第11話『魔力値測定前夜』
いつも読んでいただき、ありがとうございます!
少し更新が空いてしまいましたが、第11話です!
今回は、いよいよ魔力値測定前夜。
オルタたちが少しずつ成長し、それぞれの夢や憧れが見えてくる回になっています。
そして次回、第12話では物語最初の大きな転機が訪れます。
ぜひ最後までお楽しみください!
長かった冬も終わりを迎え、春の風がノヴァ領へ訪れた。
そして。
俺は、また1つ歳を重ねた。
「もう6歳か……」
窓の外を眺めながら、小さく呟く。
この世界では、この歳になると魔力値測定を受ける。
自分の魔力値と属性を知る。
子供たちにとっては、人生最大の転換期でもある。
どの属性を持つのか。
どれほどの魔力を秘めているのか。
その結果次第で、周囲からの期待も、将来の道も大きく変わるという。
前世の日本には、そんなものは存在しなかった。
武士の家に生まれても、才があるかどうかは長い年月をかけて分かるものだった。
だが、この世界は違う。
たった1日の測定で、その者の価値を測ろうとする。
……面白い。
前世を知る身だからか。
不思議と、心は落ち着いていた。
それでも。
明日の結果次第で、周囲からの見え方は大きく変わるのだろう。
◇
朝の鍛錬を終え、いつもの空き地へ向かう。
「オルタ様!
明日は魔力値測定ですね!!」
真っ先に駆け寄ってきたのはレオだった。
相変わらず元気である。
「おはよう、レオ」
「ああ、魔力値測定だな」
待ちきれないと言わんばかりに、両手を振り回している。
「楽しみです!!」
「そうだな」
皆もどこか落ち着かない様子だった。
「マルクも楽しみなのか?」
そう尋ねると、マルクは嬉しそうに頷いた。
「はい!」
「僕、バルド様みたいになりたいんです!」
「父上みたいに?」
「はい!」
力強く答える。
「バルド様、土属性なんですよね!」
「そうだな」
「城壁を作ったり、土地を守ったり……」
「領民を守ってる姿、本当に格好良いです!」
なるほど。
だから、守ることにこだわるのか。
少しだけ納得した。
「マルクらしいな」
「えへへ……」
珍しく照れている。
「エマは楽しみじゃないのか?」
木陰で座っていたエマが、こちらを見る。
「うーん」
「楽しみだけど、あんまり気にしてないかな」
「レオなんて、昨日からずっと魔力値測定の話してるんだよ!」
「そうなのか?」
「そ、そんなことないです!!」
レオが慌てて否定する。
「昨日も、一昨日も、その前も言ってたよ?」
「うっ……」
図星だったらしい。
思わず笑ってしまう。
相変わらず、よく見ている。
「オルタ様は?」
レオが話を変えるように身を乗り出した。
「緊張してるんですか?」
「少しはな」
嘘ではない。
興味はある。
期待もある。
だが。
不思議と、不安はなかった。
「何か、自信があるんですか!!」
「いや」
「ただ、何が出ても俺は俺だからな」
「また難しいこと言ってるー!」
リックが笑う。
「まあ、明日になれば分かるさ」
◇
夕暮れ。
食堂へ入ると、珍しく家族全員が揃っていた。
父上。
母上。
アレク兄上。
エレン兄上。
そして、その後ろにはクラウスが控えている。
「オルタ、遅いぞ!」
真っ先に声を掛けてきたのはアレク兄上だった。
「すみません、兄上」
「お前、緊張してるのか?」
アレク兄上が、大きな声で笑う。
思ったことを、そのまま口に出す。
遠慮のない人だ。
その隣で、エレン兄上が紅茶を口にする。
「まあ、オルタなら大丈夫だろ」
「アレク兄上も、エレン兄上も、緊張したのですか?」
「したさ!!」
アレク兄上が真っ先に答える。
「だが、結果には自信があったぞ!!」
「僕も同じだな」
エレン兄上が紅茶を口にしながら続ける。
「自分が積み重ねてきたものは、分かっていたからね」
「兄上たちの魔力値は、どれくらいだったのですか?」
俺が尋ねると、アレク兄上が胸を張った。
「俺は5200だ!!」
使用人たちが、嬉しそうに頷いている。
ノヴァ家の長男。
皆にとって、自慢の若様なのだろう。
「エレン兄上は?」
「5700」
平然と言う。
父上が満足そうに頷いた。
……化け物か。
一般的な平民なら、500前後。
騎士でも1000を超えれば一人前と言われている。
公爵家の嫡男としても、兄上たちの数字は飛び抜けていた。
5200。
5700。
公爵家の子供としては、十分すぎる数字なのだろう。
……俺は、どうなのだろうな。
「さすが兄上たちですね」
「まあな!」
「否定はしない」
2人とも、どこか誇らしげだった。
母上が、くすりと笑う。
「アレクも、エレンも、前日は眠れなかったのですよ」
「母上!」
「余計なことを言わないでください!」
珍しくエレン兄上が慌てる。
「ははは!」
「兄上たちも緊張していたのですね」
少しだけ安心した。
母上は優しく微笑む。
「オルタ」
「はい、母上」
「どんな結果でも、あなたは私たちの大切な息子ですよ」
穏やかな声だった。
少しだけ、照れ臭い。
「ありがとうございます」
俺は、後ろで静かに控えているクラウスへ視線を向けた。
そういえば。
「クラウス」
「はい」
「クラウスは、何属性なのですか?」
老執事は、少しだけ目を細めた。
「わたくしは、水属性でございます」
(水属性か)
「若い頃は、兵の治療や補給を任されておりました」
「今は、すっかり老骨でございますが」
穏やかに笑う。
なるほど。
だから、あれだけ周囲へ気を配れるのかもしれない。
「オルタ様」
「水属性だからこそ、できることもございます」
「人には、それぞれ得意なことがあるのです」
(得意なこと、か……)
「それを見つけることこそ、大切なのでございます」
「……父上と同じことを言うのですね」
クラウスが小さく笑った。
「長くお仕えしておりますゆえ」
父上も静かに頷いていた。
◇
食後。
自室へ戻る。
窓の外には、満月が浮かんでいた。
6歳になるまで、魔力を練る鍛錬は続けてきた。
呼吸を整え。
身体の内側を流れる力を意識する。
父上曰く、それが全ての基本らしい。
兄上たちは、幼い頃から自分の内側に流れる強い魔力を感じていたらしい。
だが。
俺には、そういった感覚がない。
……まあ。
明日になれば分かることだ。
少しだけ胸が高鳴る。
まだ、この時の俺は知らない。
明日。
ノヴァ家の誰も予想しなかった結果が待っていることを。
そして。
俺が。
魔力値3という、公爵家始まって以来の落ちこぼれになることを。
第11話を読んでいただき、ありがとうございました!
今回は、魔力値測定前夜のお話でした。
アレク、エレン、クラウスなど、家族や周囲の人々との会話を通して、オルタが少しずつこの世界の価値観を知っていきます。
そして次回、第12話「魔力値3」。
公爵家の期待を背負うオルタを待っていたのは、誰も予想しなかった結果でした。
ぜひ、次回もよろしくお願いします!
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