第二十話「ヴァイオリン」
午前中。昨日購入した電子ピアノが届いた。箱を開けるとピカピカの新品。綺麗な黒色。
「う~ん。やっぱりどこかで演奏したいな。天気いいし」
窓の外を見て青空を見上げる。
「よし。午後からどこかで演奏しに行こう」
蒼は、午後から外で演奏するため色々と準備を始めるのであった。
午後の2時。電子ピアノを専用のケースに入れて背中に背負う。案の定重たい。やっぱり止めようかと思ったがすぐに切り替えて、自転車に跨り家を出た。
どこで演奏しようか自転車を走らせながら辺りを回る。出来るだけ人の少ない場所を選ぶ。そうしていること約30分。住宅街を抜けて蒼は、川沿いに来た。日曜日だが人は、あまりいない。蒼は、少し進んだのち自転車を停止させた。
「ここでいいかな」
川のすぐ近くで電子ピアノをケースから取り出し、三脚を立てる。試に鍵盤を叩く。綺麗な音色が響く。目を瞑ってその音色に耳を傾ける蒼。
「いいね。気持ちいい」
川が流れる音に、鳥の鳴き声、心地いい風。蒼は、自然を感じる。
「よし。じゃ、まず軽めに」
演奏を始めた。鍵盤を軟かな指使いで走らせる。ゆったりとした音色だが、川の音には、決して負けていない音色。どんどん演奏していく蒼の心の中は、穏やかに清々しく感じ始めていた。
蒼が演奏しているところから少し離れた場所に、サッカー部の望海がいた。
「あれは、もしかして」
望海の右手には、何かのケースが握られていた。
およそ3分間の演奏を気持ちよさそうに終えた蒼。
「ふぅ~。やっぱ来てよかった。さて、次は」
「入山君~!」
「あれ!?相川さん。どうしてここに?」
蒼が振り向くと望海がいつの間にか後ろにいた。なんだか嬉しそうに蒼の元へ。
「私よくここに来るの」
「へぇ~。それは……ヴァイオリン?」
「そう!4歳ぐらいから中3までやってたんだ。部活が休みの時とかは、ここに来て弾いてるの」
「以外だな」
「それは、こっちのセリフだよ。入山君ってピアノ弾けるんだ」
「まぁ。普通だよ」
「いやいや。めちゃくちゃ上手かったよ!」
「あ、ありがとう」
褒められて素直に嬉しくなり顔が熱くなった。
「相川さん。弾いてみてよ。聴いてみたい」
「そんなに上手くないよ?それでもいい?」
「聴いてみてから上手くないか判断する」
「おお。言いますね。それじゃ」
望海は、ケースを開けてヴァイオリンを取り出した。構えて軽く弦を鳴らす。
「結構年季が入ってるね」
「……」
蒼が言うが完全に無視。いや、集中していると言っていい。望海の表情が真剣そのものだ。
2回深呼吸して弦の上に弓を置いた。




