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【パパは人生の断捨離している暇もない?】 side サリュー

 夕方5時に公務を終わりにする。


 どこの幼稚園ですか?の話。


 4時頃から、10分毎に、執務室のドアを外からバンバン叩かれている。

 ‘仕事やをめろ‘の催促。


 落ち着かないって。


 朝、目が覚めると、シャワーを浴びてそのまま朝食。


 午前中はマドク氏の検診と仕事連絡のチェック。

 この時点では、まだ執務室には入れて貰えない。


 お昼にまたご飯を食べたら、無理やりお昼寝させられる。

 俺、40才。4才と間違えられてないか?


 午後は、モニター会議が一番多い。


 それが無い時は、ちょこっと作りたい《おもちゃ》の設計に勤しんでいる。

 もっと時間を割きたくて焦ってイライラしている。


 夕方は看護師チェックが入る。


 その日の調子次第で、シャワーか、

 体調がいい時はちゃんと湯船で入浴したり。


 時々ストレッチをしたり、それだけで息が上がる。

 

 筋肉落ちちゃってひょろひょろ。みっともな。


 夕食が終わってベッドに入れられる就寝時間が、8時ですよ?


 小学生よりも早くない?


 《後宮内の湯治施設》で療養中?大笑


 自分で思って、恥ずかし過ぎて引いた。


 でも、恥ずかしい甲斐があって、

 夜の服薬が変わって意識不明みたいな寝落ちの仕方はしなくなった。


 強引にベッドに入れられても、

 眠れないから頭の中で設計を描いたり、本や論文を読んだり。


 少し遅くなってから、陛下が同じ部屋でお酒を召し上がる事もある。


 陛下がいらっしゃると、お世話の人は、誰も居なくなるから、

 俺はベッドで端末をさわっっていても取り上げられない。

 凄く楽ではあるんだけれど。


 時々、陛下がお酒をお過ごしになられ過ぎると、

 ベッドサイドに腰を下ろされて、

 ちょっとちょっかいを出して俺をからかわれる。


 緊急に処置をする時のため、

 『上下とも下着をつけるな』っておかしくないですか?


 確かに緊急時治療で、着ている服をハサミで裂くことは普通にあるけれど。

 ここのところは俺の体調は、落ち着いているから、

 そんなに緊急状態になることはなくない?


 アラフォーにセクハラはちょっときついです。

 その上、日に日にエスカレートしてきてないですか?陛下。


 だいぶ体調が改善して、いきなりブラックアウトはしないけれど。

 

 そういうのは、恥ずかし過ぎて、ちょっときついです。


『陛下だからしょうがない!』を心で呟いて少しはっとする。


 *******


 マコをこっちに引き取った頃、

 アロとは天敵の動物のように、姉弟(きょうだい)喧嘩が絶えなかった。


 こそこそと仲良くしているときは、何かを2人で企んでいる時だけ。


 たまに2人で話しているのが、耳に聞こえて来る。

 2人の決まり文句。


『まあ、パパだからしょうがないかぁ。』


 どちらともなく。


 子供達が小さい頃に、俺が1回倒れて療養生活になった。

 

 陛下が用意してくださった療養所で、半分眠っている俺の側で。


『パパが元気にならなかったらどうする?』


『こまるねー。』


『でも、パパだからしょうがないか?』


『そうだよ、パパだからしょうがないよ。』


 子供達ふたりは、キヤッキャと笑って悲壮感が全然ない。


 俺は自分の両親の2人共に言えなかった。

 

 親の性質、背景を《しょうがない》と受け入れてはやれずに、

 反発しかしなかった。


『しょうがないかぁ。』を子供達はあっさり口にしてくれる。


 それほど、立派ではない親の俺に。


 皇帝陛下には、若い時には相当《無茶苦茶》な事をされた。

 

 主に運動場の運動会で。


 その時でも

『陛下だからしょうがないかぁ。』と思えた。

 

 陛下がこの帝国の絶対者だから、

 反発が出来なかったという訳では更々ない。


 年のせいか、この頃になって思う。


 親子の縁、友人、恋人、夫婦、仕事の上官と部下。

 

 結局のところ人間は、その人と人の相性だけに起因をしているのではないかと。


 産まれ持った性質ってそうそう変わらない。


 それを飼い慣らして、やって行くしかないところで、

 俺は自分を飼い慣らせなかった。


 俺は本当は、両親や妹の事を言えた義理ではない。


 正義も信念も何もなく、本当は‘好きか嫌いか’だけを(よすが)にして、

 仕事を選んで生きて来たくせに、

 理屈で武装するばかりで。


 人間としては、‘利口’ではないのだと自分で自覚がある。


 ありゃヤバい、俺、落ちてきてるわ。

 

 要らないことを考えすぎたか?


 朝起きた時の体調がマドク氏に言われるまでもなく、

 日によって上下が乱気流のように激しい。


 調子の良い日は、

 『今後はウォーキングからランニングまでもって行って、

 とにかくまず走り込んで体作ろう。

 そういうのは、得意だったはず。』

 なんて、よーっしと考えたりする。


 と、思っていたらあくる日はこのざまで。


 確かにこんな日は、陛下のお側近く居ることが安心するのか、

 俺のよくわからない手の震えが治まったりする。


 化学物質療法をしてから、時々この波が来る。


 俺って今、給料泥棒をしていないか?


 一時(いっとき)でも前に進むために、ちゃんと仕事に戻れるだろうか?


 ‘か?’じゃないし。


 子供達の前で《しょうがない》パパのままで逝けるように、

 姿勢を正そう。


 明日からは疑問文は封鎖!



 ****************



 あっちこっちに、《待ってくれ》を連発。

 《待って下さいお化け》になっている。今、俺。


 ミラ様のいるマケル邸に繋いで通信をしたら、マコの事でなじられた。


「私は、良縁と存じます。

 マケル宰相の娘としてではなく、

 ひとりの女としてマコを誉めてやりたいと思うくらいですわ。」


 あれ、マコ?言ってる。随分距離が近いですね。


「待って下さい。せめて2~3年後にしてもらいたい。

 何で、そんなに急ぐわけですか?

 子供でも出来たとか?」


「馬鹿をおっしゃらないで。

 あの()は、そんな頭の悪い事は致しません事よ。

 そろそろ、『人の口には戸をたてられなく』なっておりましょうけれども。」


 はいはい、マコの産みの親が2人とも馬鹿な事しているので、

 無いことでもないかと思いまして。


「随分と、意気地(いくじ)のない事をおっしゃいますこと。

 《死に逃げ》でもなさるおつもりですの?


 何を、あなたはぐずぐずと子供のようにしておいでですか?

 陛下のお側近くにお勤めあそばして、

 どうして『娘が縁付いた』との一言がおっしゃれません?


 それとも、あの()何処(どこ)かへ役立てる算段でもおありですの?

 私のように。

 

 皇帝陛下のお側近くの配下の娘は、

 今はあの()しかおりませんものね。

 でしたら、僭越な事を口にいたしまして、申し訳ありません。」


 ええと、考えてもいなかった。


 陛下が、

 俺が子供を持っていることを《愉快に思ってはいらっしゃらない》にだけ気が向いていた。


 マコに、そういうのがあり得るなんて夢にも思わなかった。

 マコが政略結婚?いやいや勤まるはずは、ないよな?


 でも、俺の今の立場って、現実はともかく、

 外からみたらあり得る事なのか?


 それにしても、ミラ様怖!


「ちょちょっと、待って下さい。もう少し。」


「お相手の人品、背景には何も問題はございませんわ。

 徹底的に調べても、

 いずれかと繋がっている背景もありませんでした。


 村の責任者の御両親にも、政治的な背景もございません。

 マコは、中々に良い目をもっているものですわ。」


「マコを気にかけて下さる事は、感謝いたします。

 でも、ちょっとちょっと考えさせて。」


「ええ、私はマコには他人でありましょう?

 アロマさんの先行きには、口を出しません。

 

 けれど、マコと同じ女性としては、

 多少はあなたよりも分かる事もございましてよ。

 逃げるのはおやめになって、一度お相手に会ってご覧になったら?

 

 その上で、帝国に婚姻を願い出ればよろしゅうございましょう?


 この帝国の、

 少しカビの生えた婚姻法はご存じでいらっしゃいますわね。

 お勉強は、お得意でありましょう?」


「えっと?」


「上位貴族とそれに類する者の婚姻は、

 御前の方へお話を通して、

 許可をいただくということに覚えがございませんの?」


「知らねーよ。俺、貴族は関係ないもん。」


 ほら、あんまり煽るから地が出ちゃったじゃん。


「あなたは充分《類するもの》でありましょう?」


 あちらのミラ様のモニターの後ろから、咳払いが聞こえた。『ゴホン!』

 まさか、マケル宰相?そこにいらっしゃる?

 無いことでもないけど。


 こちらも死角に、今日も筆頭秘書官が座って聞いていらっしゃる。


 ホントに何なんだよこれ?



 *************



 スールさんとの自宅からの通信は、アロマの出立の予定が決まったこと。


 ユニへと立つ前に、

 一度アロマと会うことが出来るなら、その日程を整えるって。


 それと、ひたすら俺のその後の体調を気遣ってくれて、

 自宅でいつでも休めるように体制を整えてあるって。


 あれ、スールさんにはこっちの状況は、

 今はあんまり抜けていないってことか?

 

 俺が病後の体調を押しきって、

 ひたすら働いていると思っている様子で。


『まさか、後宮ごっこをして《療養しながら仕事している》から大丈夫です』

 とは、言えないもん。


 心配をかけて申し訳ないです。


 夕方になってから、白シャツさんを通した伝令があった。

 

 陛下からお話があるから顔を見せるようにと、伝えられた。


 どこへ、どの格好で?いつ行ったら良いんだろうと思っていたら。


 表ではなく、陛下が普段お過ごしになられている奥で良いと。


『お寝巻きでなければ良いですから、楽なお召し物で』

 と陛下の秘書官に伝えられた。


 どうする?マコの事を直接お伝えするべきか?まだ早いか?


 だって考えてみたら、

 この帝国の貴族等の婚姻チェックって、

 マケル宰相のところへ話が行っているわけでしょう?


 政治的な絡みか?チェックするのは。


 宰相は、陛下の母上までも探して来た情報通?


 そのマケル宰相閣下の娘がオッケー出しているなら、

 後の許可をとるって、それより上?

 

 だったら、皇帝陛下以外にはいないよね。



 *************


 俺は今、陛下の御前に立って、嘘です。


 立て膝でフカフカのクッション、カーペットに座り込んでます。


 お話を伺って、口があんぐり。


 妹が、この帝国を通過点の乗り換え場所にやって来ると言う。

 

 通過点?意味が何もなくない?どうしてわざわざ。遠回り?


 その、補給乗り換え3時間の間に、

 妹の亭主の国王が皇帝陛下と謁見を賜りたいって言ってきていると。


 国交もない、離れた国の国王が、通りすがりって、失礼過ぎる。

 

 話にもなんない。なめとんのか?って俺でなくても思う。


 バカか?アンの旦那?


 それなのに、皇帝陛下が‘退屈しのぎ’に、

 その謁見を受諾したという。


 もちろん、対外的にも他国に公表はされない、

 隠密な謁見。

 会談ですらないだろう。


 陛下が、俺にそれまでに体調を整え、

 帝国の重臣らしく身綺麗にしておくようにと。

 

 意外な事に、自宅に一度帰る事を許された。


 せっかく家に帰れると言うのに、

 その後の事を考えると気が重い。

 急激に鬱が追加。


 身綺麗って、マコに髪でも切って貰えば良いのかな?


 その間に、マコの彼氏に会う機会があるかな?


 はあー、ゆっくり人生の断捨離をしている暇もないよ。


 マコの事は陛下には申し上げられませんでした。

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