第三十一話「意外な来店者」
月曜日。カフェFree。時刻午後6時。カウンター席にコーヒーを飲んでいる蒼。その正面にマスターと綾音がコップを拭いたりしている。今日の綾音の髪型はいつもと少し違く、髪を横に束ねているサイドテールだ。カウンター越しからなんだかいい匂いがする。似合ってるかなと蒼に聞いてきて、ちょっと照れながら蒼は、一度頷き似合ってると言うと嬉しそうな顔をしてカップをピカピカに磨き上げた。
すると、店の扉がガチャッと開き聞き覚えのある声が聞こえた。
「こんばんわ」
手さげ袋とヴァイオリンケースを手に持った望海がやって来て、そのまま蒼の隣に座った。今日は、望海が初めてカフェで演奏する日。
「マスター。コーヒー下さい」
「はい」
「相川さん。今日出来そう?」
「入山君がいるから大丈夫だよ」
「なんだかプレッシャーが!その中に入ってるのは何?」
「あ、これ。昔ヴァイオリンやってた時のドレスよ」
ピクッと綾音の眉が反応する。
「へぇ~。気になる」
「本当!?持ってきてよかった」
「相川さん。サイズ大丈夫?」
綾音が少し上から目線で言うが。
「着られたから持って来たんじゃない」
ヒラリとかわした望海の前にスッとマスターがコーヒーを出す。
「ありがとうございます。あ、そうだ入山君。今度から私のことは、望海って呼んで。西沢さんのことは、下の名前で呼んでるんだから、私も下の名前で呼んでほしいわ」
「えっ!!」
望海の注文に大袈裟に驚いてしまった蒼。
「だ~め~?かな?」
すり寄ってきてキラキラした瞳で訴えてくる。蒼は、それにどうすることもできず。
「わ、分かったよ」
了承してしまった。
「ヤッター!それともっと友達みたいな感じで話してね。時々敬語になったりしてるから」
「が、頑張ります!」
「フフッ。蒼君」
蒼君と言われさらに驚く蒼に、楽しそうな望海、二人のやり取りに今にも怒りが爆発しそうになってる綾音。三人を気にしながら見守るマスター。6時半になるところだった。
ガチャッとまた店の扉が開いた。
「……あれ。入山先輩?」
名前を呼ばれて振りかえる。店に来たのは、この前駅であった一年生の霧山 小町だった。
「あ、この間の」
「あの時は、大変お世話になりました!」
深々と頭を下げられた。
「いいよいいよ。顔上げて!」
その後ろで綾音と望海が鋭い眼光で蒼見つめて。
「蒼?ちょっと説明してくれるかな?」
「私も聞きたいです。蒼君?」
「ふ、二人とも怖いです……」




