね。
棺に入れて貰うのも面倒臭いし。
頭を巡らせていると、陛下が声をあげて笑い出した。
俺、顔に考え出ちゃってましたか?
「試しに使い勝手を確かめてみればいい。」
「ご寝所で?刃物を抜いてですか?」
まさかでしょう? 皇帝の奥向きに刃物を持ち込むそれだけで、首が落とされるところではなかったっけか?
まして、鞘から抜いて振り回すって、どんだけあり得ない?
「いいから抜け!」
俺を、寝台の方へ押しやって腰掛けさせる。
陛下の寝台の上で、刃物を抜くって、絶対ダメなやつでしょう?
でも、陛下がじっと見たまま目線を外して下さらない。
どうして、こういう面倒臭いご下賜の方法をして下さるって。
まったくー。
軍服着て、表で渡して下さったなら、ちゃんと両手で捧げ持って、何か時代劇みたいなカッコいいお礼の言葉探すのに。
「いいから、抜いて握ってみよ!」
おっしゃる通り、握ってみたら。
驚く程手に馴染む。
アロマに持たした親父の短刀よりも俺に誂えたようにしっくり馴染む。
重さ、刃の長さ、幅、無駄な装飾がなくスッキリしてそれでいて美しい。
誂えたようって、これは誂えて下さったって事なんだろうか?
御殿の古い宝物庫にあるような、古い金属ではないからね。
刃の光りが打って間もない金属。
昔に作られた刃物は、親父に散々握らせられた。
古い刃物は切れ味良く研いでも、もっと重くて何て言うか‘禍々しい’気を纏っているような?
金属に明るい光沢がない。
陛下が、少し離れた所に置かれた、鑑賞用の鉢に向かって指を示される。
俺の身の丈と同じくらいの植物。
「切ってみよ!」
わりと硬めの樹木にみえる。刃こぼれしないかな?
硬さを一回確かめないと、入刀の角度が決められない。
鉢に近づいて、軽く触って陛下を振り替えると、『やれ』って目線を動かされる。
握りを変えて、一気に下から上に切り上げた。
表面を切り上げたつもりの刃が、風のように軽く走った。
鉢に植えられた鑑賞用の樹木が、向こう側でなくてこちら側に倒れる。
凄い。この懐剣。いや短刀だねこの威力。
力で切り入るのではなくて、薄刃の長剣のように吸い込まれていく。
短刀で、首くらい落とせそう。
凄い逸品なのは、分かるよ。
いったいどんな名人の打ったものなんだか。
その上、刃物に禍々しい感じが纏わない。
不思議な良剣。
自分のために打って貰った剣を手にするなんて、考えてみたら初めての事。
自分の顔が緩んでいるのが分かるよ。
なんかすごく嬉しい。
「ありがとうございます。」
自分でも、相当残念だよ。
もう少し気の効いた事言えないもんかなぁ俺。
「ふん。」
陛下が微笑まれた。
部屋に飾りのように置いてあるフルーツのバスケットから、手のひら大の赤い果物をお手に取られた。
「刺してみよ!」
さっきの樹木の向こう側の壁に向かって、お手に取った果物を投げられるので、果物ごと壁に突き刺さるように(いいのか?壁に?)懐剣を投げた。
果物は結構硬い種が中心にあったようだけれど、中心にぴたっと刺さって壁に縫い付けられた。
赤い果物が、なんだかちょっと生々しい。
壁に大惨事。
お掃除の方、申し訳ありません。
陛下が壁から俺の(すっかりその気)懐剣を抜いて、近くに寄られて赤い果物の果肉で汚れた刃を、いきなり俺の着ているシャツで拭きだした。
あれれ?
陛下が、壁にくっついて半分くらいになった果物を、刃物に刺さったまま口にされる。
新しい果物を剥きましょうか?
俺の調理師免許の腕前で。
そのまま、口移しで?
シャツやら顔やら赤い果物で、俺ブラッディー状態に見えますって。
食べた事のない赤い果物は、見かけよりも酸味があって、さっぱりしていて。
お酒に入れて陛下が召し上がるのに、ちょっと合いそうですよね。
と思っていたら、追加の口移し《白ワイン》来ました。
これは、うーんと昔、陛下が『若年少年虐待法』で引っ張られそうな事を、俺になさっていた時の感じのやり方ですよね。
俺、酒については、その頃とあんまり変わってないのに。
酒入りでぐだぐだなるの、知ってらっしゃいますよね。
明日の仕事、午前中急ぎ案件入ってたっけか?
ついでに、シャツの前ボタンを刃先でプチプチって弾かれちゃった。
下にランニングのカラーシャツを着ているけれど、刃の切れ味がよく分かった後なので、ちょっと怖いけど。
いつのまにか、ちゃんと???、陛下の寝台に移動。
陛下、刃物ってそういう風に使うものでしたっけ?
下もズタズタって、マコが買ってくれたのに。
陛下、右手に短剣、左手にワイングラスって何だかホラーで怖いですって。
こりゃ、すぐに俺アウトなりそう。
もう、そんならアウトの前に‘おねだり’してやる。
『お前は出席はいい!』と言われていた、アン旦那陛下の謁見の立ち会いをゲット。
アンと話をするのは二の次。
それよりは、陛下のお側で弾除けになってなんぼ?の方が仕事だからさ。
陛下は、妹との時間を作って下さろうとなさったんだろうか?
もし、俺と妹に母親の件で思われる事があるのなら、今さらだし。
もともと、陛下には含むところなどない。
今さら陛下に御気遣いをいただくまでもない。
翌朝、陛下の御寝所の陛下の寝台の上で目を覚まして、誰にお世話をかけたんだか体はきれいになっていて、いいんだか恥ずかしいんだか。
枕元には、手入れをされた懐剣が鞘に入って、真っ赤な絹の布に包まれて置いてあった。
ちゃんとよくみたら、皇帝陛下の紋章と、陛下のお名前と俺のファーストネームが掘り込んであった。
パッと見では分からないけれど、これは絶対人に見られたらダメなやつだよ。
皇帝陛下の紋章入りだけでもちょっとあんまりないような。
‘ははー’で膝をついて頭上げられませんのやつでしょう?
名前入りは、まず聞いたことないもん。
これじゃ、本当にどっかの誰かが噂してる‘皇帝陛下の愛人’と俺間違えられるって。
でも、ちょっと涙ぐみそう、キャラじゃないから泣かないよ、俺。笑
************************[妹が来た!]
クリサーリダ王国の大型航海船が、軍の中央から少し外れた海外要人用のベースポートに到着した。
今ここには、数人の上級将監と、俺の幕僚の狐組·先発探索の数名、後ずらーっと’『灰色』軍服ダークグリーン入り’がわらわら並んでいる。
クロさん、ミルゼス少将には事前にお願いして足を運んで貰った。
後から俺が愚痴を言うのに、説明が楽だからってばかりでもなくて。
秘密保持のためにも、見方になって貰える口を、御二人に貸して貰えると何かの時にありがたいかもって、ちょっと勝手な言い分ですいません。
暇だったら来てみれば?とマコ彼のビステル准将も、その中に入って貰った。
何でだろう?の顔をしていたけどレヴィ君。
後の『紺』将監は、口の堅そうなところを適当に数合わせ。
『灰色』ばっかり並ぶのもバランス悪いから。
みんなあんまり深く考えないで、軍の行事を一つ機械的にこなすような顔付きで並んでいる。
あんまりこういう時に顔出ししない俺がいるのに、『あれ?』されたけれど。
それよりも、上級将監は、帝国外のニュースも情報として見聞きしているので、《天女様》を見てみるか?と野次馬根性で来てみたところじゃないのかね?
連日連夜のアンムート皇后の愛想振り撒き散らし、とうとう‘天女様の微笑み’まで、昇格したらしい。
もともと、アンはしゃべり方がトロい。
知らない奴らは、そのトロいところを‘優雅’と取り違えてくれているんだろう。
ばっかじゃねーの?早く国元に帰って引っ込めよ。化けの皮剥がれる前に。
準備が整ったようだ。
デッキが大きく開場されて、自動の通路にスイッチが入る。
向こうから、今回の立ち寄りお客さんの‘クリサーリダ国王夫妻’が先導の護衛の後に続いて来る。
国の民族衣裳のようなのを美しく着付けたアンが、薄いベールを身につけている。
親父と同じ色の黒髪も豊かに、あんまり昔と変わってないか?
俺の5つ下だから、35?になっているのか。
薄い微笑みと、小首を左右に傾げながら、アンが俺と目を合わせた。
分かっているだろうけれど、知らん顔をしているんだぞ!アン!
皇后様をやっているんだったら、少しは対外的な顔の作り方は分かってるんだろう?
ここに来るまでも、皇后様をやっていたんだから。
と思っていたら、やっぱりお前って、ホントに馬鹿なぁ。
いきなり、ベールを自分で剥いで脱ぎ捨てて、高いヒールの靴まで脱ぐことあるか?
俺のいるところまで、50メートルくらいかな、スカートをたくしあげて全力疾走って。
うちの方の護衛の『灰色』さん達がびっくりして、トリガーに手を構えて射撃準備しちゃっただろうが。
っとによー!馬鹿なのは知ってたけれど、ここまで馬鹿だとは思わなかったですよお兄ちゃんは。
「お兄ちゃん。」
抱きつかれて、アンの涙で俺の軍服グショグショじゃん。
周り中が、口ポッカンだよ。
そっちの陛下も、馬鹿皇后を止めなきゃダメじゃんよ。
俺は、直立不動で天を仰ぐの姿勢です。
どうしたらいいよ?これ事故だよ。事故処理どうする。
まだだいぶ後ろを歩いていたそっちの陛下が、俺に対して胸に手を当てて片足を後ろにずらした礼をとられた。
それって、そっち方面の最高の礼だよね。王様にそれされたら、ちょっと困るんですけど‼️
とりあえず、敬礼でもしておくか?
アンの方の陛下の護衛みたいのがやってきて、皇帝陛下との謁見に皇后様は拝謁をなさいません。
お支度は国王陛下だけで艦内に戻ってなさいます。
ご準備が整いますまで、暫しのお時間を頂戴したく存じます。。
つきましては、皇后様を少しの間どちらかでお休みさせてはいただけませんでしょうか?
あれ、君この帝国の言葉上手だね?
向こうに陛下がにっこにこで、こっちを見ているけれど。
えええ?ずいぶん押せ押せの展開で迫って来ますね?
アンってそうだった昔から。
口調おっとり人動かすの強引なところあったもんなあ。
どうするよー? さすがに俺の一存で動けないだろう?
外国要人(一応?)と、個人的にいきなり密談って怪しすぎるでしょうが、どっからみても。
『灰色』さんの筆頭みたいな人が、俺に耳打ち。
「陛下からご伝言です。どうぞご自由にと。」
ご自由に?って。
結局、時間はせいぜい1時間、軍の手の内の安全圏で話をするとなるとで、いつもの上級将監ルームを人払いしてもらって使わせて貰うことにした。
俺の幕僚の下に付いている女の子数人によって、アンの武器の所持身体検査とセンサー検査をかけると伝えた。
アンの護衛なのか、こっちの士官学校の生徒くらいの兄ちゃん2人が噛みつきそうにして来たので。
そっちの国の言葉で、ちょっとおっかなく一発。
俺、結構語学堪能だからね。
「もちろんお前さん達もだよ?
ここは同盟国でも自国でもないんだよ?
敵国にいつだってなり得る他国だよ?」
「お宅の皇后様は、この帝国の人間ではないでしょう?
今回こちらからは、何も頼んで働きかけた事ではないのは分かるかな?」
と、慇懃無礼のお仕事モードで言って聞かせたら、ちょっとブルって頷いてました。
アンもさすがに分かったようで。
護衛には武器をこっちに預けるようにと話してみたら、困った事に、アン護衛の兄ちゃんは自決するのどうのって面倒臭い事言い出すし。
しょうがないから、アンが護衛兄ちゃんたちの剣と銃を預かって手元に持つって、それもどうよ?だけどまあしょうがないか?で
アンが剣を2本と銃を二挺、ふーんそっちの護衛お兄ちゃん、靴に短剣隠してるでしょう?
センサーで引っ掛かるよ?
アンが持ちきれないから、お兄ちゃんが持ってと。
結局何なんだかぐだぐだで、上級将監ルーム到着です。
こっちの護衛の形作りに、クロさん、ミルゼス少将、レヴィ君について貰いました。
このメンバーならまだしも、話広がらないかと願いをかけて。笑
絶対無理だね。すぐに評判になりそう。やれやれ。
もう色々しょうがないけど、兄ちゃん以上に妹が馬鹿なのがあんまり広がるのもどうよ?で。
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「で?何しに来たの?お前。」
「しかも、お前が着いて行ったじいさんと違わないか?あれ?どういうこったよ?」
良かった、この護衛は帝国の言葉はわかんないみたいだね。
「今のぉ、国王陛下は、お祖父様の亡くなったご長男のぉ、脇腹の息子よぉ。
もともと、お祖父様は私を自分の次代と妻せるつもりでぇ、連れていらっしゃったのよぉ。」
「お前馬鹿か?」
おっと護衛の兄ちゃんは、‘馬鹿’には反応しちゃうんですね?
「何で、そんなじいさんに連れていかれちゃうんだよ?」
「あらぁ、私お祖父様大好きだったのよ。だからね、私の何かが行くようにって言ったのよ。」
「はああ、で、そのお祖父様に遊ばれて、その後に親子丼でなくて何だ?これ爺孫丼ってか?
お前すげえな?」
「やぁねぇー。お兄ちゃん下品よぉ。」
「お兄ちゃんこそ、死んでも帰らないって言ってた帝国で、なぁんで軍服着てるのぉ?
それにぃ、どうしてお父様と違う色の軍服?
お兄ちゃん、大学の教授になるってお話どうしたのぉ?」
「ねー、お兄ちゃんこっちで1人ぼっち?
お友達やぁ、家族は?」
「俺の事はいいから。
お前いったいどんだけそっちの後宮で無双したら、そんな事になるんだよ?
ワケわからん。」
「やーだ、お兄ちゃんてば。
私は、なーーんにもしてません。
ただ時々、そっちの水は苦くて危ないわよー。って教えてあげたらね。
今の陛下が、一番になったのよぉ。
そしたら、陛下が私にお礼をしたいんですって。
何でもお望み叶えてくれたいって言うのよねぇ。
だからね、お兄ちゃんにも会いたいし、親の墓参りもしたいって言ったのよぉ。
そうしたら、陛下が頑張ってお国の中を、お出かけしてもいいようにあっちこっち整理整頓したんですって。
陛下ね、お兄ちゃんとおんなじ大学·ユニ行ってるのよ。
ご卒業は、お忙しくて出来なかったんですって。
でも、すごいでしょう?
大学で、お兄ちゃんのお話いっぱい聞いたっておっしゃってた。」
はいはい、大学ではお客様枠の方ですね。
「ずいぶん若く見えるけど、あれアンよりも、いくつ下だよ?」
「もーお兄ちゃんって、ほぉんとぉ失礼ねぇ。
たいして違わないわぁ。9つだけ私がお姉さん。ふー
お喉乾いちゃった。
お兄ちゃん、お茶くらい頂戴よ。」
飲み物持ってきて貰ったら、護衛兄ちゃんがひったくって飲んでた。
毒なんか盛るかよ。ばーか。
で、墓参りする墓なんか無いぞ?って言ったら、おお騒ぎされたわけさ。
馬鹿なのうちの妹。本当に馬鹿で頭痛いわ。




