第10話『初勝利』
第10話です!
今回は、オルタたちの戦争ごっこ後編になります!
それぞれの得意なことを活かし、少しずつ成長していく子供たち。
そして、オルタが前世で大切にしていた「人を活かす」という考え方にも繋がるお話です!
楽しんでいただけると嬉しいです!
「今日は七人です!!」
レオが向こうを指差した。
見ると、昨日より少し年上の子供たちが並んでいる。
相手は七人。
こちらは俺を含めて六人。
人数だけなら、向こうが少し多い。
「増えていますね」
「今日は七人もいるんです!!」
レオはなぜか嬉しそうだった。
人数で負けているというのに、目が輝いている。
本当に、戦うことが好きな少年である。
「では、始めます!!」
レオが木の枝を高く掲げる。
次の瞬間。
「うおおおおお!!」
一直線に駆け出した。
「オルタ様!!」
レオが振り返りながら叫ぶ。
「今日は止めないんですか!!」
「はい!」
俺も声を張る。
「思い切り暴れてきてください!」
「やったあああ!!」
そのまま敵陣へ飛び込んでいく。
向こうの子供たちが慌て始めた。
「レオが来たぞー!」
「止めろー!」
皆の視線が、一気にレオへ向く。
「あっ!」
リックが声を上げた。
「オルタ様!」
「木の裏、通れます!」
「誰も気付いてません!」
いつの間にそんな場所を見つけたのか。
本当に目ざとい。
「そのまま進んでください!」
「はい!」
リックは嬉しそうに走っていく。
「えっと!」
今度はカイルだった。
「右から二人来ています!」
「レオの方には三人です!」
「合計五人です!」
「……それは見れば分かります」
「あっ、すみません!」
思わず笑ってしまう。
「マルク!」
「任せてください!」
マルクが旗の前へ立つ。
「ここは通しません!」
頼もしい。
だが。
「取ったーーー!」
敵の声が響いた。
俺たちの旗が奪われる。
「ああああ!!」
レオが膝から崩れ落ちた。
「悔しいですーーー!!」
惜しかった。
本当に惜しかった。
昨日までなら、話にもならなかっただろう。
だが。
あと少しだった。
◇
二回戦。
「今度こそです!!」
レオが胸の前で両拳を握り締める。
「絶対に勝ちます!!」
「ほどほどにお願いします」
「無理です!!」
元気である。
旗が振られた。
「うおおおおお!!」
また突っ込んでいく。
だが。
今度は敵も学習していた。
「放っておけ!」
「二人だけ残れ!」
「残りは旗を守れ!」
「ええええ!?」
レオが振り返る。
「無視しないでくださいーーー!!」
「ちゃんと僕を止めてくださいーーー!!」
敵の子供たちまで笑い始めた。
「オルタ様!」
リックが大きく手を振る。
「近道です!」
「今度こそ行けます!」
そう言って、森の方へ走っていく。
「……どこへ行くのです?」
「え?」
リックが止まる。
辺りを見回す。
「あれ?」
「ここ、どこですか?」
「迷子になってるじゃないですか!!」
「すみませーん!」
皆が吹き出した。
その隙に。
「負けたーーー!」
またも、あと一歩届かなかった。
◇
皆、その場へ座り込む。
夕陽が少しずつ傾き始めている。
「悔しいです……」
レオが地面へ大の字になる。
さっきまで大声を上げていたのに、今は空を見上げている。
表情は悔しそうだ。
だが、不思議と暗くはない。
「もう一回やりましょう!」
リックは相変わらず元気だった。
少し前まで迷子になっていたとは思えない。
「次は守り方を変えてみます」
マルクは真剣な顔で考えている。
「ぼ、僕も……」
カイルが拳を握る。
「もっと大きな声を出します」
その時だった。
「みんな、昨日より楽しそうだね」
エマが小さく笑った。
「そうでしょうか」
「うん」
エマは皆を見ながら言う。
「負けてるのに、落ち込んでないもん」
確かにそうだった。
昨日までの俺なら、もっと焦っていた。
なぜ勝てない。
なぜ動かない。
そんなことばかり考えていたはずだ。
だが、今は違う。
レオが叫ぶ。
リックが走る。
マルクが守る。
カイルが数える。
エマが見ている。
失敗も多い。
だが、それすら面白い。
「オルタ様も前よりもみんなのことを見てるもん」
その言葉に、少しだけ嬉しくなった。
「……そうかもしれません」
「前の方が、怖かった」
「怖かったのですか?」
「ずっと難しい顔してたもん」
思わず苦笑する。
五歳児に言われることではない。
「それは失礼しました」
「今の方が、好き」
不意打ちだった。
俺は少しだけ言葉に詰まる。
「……ありがとうございます」
エマは、ふふっと笑った。
◇
三回戦。
夕陽が、空き地の端を赤く染め始めていた。
「今度こそ勝ちますーーー!!」
レオが頭の上で両手を振り上げる。
「うおおおおお!!」
勢いよく飛び出した。
「レオの方、四人です!」
「旗の近くに二人です!」
「後ろに一人です!」
カイルが叫ぶ。
「今日は大人気ですーーー!!」
「そのまま引きつけてください!」
「ちょっ、オルタ様!!
適当すぎませーん!?」
どこまでも騒がしい。
だが。
おかげで敵の目は、完全にレオへ向いていた。
「あっ!」
リックが木の陰から顔を出す。
「オルタ様!」
「今、向こうは二人だけです!」
「木の裏、空いてます!」
だが。
リックは、その場で待っていた。
その時。
「オルタ様」
静かな声。
エマだった。
「リック、暇そうだよ?」
俺は、はっとする。
そうか。
リックは勝手に動かなかった。
先ほどは俺が好きに動いて良いと言ったから、迷子になった。
だから今は、ちゃんと俺の指示を待っているのだ。
人を信じるとは、好きにさせることではない。
その者が力を発揮できる瞬間を示してやることでもある。
「リック!」
「今です!」
「はい!!」
風のように駆け出した。
「後ろ、一人です!」
カイルの声が飛ぶ。
「マルク!」
「任せてください!」
マルクが立ちはだかる。
「ここは通しません!」
敵の子供が止まる。
その一瞬。
リックが木の裏を抜けた。
「取ったーーー!!」
静寂。
一瞬だけ、時間が止まる。
そして。
「勝ったああああ!!」
レオが飛び跳ねた。
「やりましたーーー!!」
「本当に勝てました!」
「やったー!!」
リックが旗を掲げる。
「守りきれました!」
マルクも笑っている。
「か、勝てた……」
カイルが呆然としていた。
その隣で。
エマだけが、少し得意そうに笑っている。
「ほらね」
「勝てた!!」
夕陽が、空き地を赤く染めていた。
皆が笑っている。
走り回って。
転んで。
大騒ぎして。
それでも。
誰一人、同じではなかった。
勝った。
何か特別な作戦を思いついたわけではない。
俺が優れていたわけでもない。
皆が。
皆の得意なことをやってくれた。
ただ、それだけだった。
――なるほど。
人を活かすとは、こういうことなのか。
前世でも、俺は多くの者たちに支えられてきた。
柴田勝家。
丹羽長秀。
羽柴秀吉。
そして、森蘭丸。
誰もが違う力を持ち、違う役割を果たしていた。
天下とは、一人で築くものではない。
人がいてこそ、成り立つものなのだ。
思わず笑みがこぼれる。
面白い。
本当に面白い。
「オルタ様!!」
レオが駆け寄ってくる。
「次も勝ちましょう!!」
「もちろんです」
「今度は僕が旗を取ります!!」
「それは駄目です」
「ええええ!?」
「レオが旗を取ったら、そのまま敵陣へ突っ込んで帰ってこなさそうです」
「失礼です!!」
「否定できますか?」
「……できません!!」
皆が大笑いした。
平和な夕暮れだった。
その時。
「そういえば……」
カイルが首を傾げる。
「来月って、適性測定でしたよね?」
空気が、少しだけ変わる。
「僕、火属性がいいです!」
「俺は風かなー!」
「大地属性も格好良いですよね!」
皆が楽しそうに話し始める。
魔力。
属性。
才能。
この世界では、それが当たり前だった。
来月。
俺たちは六歳になる。
そして、貴族の子供たちは皆、適性測定を受けることになる。
その結果が、将来を左右するとまで言われていた。
――だが。
その時の俺は、まだ知らない。
自分の魔力値が、たった三しかないことを。
そして。
その日が、俺の運命を大きく変える一日になることを。
誰も予想していなかった。
魔力値三の落ちこぼれが。
後に、大陸の歴史を変える存在になることを。
最後まで読んでいただき、ありがとうございます!
ついに初勝利!
レオ、リック、マルク、カイル、エマ。
皆がそれぞれの役割を果たしたことで勝つことができました!
次回は、第11話「適性測定」。
六歳となったオルタたちは、貴族として初めて自分の魔力と属性を知ることになります。
果たして、オルタに待ち受ける運命とは――。
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次回もよろしくお願いします!




