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閑話 【パパは娘に仕事をわかって貰えてない?】 side レヴィオン(マコ彼) 帰省の帰り道で

「楽しかったぁ。」


「みんなに野次馬根性を出されて、疲れただろう?」


「ううん、全然。

 結婚って、故郷(ふるさと)と両親が増える事だったのね。

 レヴィ、あなたって本当にお得だったわ。」


 自分の故郷にマコーレットを伴って帰省した。

 

 帰りの高速列車の個室コンパートメントの中で、

 やっとゆっくりマコと話をしている。

 

 貴重な3時間の旅だ。


 この高速列車が一般に出回って、

 全ての帝国庶民の首都圏までの距離がぐっと縮まった。

 

 このエンジンシステムと流線型のカッコいい車体も、

 ターラン総括司令の手による設計だ。


 今回の俺の帰省では、両親、親戚、友人、ご近所に、

 《何の祭りと間違えているんだ?》の歓待をされた。

 

 俺本人が度肝をぬかれるほどに驚いた。


 両親にも、大喜びをされた。


 宴会で散々両親と飲んでから、マコの父が、

 この帝国軍の元帥よりも更に上位の統括司令と聞いて、

 グラスをひっくり返してポカンとしていた。


 言っておいたつもりだったのに。いや、言ってなかったか?

 

 でもそれも、両親がマコ自身に好感を持ってくれた(あかし)と思えば、

 余計に嬉しい。


 にしてもだ、うちの親も普通の親のように、どこで知り合った?とか。

 お互いどこに引かれたか?と聞きもしなかった。

 

 酔いに任せて、マコに向かって新聞の時事問答のような事をはじめるし。


 またマコはマコで、ウイットに富んで、

 問答をかわしたり、投げ飛ばしたりで。

 

 父は見たこともなく大口を開けて大笑い。

 

 母も転げるように笑って笑って。


 うちの両親は、今は落ち着いているが、

 若い時には《平民レジスタンス》として名を馳せていたらしい。

 

 俺が産まれる前の話。


 先帝の時代は、庶民の生活は今とは雲泥の差の時代だったそうだ。

 

 大貴族支配の領地では、

 横暴な圧政が当たり前に横行していたと聞いている。


 うちの両親は、その権力者に苦しめられて限界まで追い詰められた。

 

 両親が《平民レジスタンス》の端くれとして、

 隠密にゲリラ的に活動しているうちに知り合って、

 一緒になったという経緯(いきさつ)がある。


 今の呑気な‘父さん母さん’をみて、それを想像も出来ないが。


 その頃の仲間と、この地方で自由に庶民が生きやすい村を作った。

 

 時代が変わって、今の皇帝陛下の施政の元、

 当たり前の人権や、当たり前の正義が、

 戦わなくてもそこにある暮らしが、隅々まで行き渡るようになった。


 この地に始まった村が核となって、

 いつの間にか大きく広がって、それなりの地方都市として発展をした。


 父はそろそろ定年も近いが、

 この地方都市の一代限りの《行政官》の役職についている。

 

 でも、父を《行政知事》と呼ぶ人間なんて誰もいない。

 

 父は今でも‘村長’と呼ばれて、本人もそれが何より気に入っている。


 ターラン総括司令の《型破り》は帝国軍で知らないものは誰もいない。

 

 うちの親を並べて語るのはどうも恥ずかしいが、

 こっちはこっちでなかなかのもので。

 

 どちらの親も子供を、

 自由に羽ばたかせるように育ててくれた事が、

 大きな共通点のように思える。


 ******


「レヴィ?うちのパパも相当な変わり者だけれど、

 レヴィの御両親も器が大きくて愉快な方達で、

 最高だったわ。

 私は大好きになった。」


「おお、ありがとうな。」


 普通の令嬢ならびっくりもするところだろうが、マコだからな。


「レヴィはうちのパパをどう思ったの?

 やっぱり同じ軍の上官って‘うっとおしい’もの?

 

 レヴィったら、聞いた事もない口調でパパに話をすからびっくりしたわよ。

 うちのパパって本当は、

 マケル宰相みたいにおっかないと思われてるの?

 みんなに。」


「お二方ともに、近寄りがたいは近寄りがたいんだけどさ。

 それぞれが、違った近寄りがたさって感じだなぁ。」


「マケル宰相閣下は別次元の方であるし。

 ターラン司令は、我々仲間内では『あこがれ』だな。」


「レヴィ、困らしてごめんね。無理をしなくていいよ。

 もう、やめておこう。」


「マコ、俺はマコに気を使って話しているんじゃないぞ?」


「ええと、そうだ!

 今、軍の書籍販売で蔵書の欠品が出て、

 奪い合いになっているって評判なんだ。」


「それが?」


「軍の教育機関のトップが、

 前々からターラン司令に教鞭をとって頂きたいと打診していたんだが、

 忙しい方だからとてもとても。


 それが今回やっと了承をいただいて、

 士官学校の新入生の一部の講義を持っていただける事になった。

 みんな興味津々で。

 俺たち将監連中も、覗けるもんなら覗いてみたいって、

 陰で大騒ぎになっている。」


「ターラン司令が講義の前に先に読んでおくようにと、

 課題図書や文献を指定されて。

 

 受講する生徒に配布が行き渡るように、

 軍の購買部に積み上げられて、

 数は充分に行き渡るようにあったはずなのに、

 生徒の分の本が購買部から消えて、大騒ぎになっている。」


「ごめん、話がみえない?」


「あはは、話が下手だな。悪いな。

 消えた図書類は、

 どうやら上級の将軍職の将監やら、大佐クラスの人間が、

 ちょっと横から抜いたみたいでさ。

 

 あちこちで読んでいる姿が評判になっている。

 下の方では、写しを奪い合いになっている。

 俺もそれを手に入れたんだ。」


「?で?」


「ターラン司令が夜中に軍のコンビニエンスストアで買われた、

 パンやスナックは、

 若い奴らが直ぐに買い漁って完売になる。」



「レヴィ、ごめん。

 私がちょっと聞いて見たかったのは、

 パパが今嫌われすぎて

 『後ろから刺されちゃうような事がないか』

 を知りたかっただけなのよ。」



「そんな馬鹿な事はあり得ないぞ?

 我が帝国軍にとって、マケル宰相は尊敬とともに畏怖される存在で。

 

 ターラン司令は、

 我が帝国軍の敬愛する‘カリスマ’と言ったら分かりやすいか?」



「うっそでしょう?あのパパが?」


「あのさ、マコさんや?

 マコの知っている‘パパ’と、

 帝国の‘魔法使い’って言われる切れ者のターラン総括司令は、

 全く違うんだと思うんだよ。」


「ふーん?」


「あんまり仕事の話を外部にするもんでもないとは思うけれどさ。

 帝国軍で、ターラン司令の手並みを目にした事のある将監は、

 みんな『鳥肌がたった。』て言うんだよ。」


「寒い冗談でもパパ言ったの?」


「え~と。」


 困ったなあ、一応マコも外部民間人の枠だから、

 滅多な事も言えないしなあ。


「要するにマコのパパは、ターラン司令にしか出来ない能力で、

 誰も見たこともないような手並みで敵を排除したり。

 奇跡のような風景を見せて下さる、

 みんなの‘あこがれ’の敬愛の対象で。

 しかも美しいって言うのかな?」



「パパの顔?スタイルが? まあ悪い方ではないとは思うけれども。」


 俺は、自分の髪を思わずかきむしったよ。


「違う違う、仕事が、何と言うか綺麗で美しいというか。

 はー?詳しい情報を開示するもんでもないけどなぁ。

 仕事の話は。」



「いいよいいよレヴィオン。

 パパが昔程嫌われてないのはわかったからさ。

 

 ねえレヴィこの先も私、必要最低限以外に、

 レヴィの仕事の話は聞かない事にするね。

 その方が私たち、上手く楽しくやっていけそうだもんね。

 あ、それでも私は、仕事の愚痴くらい言っちゃいそうだけども。」



「マコのいいようでいいさ。

 家の中は、楽しいのが一番だもんな。


 それにしても、マコって酒は‘いける口’だったんだな?

 ターラン司令はあんまり酒を召し上がらないって聞いているから。

 父さん、母さん、飲み仲間増えたって大喜びしてたな。」


「私たち姉弟は、お酒はザルだったママに似たみたいよ。

 私よりも、アロはもっとお酒は強いよ。

 顔に出ないで、けろっとしているもん。」


「おい、アロマ君は18になっていないだろう?」


「あははは、パパみたいになったら困るから自主体勢訓練だってば。

 私たち時々大人の目を盗んで飲んでいたのよ。」


 *********


 マコの仕事の話、今後の展望の話を興味深く聞いた。


 俺の自慢の恋人は、明るくて美人でカッコがいい。

 その上性格もいいし、まだまだ誉め足りないけど。

 

 だけではなく、こういう話が出来る事が最高だな。


「やっと先に目指すところが見えて来たの。

 私ね、《入り口のお医者さん》になろうかと思うの。」


 

「入り口の医者。総合診療医って事か?」


「ちょっと惜しい!」


「大多数の庶民層の元気になった後の人の、

 その人達の《語ったら長いよ!》の病気克服話を聞くと、

 必ず

『私、俺、みんな運が良かった!たまたま運ばれた先に名医が出張で来ていた。』とか


 『たまたま、その病気の専門医のいる近くに用事で来ていて、

 道で倒れていたから助かった!』

 とかがとっても多くてね。」


「それと、もうひとつは。

 良くあるのが、入院患者の結構な数の人が、


『ここへ来るまでに結構な数の病院を回ってやっと救われたんですよ!』

 

 みんな病気で疲れたのではなくて、

 そのあっちこっちでくたびれ果てちゃって、

 干物(ひもの)みたいになっちゃっているの。」


「病気が、珍しい難病だったらそう言うこともあるけれど、

 それが、そうでもないのよ。」


「私ね、何でそうなるのかちょっと静かにリサーチしてみたの。

 そうしたら、2つの問題点があるような?

 ふんふん、ちょっとしたプレゼントみたいだわね私。」


「ひとつは、簡単で難しい問題。

 まだ経験の少ない下の医者が、怖くて上の医者に話を持って行けないの。


 軍隊から見たら、とんでもないことでしょう?

 失敗を隠すのって、失敗をするより悪いからね。

 小学生に

 『もっと大変なことになるから、正直にお話しようね。』

 と注意するのと同じだもの。


 でも、医者の世界もなかなかの縦社会で男社会で。

 色々あるわけよ。

 

 上に立つ人次第だけれど、皆がみな人格者な訳ではないからね。」



「すごくわかるな、それ。

 軍も上官に恵まれるかどうかの入り口は、

 運みたいなもんだからな。」



「それともうひとつは、

 経験豊富な上の医者でも、色んな医者がいてね。

 自分が一度手を付けた患者を、握り込んじゃうの。

 離さない?って言うのかな。


 それまで、実績を積んで来た医者ほど、

 結構これをやっちゃっているの。

 

 専門分野じゃなければしょうがないんだから、

 素直に

『僕はこれは、わかりません!』

 と言えればいいんだけれど、言わないわけ。


 病院内も色んな勢力やら、出世欲?もあるんだかなんだかで。

 自分の評価の為に患者の命が左右されたら、

 たまったもんじゃないでしょう?」


「私ね、本当の名医は

 『これは自分では手に負えません!こっちに行ってみたらどうですか?』

 って。

 門前払いではなくて、次のドアを示してあげられる事だと思うの。」


「『自分では、わかりません!』

 これは‘自分が能力はありません’とは同意語ではないからね。

 これをちゃんと言えるのが名医じゃないかな?って」


「天才脳外科だって、水虫を直すのは近所の皮膚科のおじいちゃん医者の方が、

 上手いでしょう?

 まあ、水虫の人が脳外科を受診しないけれど。」


「この帝国の医者の世界って きーーーってなるくらいの男社会で。

 

 だったら、はじめっからそこでの出世欲も名誉欲なくて、

 枠から外れている女の私だから出来る事ってあるんじゃないかって。

 模索してるの。」


「誰かが迷子になる前に素早く、柔軟に対応してくれる所があると。

 そういう入り口があったら。

 病気の人がずいぶん楽になると思うのよ。

 

 元来の 総合診療医プラス‘マコのカンの幸福の道しるべ’?

 あらやだ、何か怪しい占い師みたいね。笑」


「最初に間違えると違うところへ連れていかれるとドキドキしているのって、

 迷路の探索みたいでしょう。

 疲れて干物(ひもの)にもなっちゃうわよ。


 みんながみんな、身内に医療従事者がいて、

 相談できる頼りになる人を持っている訳ではないし。


 身分の高い人が病気になった時には、

 スペシャルな医者がさっと用意をされるんでしょうけど、

 誰でもがそれをして貰える事ではないしね。

 (パパの事を言っているんじゃないからね。)


 ぴったりの医者を見つけるのが運任せ?って、

 この先進国の帝国でおかしくない?」


「と、ひよ子の私が言ったって、

 鼻で笑われておしまいだから。

 まずは、力をつけたいの。」


「ずいぶん前に、アロマがパパに質問をしていたのを横で聞いていたことがあってね。


 アロマが

『パパぁ表に開示されている事ではない、実際の《真実》を見極めるには、何が必要?』


 そしたらパパが

 『データ解析を見極める目と、現場での経験の数‘場数を踏む’』

 じゃないか?

 みたいな事を言っていたの。

 細かい言い回しは違っているかも。」


「それで私、救急救命と軍の現地病院で、

 頑張って場数を積んでいる所だけれど、まだまだ腕は足りないし。


 後は、データを解析する力をつけたいと、

 手当たり次第に目につくものを頭に叩き込もうと思っているんだけれど。


 悔しいし、悲しいけれど。

 私の頭はパパやらママ、アロマのように、

 吸い込むように頭に残る立派なものではないのよ。


 じっくり、身に付けるしかないのは分かっているけれど。


 それだと、おばあちゃんになるまで時間がかかっちゃうし。

 

 新しい技術が次々開発されると、

 それは良いことなんだけど、覚えるのが追い付かなくて、

 焦る気持ちでいっぱいいっぱい。」


「凡人の夢は遠く、雲を掴むごとき!

 うんうん、ちょっと詩的だわね。私。」


「そんな事はない。マコはすごくカッコいいね。

 応援するよ。スペシャル応援団長になれるといいな?

 マコのうちの執事さんみたいには、いかないだろうけど。

 気持ちだけはな。」


「あははは、ビステル准将閣下、ご清聴をありがとうございます。」


 マコがふざけて敬礼してきた。

 うん敬礼は、だいぶおかしいが。

 それはそれで可愛いな。うはは。


「今度は私の家でレヴィの御両親とお会いできるのが、楽しみね。

 お父さん、お母さん、来ていただくの大変で申し訳ないわね。」


「帝都見物って、喜んで来るんじゃないか?

 旅行も久しぶりだって、母さんもえらくはりきっいてた。」


「私、上手くお休みを合わせて、お二人をご案内出来るように考えておくわね。

 お父さん、お母さん、どんな所に行きたいかなあ?」


「ありがとう。俺も上手く仕事と噛み合えばいいんだけどなあ。」


「みんな上手くいくと嬉しいねー。」

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