第三十話「年頃」
リビングに移動して蒼と綾音は、向かい合って座り事情を説明した。
「相川さんがヴァイオリンね。かなり意外。いつも元気だから音楽とか似合わないけど上手いの?」
「かなり上手いよ」
「蒼が言うなら上手いんだろうけど……もしお父さんがいいって言ったらどうする?」
「どうするも何も相川さんもこれから一緒に演奏して行くんだろ?いいんじゃない?」
「……蒼ね。分かってる?蒼のことが好きって言ってるんだよ?学校以外にカフェでもずっと隣にいるんだよ。冷静でいられるの?」
そう言われてカフェで望海と一緒に居る自分を思い浮かべる。
「ど、どうだろ。自信がない」
「相川さんにドキドキして演奏途中にミスったりするんじゃない?」
「するかも」
綾音は、溜息を漏らす
「もっと自分の立場を考えなさいよ。相川さんが増えて楽しくなるかもしれないけど、それがのちのち時間と共に居心地が悪くなるかもよ?」
「……」
何も言わずに黙ってしまう。
「蒼?」
「綾音は、どう思う?仮に相川さんが増えたとして」
「う~ん。私は、別に構わない。だけど、蒼と一緒に居たいがためにこんなことしていたら嫌だな」
「そっかぁ」
蒼をじっと見つめ。
「……それに蒼の隣は、私なんだから」
「何か言った?」
「ううん!何でもない!」
両手を振って慌てる。
そこへ、玄関が開く音が聞こえた。足を音が近づいてきてドアが開く。マスターと望海が入ってきた。
「あ、綾音帰って来てたんだ」
「お父さん。蒼から話聞いた。それで」
「合格だよ。ビックリした。想像以上の腕前だよ」
「あ、ありがとうございます!」
ちょっと照れた望海は、スーっと蒼の隣に立つ。
「これから入山君と演奏するの凄く楽しみ!」
「本当に僕と演奏したいの?」
「決まってるじゃない!私の伴奏者は、入山君だけなんだから!」
「ピアノが出来るんのは、蒼だけじゃないんだよ」
きょとんと今の言葉に疑問に思った様子。
「えっと。綾音もピアノが出来るんだよ!」
慌てて蒼が説明すると望海は、口に手を当てて驚いた表情をする。
「これは、意外。西沢さんもピアノが出来るんだ~」
「蒼じゃなくて私が伴奏してあげようか?」
二人の会話は、学校で話をする時と同じ空間になる。
「それは、無理。私の演奏について来られるのは、入山君にいない」
「やってもいないの私のピアノを拒否するの?」
「やらなくても分かる」
互いに言葉の攻防戦がぶつかり合い、その勢いに蒼とマスターは、リビングの隅っこに追いやられる。
「ね、ねぇ。入山君」
「な、何ですかマスター?」
「年頃の女の子ってこんなに怖いの?」
「さ、さぁ~」




