第二十一話「接触」
望海のヴァイオリンの演奏に蒼は、驚いた。何故これほど上手いのにその道に進まないのかと。ゆっくりとしたテンポだが奏でる音色は、とても厚みがあり心の中にとてつもなく響いてくる。誰かを探しているような、一人で孤独な感じを蒼は、聴いていてそう感じていた。その演奏にに我慢が出来なくなり蒼は、ヴァイオリンの演奏に邪魔にならないように伴奏し始めた。望海は、最初ビックリとしたようで蒼を見る。蒼は、ピアノを通して望海に語りけるように演奏する。それに応えるかのように望海も弾く。音楽に詳しい人がいればまるで楽器を通して、二人が話しているようだった。
「ハァ……ハァ……」
「ちょっと、疲れたね」
いったい何分演奏したか分からなかったが自然と二人は、演奏を綺麗に終えた。弓を弾く動作がある望海の方は、口から息が少し途切れ途切れで額から汗をかいていた。呼吸を整えてヴァイオリンをケースにしまい、地べたに座り込んだ。望海は、蒼を隣に座るように地面をトントンっと叩く。ちょっと間を空けて座った。
「私のヴァイオリンにピッタリ伴奏してくれたの入山君が初めて」
「え、そうなの?」
「うん。ヴァイオリンやってた時は、何人か伴奏してくれる人はいたけど、なんか違かった。周りは、ちゃんと合ってるって言ってたけど私は、そう思えなくて」
「それで止めちゃったの?」
「それもあるし、高校生になったら違うことやりたくてそれでサッカー始めたの」
「そうだったんだ。でも、勿体ないね。凄い上手いのに」
軽く鼻で笑う望海。
「そうね……もっと早く入山君と会って伴奏者に指名してたら続けたかもね」
それを聞いてドキッとする。
「いやいや。僕なんて大したことないよ」
「うんん。入山君は、伴奏者でもやっていけるほど上手いよ。一度も私のヴァイオリン聴いてもいないのに完璧だったんだから」
「たまたまだよ」
「それならもっと凄いよ」
そう言って笑う望海。
「今日は、本当にいい日だな~。いい演奏出来たし入山君に会えたし」
「大げさだな」
それから二人は、学校のことや音楽の話、サッカー部の話をしたりして過ごした。
「そろそろ帰るよ。相川さんは?」
「私は、もう少しいる」
手際よく電子ピアノを片付けて背中に背負う。望海に別れを告げて自転車に跨ぎその場を後にした。その後ろ姿に手を振るう望海。
「……入山蒼。私は」
平日。朝の学校の門近く。蒼の登校を待ち伏せをしていた綾音。もう、慣れたかのような蒼。そこに、朝練を終えた望海が現れた。
「相川さん。おはよう」
蒼のあいさつより先に綾音が望海にあいさつした。
「西沢さん。おはよう。入山君も」
「おはよう」
そして、望海は、綾音に視線を向ける。
「二人は、付き合ってるの?」




