表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
29/30

食屍鬼の少女

 アドワースから顔面に一撃を受けた神父(メルク・レイズ)は、鼻から血を流しながら、怒声をあげた。


「ぎさまぁ! よぐも……よぐも、わだしの(がお)にぃっ!!」


 アドワースは距離をとって、再び木刀を構え直した。


「俺は、レイナードみたいに甘くないぜ」


 全身を使って放たれる斬撃が右へ、左へと神父(メルク・レイズ)を激しく打ちつけた。


 アストライア大陸の北東部……大精霊の森で採取されるロゥウッドから作られた木刀は、高い硬度と柔軟さを併せ持ち、ひと振りすると唸りをあげてしなった。


 流れる刀身は、まるでおとぎ話に出て来る蛇の怪物そのものだった。腹を空かした多頭の蛇が、神父(メルク・レイズ)の身体を引きち切ろうと襲い掛かった。


「あばばっ、ぶっごろじてや……ぼえっ」


 神父(メルク・レイズ)は木刀に打たれながら、操り人形の様に身体を揺らし続けた。


「きてぃやあぁぁぁーっ!!」


 掛け声と共にアドワースが最後の一撃を放つと、白目を剝いた神父(メルク・レイズ)は膝からくずおれるように倒れて、ピクリとも動かなくなった。  


「本当は、ぶっ殺してやりたいところだけどよ……お前には色々と喋ってもらわなきゃあならないからなぁ」


 その瞬間、アドワースは本能的に危険を察知して後ろに下がった。


 轟音と共に地面が砕け、砂埃が舞った。


「こいつは、一体!?」


 視界が開けると、一人の少女がアドワースをじっと見ていた。


「へええ、これを避けるんだ。おにいさん、見かけよりも凄いんだねえ!」


 少女は被っていたフードをまくり上げ、金髪(ブロンド)の髪とその素顔を(さら)した。


 それを見たアドワースは、ぎょっとした。星明りに照らされた少女の顔は、驚くほどに美しかった。だけれども、それは先程まで戦っていた子どもたちと一線を画していた。


「なあに? 僕の顔に何かついてる?」


 無機質な表情は死者の体温を連想させた。艶のない肌は見知った人間のものではなく、蜜蠟(みつろう)で作られた塊の様だった。


 かつて美しい令嬢であったであろうその容姿は、既に人ならざる者へと変化していた。


 少女は、愛玩人形の様な顔をアドワースに向けると、ぺこりと頭を下げた。


「ごめんね。コレを持って帰らないと、僕が怒られちゃうの……だから、見逃してくれると嬉しいな」


 そういうと、気絶した神父(メルク・レイズ)を軽々と抱え、あっという間に森の中へと姿を消した。


「ま、待ちやがれ、くそっ! 何なんだ、あいつは」


 アドワースの体力も限界に近かった。追跡を諦めると、倒れているレイナードに駆け寄った。


「おい、レイナード、しっかりしやがれ! こんな所で死なれたら、お前の(ツラ)を一生忘れられなくなっちまうだろうが!!」 


 抱き起こされたレイナードは、呼びかけに答えなかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ