第12話『魔力値測定』
第12話です!
ついに、六歳の子供たちによる魔力値測定が始まります。
まずは、オルタの大切な仲間たちの才能が明らかに――!
そして、誰も予想しなかった”伝説の力”も……?
どうぞ、お楽しみください
いつもより、朝早く目が覚めてしまった。
窓の外は、まだ薄暗い。
屋敷の中も静まり返っている。
……二度寝は無理そうだな。
今日は、魔力値測定の日だ。
この世界では、六歳になると、自分の魔力値と属性を知る。
誰もが通る、人生最初の大きな節目である。
緊張していないと言えば、嘘になる。
「……いよいよか」
小さく呟き、寝台から立ち上がる。
緊張はする。
だが、逃げる理由にはならない。
是非もなし、だ。
◇
食堂へ向かうと、既に家族が揃っていた。
「おはようございます」
「うむ」
父上が静かに頷く。
アレク兄上は、朝から上機嫌だった。
「いよいよ今日だな!!」
「そうですね」
「終わったら、結果を聞かせてくれよ!!」
「はい」
エレン兄上が、紅茶を口にしながら微笑んだ。
「結果に一喜一憂する必要はないよ」
「魔力値測定は始まりに過ぎないからね」
「はい、兄上」
すると、父上が静かに口を開く。
「魔力値は、鍛錬と努力によって成長する」
「だが、生まれ持った資質によって、その伸び方に差があるのも事実だ」
「数字に振り回されるな」
「はい、父上」
母上も優しく微笑んだ。
「行ってらっしゃい、オルタ」
「どんな結果でも、胸を張って帰ってきなさい」
「はい、母上」
◇
神殿は、ノヴァ領の中心にある。
白い石造りの大きな建物だ。
多くの親子が集まっていた。
平民。
騎士。
商人。
貴族。
皆、今日という日を迎えている。
馬車から降りると、静かな声が聞こえた。
「お久しぶりでございます、公爵様」
振り返る。
そこには、一人の紳士が立っていた。
隣には、エマの姿がある。
「エドガーか」
父上が穏やかに頷く。
ノヴァ領軍師、エドガー・ウィンフィールド。
エマの父親だ。
「公爵様、オルタ様」
「いつも娘がお世話になっております」
「こちらこそ」
父上が笑みを浮かべる。
「エマは、オルタと仲良くしてくれているようだな」
「はい、バルド様」
エマは小さく頭を下げた。
(……敬語が使えるのか)
(なぜ俺の前では使わないのだ……)
そんなことを考えていると、エマがこちらを見た。
「何か?」
「い、いえ」
危うく口に出すところだった。
「オルタ様は、とても面白い方ですから」
「エマ、それはどういうこと?」
すると、エマはくすりと笑う。
「褒めているんですよ?」
「そうなのか?」
「はい」
「本もたくさん読んでいますし、考えることも、他の子とは少し違いますから」
エドガーが、小さく笑った。
「昔から、人を見るのが好きな子でして」
「家でも、よくオルタ様のお話をしております」
「普通に育ってくれれば、それだけで十分なのですが」
「そうか」
父上が頷く。
「父親譲りだな」
「恐れ入ります」
◇
その後ろから、三人の男たちが歩いてきた。
斥候隊長ロイド・フェンリス。
近衛騎士ヴォルク・アイゼン。
そして、補給隊長アルフ・ローウェル。
それぞれ、リック、マルク、カイルの父親である。
いずれも、父上を長年支えてきた家臣たちだ。
「公爵様、オルタ様」
「息子たちが、いつもお世話になっております」
三人が揃って頭を下げる。
「こちらこそ」
父上が穏やかに頷いた。
「皆、大きくなったな」
「ありがとうございます」
ロイドたちが嬉しそうに笑う。
その後ろでは、リックたちも元気よく手を振っていた。
「オルタ様ーーー!!」
……朝から元気な連中である。
◇
その時だった。
「バルド様ーーー!!」
大きな声が響く。
振り返ると、大柄な男が歩いてくる。
その隣には、レオの姿があった。
「ガレスか」
父上が頷く。
ノヴァ領騎士団長。
ガレス・アームストロング。
レオの父親である。
ガレスは、父上へ深く頭を下げた。
「本日はよろしくお願いいたします、公爵様」
「うむ」
「レオ。まずはご挨拶だ」
「はい!!」
レオは背筋を伸ばし、父上へ頭を下げる。
「おはようございます、バルド様!!」
「うむ」
父上が目を細める。
「今日という日を、楽しみにしていたようだな」
「はい!!」
「父上と同じ火属性になって、立派な騎士になります!!」
「その真っ直ぐさを忘れるな」
「鍛錬を怠るなよ」
「はい!!」
その後、ガレスが俺へ向き直った。
「オルタ様」
「息子が、いつもお世話になっております」
「レオから、毎日のようにお話を聞いております」
「こちらこそです」
「レオには、いつも助けてもらっています」
すると、レオが胸を張る。
「当然ですーーー!!」
「俺、もっと強くなって――」
「将来は、オルタ様を支える立派な騎士になりますからねーーー!!」
「ははは!」
ガレスが豪快に笑った。
「気が早いぞ、レオ!」
「早くありませんーーー!!」
「俺は本気です!!」
……相変わらず、真っ直ぐな男である。
◇
神殿の中央には、巨大な透明結晶が置かれていた。
ラクリマ。
魔力を蓄えたり、魔道具の動力源になったりする、この世界では欠かせない鉱石である。
その中でも、目の前のものは、魔力測定用に加工された特別なラクリマだった。
老神官が、一歩前へ出る。
「皆様、本日はお集まりいただき、ありがとうございます」
「これより、六歳を迎えた子供たちの魔力測定を執り行います」
神殿の中が静まり返る。
「一人ずつ前へ出て、この測定用ラクリマへ手を触れてください」
神官が、透明な結晶を指し示した。
「ラクリマは、皆さんの体内にある魔力と共鳴し、属性と魔力量を映し出します」
「魔力値は、鍛錬と努力によって成長いたします」
「しかし、生まれ持った資質によって、その伸び方には差がございます」
「今日という日が、子供たちの未来を考える、一つの良き節目となることを願っております」
子供たちが息を呑む。
(努力で伸びる、か)
(多少低くとも、問題はあるまい)
この時の俺は、まだそう思っていた。
◇
測定は、順番に進んでいく。
「トーマス・ベルン」
「土属性、魔力値800」
父親が嬉しそうに息子の頭を撫でた。
「よくやった!」
「はい!」
「ミリア・フェルト」
「水属性、魔力値950」
「お母さんと同じだ!」
少女が飛び跳ねる。
周囲から温かな拍手が送られた。
父上が、目を細める。
「皆、大きくなったな」
なるほど。
貴族だけではない。
この子供たちもまた、ノヴァ領の未来なのだ。
◇
「レオ・アームストロング」
「はい!!」
レオが勢いよく前へ出る。
ラクリマへ手を置いた瞬間。
赤い光が神殿を照らした。
「火属性」
「魔力値、2500」
神殿のあちこちから、歓声が上がる。
「2500だと!?」
「まだ六歳だぞ!」
「流石は騎士団長のご子息だ!」
「将来が楽しみだな!」
「やりましたーーー!!」
「父上と同じ火属性ですーーー!!」
ガレスが豪快に笑う。
「よくやった、レオ!」
レオは満面の笑みを浮かべていた。
◇
「リック・フェンリス」
「はい!」
リックが元気よく前へ飛び出す。
淡い緑色の光が広がった。
「風属性」
「魔力値、1800」
「やったー!!」
「やっぱり風属性だった!!」
ロイドが苦笑する。
「こら、少しは落ち着け」
「はい!」
……返事だけは良い。
◇
「マルク・アイゼン」
「はい」
大柄な少年が、少し緊張した様子で前へ進む。
ラクリマが土色に輝いた。
「土属性」
「魔力値、2200」
「本当に……土属性です……!」
ヴォルクが、嬉しそうに息子の肩を叩く。
「立派だ、マルク」
「はい、父上!」
どこか誇らしげな表情だった。
◇
「カイル・ローウェル」
「はい」
カイルが静かに前へ出る。
青い光が、ラクリマを包み込んだ。
「水属性」
「魔力値、1600」
「父上と同じですね」
「少し安心しました」
アルフが優しく微笑む。
「これから、ゆっくり成長していけばいい」
「はい!」
◇
「エマ・ウィンフィールド」
「はい」
エマが静かに前へ進む。
神殿の空気は、先ほどまでと何も変わらない。
誰もが、次の測定を見守っていた。
エマが、そっとラクリマへ手を置く。
次の瞬間。
淡い緑色の光が、神殿全体へ広がった。
「風属性」
「魔力値、3200」
神殿がざわめく。
「3200だと……!?」
「まだ六歳だぞ……!」
「末恐ろしい才能だ……!」
しかし。
それだけでは終わらなかった。
透明な波紋のような揺らぎが、ラクリマの周囲へ広がっていく。
老神官の顔色が変わる。
「……まさか」
「これは……」
神殿が静まり返った。
「変異属性……」
「音……!?」
大人たちが息を呑む。
「音属性だと!?」
「伝説の……!」
老神官が震える声で続ける。
「建国の英雄――」
「響きの賢者アウレリウス様以来……」
「三百年間、一度も確認されていない変異属性でございます……!」
俺は思わず首を傾げた。
「音属性とは、そんなに凄いのですか?」
老神官が、ゆっくりと頷く。
「響きの賢者アウレリウス様は、建国戦争において、遠く離れた味方へ声を届け、軍勢を導いたと伝えられております」
「さらに、音によって魔物を惑わせ、傷ついた兵士たちを癒したと伝えられております」
「王国建国を支えた、大英雄のお一人でございます」
その中で。
エドガーだけが、言葉を失っていた。
「……音属性?」
「まさか、本当に存在していたのか……」
父上が横目で見る。
「エドガー、お前も知らなかったのか?」
「……文献で読んだことはございました」
「ですが、伝承の類だと思っておりました」
「まさか、我が娘に現れるとは……」
珍しく、動揺を隠せていない。
当の本人だけが、不思議そうに首を傾げていた。
「そんなに凄いのですか?」
エドガーが苦笑する。
「どうやら、そのようだ」
「父としては、驚くばかりだよ」
◇
測定を終えた仲間たちが、こちらへ戻ってきた。
「次はオルタ様ですね!!」
「絶対、大丈夫です!!」
「オルタ様なら、きっと凄い属性です!」
皆の期待が、こちらへ向く。
エマだけが、穏やかに微笑んだ。
「オルタ様は、オルタ様ですから」
不思議な言葉だった。
だが、少しだけ肩の力が抜ける。
その時。
老神官の声が響く。
「次」
神殿の空気が、僅かに変わった。
「オルタ・ノヴァ・ルミナス」
期待。
好奇。
値踏み。
その全てが、俺へ向けられていた。
(さて)
(是非もなし、か)
ゆっくりと、一歩前へ進む。
第12話を読んでいただき、ありがとうございました!
今回は、仲間たちの魔力値と属性が判明しました!
レオは父譲りの火属性。
そして、エマには三百年ぶりとなる伝説の変異属性『音』が発現しました。
次回、第13話。
いよいよ、オルタ自身の番です。
魔力値3。
その現実が、ノヴァ公爵家、そしてオルタ自身に何をもたらすのか――。
少しでも
「続きが気になる!」
「面白かった!」
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次回も、どうぞよろしくお願いいたします!




